9 / 51
一度目の転機②
しおりを挟む
転機は馬車でやって来た。
「ここに非常に美味な作物を作る者がいると聞いたが」
王都からやって来たお役人は、突然やって来てへこへこする村長に、そう言ったそうだ。
私は自分に任された畑でのんびりと野菜を育てていたのだが、これこそ私の望んだ願い!自重?なにそれ美味しくない、と精根込めまくったばかりに私が関わった作物は非常に出来が良かったらしい。家族も絶賛してくれ、出荷先の王都でもたいそう評判良かったのだそうだ。調子に乗った私は水以外の魔法もこっそり駆使して土壌改良やら品種改良やらいそしんでいた。どうもその結果、王城の食料を管轄するお役人の目に止まったらしい。
「はぁっ!?ヴェルティアを王室専用畑の農婦に!?」
とんでもないことになったと、村は大騒ぎになった。なんでも王様の口に入る食べ物を作る為の専用の畑があって、私にそこで作物を作れと言う。ふーん、王様ともなると専用の畑とかあるのねー、とその時はのんびり構えていた私は、断る気満々だった。だって面倒臭いもん。
それなのに私が今、王城外の農地で農婦してるのは、簡単に言うなら家族…いや、村に売られたからだ。売られた、といってもまあそこまで悲愴な感じではないけど、こんな田舎の村で暮らすよりも王都で仕事すりゃもっと贅沢できるよ!と押しきられた。
別に贅沢したい訳じゃないし、どちらかといえば私は定年退職したサラリーマンが都会に疲れて田舎暮らしをする感覚なのだ。その辺りは分かって貰えないだろう。行きたくないと散々駄々を捏ねたが、聞き入れて貰えなかった。
仕方ないな、とは思う。私は知っている。支度金として結構な額のお金をお役人が置いてったのを。豊かとは言え田舎だ。全体的にここ数年少しずつだが、気候が良くない日が多く、作物の生育が段々と悪くなっている気がする。いざというときの蓄えが欲しいのだろう。なので仕方がないとはわかっててもなんかちょっと悔しいので、贅沢してちょっとだけいい余所行きのワンピース仕立ててやったぜ!(小心者)
渋々生まれて初めて屋根のある馬車に乗せられてドナドナされた私は、これまた初めて王都に足を踏み入れた。っていうか踏み入れたのは車輪だけど。
「……人……思ったより少ないな」
窓から歩く人を見てボソッと呟いたら、連れてき役人が、なんだコイツ?田舎者の癖に、みたいな顔で見てくる。自分でも言ってからあれ?と思ったけど、あとで良く考えたら、私は都会と聞いて前世のあの戦場(新宿とか渋谷とか)と比較していたのかも知れない。そりゃ少ないわ。
大通りらしき舗装された道を、粛々と進んだ馬車が止まり、降りた目の前の景色には流石に田舎のお上りさんよろしく声を上げてしまった。
「わーーーーっ!宮殿だ!!」
お役人が、何言ってんのコイツ?当たり前だろ、みたいな顔で見てくる。しょうがないじゃん。ヨーロッパ的な宮殿なんて海外旅行したこと無いから写真でしか見たこと無かったんだもん。見たことあるのは精々が銭の国の城くらいだわ。
「ここに非常に美味な作物を作る者がいると聞いたが」
王都からやって来たお役人は、突然やって来てへこへこする村長に、そう言ったそうだ。
私は自分に任された畑でのんびりと野菜を育てていたのだが、これこそ私の望んだ願い!自重?なにそれ美味しくない、と精根込めまくったばかりに私が関わった作物は非常に出来が良かったらしい。家族も絶賛してくれ、出荷先の王都でもたいそう評判良かったのだそうだ。調子に乗った私は水以外の魔法もこっそり駆使して土壌改良やら品種改良やらいそしんでいた。どうもその結果、王城の食料を管轄するお役人の目に止まったらしい。
「はぁっ!?ヴェルティアを王室専用畑の農婦に!?」
とんでもないことになったと、村は大騒ぎになった。なんでも王様の口に入る食べ物を作る為の専用の畑があって、私にそこで作物を作れと言う。ふーん、王様ともなると専用の畑とかあるのねー、とその時はのんびり構えていた私は、断る気満々だった。だって面倒臭いもん。
それなのに私が今、王城外の農地で農婦してるのは、簡単に言うなら家族…いや、村に売られたからだ。売られた、といってもまあそこまで悲愴な感じではないけど、こんな田舎の村で暮らすよりも王都で仕事すりゃもっと贅沢できるよ!と押しきられた。
別に贅沢したい訳じゃないし、どちらかといえば私は定年退職したサラリーマンが都会に疲れて田舎暮らしをする感覚なのだ。その辺りは分かって貰えないだろう。行きたくないと散々駄々を捏ねたが、聞き入れて貰えなかった。
仕方ないな、とは思う。私は知っている。支度金として結構な額のお金をお役人が置いてったのを。豊かとは言え田舎だ。全体的にここ数年少しずつだが、気候が良くない日が多く、作物の生育が段々と悪くなっている気がする。いざというときの蓄えが欲しいのだろう。なので仕方がないとはわかっててもなんかちょっと悔しいので、贅沢してちょっとだけいい余所行きのワンピース仕立ててやったぜ!(小心者)
渋々生まれて初めて屋根のある馬車に乗せられてドナドナされた私は、これまた初めて王都に足を踏み入れた。っていうか踏み入れたのは車輪だけど。
「……人……思ったより少ないな」
窓から歩く人を見てボソッと呟いたら、連れてき役人が、なんだコイツ?田舎者の癖に、みたいな顔で見てくる。自分でも言ってからあれ?と思ったけど、あとで良く考えたら、私は都会と聞いて前世のあの戦場(新宿とか渋谷とか)と比較していたのかも知れない。そりゃ少ないわ。
大通りらしき舗装された道を、粛々と進んだ馬車が止まり、降りた目の前の景色には流石に田舎のお上りさんよろしく声を上げてしまった。
「わーーーーっ!宮殿だ!!」
お役人が、何言ってんのコイツ?当たり前だろ、みたいな顔で見てくる。しょうがないじゃん。ヨーロッパ的な宮殿なんて海外旅行したこと無いから写真でしか見たこと無かったんだもん。見たことあるのは精々が銭の国の城くらいだわ。
1
お気に入りに追加
788
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる