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ライバル現る!?
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蒼雷はザギロスとの戦闘後、医務室のベッドで眠っていた。医務室には、玲と迅鳴、そして顎と口元に白い髭を生やし、短い銀髪の頭には、白のハットを被っており、金色のフレームの眼鏡をかけ、灰色のローブに身を包んだ老人の姿も。
「うっ――」
蒼雷はそう唸ると、ゆっくり目を開けた。目を軽く擦りながら起き上がる。
「ここどこだ」
「医務室よ。全く、心配したんだから」
「すまん」
蒼雷はそう言いながら頭を下げて謝った。その後、迅鳴と老人の方に目を向ける。
「校長先生どうも」
「うむ。よく撃退してくれたの。体調はどうじゃ?」
「お陰様で楽になりました」
蒼雷はそう言って校長先生に向けてニッと笑う。
「で、駿聖。どんだけ俺眠ってた?」
「歴代最短記録だ。たった三時間で目を覚ましたぞ」
迅鳴はそう言ってVサイン。
蒼雷もその結果を聞いて驚き、「おお」と声を漏らす。
「蒼雷も七色の操雷者だったのね。通りで普段から仲がいいわけだ。蒼雷と先生が二人で話しているとき、二人とも下の名前で呼び合っているし」
「え、そうか駿聖?」
「俺は意識しているが、蒼雷は無意識だろ?」
「うん。まあそうだな」
二人がそう会話していると、校長は咳払いをして口を開く。
「して、蒼雷くん。君が戦った相手どのような奴じゃった?」
「俺の相手はザギロス・アーセルクでした」
「ほほう。どうやら噂は真かもしれんの」
「どういうことですか?」
迅鳴がそう聞き返す。
「実はペリグリンが壊滅してから、ザギロスは何やら、新しい組織に入団したようじゃ。それが闇の支配者」
「えっ――」
蒼雷と迅鳴は思わず声を揃えた。
「驚くのも無理はない。君たちがワシの弟であるジェラを倒し、壊滅させたのじゃから。しかし再び復活し、着々と力を蓄え、魔神ハデスの復活を目論んでおる」
「ちょっと待ってください先生。話がぶっ飛びすぎてついていけない。第一、それはただの伝説じゃ――」
蒼雷はあたふたとしながら問いかける。玲をそれを横目にくすっと笑っていた。
「本当じゃ。君が契約している聖霊は光神セイレーンじゃろ? もうそれが答えのようなもんじゃ」
「マジか――神は本当にいるというのか――。で、ハデスの復活というのは具体的にどういうことですか? まさか――」
「察しの通り、闇の神殿が関係しておる。しかし、闇の神殿がどこにあるのか、知る者は少ない。君も、駿聖くんも知らんじゃろ?」
二人はコクリと頷く。
「実はローランス神殿にある門こそが闇の神殿に繋がる門となっておる」
すると、駿聖が間髪入れずに質問。
「自力で開くことは勿論、あれはあらゆる魔法を駆使しても開くことはなく、壊れないはずなのでは?」
「ちゃんと開くわい。属性玉の伝説も知っておるな?」
蒼雷と迅鳴だけでなく、玲も思わず頷く。
「あの属性玉こそがあの門を開く鍵となるのじゃ。門にある10の円状の窪みに全てを嵌め込めば、開くことができるのじゃ」
「――なんか嘘みたいな話ですね」
「嘘で終わっておけば平和なんじゃが――」
「本当ということですか。まあここには蒼雷がいてますし。な!」
そう言って駿聖はハニカミながら蒼雷の肩を叩く。すると蒼雷は駿聖が言いたい事を瞬時に察し。
「え? 俺? なんで!?」
「お前学生じゃん」
「世界の命運ってそんな感じ決めんの? おかしいだろ!」
蒼雷がそう言っていると、校長がまあまあと落ち着かせたあと。
「七色の操雷者の中だと蒼雷くんが一番適任というより蒼雷くんしかできん」
蒼雷は思わず、吊り上げた口角が静止したまま硬直する。
「きちんとした理由があるのじゃ。それに闇の支配者が絶対に入手できない場所もある。この世界で、唯一その場所への侵入が許されるのは、君と不知火夜炎くんじゃ」
「何で俺と不知火かは置いておいて、そこへ行って玉を取る必要ないじゃないですか」
「今まではそれでよかった。しかし今回、敵側にはその本来ならば、君と夜炎くんしか入れない場所でも、その仕掛けを何かしらの手段で突破することができる輩がいるようじゃ」
と、そう話ている校長をジトリと見つめる。
「なんじゃ?」
「なんでそんなに詳しいですか? と、いうか何で玉が闇の支配者が奪ったというのがわかるんですか?」
「うむ。まあ詳しいのはワシはもう300年近く生きておるからの」
「えっ――」
蒼雷、玲、駿聖は思わず声を揃えて驚く。目が点になりまさに硬直状態。
「固まられると話が進まんのじゃが」
校長はそう呟きながら、中指と親指で弾く動作を二回繰り返すと、蒼雷と駿聖の意識が戻る。そして蒼雷は玲に声をかける。
「話を戻すぞ。まず、根拠はインザギロにあった鋼鉄の玉がなくなっていたことじゃ。インザギロには特別な仕掛けをしておらんしな。管理人に七色の操雷者のアルガロスと、その弟にあたるスペルダーの二人が管理人じゃ。そして、その在り処を知っているのもその二人。つまり、犯人はアルガロスかスペルダーの二択ということになる。アルガロスから連絡があり、急ぎその玉が置かれている場所へと向かった。鋼鉄の玉が置かれていた土台に残る僅かな魔力は、アルガロスのものではなく、スペルダーのものだった」
「スペルダーさんって世界五大魔術師の一人――アルガロスさんの紹介で何回か会ったことある。アルガロスさんと違って大人しいイメージがあります」
「まさにその通り。スペルダーは兄の背中を見てきたせいか、あまり戦闘は好まない。自分の力で人が傷つくのが嫌なんじゃ。そんな性格じゃった子が今や闇の支配者のボス。どういう風の吹き回しじゃろうな」
校長はそう言うと俯いて溜め息をつく。
「闇の支配者のボスなんですか?」
「うむ。闇の支配者はザギロスのように犯罪者で集められた集団。そこのボスということじゃ。確かに、それらの犯罪者を統べることができる実力と、カリスマ性も持ち合わせている。そこは君たちのボス、アルガロスと同じじゃ」
「ボスがあの人か――戦い辛いな」
蒼雷はスペルダーと会った時のことを思い出して苦笑。
「体が楽になると、またワシの部屋に来るがよい。勿論、駿聖も水野さんもじゃ。ローランス神殿に一度足を運ぼう。それでは失礼するぞ」
校長はそう言い残すと医務室から退出。取り残された三人は悶々としていた。
「今の話、私聞いていてよかったのかな――」
「別にいいんじゃねえか? 校長は玲のことも見込んで言ったんだ。邪魔だったらとっくに退出させてるさ」
「そうね。じゃあ私もそろそろ出るね」
「俺もまだ授業が残っている。蒼雷はゆっくりしておけ」
「ああ」
玲と迅鳴はそう言うとこの部屋を出て行った。二人が出ていくと、蒼雷は再び仰向けになってベッドに寝転ぶ。
そのときだった。医務室の扉が開き、中に入ってきたのは、赤色の髪をした男性。目を閉じてはいるものの、顔の雰囲気はどことなしくか蒼雷と似ている。
「随分騒いだそうじゃないか神瞳蒼雷」
「いっ――不知火!」
蒼雷はそう言って思わず飛び起きた。
「心拍数が上がったぞ。何をそんなに慌てている?」
蒼雷は苦笑を浮かべ、襟足付近を撫でた後。
「もしかして、さっきの話聞いてた?」
「勿論。アルレーズ校長の話だ。あの話が嘘だとは考えにくい。しかし、俺は魔神ハデスが蘇ろうとも関係ない。お前には手を貸さないつもりだ」
「つもり?」
蒼雷はその意味深な言葉に思わず聞き返した。
「体力が回復したらでいい。神の瞳を使用した状態で俺と戦え。お前が俺に勝ったら少しでも力になろう」
