世界樹の下で

瀬織董李

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お久し振りですオネェ様②

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 王都にやってきて結構経つけど、洒落たカフェとか来たこと無かったなあ。大抵買い物は作業着用の生地か目新しい野菜苗、あとは屋台で買い食いくらいだったし。生まれ変わっても枯れてるなあ。まだ十代なんだけど。

「それで? どうして王都に?」

 適当に飲み物頼んで落ち着いたところでアリスト様が切り出した。特に隠すことも無いので、農婦として農園で働いている事を話す。

「なるほどね。アタシみたいな下級貴族は王宮に上がる事もほとんど無いし、知らなかったわ」

 まあ、私の日常はほぼ寮と農園と厨房の行き来のみだからねー。今日偶然会ったのも確率からいったらかなり低いだろう。なんせ今をときめく商会の会頭様だし。そもそもアリスト商会の主力商品は服地と服飾だ。農業関係は文字通り畑違い。ていうか、その会頭様がこんなところでのんびりお茶してても大丈夫なん?

「大丈夫よ。今日は商談が急にキャンセルになったから、市場調査名目でブラブラしてただけだし。にしても、ホントに変わってないわねえ。その野暮ったい服装もぽやんとした顔も平凡な髪型も。今日は服見てたみたいだけどやっとオシャレに目覚めた?」

 私の上から下までをゆっくり見ながらアリスト様はくすくすと笑う。失礼な!平凡は私のアイデンティティーです!自慢になんないけど!

「いや、それはほっといて下さい。服は確かに見てたけどオシャレというよりは必要に迫られてなんで」

「必要?何かパーティーにでも出るワケ?まさか王宮のじゃないでしょうね?」

 いや、流石に農婦が王宮のパーティーに呼ばれる事ないし、そもそもパーティーに出る服装を下町の古着屋で探すわけないっしょ。

「それならいいんだけど。じゃあなんで必要なワケ?」

 どうしたんだろ。いつにもましてぐいぐい来るなあ。久しぶりだけど、こんな人だったかな? まあお貴族様な上に商人として社交界と言う名の魔界に生きてる人だし、情報をお金に出来る錬金術師でもあるしなあ。

 ただ、私が世界樹まで旅に出る、ってのはやっぱり話したら不味いよねえ。何せ公称水魔法使いなんで。カシェ君には回復魔法使ってるとこ見せたからいいけど、この人は知らないしね。それこそ『なんで?なんで?』ってしつこく質問されそう。

「まあ、私にも色々とある、という事で」

 カシェ君はその点素直で良かったなあ。ないしょ、で納得してくれたし。

「……今誰かと比べてアタシをけなさなかった?」

「……いえー?そんなことアリマセンヨー?」

 商人の勘てコワイ……
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