世界樹の下で

瀬織董李

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おじゃましまーす①

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「こんにちは。猫ちゃんの具合どう?」

 キラキ……いや、カシェ君だったっけ。お互い名乗りをあげた訳じゃないけど、心の中だけとはいえ変な渾名でいつまでも呼ぶのは可哀想か。

「にゃんこ。たべた」

 ……一瞬マジでビックリした。猫鍋にして食べたのかと…猫が餌を・・食べたのね。食べれる元気が出たなら、なんとか回復できるかな?見たところ傷だけだったし。内臓までイッちゃってたら私の聖魔法では無理だからなあ。

「にゃんこ。つかいま。ありがとう」

 あら、単に怪我してるのを見つけただけなのかと思いきや、あの猫この人の使い魔だったのか。

 魔導士と呼べる程魔力の強い人は、自分の魔力を分け与えることによって使役する使い魔を有している事が多い。この世界の場合の使い魔は精霊とか妖精とか悪魔とかでは無くて、ごく普通に存在する生き物と契約して使い魔とするんだそうだ。なので大抵猫か鳥が多い様だ。

「おれいする。きて」

 そういってカシェ君が私の手を取る。おおおっ、家族以外で男の人に手を握られたの初めてっ!?もしかしてラブイベント!?

 ……なんて内心一人で盛り上がってみたけど、そんなわけ無いか。ははは、わかってたけど言ってみただけさー。

 カシェ君はまったく人の目を気にする様子もなく、王宮の敷地をずんずん進んでいく。途中侍女さんやメイドさんが目を丸くして見てくるのはなんでだろう、って手を繋いでるからか。すんません、風紀を乱してる訳じゃないんですぅー。

 一体何処へ向かうんだろう、帰りまた迷いそうとか思いながらついていくと、カシェ君はとある建物の前で立ち止まった。建物、というか塔?

 もしやこれが世に聞く魔導士の『塔』なのかな。窓どころか入り口すらないように見えるけど。

 カシェ君は手をそっと離し、目を閉じると何事か呟き始めた。すると、目の前にさっきまでは無かった扉が現れる。なるほど、空間属性魔法か。空間属性はかなり使い手が少ないって言うから、多分あらかじめ設置してある魔導具を魔力と呪文をキーにして発動するタイプかな。

「はいって」

 えっ!?いいのかな部外者よ私。カシェ君に聞くとこくん、と頷く。いいらしい。

「お、おじゃましまーす……」

 おそるおそる扉の中へ足を踏み入れる。予想に反してそこは広いホールの様だった。中央正面に扉、そのすぐ横に何か操作盤の様なものがある。他にはなんにもない。もしかしてエレベーターホールなのかな。

 予想した通り…と言っていいのかな。なにやら操作盤?にカシェ君が手を当てると、扉が開く。二人して乗り込むと、微かに魔力が動く気配がする。これも空間属性魔法なんだろう。昔の技術だろうから、今壊れたらどーすんのかな。私が心配してもどうしようもないけど。
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