「いいけど俺が勝つぜ? 能力を使った状態の俺に勝てるとでも思っているのか? 第一、お前は視えていない。目に障害を患っている相手と戦いたくない。敵でもなんでもない。お前はカルノールの生徒だ」
「今は確かに視えていない。しかし、俺が視えていないのは能力者だからだ」
夜炎はそう自身あり気の表情を浮かべると、蒼雷はどういう事か察したようで、思わず夜炎の方に指を指す。
「自分の体を犠牲にしてまで得られる能力って――」
「そうだな。お前の神の瞳に匹敵する能力だ」
「なんかの悪りぃ冗談だろ?」
「冗談を言っているように思うのか?」
夜炎のその力強い言葉に圧倒され、間を空けて返答。
「いや。思わないな」
「では、今日戦うとしよう」
「は? 今日!?」
「実はさっき一度様子を見に来たんだ。侵入者、ザギロスともう一人大きな魔力を持った者が突如現れた。敵が撤退したあとその大きな魔力を持った者の魔力は一瞬にしてここにいる生徒以下になってしまった。普段からその小さな魔力しか持たないのは、学年で万年最下位のお前だけだからな。で、だ。お前が眠っている間、医務室の外で様子を伺っていたわけだ。水野玲の心拍数が高く、なかなか阻害になったが、集中して聴けば造作もない。医務室に運ばれてきたときと、今の状態を比べるとあと、三十分もすれば完全回復するだろう」
蒼雷はその言葉に絶句。
「全部お見通しってことね」
「当たり前だ。心拍数、血流の流れ、呼吸器。お前の人体はいつも通りだ。あとは体の極度の怠さと戦意だけだ」
「俺、能力使ったの五年ぶりだぜ? 一日二回も使わないといけないのかよ」
「何か問題でも?」
「いや、まあ別にいいけどよ。ただ、不知火自身、自分が学校一の成績だからって過信しすぎてねえか?」
「過信でも自惚れでもない事実だ。それは戦えば解る話だ」
「七色の操雷者の俺に勝てるとでも?」
「勿論」
「面白れぇ」
蒼雷はそう言うと右の指の関節を鳴らす。
「では、放課後。実践演習場にて待つ。体の怠さを解すために準備体操しておけ」
「言われなくてもわかってるさ」
「じゃあな」
夜炎はそう言うと医務室から退出。一方、蒼雷はブルブルと震えていた。
「心置きなくやつと戦うことができる。今晩は玲に邪魔されても爆睡できそうだな」
そう両手の拳を力強く握り締めるぐぎゅううう、とお腹が鳴る。
「腹ごしらえした方がよさそうだな」
蒼雷はお腹を押さえた後、布団を跳ね除け、ローファーを履いて、ベッドの近くに衣類掛けに掛けていたカーディガンを羽織り、医務室を退出し食堂に足を運んだ。
広々とした空間で、左を見てみると一面ガラス張り。鯉が棲息する池や、獅子脅し、石造りの足場、丁寧に手入れされてる木々を堪能することができる。左側はガラス張りではあるが、それ以外は木で造られた壁になっている。壁は白色にペンキ塗られており、最近塗り替えたばかりなのか、庭から射す光で所々宝石のように輝いている。木製の食卓や椅子は、数十メートル先まで奥までズラリと並んでいる。
そして部屋の右側には食堂のおばさん達が、次の10分休憩に向けて下ごしらえをしていた。食堂には授業中なので、蒼雷以外は誰もいない。いわば独占状態。
蒼雷は早速、白い頭巾と前掛けをしたおばちゃんにお金を渡しビーフステーキセットを注文。少々時間がかかるので椅子に座って待つ。
待つこと数十分。シルバーに乗せられたビーフステーキセットを運んでくるおばちゃんが。おばちゃんはそれを蒼雷の前に置く。
白いプレートに乗せられているのは、赤ワインのデミグラスソースがかけられた、抜群の火加減で通されたであろう、少し赤みがかった肉の切り身が十。そして、マッシュポテトとレモンとオニオンの特製ドレッシングがサラダにかけられており、バスケットに入ったパンが五つ。そして、コーンポタージュがついており
