世界樹の下で

瀬織董李

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おじゃましまーす②

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 僅かに感じる浮遊感が止まり、扉が開くとそこはもう部屋だった。って事は一人ワンフロア?

 ここに居る魔導士が何人なのか知らないけど、もしホントに一人ワンフロアなら、塔の高さから考えたら10人くらいしか住めないんじゃないかと思うので、空間伸長の魔法とか使ってるのかもしれない。つくづく魔導の粋を集めた建造物なのね。

 にゃー

 部屋の中に入ると、すぐ足元で猫の鳴き声がした。をを!もう歩いてこれるくらい元気になったのね。すりすりと私の足にすり寄る姿は、普通の猫と変わらない。使い魔といえど、主人以外とは意思の疎通は出来ないらしいしね。抱っこしていいかカシェ君に聞くと頷いたので、そっと前足に手を入れ抱っこしてみる。うう!久々の猫の匂ぃぃ。

 う。猫ちゃん威嚇しながら前足顔に押し付けないで……嬉しいから。にくきゅう……いや、カシェ君不思議そうな顔で見ないで…ちょっとおねえさん心が痛いわ。

 カシェ君が手招きするので、猫ちゃんを抱っこしたまま向かう。椅子を勧められたので座ると、カシェ君は隣の部屋へ向かい、すぐに戻ってきた。

「おれい。あげる」

「わっ。綺麗……」

 カシェ君が差し出したのは細い銀色のブレスレットだった。所々に変わった模様が入ってて、良く見ると裏側には何か文字っぽいものががびっしり彫り込んである。そして親指の爪くらいの魔石が嵌められている。

「つくった。ライト」

「ライト」

 もしかして魔石ライトかしらん。そういえばカシェ君の属性は光だっけ。私が光魔法使えるの知らないか。聖と水しか見せてなかったから。

「よる、くらい。ライト、いる」

 カシェ君の説明によると、腕に嵌めた状態で『ライト』と唱えると魔石の部分が光るそうだ。動力は魔石に込められた魔力で、なんと昼間日の光に当てておくと蓄光出来るらしい。

 ソーラー内臓!エコロジー!

 今一般的に売られている魔石ライトは、使い捨ての魔石を交換する前世で言う乾電池式だから、買ったりしたら高いものなのだろう。

「ありがとう。もうすぐ旅に出るからその時使わせてもらうね」

「たび?」

 うーん、ネクラ君の事があるから説明しづらいなあ。まあ、変に隠す必要ないので、そのまま説明した。

「昨日見た通り、私は聖魔法が使えるので宰相様から世界樹の所まで行ってこい、って言われてるの。大した魔力でもないから直ぐに帰ってくると思うけど」

 ヒドイン聖女様達と違って、ゲームみたいに旅するなら、野宿も必要だろうしね。取り敢えず何人で行くのかわかんないけど、バレる人数は少ない方がいい。ライトはありがたく使わせてもらおう。

 ええもんもろたー、と猫ちゃん撫でながら喜んでいた私は、カシェ君が何か考え込んでいるのにはまったく気付いていなかった。   
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