世界樹の下で

瀬織董李

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旅立…てない?①

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 そしていよいよ出立、という時になってまたしてもトラブル発生。いや、トラブルというか……

「たび、いく」

「……えっと、カシェ君も一緒に付いていきたい、って事?」

 慌ただしく用意をしていた中、突然頭に猫ちゃん乗っけたカシェ君が現れ、一緒に行きたいと言い出したのだ。私の問いにこくりと頷く彼に、内心身悶える。おかしい!私はショタフェチじゃなかった筈なのに!

「え、っと、私達ずーっと遠くまで行くのよ?一年くらい帰って来れないんだけど」

「みたい。せかいじゅ。シャルムのかわり」

 ……ネクラ君の代わり?

「殿下。カシェ君て弟君の事知ってる……んですか?」

「うん。魔導師長から話があった筈だ」

 そうかー。弟君がヒドイン聖女様の毒牙にかかって病死になる予定なの聞いてるのか。理解は出来てるのよね?

「彼は言葉は覚束ないけれど、知識や常識に問題は無いね。シャルムが何をしたのかもちゃんと理解している筈だ。じゃないと塔で研究は出来ないからね。まあ、たまに暴走するヤツは居るけど」

 なるほど。誰とは言わないけど、目の前に一人居る気がする。

「カシェの中でシャルムの事がどう折り合いついたのかはわからない。その事で落ち込んでいたようだしね。ただ、シャルムと魔導師長以外でここまで彼が懐いた人間は居ないと思うよ? その彼が行きたいと言うんならいいんじゃない? 僕はね」

 私が着ている薄手のケープの端を握って、殿下の話を恐る恐る聞いている様子は、前世で小学生だった時学校で飼ってたウサギを思い出す。女友達の腕の中だと大人しいのに、乱暴者の男の子が手を出そうとすると、隅に逃げてびくびくしてたっけ。

「殿下がいいとしても、その魔導師長さん?がなんていうか。カシェ君許可取った?」

 魔導士というくくりでは殿下はあくまで塔の一員。最高責任者の許可がないと連れていけない。あの塔でのカシェ君の存在がどんなものかはわからないけど、黒いローブ着てるくらいだからそこそこ重要人物なんじゃないかと思う。光魔法は光るだけだけど、何か大事な研究してるとかありそう。

 私の問いかけに、一瞬ビクッとなったカシェ君は黙って下を向いてしまった。……こりゃ許可取ってないわねえ。

「どーします殿下?」

 ここでぐだぐだしてたら、いつ出発出来るかわからない。こういう時はやっぱりお偉いさんに丸投げが一番!

「行きたかったら行ってもええぞ?」

「ひゃっ!?」

 今、お尻に何か感触が!?

「おおええのお、ええのお。安産型じゃな。安泰ですの殿下」

「セクハラー!!」

 会社勤めしてた時、電車で時々あった痴漢に触られた時を思い出しちゃったよ!!
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