転生伯爵令嬢は電気洗濯機の夢を見るか

瀬織董李

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8.どゆこと?

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 そんな義兄の手を借りて馬車から降りると、囁くような声があちこちから聞こえた。誰、とか何で、とか言ってるみたいだ。帰省していた上級生なのかな。……そうか。忘れてたけど義兄はそれなりのイケメンだったわ。しかも中堅伯爵家の嫡男。領地は目立った特産が無いし十数年前に一度大きく傾いた事があったらしいけど、今ではV字回復してそれなりに裕福。その上婚約者無し、小姑は居るけど姑無し。真ん中ら辺てのは上からも下からも狙いやすいからね。婚約者を探してるハンターのお姉様方にとっては極上の獲物なんだろう。

 ……どうしよう。どう考えても妬まれるシチュエーションだよなあ。しかも義兄あにって呼ぶなって言われちゃったし。まあ絡まれてから異腹妹だと言っとけばいいか。うーん、面倒臭いな。

 そんな事を考えながら義兄の後について歩く。ここでもし腕を組んで歩く、なんて事になってたらヤバかったけど、馬車を降りたら手は離されてたのでそれは問題ない。こういう時兄妹の距離感がどうなのか、前世では男兄弟いなかった様な気がするのでよくわかんないけど、隣に立って歩くのかそれとも今みたいに後ろを歩くのが正解なのか……

「着いたぞ」

 おっとっと。義兄が突然足を止めたので、つんのめりそうになった。正門をくぐった先にある馬車だまりから歩いて約五分。見上げると薄い色の煉瓦造りのおっしゃれ~な感じな館が目の前にある。校舎を挟んで両側にそれぞれ男子女子の寮がある様だ。

「ここが女子寮だ。当然私は入れんからここまでだ。後は自分で何とかしろ。……ん? なんだ?」

 優しいんだか冷たいんだかわからんセリフを残して義兄が立ち去ろうとするのを、慌てて引き止めた。いやいくらなんでもお礼ぐらい言わせてよ。一応学校まで一緒に来てくれて案内もしてくれたみたいだし。

 ありがとう、とそしてものすっごく言いづらかったけどなんとかどもりながらも、これから一年よろしくお願いしますアルヴィン様、と言うと義兄は一瞬ポカンと口を開け見たことない顔をした後、急に口元に手を当ててバッと後ろに振り向いた。ん?

「……い、いや礼を言われる程の事はしていない。と、とにかく何かあったら私の所へ来い。わかったな」

 そんな義兄の様子に、自分で呼べって言っといたクセに呼んだら怒ったのか? と一瞬思ったが、後ろを向いて話す義兄の耳が赤くなってる気がする。………………え、まさか照れてる?? どゆこと??

 頭の中疑問符いっぱいで義兄を見送った私は、周りから飛んでくる不躾な視線にチクチク刺されながら寮に足を踏み入れたのだった。
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