世界樹の下で

瀬織董李

文字の大きさ
上 下
50 / 51

とうとう出発したよ!④

しおりを挟む
「な、なんで土下座!?」

「あー、ごめんなさい、わたくしが教えたの。最上級の謝罪の仕方だって」

 あんたのせいかーい。びっくりしたよ実はこの世界では土下座が一般的なのかと思っちゃった。お嬢様はヴァルターさんがなにかやらかしたときにこうやって謝るのが一番誠意を見せられる、と教えたらしい。

「よもや伝説の賢者にも等しい才能に溢れた方とは露知らずご無礼致しました!! かくなるうえは腹を切ってお詫びを……!!」

「わああああああっ!! なんでいきなり切腹っ!?」

「あ、ごめーん。それもわたくしが」

 ろくなこと教えないな悪役令嬢!!

「大丈夫よ。パフォーマンスとしてそう言っとけ、って教えてあるから本気じゃないわよ」

「なんじゃそりゃあああ」

 ……なんかどっと疲れた。

「にしても伝説の賢者ってなんですか。私はただの農婦ですよお」

「ヴァルターは魔法鑑賞フェチなのよ」

 魔法鑑賞フェチ。……どっかで似た属性が。もしかして混ぜるな危険?

「魔法を使ってるところを見るのが大好きなんですって。だからあの・・聖女にも興味示して時々見に行ってたのよね。ただあの娘、学園の授業サボってばっかりだったから、ヴァルターったら早々に興味なくしたみたい。聖女だからきっと凄い魔法を使える様になるかも!って期待したのにいつまで経っても初級のショボいのしか使えなかったらしいから」

「なるほど……」

 ある意味ヒドインの被害者が此処にも居たとは。その反動で私の魔法に食いついたのなら私も被害者と言えるかもしれないけど。

 いつまでも土下座してられても気持ち悪いので普通に座ってもらう。すっごい渋々だったけど。……まさかえむな属性も併せ持つ戦士じゃ無いよね?そして恥じらいながら乙女のようにチラチラ盗み見るのヤメテクダサイ。お尻がむず痒くなるわ。

「ええと……貴女はどんな魔法をお使いになられるのですか?」

「いや、普通の態度でいいですってば。敬語も無くていいです、私も平民なんだし。使える魔法は水、聖、光。んでも初級レベルしか使えないよ?」

 水は水鉄砲とかシャワー、聖は傷口塞ぐのとちょっと疲れをとる、光は光るだけ。そうやって改めて考えると我ながらショボいな。まああと炎とか風いろいろ使えるけど、それ言ったら伝説の賢者どころか神扱いされそうだな。

「素晴らしい!! ということは訓練次第で大賢者にもなれるということですね!!」

「いや、それは無理でしょ……」

 伝説の賢者の次は大賢者かい。

「以前中級レベルの魔法も使えるかなと思って図書館に置いてある魔法の本を見たですけど、理解出来なかったので。そもそも私、魔導士になるつもりないんで訓練もするつもりはかけらも無いですし」

 初級レベルの魔法は魔法属性を持つものは誰でも使えるそうだ。なんとなく自分がこういう事が出来る、というのがわかるのだ。少なくとも私はそうだったので。

 だが、中級以降となるとそうはいかない。きちんと魔法の理論を理解し、魔力を使用する魔法に構築しなければならないそうだ。その為には、魔導士の育成を目的とした学校に入学し、そこで学ぶのが一般的だと聞いた。ちなみに魔法の属性持ちは圧倒的に貴族が多い事もあって、学校で学ぶのは有料である。だからそれを聞いた私の頭には『金払ってまで覚えなくていいや』しか無かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...