世界樹の下で

瀬織董李

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転生前②

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「……は?」

 いや、私が倒れた時って、周りにゴルフの練習するようなとこ無かったと思うけど。何せ駅に向かう途中の大通りで、住宅地ですら無いし。直撃して脳挫傷するなんてフルスイングでもしてなけりゃあり得ないけど。

「そうですね。普通ではあり得ません。何せコレは神界で行われた神々のゴルフコンペで、死ぬ程下手なとある神が打った、OBボールですから。下手な癖に力があり余ってる所為で、OB過ぎて界を越えて地上にまで落ちてしまう程の下手さ加減です」

 下手って三回言った。……ていうか、世界観についてけないけど。ゴルフコンペて……神様がゴルフしてるとこ想像……いや、無理だ。私の想像力の限界越えてる。

「当然ですが、貴女はあの場で死ぬ予定はありませんでした。なので、下手の横好きの犯人…犯神?が責任を取ることとなりました」

 なんか恨みでもあるのかな、また下手って言ってる。  もしかしてこの人その神様の部下とか?それじゃこの人天使様なのね。んでいつも面倒押し付けられてるとか?

「……そうです。あのクソ神、いつもいつも私に面倒事押し付けるんですよ。…って、コホン。そんなことは今は関係ありません。責任の内容です。貴女の世界の神との協議結果、貴女の世界で流行っているらしい異世界転生というのを特典を付けてしていただく事となりました」

「え、でもそれって異世界ってことは私の転生?先って私を殺した神様のトコってことよね?」

 ヤだなあ。神様ってことは、その世界では信仰の対象でしょ?自分を殺した神様を敬わなければいけないのはちょっとなあ……

「その辺は割りきってもらうしか無いですね。それでですね、転生特典として三つまでなんでも願いを叶えられる事となりました。普通ではあり得ない願いでもOKですよ?勇者でも聖女でも王女でも賢者でも問題ありませんし、ドラゴンになって世界を蹂躙したいとかでも構いません。まあ、転生後どうなるかはまでは関知しませんが」

 昔どっかで読んだラノベみたいな展開ね。うーん、願いかー。

 うーん、うーんと悩んでいると、天使様はいつの間にか自分でお茶を淹れてた。……うわ、やっぱり似合わない。

「放っておいて下さい。で、決まりましたか?」

「流石にこの短時間で次の一生を決められませんよ。取り敢えずいくつか質問していいですか?」

 まず、一番肝心なのは、生き返ったりは出来ないのかと言うこと。まだ結婚してないし、彼氏も(今は)居ないけど、実家には両親と兄が居るし、こっちに出てきてからの友人も居る。彼らとの絆をいきなり断ち切って、心置きなく転生出来るほど前向きになれない。

「申し訳ありませんが、それは出来かねます。死んだ人間の時間軸を曲げて蘇生するのは、神々でも無理なのです」

 天使様曰く、昔自分のお気に入りの人間をバンバン生き返らせた女神様が居たらしい。その為に死んでも生き返るからと、随分と傍若無人に振る舞った所為で、その世界が消滅してしまった事があったらしい。

「神が自分の管理する世界を自分勝手で消滅させてしまうなどあってはならない事。それ以降は生き物の蘇生は規約として不可になりました」

「生き返るのは無理なのわかったけど、転生はいいの?この場合特典付けるってことは記憶持ちよね?」

 私はなんも知らない一般人だけど、記憶持ったまま転生って事は、私が例えば兵器に物凄く詳しかったり、薬に詳しかったりして、その知識で世界が混乱したりする可能性だってあるわよね?その上なんでも願いを叶えられるのなら、その材料とかの持ち込みも出来るだろうし。たしか材料さえ手に入れば原子爆弾だって高校生レベルの科学知識で作れるって聞いた。

「思った以上に貴女は聡いですね。まあ、ぶっちゃけて言うなら、それはうっかりで異界の人間を殺してしまった神に対するペナルティです。どうやら貴女はそういうタイプでは無いようで、心から安心しました。事後処理は多分私がすることになると思うので」

 疲れたように天使様が呟く。マジで上司で苦労してるのね。
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