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大地の玉、争奪戦Ⅰ
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自然大国フェリペスにある、パルテナの森と呼ばれる森の一角に、高さ10メートル以上、奥行き5メートル以上の岩山が、数キロにも及び並んでいる、ロックベルトと呼ばれる場所があった。そのロックベルトの岩山の前に、ターバンを巻いた男、バロガンが立っていた。
200cm以上の巨躯を持ちながら、首、腕、胸、背中、脚、 腿などの、筋力を主に使う部位全てが、完成された肉体美。あまりにも完璧過ぎる筋肉の付き方は、見る者全てを魅了してしまうのではないだろうか? 夜中に歩いていれば、それこそ魔物と誤解するのではないのだろうか?
そんな、バロガンは太い眉と、二重の柔らかい目が印象的。褐色肌とは対照的に、笑ったときの白い歯が目立つ。上半身は衣服を着ていないが、下半身はデニム生地のパンツを履いている。
ふう――と深呼吸し、目の前に聳え立つ岩山を見上げる。
そして、右の拳を握り、左手は岩山に向かって、握るような手の形を取った。
刹那、獣の雄叫びのような気合いの声は森全体に響き渡る。その後、右の拳を突き出すと、目の前の巨大な岩山は粉々に砕けてしまった。
「流石師匠! お見事です!」
そう話しながら、森から出てきたのは、右手には2メートル程の巨大な魚を、左手には桶に入った水を持つ、十にも満たない茶髪の少年だった。
「今日も大量だな。よくやったぞアドラー」
バロガンがニッと笑みを浮かべると、アドラーは照れ笑いを浮かべていた。
「さあ飯にするか」
バロガンは先程砕いた岩山の、大きめの岩を選んで地面に敷き詰める。その上に、アドラーに魚を置くように首で促す。
その魚を手刀で二つに分けた後、手を翳し発火させた。
「そろそろだな」
しばらくすると、バロガンは二切れの魚に対して息を吹きかけると、程よく焦げ目が付いた魚の丸焼きの完成。
「相変わらず美味そう」
「まあこんな生活を昔からしていると慣れるものだ」
二人はそう言いながら、手を合わせて料理にありつけた。
「って言ってもお昼だけですけどね。朝と晩はちゃんと家に帰って料理作るじゃないですか」
「まあ、趣味ってことだ」
「そもそも師匠が持つ敷地が広すぎるんですよ。ロックベルトがあるこのパルテナの森、全域が敷地なんて――」
「破壊帝を倒したときの世界から貰った報酬だ。まあ、実際倒したのは蒼雷だけどな。森を買えば食料にも住む場所にも困らんだろ?」
「豪快過ぎるんだよな~」
アドラーは体だけではなく、考えることも大きいと再認識した。自然大国と呼ばれるこの国には、海の幸も、森の恵みもあることから、食料に困ることは相当なことが起きないと尽きない。
そして、この国の食料というのも、ホテルや一流の料理屋に出されるものが多く、食材全般が美味で有名であることから、非常に需要が高い。
「アドラー、腕の調子はどうだ?」
バロガンがそう言って指を指したのは、アドラーの右腕。アドラーの体には似つかわしくないほど、屈強な腕は成人男性と同じような太さで、とても十を満たない少年の腕の太さではない。また、爪は黒く、腕の色は赤土色となっており、皮膚と呼ぶより、鉄のような光沢を帯びている。
「今日は特に暴走することはないですね。もう少しでコントロールできそうなんですけど」
「力の使い方は徐々に慣れていけばいいさ」
「蒼雷さんは僕と同じ年で、既に神の瞳を使いこなしていたんですよね?」
「まあそうだな。あいつは元々戦闘センスがいいからな。でも、まだまだ能力は不十分らしい」
「一度会ってみたいな」
「そのうち会えるさ」
そう言うとバロガンは魚を食べ終わった。
「ご馳走さまでした」
手を合わせたと同時に、バロガンの顔つきが変わった。
「どうしました?」
アドラーの問いかけに応じず、左の森の奥のほうを見ているバロガン。アドラーは怪訝な表情をしながらも、ある程度の予測をした。
左は森の南側で、この森の入り口ともなる場所。誰かがこの森に訪れたのには変わりないだろうが、バロガンが神妙な顔つきになるのは珍しかった。
バロガンは桶に入っている水を飲み、「よし」と意気込んだ。
「アドラー。少し待っていてくれ。どうやら仕事のようだ」
仕事と言った時は、島に侵入しようとする密猟者を追い払う時の台詞だった。しかし、アドラーからすれば緊張感がいつもと違う。
「僕もいきます!」
「――逃げろと言ったらすぐに逃げろよ?」
「うん!」
アドラーはそう言って残っている魚を食べ終わり、桶に入っている水を飲み干した。
「行くぞ」
魔力浮遊を使って、二人はこの地を後にした。そして、ほんの数分で目的地に着いた。森の入り口には黒いローブを着た人間が、50人ほど集まっている。