学食とは思えない豪華さ。これでワンコインで食べることができるのだから学生にとっては非常に有難みのあるセットメニューだ。
「うんまっ」
蒼雷は庭の風景を楽しみながら少し遅めの昼食を楽しんでいた。
食べ終わり、少しくつろいでいると最後の授業の終了を示す鐘が鳴る。
「もうそんな時間か。いかねえとな」
蒼雷は約束していた実践演習場に向かうことにした。
着くとまだ夜炎の姿はなく、岩場の上に座りリラックスしていた。平面型の電子機器を取り出し、玲にさっきに帰っていてくれとメッセージを送る。そのようにして待っていると門が開かれた。
そこには夜炎の姿が。
「そのニオイは神瞳か。早かったな」
「目が視えていないのに、すぐに俺ってわかんのかよ。ほんと、どんな嗅覚と聴覚を持っているんだか」
「人間、視覚からの情報が膨大だからな。他で補うしかない」
「なるほど。で、どうする? いきなり本気でやるのか?」
「そうだな。前から何回か戦ってるし手合せの必要はないだろ」
すると、蒼雷はふうと呼吸を整えた後。
「全てを見通す眼。全てに適応する眼。全てを支配する眼を備えし瞳。聖霊、光神セイレーンよ我に力を与え給え。発動、神の瞳」
すると、蒼雷の瞳は蒼色に変わり、青の雷を体中に纏う。魔力の嵐が吹き荒れる。
「いい魔力だ。間近で感じ取ることができるのは実に光栄だ。全ての者を屍に変える眼。全てを焼き尽くす眼を備えし瞳よ、今こそ開眼する時だ。聖霊、炎神デューオよ我に力を与え給え。発動、炎神の瞳」
盲目だった夜炎の目は開眼し、瞳は鷹のように鋭く色は金赤色。そして、蒼雷と同じような現象が夜炎にも。漆黒の炎を体中に纏っている。
「神瞳。お前の顔を拝むのは初めてだな」
「俺もお前が目を開けたとこ初めて見たよ。本当に契約だったんだな。失明していたのって」
「そうだ。さあ始めようか。神の瞳を持つ者同士の戦いを」
「悪い冗談だ――まあ三分しかこの能力は使えないから早めに終わらせるぜ」
「三分というのは俺も同じだ!」
すると、夜炎は漆黒の炎を蒼雷に向けて飛ばす。蒼雷はそれを青い雷をした壁で防ぐ。すると、前方にいた夜炎はすでに姿を消し、蒼雷の後ろに回り込んでいた。
夜炎の右手の掌の上には漆黒の炎の球体が浮かんでいる。
「なっ――」
「フレイムバースト!」
すると、球体は炎を一気に噴出。蒼雷は丸焦げになり吹き飛ばされる。
「フレイムボルテックス」
人差し指の指の背を地面に向けて、奥から手前へ指をクイッと動かすと、何本もの黒い火の柱が出現。蒼雷はそれに巻き込まれて宙へと葬られる。
夜炎がフッと笑みを浮かべた途端、宙に打ち上げられた蒼雷もニッと笑う。同時に、青い雷が空から落ちてくる。
夜炎は後ろにジャンプしてそれを回避。足が地についた瞬間、夜炎は青い雷の渦に巻き込まれた。
「引っかかったな」
蒼雷は空中で静止し、体勢を整えてそう言った。
服が焦げて所々穴が空いているものの、夜炎自身はまるで平然としている。
「化け物かよ」
「それは俺の台詞だ神瞳」
「お互い様ってことだな」
そう言い残し蒼雷は姿を消した。夜炎は咄嗟に後ろを振り向き、蒼雷の拳を止める。そして、蒼雷の体を蹴り上げる。夜炎はすぐに右手を翳す。
「ファイヤボール」
バランスボールのような大きさの漆黒の炎の玉が五つ出現。それは蒼雷の方に向かって飛んでいく。
蒼雷は右手を向けて、青い雷を帯びたエネルギー波を発射。ファイヤボールを打消し、夜炎をそのまま襲った。
「グッ――」
夜炎は何とか堪えてみたものの、すでに地上に降り立っていた蒼雷が夜炎の鳩尾に蹴りを入れて吹き飛ばす。
夜炎は後ろに吹っ飛んだ後、地面に何十メートルも引きづられた。
同時に二人の能力のリミットがきてしまい、蒼雷はザギロス戦の時のように力が抜けて地面に倒れこんだ。
