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「……それ証拠はあるんですか?」
「証拠? マーリィが私に涙ながらに訴えたぞ」
…………阿呆? 阿呆だわ。
それで罪に問えるなら司法はいらねぇよ。それこそ権力を笠に着た横暴だな。
「いえ、第三者の目撃証言とかは?」
「そんなもの必要無いだろう。マーリィが言ってるんだ」
あーれぇ? おかしいな、こいつ俺とと同じ言語で喋ってるんだよな? 意味がわかんねぇんだけど。……うーん、説明すんのにアプローチ変えないと駄目かな。
「にしても、なんでまた夜会で? こういう時は陛下にお願いして認めて頂いて後、侯爵へ解消を申し出るのが筋でしょうに」
「何? そんなこともわからないのか? あの女が言い逃れ出来ない様に皆の前で悪事をバラす為に決まってるだろう!」
……悪事ねぇ? 俺には些事に感じるけど。
「うーん、言い逃れとはどういう意味ですか?」
「あの女は狡猾だからな。直接私が陛下に進言してものらりくらりと躱されて逃げるに決まっている!」
「ふむ。要するに殿下は、シェリア嬢は罪を犯した、罪を犯した者を王太子妃に出来ない、国王陛下に訴えても埒が明かなそうだから殿下自らが罪を突きつけてやる! ……とそう仰りたい訳ですね。なるほどー。つまり殿下は『国王陛下は十七歳の小娘に言いくるめられる程度のお方』だと考えられた訳ですね。ご立派です」
「なっ!? そ、そんなことは言って無いだろう!?」
「ではどういう意味で? そもそも本当に罪を犯していたとしても、殿下には裁く権利はありませんよね。『貴族位にある者が罪を犯した場合は貴族院の司法局にて裁定』と貴族法で定められてますし。……ああ、なる程、わかりました。コルド卿も陛下と同じで女性に簡単に篭絡される様な方だと仰りたい訳ですね!」
「!! な、何を馬鹿な事を!?」
コルド卿とは我が国の法務大臣で、先々代国王陛下の孫、現国王陛下の従兄弟に当たる公爵様だ。一言で言うなら『厳格が服着て歩いてる』様な性格で、陛下の信認も厚い。お堅い性格から、殿下が苦手としているのは知ってるけど。貴族と言ってもピンキリだから、下級貴族の揉め事なんかは司法局の職員が対応するだろうが、流石に侯爵令嬢が罪を犯した、と言い張るなら裁定はコルド卿が行うだろう。ちなみに王家王族には司法権は無い。国法で権力分立が定められているからだ。建前だけど。
まあ要するに殿下がやろうとしたのは、貴族法を無視した私刑という事だ。コルド卿が知れば間違いなく逆に王太子として不信任の烙印を押されるだろう。てことは、だ。
「ああ、そういう事か! 殿下は王太子の座をアリウス殿下に譲ろうとしてる訳ですね! 素晴らしいです!」
「はぁっ!? なんでそんな話になるんだ!?」
「え? 王太子であるにも拘わらずわざと法律を無視して皆の非難を浴びる事で、王太子の座から降りようとしてる、という事じゃないんですか?」
ま、本当は間違いなく単に阿呆なだけだと思うけどな。俺も勿論こんな事を言うのはわざとだ。
「真実シェリア嬢が虐めを行っていたとしても、殿下が王太子の名において裁きを下そうとするならそれは私刑であり、貴族法に違反します。殿下は貴族ではありませんが、王族の決まりが定められた王室典範は貴族法をベースに王族のみの権限や禁止事項を纏めたものなので、王族にも私刑の権限はない筈です」
俺も貴族法は一通り熟読したけど、王室典範まではカバーしてないしな。まあ、一応王太子に仕える事になった時目は通したから間違ってはいない筈だ。
「わ、私が王太子の座を降りるなどあり得ぬ!し、仕方ない……夜会での追及は諦めるか。……クソッ、これではマーリィを妃に出来ないではないか……っ」
ぼそり、と呟いた後半の言葉に、俺は内心首を傾げる。このぼんくら、婚約破棄出来たらマーリィ嬢を正妃にするつもりなん? 愛妾ならまだともかく、正妃かよ。
「……えーと、一応お聞きしますが、殿下は王室典範をご存知ですよね? 知らないということはありませんよね?」
「王室典範だと? 何故そんなものを私が覚えなければいけないのだ。そんなものは貴様ら側近が覚えていれば問題ないだろうが」
……うわぁ。マジか? いやマジなのか。なるほど。これまでの発言で時々ビミョーな感じがしたのは間違いじゃなかったか。