「 あの黒いローブは闇の支配者か?」
「闇の支配者ってあの闇の支配者ですか?」
「そうだ。とりあえず様子を見に行くか」
「どちらにせよ、良からぬことを企んでいるわけですよね?」
「そうだな。どうする? 来るか?」
「流石にあの人数を師匠一人が相手にするのはできないでしょ。僕もついていく」
「よし。行くぞ」
バロガンとアドラーはそう言って黒のローブの集団に向かう。
すると、二人の男がバロガンとアドラーを見上げている。
長い銀髪の男ザギロスと、短い銀髪の男レイゾンのペリグリンコンビだ。
バロガンとアドラーが着地すると、黒いローブの人間は一斉に二人を見た。
「元ペリグリンのレイゾンとザギロス、それに最近エクゾトレイブを脱獄した時雨天魔――凄い面子だな」
「光栄なお出迎えだな。七色の操雷者のバロガン・パウワ。それに、そこのガキの腕はもしかして
土神の腕か? 書物でしか見たことが無かったから驚きだ」
ザギロスがそう言った後、銀縁の眼鏡をかけている時雨が口を開く。
「なに、僕達は戦う気はない。属性玉を探しているんだ」
「属性玉? あの伝説の属性玉か」
バロガンの問いかけにそうそう! と同意しながら時雨は頷く。
「アンタ達が知っている昔の闇の支配者のように、むやみやたらに人を殺す集団ではない。また、戦う必要も無いと思っている。大人しく手を引いてくれないか?」
「残念ながらここは俺の森だ。属性玉を取りに来た――なんて説明だけでは、この森へは入れさせん」
「アナタの森って、ここはフェリペスの一部でしょ? 別にアナタを通す必要は無いんじゃないかしら?」
そう言い放ったのは、紅色の髪色をした女性、ルビーだった。阻まれて不服なのか、少し高圧的になっているようだ。
「いや、この森はバロガンの所有地だ。だからこの森から取れる食料は、あらゆる国に流通しているため、こいつの懐にお金が入るって仕組みさ」
「へえ、いいじゃない。お金持ちってことね」
ザギロスに回答にルビーは舌なめずりをした。
「うえ――何か変な女の人いる。あれ誰ですか?」
アドラーがバロガンに問いかけるも、バロガンは首を左右に振る。
「知らん。が――恐らくお金好きなんだろうな。どこに興奮要素があるのか全く分からんが」
ルビーのこの反応は日常茶飯事なので、 幹部クラスの構成員は特に驚くことは無い。いつもの悪い癖が出ていると、心の内に秘めてスルーしている。
「説明しないと通してくれないか?」
「勿論」
ザギロスの問いかけに間髪入れずに返答するバロガン。
「仕方ねえ」
ザギロスのその発言と同時に、ザギロス、ルビー、時雨、そして、 闇の支配者一の大男、クルーデスの四人がかりで襲い掛かった。
200cm以上の巨躯を持ちながら、首、腕、胸、背中、脚、 腿などの、筋力を主に使う部位全てが、完成された肉体美。あまりにも完璧過ぎる筋肉の付き方は、見る者全てを魅了してしまうのではないだろうか? 夜中に歩いていれば、それこそ魔物と誤解するのではないのだろうか?
そんな、バロガンは太い眉と、二重の柔らかい目が印象的。褐色肌とは対照的に、笑ったときの白い歯が目立つ。上半身は衣服を着ていないが、下半身はデニム生地のパンツを履いている。
ふう――と深呼吸し、目の前に聳え立つ岩山を見上げる。
そして、右の拳を握り、左手は岩山に向かって、握るような手の形を取った。
刹那、獣の雄叫びのような気合いの声は森全体に響き渡る。その後、右の拳を突き出すと、目の前の巨大な岩山は粉々に砕けてしまった。
「流石師匠! お見事です!」
そう話しながら、森から出てきたのは、右手には2メートル程の巨大な魚を、左手には桶に入った水を持つ、十にも満たない茶髪の少年だった。
「今日も大量だな。よくやったぞアドラー」
バロガンがニッと笑みを浮かべると、アドラーは照れ笑いを浮かべていた。
「さあ飯にするか」
バロガンは先程砕いた岩山の、大きめの岩を選んで地面に敷き詰める。その上に、アドラーに魚を置くように首で促す。
その魚を手刀で二つに分けた後、手を翳し発火させた。
「そろそろだな」
しばらくすると、バロガンは二切れの魚に対して息を吹きかけると、程よく焦げ目が付いた魚の丸焼きの完成。
「相変わらず美味そう」
「まあこんな生活を昔からしていると慣れるものだ」
二人はそう言いながら、手を合わせて料理にありつけた。
「って言ってもお昼だけですけどね。朝と晩はちゃんと家に帰って料理作るじゃないですか」
「まあ、趣味ってことだ」
「そもそも師匠が持つ敷地が広すぎるんですよ。ロックベルトがあるこのパルテナの森、全域が敷地なんて――」
「破壊帝を倒したときの世界から貰った報酬だ。まあ、実際倒したのは蒼雷だけどな。森を買えば食料にも住む場所にも困らんだろ?」
「豪快過ぎるんだよな~」
