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しおりを挟む見込みが甘く全七話になりました(えへ)
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その後どうなったかというと。
結論から言えば王太子サーヴァルトは廃嫡となった。理由は簡単、俺が執務室での会話を綺麗さっぱり全部国王陛下とコルド卿にチクったからだ。国王陛下は真っ青になって倒れそうになり、コルド卿は真っ赤になって頭から湯気が吹き出しそうという非常に対照的だったのが印象的だった。そういう訳で、新たな王太子には順当に第二王子が立つこととなった。いやあ、ガチで二人の顔はヤバかった。特に『どうやら貴族法どころか王室典範すらご自分で読んだことが無いようだ』ってトコがね。
原則長子継承のせいでやむを得ずサーヴァルトを立太子させたのに、気を引き締めて政務に励むどころか俺に書類仕事丸投げして遊び呆け、後ろ楯の意味を理解せずシェリア嬢を蔑ろにし、媚びっ媚びな男爵令嬢に入れ揚げた挙げ句勝手に王命の婚約を破棄しようとした、なんて言われてみ? 一応教育係や侍従から報告は上がってただろうけど、監督不行き届きを心配してなのかこの先持ち直してくれるのを期待してか、随分と甘い内容だったらしい。まあ、俺も何だかんだで黙って十年も仕えたんだ。あんな事を言い出さなければ見捨てたりするつもりはなかったんだけどねえ。俺はもうこれ以上沈むとわかっている船には乗っていたくないんだ。一蓮托生、と言えるほどの絆はあいつらとは結んでいないし。
陛下が俺の報告を受け、当然だが嘘ではない事の裏付けを取り、貴族院の了承を得た上で頭を抱えながらサーヴァルトを呼び出し廃嫡を告げた時は、そりゃあもう奴は暴れた。もっとも呼び出されたのが側近の奴らと話し合いと称した酒盛りをしていた翌日だったらしく二日酔いの頭を抱えながらだったんで、騎士達が押さえ込むのも簡単だった様だが。俺はそれを少し離れたところで見てたけど、凄ぇ顔して睨まれた。『何故お前がそこに居る!! 何故父上に話した!! 何より何故私を助けない!?』とか言いながら。
だって俺、口止めされてねぇもん。
そもそも俺の実家はド田舎が領地の伯爵家の上にそこそこ貧乏なんで、皆社交シーズンですらほとんど領地から出てこない。勿体なくてタウンハウスすら用意してないくらいだ。だから俺が王太子の側近として仕える羽目になった時両親は慌てた。俺が普段住む家が無いからだ。王子の側近なんて栄誉を授かったのに七歳の子供に王都で独り暮らしさせる訳にはいかない。かといってこの子一人の為だけに使用人を付ける余裕も無い。不甲斐ないとは思うが……と貧乏を理由に断ろうとしたのだが、我慢の効かない我儘坊主は、気に入った玩具が手に入らなくて癇癪を起こし暴れたらしい。
結果、俺は王の指示で王宮に部屋を与えられ、住まう事となった。もう十年だから、実家暮らしより長いね。そしてここに住んでいる間の生活費は、実家ではなく王家が給金代わりとして出す、と決まったのだ。サーヴァルトが立太子するまでは、帝王学とかの勉強を除けば一緒に勉強していた。その費用なんかもだ。そして金の出所は王家からであって王子からではない。つまり俺は七歳にして国に仕えている文官や武官と同じ立場になった。お給金を頂いている以上仕事として王子に仕えてても、それはあくまで国の為だ。なら、国の為にならない事を容認するのも限度があるよな。今回の事はその限度を越えてしまった、という訳だ。
俺だってさ。多少の情はあるよ。だから、黙ってろ、って言われたら結構悩んで、もしかしたらチクらない選択をしたかもしれない。でも、あのときサーヴァルトが口止めをしなかったのは、俺の事を信頼しているというよりは、所有物だと勝手に思ってる俺が指示なしに話す訳無いっていう根拠の無い自信からだから。俺もいつまでも子供じゃないからね。この先もずっと所有物扱いされると思うとゾッとした。だからもう話したのだ。潮時だと思って。まあ、ホントはもうひとつ理由があるけど。
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