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三周目

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 貴一は白液学園というクソBLゲームに存在する警察の無能さに嫌気がさしていたが、今回は流石に違法ドラッグが絡んでいたので、滞りなくサイオンジは警察に連行されていった。
 その後、情報通のマイフェイバリットヤマザキによると、サイオンジユウは白液学園の理事長の甥っ子であり、元々学力偏差値も足りていなかったが前の学校で問題を起こしたため、半ば隔離目的でこの学校に転入させられたようだ。

 元々かなりいいところのお坊ちゃまであったことと、両親から溺愛されたものの碌に躾けられずに育って来た彼は、本人もそうとは気づけず、人の心に対してあまりにも理解が足りない子に育ってしまった。
また、特異体質により件の香合はサイオンジには効かないことを両親は知っており、周囲の人間がサイオンジの言いなりになるように、お守りとしてこれを肌身離さず持つように指示していた。

「美羽先輩、詩羽先輩」

「……」

「……」

 あれが、あなた方のことを理解してくれる人ですか。そう思ったが口には出さない。人の感情や好意や、確かにあった過去の出来事まで否定するのは人として違うと思ったからだ。

「俺は先輩たちがサイオンジのことを好きな気持ちは否定しません。さっさと生徒会の仕事しろ」

「後半雑すぎ笑う」

 ここからいい感じの説教が入るんじゃないのかよと、思わずツッコむ上杉を見て、双子たちは頭を下げた。もともとサイオンジを警戒し距離を置いていた上杉や、最近知り合ったばかりだという赤穂双子たちは例のお香の影響が少なく、すぐに自我も周囲の人間関係に対する正しい好感度も取り戻すことができた。

 上杉と双子の貴一に対する好感度の高さが残ったことについては、貴一にとって良い事なのかどうかはわかりかねるが、おかげで「無くした信頼ゲージMAXドリンコ」の消費量を減らせることができたと、彼は前向きに考える。

「上杉先輩、ごめんなさい」

「うん、どした~?」

「ジップ○ック押収されました。香合と一緒に。すみません、今度弁償します」

 瞬間、貴一にちゅっと触れるだけのバードキスを落とされると「これでチャラでいいよ」と上杉はいたずらっぽい笑みを浮かべる。

「上杉先輩、お願いがあるんです」

「ん、何でも聞く」

 上杉は普段のチャラ男はなりを潜め、貴一に向き合う。もしかしたらこちらのほうが本来の彼なのかもしれない。

「この先、何があっても今から俺の言ったこと守ってください。あと、俺の事を助けに来ようとはしないでください」

「……わかった」

「どんなことになっても、絶対に先輩の事恨んだりなんかしないので」

 人気のない場所で貴一は上杉に今後の行動を伝える。赤穂兄弟には溜まりに溜まった生徒会の仕事を押し付けているので、実質動けるのは彼だけだった。

「そっか。じゃあ、貴一君はあれに応じるんだねぇ……」

「ええ」

 サイオンジが警察に連行された後、いくらモラルが死滅している白液学園といえども大変な騒ぎになった。セックスドラッグバイオレンスはBLゲームあるあるだが、ドラッグが持っているだけでも捕まるような違法も違法物という規格外な案件すぎて、生徒たちも教員たちも皆ドン引きしている。
 何にドン引きしているのかと問われたなら、ドラッグはもとより生徒会会長、副会長、書記と風紀委員長、東頭がお香の副作用でサイオンジを渇望しており荒れ狂っているからだ。

「あんなヤバい奴でも、薬の所為で好きになっちゃうんだね……」

「薬怖っ! でもあそこまで終わっちゃってたら人間辞めた方がマシかもね……」

 貴一は、上記のメンバーに呼び出された。恐らくサイオンジを引きはがされた恨みから、これから私刑が待っているのだろうと判断する。そこを逆手に取り、彼は攻略キャラたちの正気を取り戻し好感度を上げる計画を立てていた。

「貴一、気を付けろよ……あいつらマジで」

 いつも元気なヤマザキが、今日だけは神妙な面持ちで貴一を見つめている。言葉とは裏腹に腕を軽くつかみ、行くなと止めているようだ。

「大丈夫だマイフェイバリットヤマザキ、愛してる。いままでありがとう」

「死を覚悟したやつの台詞じゃんそれ……」

 親愛の印に力強くヤマザキの肩を叩くと、貴一は指定された場所へ一人向かう。そこは、校舎近くにある裏山の入り口付近に存在する地下室で、何故そんなものがあるのかというと、元々は防災目的で作られた場所のようだ。
中はひんやりしたコンクリートの壁で覆われた牢獄のような部屋であり、現在は専ら反抗的な生徒を指導するために使われている。
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