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とうとう出発したよ!③
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ということで、旅を円滑に進めるために、食事する時にブランシュ嬢を交えてヴァルターさんと話をしてみようと思います!
「……なんですか、あなたは」
「この旅の中心人物です」
「…………は?」
野営なので凝った物は作れない為、簡単なスープと軽く温めた黒パン、あとは炙った干し肉と薄く切ったチーズくらいの簡素な夕食。庶民は普段からこんなもんなんですけどね。というか、肉があるだけご馳走! あれ程熱心に『ごはん!』って叫んでたブランシュ嬢や、宮廷料理を食べてた殿下はどうなのかと思ったけど、大人しく食べてるみたいです。食事に文句つけるような厚顔無恥では無いようで一安心。
そんな料理を右手に、スプーンを左手に持ったままヴァルターさんが固まった。あー、この人左利きなのか。ポカンと口を開けててもイケメンはイケメンだなあ。イケメンや美女は間抜けな顔してもイケメン美女なのに、平凡は間抜けな顔をしていなくても抜けていると言われるのは何故だー。
「急に決めて飛び出してきちゃったから、あなたには何も話してなかったわね、ヴァルター。今回世界樹へ向けて旅に出るのは彼女なの。殿下やあの魔導士の子とかアリスト子爵は彼女に付いていくのよ。わたくしもついでに」
「…………は?」
まあ妥当な反応かな。普通は殿下が主体だと思うよね。
「あなたも知っているでしょう?あの聖女の事を。彼女は代わり、という訳ではないけれど、世界樹まで救済の旅に出る事になったのよ」
「…………コレが?」
「こらヴァルター!人を指差さない!」
先程お嬢様もやってましたけどね。というか、指差しよりも『コレ』扱いの方が酷いです。
「魔力の総量はそんなに大きくないらしいけど、彼女は三属性の魔法を使えるそうなの。そういう意味では聖女より貴重よ?」
「いやあ、それほどでもないですけどねーあははー」
えへん! 敬うがいい!! とか言ってみたいけど、根が小心なので、取り敢えずへらへらと笑っておく。
「身分としては平民だけど、今回に限っては宰相様の保証もあるから、あなたが不遜な態度をとっていい相手ではないの。わかった?」
「いや、別に普通の態度で十分ですけど」
別にお嬢様のお世話をとりあげようなんてこれっぽっちも思ってないし。私自身が初めての旅でいっぱいいっぱいだしね。……ああ、なんか前世で大学受験の為に都会に出て来て、右往左往した時の事を思い出しちゃったよ。あれは心細かった……
「……す」
「ん?」
いまや断片的にしか思い出せない前世に思い馳せていると、何やらヴァルターさんが呟いた。見るとヴァルターさんが俯いて肩を震わせている。
「どしました?」
「す……すみませんでしたぁぁ!!」
「うわっ!!」
当然ヴァルターさんが叫んだと思ったらすくっと立ち上がり、そのまま私の前までジャンピング土下座で飛んできた。び、ひっくりした……
「……なんですか、あなたは」
「この旅の中心人物です」
「…………は?」
野営なので凝った物は作れない為、簡単なスープと軽く温めた黒パン、あとは炙った干し肉と薄く切ったチーズくらいの簡素な夕食。庶民は普段からこんなもんなんですけどね。というか、肉があるだけご馳走! あれ程熱心に『ごはん!』って叫んでたブランシュ嬢や、宮廷料理を食べてた殿下はどうなのかと思ったけど、大人しく食べてるみたいです。食事に文句つけるような厚顔無恥では無いようで一安心。
そんな料理を右手に、スプーンを左手に持ったままヴァルターさんが固まった。あー、この人左利きなのか。ポカンと口を開けててもイケメンはイケメンだなあ。イケメンや美女は間抜けな顔してもイケメン美女なのに、平凡は間抜けな顔をしていなくても抜けていると言われるのは何故だー。
「急に決めて飛び出してきちゃったから、あなたには何も話してなかったわね、ヴァルター。今回世界樹へ向けて旅に出るのは彼女なの。殿下やあの魔導士の子とかアリスト子爵は彼女に付いていくのよ。わたくしもついでに」
「…………は?」
まあ妥当な反応かな。普通は殿下が主体だと思うよね。
「あなたも知っているでしょう?あの聖女の事を。彼女は代わり、という訳ではないけれど、世界樹まで救済の旅に出る事になったのよ」
「…………コレが?」
「こらヴァルター!人を指差さない!」
先程お嬢様もやってましたけどね。というか、指差しよりも『コレ』扱いの方が酷いです。
「魔力の総量はそんなに大きくないらしいけど、彼女は三属性の魔法を使えるそうなの。そういう意味では聖女より貴重よ?」
「いやあ、それほどでもないですけどねーあははー」
えへん! 敬うがいい!! とか言ってみたいけど、根が小心なので、取り敢えずへらへらと笑っておく。
「身分としては平民だけど、今回に限っては宰相様の保証もあるから、あなたが不遜な態度をとっていい相手ではないの。わかった?」
「いや、別に普通の態度で十分ですけど」
別にお嬢様のお世話をとりあげようなんてこれっぽっちも思ってないし。私自身が初めての旅でいっぱいいっぱいだしね。……ああ、なんか前世で大学受験の為に都会に出て来て、右往左往した時の事を思い出しちゃったよ。あれは心細かった……
「……す」
「ん?」
いまや断片的にしか思い出せない前世に思い馳せていると、何やらヴァルターさんが呟いた。見るとヴァルターさんが俯いて肩を震わせている。
「どしました?」
「す……すみませんでしたぁぁ!!」
「うわっ!!」
当然ヴァルターさんが叫んだと思ったらすくっと立ち上がり、そのまま私の前までジャンピング土下座で飛んできた。び、ひっくりした……
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