アドラーは体だけではなく、考えることも大きいと再認識した。自然大国と呼ばれるこの国には、海の幸も、森の恵みもあることから、食料に困ることは相当なことが起きないと尽きない。
そして、この国の食料というのも、ホテルや一流の料理屋に出されるものが多く、食材全般が美味で有名であることから、非常に需要が高い。
「アドラー、腕の調子はどうだ?」
バロガンがそう言って指を指したのは、アドラーの右腕。アドラーの体には似つかわしくないほど、屈強な腕は成人男性と同じような太さで、とても十を満たない少年の腕の太さではない。また、爪は黒く、腕の色は赤土色となっており、皮膚と呼ぶより、鉄のような光沢を帯びている。
「今日は特に暴走することはないですね。もう少しでコントロールできそうなんですけど」
「力の使い方は徐々に慣れていけばいいさ」
「蒼雷さんは僕と同じ年で、既に神の瞳を使いこなしていたんですよね?」
「まあそうだな。あいつは元々戦闘センスがいいからな。でも、まだまだ能力は不十分らしい」
「一度会ってみたいな」
「そのうち会えるさ」
そう言うとバロガンは魚を食べ終わった。
「ご馳走さまでした」
手を合わせたと同時に、バロガンの顔つきが変わった。
「どうしました?」
アドラーの問いかけに応じず、左の森の奥のほうを見ているバロガン。アドラーは怪訝な表情をしながらも、ある程度の予測をした。
左は森の南側で、この森の入り口ともなる場所。誰かがこの森に訪れたのには変わりないだろうが、バロガンが神妙な顔つきになるのは珍しかった。
バロガンは桶に入っている水を飲み、「よし」と意気込んだ。
「アドラー。少し待っていてくれ。どうやら仕事のようだ」
仕事と言った時は、島に侵入しようとする密猟者を追い払う時の台詞だった。しかし、アドラーからすれば緊張感がいつもと違う。
「僕もいきます!」
「――逃げろと言ったらすぐに逃げろよ?」
「うん!」
アドラーはそう言って残っている魚を食べ終わり、桶に入っている水を飲み干した。
「行くぞ」
魔力浮遊を使って、二人はこの地を後にした。そして、ほんの数分で目的地に着いた。森の入り口には黒いローブを着た人間が、50人ほど集まっている。
「 あの黒いローブは闇の支配者か?」
「闇の支配者ってあの闇の支配者ですか?」
「そうだ。とりあえず様子を見に行くか」
「どちらにせよ、良からぬことを企んでいるわけですよね?」
「そうだな。どうする? 来るか?」
「流石にあの人数を師匠一人が相手にするのはできないでしょ。僕もついていく」
「よし。行くぞ」
バロガンとアドラーはそう言って黒のローブの集団に向かう。
すると、二人の男がバロガンとアドラーを見上げている。
長い銀髪の男ザギロスと、短い銀髪の男レイゾンのペリグリンコンビだ。
バロガンとアドラーが着地すると、黒いローブの人間は一斉に二人を見た。
「元ペリグリンのレイゾンとザギロス、それに最近エクゾトレイブを脱獄した時雨天魔――凄い面子だな」
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土神の腕か? 書物でしか見たことが無かったから驚きだ」
ザギロスがそう言った後、銀縁の眼鏡をかけている時雨が口を開く。
「なに、僕達は戦う気はない。属性玉を探しているんだ」
「属性玉? あの伝説の属性玉か」
バロガンの問いかけにそうそう! と同意しながら時雨は頷く。
「アンタ達が知っている昔の闇の支配者のように、むやみやたらに人を殺す集団ではない。また、戦う必要も無いと思っている。大人しく手を引いてくれないか?」
「残念ながらここは俺の森だ。属性玉を取りに来た――なんて説明だけでは、この森へは入れさせん」
「アナタの森って、ここはフェリペスの一部でしょ? 別にアナタを通す必要は無いんじゃないかしら?」
そう言い放ったのは、紅色の髪色をした女性、ルビーだった。阻まれて不服なのか、少し高圧的になっているようだ。
「いや、この森はバロガンの所有地だ。だからこの森から取れる食料は、あらゆる国に流通しているため、こいつの懐にお金が入るって仕組みさ」
「へえ、いいじゃない。お金持ちってことね」
ザギロスに回答にルビーは舌なめずりをした。
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アドラーがバロガンに問いかけるも、バロガンは首を左右に振る。
「知らん。が――恐らくお金好きなんだろうな。どこに興奮要素があるのか全く分からんが」
ルビーのこの反応は日常茶飯事なので、 幹部クラスの構成員は特に驚くことは無い。いつもの悪い癖が出ていると、心の内に秘めてスルーしている。
「説明しないと通してくれないか?」
「勿論」
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