「大した奴だ神瞳蒼雷。お前の勝ちだ」
夜炎は空を見上げながらそう言うと、ゆっくりと体を起こし、蒼雷の方へと歩み寄る。蒼雷を担ぎ、実践演習場から出て行った。
「うっ――」
蒼雷はそう唸ると、ゆっくり目を開けた。目を軽く擦りながら起き上がる。
「ここどこだ」
「医務室よ。全く、心配したんだから」
「すまん」
蒼雷はそう言いながら頭を下げて謝った。その後、迅鳴と老人の方に目を向ける。
「校長先生どうも」
「うむ。よく撃退してくれたの。体調はどうじゃ?」
「お陰様で楽になりました」
蒼雷はそう言って校長先生に向けてニッと笑う。
「で、駿聖。どんだけ俺眠ってた?」
「歴代最短記録だ。たった三時間で目を覚ましたぞ」
迅鳴はそう言ってVサイン。
蒼雷もその結果を聞いて驚き、「おお」と声を漏らす。
「蒼雷も七色の操雷者だったのね。通りで普段から仲がいいわけだ。蒼雷と先生が二人で話しているとき、二人とも下の名前で呼び合っているし」
「え、そうか駿聖?」
「俺は意識しているが、蒼雷は無意識だろ?」
「うん。まあそうだな」
二人がそう会話していると、校長は咳払いをして口を開く。
「して、蒼雷くん。君が戦った相手どのような奴じゃった?」
「俺の相手はザギロス・アーセルクでした」
「ほほう。どうやら噂は真かもしれんの」
「どういうことですか?」
迅鳴がそう聞き返す。
「実はペリグリンが壊滅してから、ザギロスは何やら、新しい組織に入団したようじゃ。それが闇の支配者」
「えっ――」
蒼雷と迅鳴は思わず声を揃えた。
「驚くのも無理はない。君たちがワシの弟であるジェラを倒し、壊滅させたのじゃから。しかし再び復活し、着々と力を蓄え、魔神ハデスの復活を目論んでおる」
「ちょっと待ってください先生。話がぶっ飛びすぎてついていけない。第一、それはただの伝説じゃ――」
蒼雷はあたふたとしながら問いかける。玲をそれを横目にくすっと笑っていた。
「本当じゃ。君が契約している聖霊は光神セイレーンじゃろ? もうそれが答えのようなもんじゃ」
「マジか――神は本当にいるというのか――。で、ハデスの復活というのは具体的にどういうことですか? まさか――」
「察しの通り、闇の神殿が関係しておる。しかし、闇の神殿がどこにあるのか、知る者は少ない。君も、駿聖くんも知らんじゃろ?」
二人はコクリと頷く。
「実はローランス神殿にある門こそが闇の神殿に繋がる門となっておる」
すると、駿聖が間髪入れずに質問。
「自力で開くことは勿論、あれはあらゆる魔法を駆使しても開くことはなく、壊れないはずなのでは?」
「ちゃんと開くわい。属性玉の伝説も知っておるな?」
蒼雷と迅鳴だけでなく、玲も思わず頷く。
「あの属性玉こそがあの門を開く鍵となるのじゃ。門にある10の円状の窪みに全てを嵌め込めば、開くことができるのじゃ」
「――なんか嘘みたいな話ですね」
「嘘で終わっておけば平和なんじゃが――」
「本当ということですか。まあここには蒼雷がいてますし。な!」
そう言って駿聖はハニカミながら蒼雷の肩を叩く。すると蒼雷は駿聖が言いたい事を瞬時に察し。
「え? 俺? なんで!?」
「お前学生じゃん」
「世界の命運ってそんな感じ決めんの? おかしいだろ!」
蒼雷がそう言っていると、校長がまあまあと落ち着かせたあと。
「七色の操雷者の中だと蒼雷くんが一番適任というより蒼雷くんしかできん」
蒼雷は思わず、吊り上げた口角が静止したまま硬直する。
「きちんとした理由があるのじゃ。それに闇の支配者が絶対に入手できない場所もある。この世界で、唯一その場所への侵入が許されるのは、君と不知火夜炎くんじゃ」
「何で俺と不知火かは置いておいて、そこへ行って玉を取る必要ないじゃないですか」
