589 / 597
蠢く闇Ⅲ
しおりを挟む
「し――仕事が早いのう――」
玉座で俺を待機していたアスモデウスさんがそう感想を述べた。
「ナリユキ閣下は探索も得意なんですか!?」
とエリゴスは驚いた表情を見せていた。
「海内無双の特性が強いお陰だな。魔物の言語が分からなくても魔物は色々と教えてくれる」
「成程。それでこの者を捕らえた訳ですね?」
エリゴスは俺の隣で気絶して横たわっているヴェルサーリオを指した。
「情報を得る事はできたし、特に拷問をする必要は無いと思うが、疑問が浮かぶ度に捕らえているヴェルサーリオから情報を得ればいいと思ってる」
「その通りじゃな」
アスモデウスさんはそう頷いていた。
「ところで、二人はアマイモンという魔族は知っているか?」
「それが今回の黒幕なのか?」
「恐らく。前提として、魔界のアスモデウス軍には作戦実行していないようだけど、他の魔王軍はヒーティスと同様の被害を受けているみたいだ。ベリアル軍もルシファー軍もな」
「成程のう。しかしアマイモンという魔族は知らぬな――エリゴス、其方は知っておるか?」
「いいえ。存じ上げません」
魔族でも知らない魔族か――でも不思議だな。ヴェルサーリオが崇拝して慕っている魔族なら、相当な実力を持っている筈。それこそ魔王に匹敵する程の強さを持っていても不思議じゃない。
「魔界でも仮に戦闘値が7,000あれば有名人だよな?」
「当り前じゃ。7,000の戦闘値などそんなにゴロゴロいるもんじゃないしのう」
「戦闘値が6,000あっても有名人だよな?」
俺がそう質問をすると二人は大きく頷いた。
「現に、ナリユキ閣下が捕えたこのヴェルサーリオは魔界では有名です。そもそもですが、バフォメットが人型化になれる時点で、元々知能が高いバフォメットの中でも、より知能が高い個体という訳なので」
「言ってしまえば、戦闘値が低くても有名になれる訳じゃ。そもそも、バフォメットそのものが希少で強い種族じゃしのう」
「それでエリゴスはヴェルサーリオの事を知っていた訳か」
「さようでございます。ヴェルサーリオは知略に長けているバフォメットで有名です。元々は、100人規模の精鋭をを率いていたリーダーでもあり、人を惹きつけるカリスマ性も持ち合わせております」
「中小企業の社長って訳か」
俺がそう呟くと「中小企業?」と首を傾げていた。
「気にするな。それよりアマイモンの情報が分からないのは厳しいな――」
「ルシファーに聞いてみるのはどうじゃろうか? 妾はまともに相手にしてくれないじゃろうが、ナリユキ閣下なら問題ない筈じゃ。パイモンには美味しい手土産持っていけば、何も言うまい」
「確かに」
思わず笑みが零れてしまった。パイモンの食い意地凄いからな~。
「あのルシファーが、ナリユキ閣下とそのような交流ができるなんて――」
と、エリゴスは驚いている。
「閣下に英雄ノ神を託したのもルシファーが何かを感じ取ったからじゃろう。本当にどの魔王とも喋らんのに、ナリユキ閣下とは普通に喋るんじゃ。信じられないじゃろ?」
少し強めの圧でエリゴスにそう話しかけるアスモデウスさん。エリゴスは「分かりましたから落ち着いてください」とアスモデウスさんをなだめる。
「頼まれてくれるか? ナリユキ閣下」
「勿論だ。この話を聞いて黙ってられる訳が無い。ルシファーは黒龍討伐で死線を潜り抜けた同士だ。放っておく訳にはいかない。それに何やら嫌な予感もするしな。コヴィー・S・ウィズダムや黒龍程の規模では無いけど、俺の直感が脅威を感じている」
「なるほど。では魔界への入口まで一緒に行こう。エリゴス、少し留守を頼むぞ?」
「かしこまりました。くれぐれもお気をつけ下さい」
「勿論じゃ。ではヴェルサーリオを幽閉しておいてくれ。あと、パイモンへの手土産を用意するのじゃ」
「かしこまりました」
待つこと数分。パイモンへの手土産を持ち、俺はアスモデウスさんと一緒に魔界への入口まで戻った。
「飛び込めば行けるんだっけ?」
「そうじゃの。ナリユキ閣下なら問題ない。前提としてZ級じゃしのう」
「飛び込むだけだったら別に見送りいらなかったのに」
「国主が魔界への入口へ飛び込むって言っているのに、見送らない訳にはいかないじゃろう。それに、本当に万が一何かあったら妾は正気じゃおれん。ナリユキ閣下が魔界への入口に入り、魔界に無事到着したのを確認しなと気が済まないのじゃ」
「分かった。ありがとうな。そんで? ここに戻って来るにはどうすればいい?」
「簡単じゃ。出て来たところから入れば良い。あちらからこちらに来るときは地上界への入口と呼ばれておるが原理は同じじゃ。ここの出入り口はアスモデウス軍が管理しておるから、妾の許可さえあれば出入りは簡単じゃ」
「――ん? もしかして何らかの仕掛けがあるのか?」
「勿論じゃ。無断で侵入した者は肉体が滅びる仕組みになっておる」
「さらっと怖い事言うな」
「妾がそれでも定期的にここに見に来るのは異変が無いかどうかを確かめるためでもあるが、仮にヴェルサーリオ達がここの魔界への入口を使って来たのであればその原因も知りたい」
「でも魔界への入口は世界に数か所あるんだよな?」
「そうじゃ。ここだけはないから、他の魔界への入口から来た可能性が高いとは思うがのう」
「分かった。じゃあ行ってくる」
「ほんとうにすまない。戻ってきたら妾と夜を共に――」
「却下で」
俺がそう突き放した言い方をすると、「その目も好きじゃ!」と言ってくねくねしていた。放っておこう。
俺は深呼吸をして魔界への入口の中に入って行った。
確かに魔界への入口の中はえげつない程の瘴気が漂っていた。時空が歪んでいるかのような紫色の空間は気味が悪い。
10秒程この空間に漂った後、エネルギーの集合体の黒い球状の扉が出現した。俺はその中へ入りこんだ。
玉座で俺を待機していたアスモデウスさんがそう感想を述べた。
「ナリユキ閣下は探索も得意なんですか!?」
とエリゴスは驚いた表情を見せていた。
「海内無双の特性が強いお陰だな。魔物の言語が分からなくても魔物は色々と教えてくれる」
「成程。それでこの者を捕らえた訳ですね?」
エリゴスは俺の隣で気絶して横たわっているヴェルサーリオを指した。
「情報を得る事はできたし、特に拷問をする必要は無いと思うが、疑問が浮かぶ度に捕らえているヴェルサーリオから情報を得ればいいと思ってる」
「その通りじゃな」
アスモデウスさんはそう頷いていた。
「ところで、二人はアマイモンという魔族は知っているか?」
「それが今回の黒幕なのか?」
「恐らく。前提として、魔界のアスモデウス軍には作戦実行していないようだけど、他の魔王軍はヒーティスと同様の被害を受けているみたいだ。ベリアル軍もルシファー軍もな」
「成程のう。しかしアマイモンという魔族は知らぬな――エリゴス、其方は知っておるか?」
「いいえ。存じ上げません」
魔族でも知らない魔族か――でも不思議だな。ヴェルサーリオが崇拝して慕っている魔族なら、相当な実力を持っている筈。それこそ魔王に匹敵する程の強さを持っていても不思議じゃない。
「魔界でも仮に戦闘値が7,000あれば有名人だよな?」
「当り前じゃ。7,000の戦闘値などそんなにゴロゴロいるもんじゃないしのう」
「戦闘値が6,000あっても有名人だよな?」
俺がそう質問をすると二人は大きく頷いた。
「現に、ナリユキ閣下が捕えたこのヴェルサーリオは魔界では有名です。そもそもですが、バフォメットが人型化になれる時点で、元々知能が高いバフォメットの中でも、より知能が高い個体という訳なので」
「言ってしまえば、戦闘値が低くても有名になれる訳じゃ。そもそも、バフォメットそのものが希少で強い種族じゃしのう」
「それでエリゴスはヴェルサーリオの事を知っていた訳か」
「さようでございます。ヴェルサーリオは知略に長けているバフォメットで有名です。元々は、100人規模の精鋭をを率いていたリーダーでもあり、人を惹きつけるカリスマ性も持ち合わせております」
「中小企業の社長って訳か」
俺がそう呟くと「中小企業?」と首を傾げていた。
「気にするな。それよりアマイモンの情報が分からないのは厳しいな――」
「ルシファーに聞いてみるのはどうじゃろうか? 妾はまともに相手にしてくれないじゃろうが、ナリユキ閣下なら問題ない筈じゃ。パイモンには美味しい手土産持っていけば、何も言うまい」
「確かに」
思わず笑みが零れてしまった。パイモンの食い意地凄いからな~。
「あのルシファーが、ナリユキ閣下とそのような交流ができるなんて――」
と、エリゴスは驚いている。
「閣下に英雄ノ神を託したのもルシファーが何かを感じ取ったからじゃろう。本当にどの魔王とも喋らんのに、ナリユキ閣下とは普通に喋るんじゃ。信じられないじゃろ?」
少し強めの圧でエリゴスにそう話しかけるアスモデウスさん。エリゴスは「分かりましたから落ち着いてください」とアスモデウスさんをなだめる。
「頼まれてくれるか? ナリユキ閣下」
「勿論だ。この話を聞いて黙ってられる訳が無い。ルシファーは黒龍討伐で死線を潜り抜けた同士だ。放っておく訳にはいかない。それに何やら嫌な予感もするしな。コヴィー・S・ウィズダムや黒龍程の規模では無いけど、俺の直感が脅威を感じている」
「なるほど。では魔界への入口まで一緒に行こう。エリゴス、少し留守を頼むぞ?」
「かしこまりました。くれぐれもお気をつけ下さい」
「勿論じゃ。ではヴェルサーリオを幽閉しておいてくれ。あと、パイモンへの手土産を用意するのじゃ」
「かしこまりました」
待つこと数分。パイモンへの手土産を持ち、俺はアスモデウスさんと一緒に魔界への入口まで戻った。
「飛び込めば行けるんだっけ?」
「そうじゃの。ナリユキ閣下なら問題ない。前提としてZ級じゃしのう」
「飛び込むだけだったら別に見送りいらなかったのに」
「国主が魔界への入口へ飛び込むって言っているのに、見送らない訳にはいかないじゃろう。それに、本当に万が一何かあったら妾は正気じゃおれん。ナリユキ閣下が魔界への入口に入り、魔界に無事到着したのを確認しなと気が済まないのじゃ」
「分かった。ありがとうな。そんで? ここに戻って来るにはどうすればいい?」
「簡単じゃ。出て来たところから入れば良い。あちらからこちらに来るときは地上界への入口と呼ばれておるが原理は同じじゃ。ここの出入り口はアスモデウス軍が管理しておるから、妾の許可さえあれば出入りは簡単じゃ」
「――ん? もしかして何らかの仕掛けがあるのか?」
「勿論じゃ。無断で侵入した者は肉体が滅びる仕組みになっておる」
「さらっと怖い事言うな」
「妾がそれでも定期的にここに見に来るのは異変が無いかどうかを確かめるためでもあるが、仮にヴェルサーリオ達がここの魔界への入口を使って来たのであればその原因も知りたい」
「でも魔界への入口は世界に数か所あるんだよな?」
「そうじゃ。ここだけはないから、他の魔界への入口から来た可能性が高いとは思うがのう」
「分かった。じゃあ行ってくる」
「ほんとうにすまない。戻ってきたら妾と夜を共に――」
「却下で」
俺がそう突き放した言い方をすると、「その目も好きじゃ!」と言ってくねくねしていた。放っておこう。
俺は深呼吸をして魔界への入口の中に入って行った。
確かに魔界への入口の中はえげつない程の瘴気が漂っていた。時空が歪んでいるかのような紫色の空間は気味が悪い。
10秒程この空間に漂った後、エネルギーの集合体の黒い球状の扉が出現した。俺はその中へ入りこんだ。
1
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる