世界樹の下で

瀬織董李

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二度目の転機①

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「……というのが、顛末だ」

「……はぁ」

 ていうか、なんで私がこんなとこに呼ばれて、聖女騒動の顛末聞かされてるんだろ。

 聖女様が追い出される様に出立してから、たった半年で帰ってきたと噂話で聞いた翌日。いつもの様に畑仕事に邁進していた私は、何故か突然宰相様の呼び出しを受けた。

 王宮へやって来た時だって面談したの大臣さんだったのに、宰相様なんて国の最高家臣でしょ?まるで呼び出される心当たりがない。なにかヘマやってクビとか?だとしてもそれをわざわざ宰相様から宣告される筋合いないしなあ。私が転生者だっていうのは、誰にも、親や兄弟にだって話したことないし。

 ビクビクしながらメイドさんの案内で執務室へ向かい、部屋を警護する騎士さんに名前を告げると中へ通され、いつぞやを彷彿させる高級っぽいソファで待つこと暫し。現れた宰相様は予想よりも随分と若かった。

 なんでも、聖女騒動で聖女様の取り巻きだった子息達の父親が引責辞任したらしく、宰相位は副宰相様が昇格したんだそうだ。

「聖女はただその場に居れば良いという訳ではない。こちらの勝手で世界を救えと異界から見知らぬ地へたった一人で召還された、年端もいかぬ少女のその心細さを思えば、と望むものを望むだけ与えたが、あの聖女の欲は止まるところを知らなかった。なにせこの一年で国家予算に匹敵する金が、聖女の為に消えたからな。世界樹を救えるのなら、と我慢もしたが、何もせずに利益だけ享受するなら聖女などいても害悪にしかならない。教会からは反対の声もあったが、これは神の試練だ、と適当な理由を付けて放逐したという訳だ」

 ぐえ。なにやってんの聖女様。

「で、でも帰って来たんですよね?聖女様達」

「ああ。だが、帰ってきた、というのは間違いだ。旅の資金にと渡した、贅沢せねば六人で一月は保つ金子をあっという間に使い果たし、どうにもこうにもいかなくなった奴らが選んだのは、旅人を襲って金品を奪う野盗に成り下がる事だったからな」

「は、はあぁっ!?」

 いや、ホントマジでなにやってんの聖女様と攻略対象達。

「なにせ奴らは順当ならば国の要職に付けるだけの実力はあったからな。魔法を使ってくる少人数の野盗が出ると商人ギルドから訴えがあり、ならばと騎士団を出動させて捕らえてみれば、奴らだったという訳だ。この国では野盗は基本極刑。多額の保釈金を納めた場合にのみ減刑もあり得るが、恐らく皆除籍されているだろうから、そのまま刑が執行されるだろうな」

 あーあ。乙女ゲーム台無しじゃん。誰がそんなストーリー喜ぶのよ。やっぱりここがゲームの世界そのものだと思ってたのかな?なんでも、何をやってもやらなくても自分の思い通りになる、って。

「でも、何故帰ってきた事に?」

 そのまま行方不明にしとけば良かったんじゃないのかな?後腐れないし。

「確かに出来ればそうするのが最善なのだろうが、行方不明のまま次を行かせる訳に行かないからな。聖女が旅に出ているのに何故、と教会が騒ぎそうだ。騎士団に箝口令を敷き、奴らは捕らえたのではなく、旅の途中で野盗に捕まっていた所を救出、そのまま役目を放棄し騎士団と共に帰還した事にした。まあ、今後奴らは順当に病死、聖女は教会で生涯奉仕タダ働きだな」

 ……oh……超絶嫌な予感。

「えと、それって私が聞いても大丈夫な話……ですよね?」

「いや?不味い話だな」

 ニヤリ、と宰相様は意地の悪い笑みを浮かべた。
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