「今まではそれでよかった。しかし今回、敵側にはその本来ならば、君と夜炎くんしか入れない場所でも、その仕掛けを何かしらの手段で突破することができる輩がいるようじゃ」
と、そう話ている校長をジトリと見つめる。
「なんじゃ?」
「なんでそんなに詳しいですか? と、いうか何で玉が闇の支配者が奪ったというのがわかるんですか?」
「うむ。まあ詳しいのはワシはもう300年近く生きておるからの」
「えっ――」
蒼雷、玲、駿聖は思わず声を揃えて驚く。目が点になりまさに硬直状態。
「固まられると話が進まんのじゃが」
校長はそう呟きながら、中指と親指で弾く動作を二回繰り返すと、蒼雷と駿聖の意識が戻る。そして蒼雷は玲に声をかける。
「話を戻すぞ。まず、根拠はインザギロにあった鋼鉄の玉がなくなっていたことじゃ。インザギロには特別な仕掛けをしておらんしな。管理人に七色の操雷者のアルガロスと、その弟にあたるスペルダーの二人が管理人じゃ。そして、その在り処を知っているのもその二人。つまり、犯人はアルガロスかスペルダーの二択ということになる。アルガロスから連絡があり、急ぎその玉が置かれている場所へと向かった。鋼鉄の玉が置かれていた土台に残る僅かな魔力は、アルガロスのものではなく、スペルダーのものだった」
「スペルダーさんって世界五大魔術師の一人――アルガロスさんの紹介で何回か会ったことある。アルガロスさんと違って大人しいイメージがあります」
「まさにその通り。スペルダーは兄の背中を見てきたせいか、あまり戦闘は好まない。自分の力で人が傷つくのが嫌なんじゃ。そんな性格じゃった子が今や闇の支配者のボス。どういう風の吹き回しじゃろうな」
校長はそう言うと俯いて溜め息をつく。
「闇の支配者のボスなんですか?」
「うむ。闇の支配者はザギロスのように犯罪者で集められた集団。そこのボスということじゃ。確かに、それらの犯罪者を統べることができる実力と、カリスマ性も持ち合わせている。そこは君たちのボス、アルガロスと同じじゃ」
「ボスがあの人か――戦い辛いな」
蒼雷はスペルダーと会った時のことを思い出して苦笑。
「体が楽になると、またワシの部屋に来るがよい。勿論、駿聖も水野さんもじゃ。ローランス神殿に一度足を運ぼう。それでは失礼するぞ」
校長はそう言い残すと医務室から退出。取り残された三人は悶々としていた。
「今の話、私聞いていてよかったのかな――」
「別にいいんじゃねえか? 校長は玲のことも見込んで言ったんだ。邪魔だったらとっくに退出させてるさ」
「そうね。じゃあ私もそろそろ出るね」
「俺もまだ授業が残っている。蒼雷はゆっくりしておけ」
「ああ」
玲と迅鳴はそう言うとこの部屋を出て行った。二人が出ていくと、蒼雷は再び仰向けになってベッドに寝転ぶ。
そのときだった。医務室の扉が開き、中に入ってきたのは、赤色の髪をした男性。目を閉じてはいるものの、顔の雰囲気はどことなしくか蒼雷と似ている。
「随分騒いだそうじゃないか神瞳蒼雷」
「いっ――不知火!」
蒼雷はそう言って思わず飛び起きた。
「心拍数が上がったぞ。何をそんなに慌てている?」
蒼雷は苦笑を浮かべ、襟足付近を撫でた後。
「もしかして、さっきの話聞いてた?」
「勿論。アルレーズ校長の話だ。あの話が嘘だとは考えにくい。しかし、俺は魔神ハデスが蘇ろうとも関係ない。お前には手を貸さないつもりだ」
「つもり?」
蒼雷はその意味深な言葉に思わず聞き返した。
「体力が回復したらでいい。神の瞳を使用した状態で俺と戦え。お前が俺に勝ったら少しでも力になろう」
「いいけど俺が勝つぜ? 能力を使った状態の俺に勝てるとでも思っているのか? 第一、お前は視えていない。目に障害を患っている相手と戦いたくない。敵でもなんでもない。お前はカルノールの生徒だ」
「今は確かに視えていない。しかし、俺が視えていないのは能力者だからだ」
夜炎はそう自身あり気の表情を浮かべると、蒼雷はどういう事か察したようで、思わず夜炎の方に指を指す。
「自分の体を犠牲にしてまで得られる能力って――」
「そうだな。お前の神の瞳に匹敵する能力だ」
「なんかの悪りぃ冗談だろ?」
「冗談を言っているように思うのか?」
夜炎のその力強い言葉に圧倒され、間を空けて返答。
「いや。思わないな」
「では、今日戦うとしよう」
「は? 今日!?」
「実はさっき一度様子を見に来たんだ。侵入者、ザギロスともう一人大きな魔力を持った者が突如現れた。敵が撤退したあとその大きな魔力を持った者の魔力は一瞬にしてここにいる生徒以下になってしまった。普段からその小さな魔力しか持たないのは、学年で万年最下位のお前だけだからな。で、だ。お前が眠っている間、医務室の外で様子を伺っていたわけだ。水野玲の心拍数が高く、なかなか阻害になったが、集中して聴けば造作もない。医務室に運ばれてきたときと、今の状態を比べるとあと、三十分もすれば完全回復するだろう」
蒼雷はその言葉に絶句。
「全部お見通しってことね」
「当たり前だ。心拍数、血流の流れ、呼吸器。お前の人体はいつも通りだ。あとは体の極度の怠さと戦意だけだ」
「俺、能力使ったの五年ぶりだぜ? 一日二回も使わないといけないのかよ」
「何か問題でも?」
「いや、まあ別にいいけどよ。ただ、不知火自身、自分が学校一の成績だからって過信しすぎてねえか?」
「過信でも自惚れでもない事実だ。それは戦えば解る話だ」
「七色の操雷者の俺に勝てるとでも?」
「勿論」
「面白れぇ」
蒼雷はそう言うと右の指の関節を鳴らす。
「では、放課後。実践演習場にて待つ。体の怠さを解すために準備体操しておけ」
「言われなくてもわかってるさ」
「じゃあな」
夜炎はそう言うと医務室から退出。一方、蒼雷はブルブルと震えていた。
「心置きなくやつと戦うことができる。今晩は玲に邪魔されても爆睡できそうだな」
そう両手の拳を力強く握り締めるぐぎゅううう、とお腹が鳴る。
「腹ごしらえした方がよさそうだな」
蒼雷はお腹を押さえた後、布団を跳ね除け、ローファーを履いて、ベッドの近くに衣類掛けに掛けていたカーディガンを羽織り、医務室を退出し食堂に足を運んだ。
広々とした空間で、左を見てみると一面ガラス張り。鯉が棲息する池や、獅子脅し、石造りの足場、丁寧に手入れされてる木々を堪能することができる。左側はガラス張りではあるが、それ以外は木で造られた壁になっている。壁は白色にペンキ塗られており、最近塗り替えたばかりなのか、庭から射す光で所々宝石のように輝いている。木製の食卓や椅子は、数十メートル先まで奥までズラリと並んでいる。
そして部屋の右側には食堂のおばさん達が、次の10分休憩に向けて下ごしらえをしていた。食堂には授業中なので、蒼雷以外は誰もいない。いわば独占状態。
蒼雷は早速、白い頭巾と前掛けをしたおばちゃんにお金を渡しビーフステーキセットを注文。少々時間がかかるので椅子に座って待つ。
待つこと数十分。シルバーに乗せられたビーフステーキセットを運んでくるおばちゃんが。おばちゃんはそれを蒼雷の前に置く。
白いプレートに乗せられているのは、赤ワインのデミグラスソースがかけられた、抜群の火加減で通されたであろう、少し赤みがかった肉の切り身が十。そして、マッシュポテトとレモンとオニオンの特製ドレッシングがサラダにかけられており、バスケットに入ったパンが五つ。そして、コーンポタージュがついており
学食とは思えない豪華さ。これでワンコインで食べることができるのだから学生にとっては非常に有難みのあるセットメニューだ。
「うんまっ」
蒼雷は庭の風景を楽しみながら少し遅めの昼食を楽しんでいた。
食べ終わり、少しくつろいでいると最後の授業の終了を示す鐘が鳴る。
「もうそんな時間か。いかねえとな」
蒼雷は約束していた実践演習場に向かうことにした。
着くとまだ夜炎の姿はなく、岩場の上に座りリラックスしていた。平面型の電子機器を取り出し、玲にさっきに帰っていてくれとメッセージを送る。そのようにして待っていると門が開かれた。
そこには夜炎の姿が。
「そのニオイは神瞳か。早かったな」
「目が視えていないのに、すぐに俺ってわかんのかよ。ほんと、どんな嗅覚と聴覚を持っているんだか」
「人間、視覚からの情報が膨大だからな。他で補うしかない」
「なるほど。で、どうする? いきなり本気でやるのか?」
「そうだな。前から何回か戦ってるし手合せの必要はないだろ」
すると、蒼雷はふうと呼吸を整えた後。
「全てを見通す眼。全てに適応する眼。全てを支配する眼を備えし瞳。聖霊、光神セイレーンよ我に力を与え給え。発動、神の瞳」
すると、蒼雷の瞳は蒼色に変わり、青の雷を体中に纏う。魔力の嵐が吹き荒れる。
「いい魔力だ。間近で感じ取ることができるのは実に光栄だ。全ての者を屍に変える眼。全てを焼き尽くす眼を備えし瞳よ、今こそ開眼する時だ。聖霊、炎神デューオよ我に力を与え給え。発動、炎神の瞳」
盲目だった夜炎の目は開眼し、瞳は鷹のように鋭く色は金赤色。そして、蒼雷と同じような現象が夜炎にも。漆黒の炎を体中に纏っている。
「神瞳。お前の顔を拝むのは初めてだな」
「俺もお前が目を開けたとこ初めて見たよ。本当に契約だったんだな。失明していたのって」
「そうだ。さあ始めようか。神の瞳を持つ者同士の戦いを」
「悪い冗談だ――まあ三分しかこの能力は使えないから早めに終わらせるぜ」
「三分というのは俺も同じだ!」
すると、夜炎は漆黒の炎を蒼雷に向けて飛ばす。蒼雷はそれを青い雷をした壁で防ぐ。すると、前方にいた夜炎はすでに姿を消し、蒼雷の後ろに回り込んでいた。
夜炎の右手の掌の上には漆黒の炎の球体が浮かんでいる。
「なっ――」
「フレイムバースト!」
すると、球体は炎を一気に噴出。蒼雷は丸焦げになり吹き飛ばされる。
「フレイムボルテックス」
人差し指の指の背を地面に向けて、奥から手前へ指をクイッと動かすと、何本もの黒い火の柱が出現。蒼雷はそれに巻き込まれて宙へと葬られる。
夜炎がフッと笑みを浮かべた途端、宙に打ち上げられた蒼雷もニッと笑う。同時に、青い雷が空から落ちてくる。
夜炎は後ろにジャンプしてそれを回避。足が地についた瞬間、夜炎は青い雷の渦に巻き込まれた。
「引っかかったな」
蒼雷は空中で静止し、体勢を整えてそう言った。
服が焦げて所々穴が空いているものの、夜炎自身はまるで平然としている。
「化け物かよ」
「それは俺の台詞だ神瞳」
「お互い様ってことだな」
そう言い残し蒼雷は姿を消した。夜炎は咄嗟に後ろを振り向き、蒼雷の拳を止める。そして、蒼雷の体を蹴り上げる。夜炎はすぐに右手を翳す。
「ファイヤボール」
バランスボールのような大きさの漆黒の炎の玉が五つ出現。それは蒼雷の方に向かって飛んでいく。
蒼雷は右手を向けて、青い雷を帯びたエネルギー波を発射。ファイヤボールを打消し、夜炎をそのまま襲った。
「グッ――」
夜炎は何とか堪えてみたものの、すでに地上に降り立っていた蒼雷が夜炎の鳩尾に蹴りを入れて吹き飛ばす。
夜炎は後ろに吹っ飛んだ後、地面に何十メートルも引きづられた。
同時に二人の能力のリミットがきてしまい、蒼雷はザギロス戦の時のように力が抜けて地面に倒れこんだ。
「大した奴だ神瞳蒼雷。お前の勝ちだ」
夜炎は空を見上げながらそう言うと、ゆっくりと体を起こし、蒼雷の方へと歩み寄る。蒼雷を担ぎ、実践演習場から出て行った。
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