「……それ証拠はあるんですか?」
「証拠? マーリィが私に涙ながらに訴えたぞ」
…………阿呆? 阿呆だわ。
それで罪に問えるなら司法はいらねぇよ。それこそ権力を笠に着た横暴だな。
「いえ、第三者の目撃証言とかは?」
「そんなもの必要無いだろう。マーリィが言ってるんだ」
あーれぇ? おかしいな、こいつ俺とと同じ言語で喋ってるんだよな? 意味がわかんねぇんだけど。……うーん、説明すんのにアプローチ変えないと駄目かな。
「にしても、なんでまた夜会で? こういう時は陛下にお願いして認めて頂いて後、侯爵へ解消を申し出るのが筋でしょうに」
「何? そんなこともわからないのか? あの女が言い逃れ出来ない様に皆の前で悪事をバラす為に決まってるだろう!」
……悪事ねぇ? 俺には些事に感じるけど。
「うーん、言い逃れとはどういう意味ですか?」
「あの女は狡猾だからな。直接私が陛下に進言してものらりくらりと躱されて逃げるに決まっている!」
「ふむ。要するに殿下は、シェリア嬢は罪を犯した、罪を犯した者を王太子妃に出来ない、国王陛下に訴えても埒が明かなそうだから殿下自らが罪を突きつけてやる! ……とそう仰りたい訳ですね。なるほどー。つまり殿下は『国王陛下は十七歳の小娘に言いくるめられる程度のお方』だと考えられた訳ですね。ご立派です」
「なっ!? そ、そんなことは言って無いだろう!?」
「ではどういう意味で? そもそも本当に罪を犯していたとしても、殿下には裁く権利はありませんよね。『貴族位にある者が罪を犯した場合は貴族院の司法局にて裁定』と貴族法で定められてますし。……ああ、なる程、わかりました。コルド卿も陛下と同じで女性に簡単に篭絡される様な方だと仰りたい訳ですね!」
「!! な、何を馬鹿な事を!?」
コルド卿とは我が国の法務大臣で、先々代国王陛下の孫、現国王陛下の従兄弟に当たる公爵様だ。一言で言うなら『厳格が服着て歩いてる』様な性格で、陛下の信認も厚い。お堅い性格から、殿下が苦手としているのは知ってるけど。貴族と言ってもピンキリだから、下級貴族の揉め事なんかは司法局の職員が対応するだろうが、流石に侯爵令嬢が罪を犯した、と言い張るなら裁定はコルド卿が行うだろう。ちなみに王家王族には司法権は無い。国法で権力分立が定められているからだ。建前だけど。
まあ要するに殿下がやろうとしたのは、貴族法を無視した私刑という事だ。コルド卿が知れば間違いなく逆に王太子として不信任の烙印を押されるだろう。てことは、だ。
「ああ、そういう事か! 殿下は王太子の座をアリウス殿下に譲ろうとしてる訳ですね! 素晴らしいです!」
「はぁっ!? なんでそんな話になるんだ!?」
「え? 王太子であるにも拘わらずわざと法律を無視して皆の非難を浴びる事で、王太子の座から降りようとしてる、という事じゃないんですか?」
ま、本当は間違いなく単に阿呆なだけだと思うけどな。俺も勿論こんな事を言うのはわざとだ。
「真実シェリア嬢が虐めを行っていたとしても、殿下が王太子の名において裁きを下そうとするならそれは私刑であり、貴族法に違反します。殿下は貴族ではありませんが、王族の決まりが定められた王室典範は貴族法をベースに王族のみの権限や禁止事項を纏めたものなので、王族にも私刑の権限はない筈です」
俺も貴族法は一通り熟読したけど、王室典範まではカバーしてないしな。まあ、一応王太子に仕える事になった時目は通したから間違ってはいない筈だ。
「わ、私が王太子の座を降りるなどあり得ぬ!し、仕方ない……夜会での追及は諦めるか。……クソッ、これではマーリィを妃に出来ないではないか……っ」
ぼそり、と呟いた後半の言葉に、俺は内心首を傾げる。このぼんくら、婚約破棄出来たらマーリィ嬢を正妃にするつもりなん? 愛妾ならまだともかく、正妃かよ。
「……えーと、一応お聞きしますが、殿下は王室典範をご存知ですよね? 知らないということはありませんよね?」
「王室典範だと? 何故そんなものを私が覚えなければいけないのだ。そんなものは貴様ら側近が覚えていれば問題ないだろうが」
……うわぁ。マジか? いやマジなのか。なるほど。これまでの発言で時々ビミョーな感じがしたのは間違いじゃなかったか。
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