2 / 10
2.なんで今頃?
しおりを挟む
母さんが元々働きに出ないといけなかったのは、男爵が後妻に迎えた女がとんでもない浪費家で、家を傾けた為だったらしい。男爵は後妻に頭が上がらず、前妻の娘であった母さんは追い出されるように奉公に出ていたのだそうだ。うーん、母さんには女難の相でもあったのかな。多分返事は勝手にその後妻が出したんだろう。母さんは帰るところを無くしてしまった。
そんな中、行くところがないならうちで働けばいいよと言ってくれたのがこの宿の女将さんだった。女将さんも丁度二人目の子供を産んだばかりで、母さんが子供産んだら一緒に面倒見てあげるからキリキリ働きな! と冗談めかして母さんを励ましたそうだ。
ここは王都から三つくらい離れた街にある女将さんの亡くなったご両親が始めた宿で、女将さんの旦那さん……親父さんは冒険者ギルドの受付をしていて昼間は居ない。従業員は子守兼で働いていた通いのマーサねえさん一人だけだったから、繁盛期は隅まで手が回らない事も度々あったようで、泊まっている間に母さんの為人をみて働いてもらっても大丈夫だろうと判断したのだろう。客商売なのに客の荷物に手を出すような人間は雇えないからね。
ここで私は産まれた。母さん女将さんマーサねえさんの三人に面倒見てもらいながら育った。マーサねえさんが結婚して出ていき、 悲しいことに二年前母さんが感冒を拗らせ呆気なく死んでしまったけれど、女将さんの息子二人と一緒に宿の仕事を手伝いながら今に至るという訳だ。父親の事が気にならなかった事も無いけど、礼儀作法に厳しかった母さんの様子から、もしかして父親も貴族のなのかなあと、それなのに母一人下町で働くなんて訳アリなんだろうなあ、と空気を読んで詳しく聞いたことは無かった。伯爵様の庶子だとは思わなかったけど。
そして、私が十三歳になった今何故父親が迎えに来たのかというと、正妻が居なくなったからだそうだ。子供の前だからとぼかして話してくれたけど、まあぶっちゃけ不貞を理由に離縁したからの様だ。
後から詳しく聞いた話によると、正妻は娘と息子の二人を儲けたので義務は果たしたと若い愛人を囲っていたんだそうだ。格上が実家だし自分も不貞を犯してるせいで父親は何も言えなかったらしいのだが、ある時正妻の一番のお気に入りになった愛人が、なんととある公爵令嬢の婚約者だったとかで、婚約破棄騒動に巻き込まれ余波でガッツリ慰謝料を請求されたのだそうだ。
格上の公爵家に睨まれたら敵わんと、不承不承の体裁内心は狂喜乱舞で離縁し、実家に追い返したそうだ。ただ、恐ろしいのが一緒に娘も追い出されたらしい事だ。なんと母親と一緒になって愛人と淫らな関係になってたらしい。マジで倫理観どうなってんの? 貴族ではよくある事なの? と聞いたら凄まじい勢いで否定されたから、単に母娘が貞淑じゃ無かっただけの様だ。
そんな中、行くところがないならうちで働けばいいよと言ってくれたのがこの宿の女将さんだった。女将さんも丁度二人目の子供を産んだばかりで、母さんが子供産んだら一緒に面倒見てあげるからキリキリ働きな! と冗談めかして母さんを励ましたそうだ。
ここは王都から三つくらい離れた街にある女将さんの亡くなったご両親が始めた宿で、女将さんの旦那さん……親父さんは冒険者ギルドの受付をしていて昼間は居ない。従業員は子守兼で働いていた通いのマーサねえさん一人だけだったから、繁盛期は隅まで手が回らない事も度々あったようで、泊まっている間に母さんの為人をみて働いてもらっても大丈夫だろうと判断したのだろう。客商売なのに客の荷物に手を出すような人間は雇えないからね。
ここで私は産まれた。母さん女将さんマーサねえさんの三人に面倒見てもらいながら育った。マーサねえさんが結婚して出ていき、 悲しいことに二年前母さんが感冒を拗らせ呆気なく死んでしまったけれど、女将さんの息子二人と一緒に宿の仕事を手伝いながら今に至るという訳だ。父親の事が気にならなかった事も無いけど、礼儀作法に厳しかった母さんの様子から、もしかして父親も貴族のなのかなあと、それなのに母一人下町で働くなんて訳アリなんだろうなあ、と空気を読んで詳しく聞いたことは無かった。伯爵様の庶子だとは思わなかったけど。
そして、私が十三歳になった今何故父親が迎えに来たのかというと、正妻が居なくなったからだそうだ。子供の前だからとぼかして話してくれたけど、まあぶっちゃけ不貞を理由に離縁したからの様だ。
後から詳しく聞いた話によると、正妻は娘と息子の二人を儲けたので義務は果たしたと若い愛人を囲っていたんだそうだ。格上が実家だし自分も不貞を犯してるせいで父親は何も言えなかったらしいのだが、ある時正妻の一番のお気に入りになった愛人が、なんととある公爵令嬢の婚約者だったとかで、婚約破棄騒動に巻き込まれ余波でガッツリ慰謝料を請求されたのだそうだ。
格上の公爵家に睨まれたら敵わんと、不承不承の体裁内心は狂喜乱舞で離縁し、実家に追い返したそうだ。ただ、恐ろしいのが一緒に娘も追い出されたらしい事だ。なんと母親と一緒になって愛人と淫らな関係になってたらしい。マジで倫理観どうなってんの? 貴族ではよくある事なの? と聞いたら凄まじい勢いで否定されたから、単に母娘が貞淑じゃ無かっただけの様だ。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中

【完結】乙女ゲームのヒロインに転生したけどゲームが始まらないんですけど
七地潮
恋愛
薄ら思い出したのだけど、どうやら乙女ゲームのヒロインに転生した様だ。
あるあるなピンクの髪、男爵家の庶子、光魔法に目覚めて、学園生活へ。
そこで出会う攻略対象にチヤホヤされたい!と思うのに、ゲームが始まってくれないんですけど?
毎回視点が変わります。
一話の長さもそれぞれです。
なろうにも掲載していて、最終話だけ別バージョンとなります。
最終話以外は全く同じ話です。


この異世界転生の結末は
冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。
一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう?
※「小説家になろう」にも投稿しています。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

魅了アイテムを使ったヒロインの末路
クラッベ
恋愛
乙女ゲームの世界に主人公として転生したのはいいものの、何故か問題を起こさない悪役令嬢にヤキモキする日々を送っているヒロイン。
何をやっても振り向いてくれない攻略対象達に、ついにヒロインは課金アイテムである「魅惑のコロン」に手を出して…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる