世界樹の下で

瀬織董李

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そろそろ旅立…てない?①

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 ひと騒動あってやっと出立!……とはならないのは何故だ!誰のせいだ!……わ、私のせいじゃないも……ん。うう。

「ハ~イ!」

 何で居るんですかアリスト様……。

 カシェ君の荷物も載せ、今度こそ出発、となった時点でまたしても足止め。王宮を囲む城壁を越えた所まで進んだところで現れたのは、呑気に手を振るアリスト様。何故かその後ろには荷馬車が。ビミョーに嫌な予感がするんですが。

「いやだ、随分と遅かったじゃない。待ちくたびれちゃったわ」

「しょうがないじゃないですか。色々とあったんですよ……ってアリスト様はどうしたんですか?」

「あら? 殿下に聞いてないの? アタシもついていくのよ」

「はぁぁぁっ!? 聞いてませんよ!!」

 つい昨日、着替えの用意持ってきてくれた時はなんにも言ってなかったじゃないですか!!

 アリスト様はニヤニヤと笑いながら腕を組んで荷馬車にもたれかかっている。……絶対これは確信犯だな。くそう、旅装束も小洒落てるなあ。見た目オネェだけどイケメンではあるしね。

「聞かないでおこうと思ったけど、やっぱりヴェルちゃんが何処行くのかスゴく気になってね。調べて貰ったらなんと世界樹まで旅するって言うじゃない! これは絶対のっからなきゃ!って思ったワケよ」

 もともとアリスト様自身貴族だし、アリスト様が直接対応してる顧客はみんなお貴族様だ。宰相様でも殿下にでも、話が出来るくらいのツテはありそうだ。でもなんで世界樹?

「あら、ヴェルちゃんは知らないのね。虹色絹セタ・イリデの事」

「……セタ?」

 えと、確かセタって絹の事だっけ? 庶民にはかけらも縁が無いから気にもしたこと無かったけど、それと世界樹となんの関係が?

 あんまり興味が無いのでアリスト様の説明はざっと聞いただけだけど、虹色絹とは世界樹の町ガオケレナの特産らしい。普通絹はカイコの繭からとる。それは虹色絹でも同じ。では何が違うのか、といえば餌が違うそうだ。普通の絹の場合は桑の葉っぱを食べさせるのだが、虹色絹の場合、なんと世界樹の葉っぱを食べさせて作らせるらしい。

 昔ちょっとやったことある某ゲームじゃ、世界樹の葉で人を生き返らせれたけど、この世界では死んだ人間を蘇生させるのは魔法でも無理だ。世界樹の葉自体も昔どっかの魔導士が研究したらしいけど、特に目立った薬効とかもなくてポーションの材料にすらならなかったそうだ。

 それなのに何故か誰かがたまたまカイコに食わせてみたら、桑よりモリモリ食うわ、普通よりももっとキラキラした、それ自体が発光してんじゃね?くらいの綺麗な絹がとれるわで、大騒ぎになったそうだ。

 当たり前だが、世界樹の葉を食べさせなければ虹色絹はとれない。つまり余所で同じことは出来ないのだ。かくして虹色絹はガオケレナの特産としてぼったくり価格で各国に売られるようになったらしい。
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