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ヒーティスの異変Ⅵ
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三人が会話を終えると、魔族の男は足元に巨大な影を出現させ、三人は地面の中にマリオの土管のような勢いで吸い込まれてどこかへ移動してしまった。これは魔族の男のユニークスキル、影世界というスキルだ。半径5.0km以内なら瞬時に移動できるスキルらしい。
俺は地上へ出ると同時に、炎魚から熱干鼠に姿を変えて三人の痕跡を探ってみた。しかしニオイは完全に消滅しているため、どこへ移動したのか分からなかった。ネズミは嗅覚が鋭い生き物としても知られているが、ワープされてしまっては追いようもない。
「やっぱり人間の姿になって知性・記憶の略奪と献上を使うべきだったか?」
判断が難しいところだ。仮に知性・記憶の略奪と献上を使い、彼等がヒーティスの失踪事件に関わっていたなら、そのまま記憶を奪うという手もあるが、彼等に記憶が無い以上、仲間の下へ戻らせても必ずボロが出る。そうなってしまった場合、黒幕にたどり着くことはできないだろう。やはり、地道に調査するしかないのか。
とりあえず洞穴内がどんな構造になっているか調べた方がいいな。俺は熱干鼠から吸血蝙蝠へと変身して、反響定位を発動した。
発した超音波の反響で洞穴内の構造情報が入ってくる。
成程。ここはどうやら迷路のような構造になっているみたいだ。俺がいる地点からさらに1.0km程奥に進むと、五本の道に分かれている。その中の一番左の道を使うと大きな空間に到達するようだが、それ以外は全て行き止まりとなっている。
空間に辿り着くまでの距離はちょうど5.0km。彼等がそこへ影世界を使って移動した可能性も十分ある。
とりあえずこのまま飛ぶか。
俺は時速およそ30kmで移動開始。分かれ道がくると一番左の道を選択。ここからは傾斜になっていき、さらに地下に進んでいく。地下になればなるほど、緑が広がり天井の高さがやたらと高い地下世界の構造が謎だがこの際あまり気にしないでおこう。いずれ分かる。
飛行して10分後には目的に到着。溶岩が一切無い影響か、この空間内の気温は20℃から30℃と比較的過ごしやすい環境だった。原則、Z級になるとどれだけ過酷な気温であっても生命活動が出来るが、ランベリオンを倒した事により序盤から熱系統に関しては無効だった。しかし、先程の三人の内の死恐蛇と混合魔獣のように、これらの環境に適応するためのスキルを有していない人も勿論いるわけだ。また先程の黒いローブはこの環境に適応する為の、熱の遮断効果を有している事が推測される。
そんな訳でこの空間は何かの秘密基地のようになっていた。
薄暗い空間内は岩山に囲まれており、その中央には50坪くらいの浮遊している石の足場があり、その四方にはガーゴイルを模した社がある。
そして中央では、黒いローブを身につけている数十人が集まり会合を行っていた。
「順調に進んでいるか?」
そう問いかけたのは人型化姿のバフォメットだった。名前はヴェルサーリオ。戦闘値は6,000と先程の魔族より高い数値だ。彼の前では先程の魔族も跪いているため、バフォメットのヴェルサーリオがこの数十人を束ねるリーダーのようだ。
「手筈通りに」
そう答えたのは先程の魔族だった。死恐蛇の女性と混合魔獣の男性も魔族の男と同じように返答をした。
「それはご苦労。あの方もさぞ喜んでくれるだろうな」
と、ヴェルサーリオは高笑いをしていた。それにつられて部下達も不気味な笑い声をあげていた。
どうしたものか――。
あのヴェルサーリオという輩に知性・記憶の略奪と献上を使えば何らかの事件の手がかりが掴めそうだ。戦闘値6,000なんてどう考えても幹部クラス。あの方と呼ばれている人に近い存在に違い無い。
怪しいニオイは割と強いしちょっと喧嘩を売ってみるか。
俺はそう決断すると、会合を行っている所まで飛んで人間の姿になった。
「誰だ貴様は!?」
「どこから入ってきた!」
と質問攻めに遭った。そりゃそうだ。
「別に名乗る必要ないだろ。今まであった事忘れるんだから」
「舐めた真似を……」
俺がそう言うとヴェルサーリオが「やめろ!」と叫んだが、ヴェルサーリオの忠告を無視した一人の男が俺に襲いかかってきた。
その男は刀で斬りかかってきたのだが、男が持っていた刀は見事に折れてしまった。
「あらま。勿体ない事したな」
俺がそう言うと周りの奴等の警戒心が一気に強まった。
「化け物め……こんな奴がいてたまるか。何かの間違いだ」
ヴェルサーリオは俺の事を睨めつけながらそう吐き捨てた。
「どういう事でしょうか?」
魔族の男がそう問いかけると、「私ですらステータスが視えないのだ」と険しい表情を浮かべていた。
「そんな馬鹿な。ヴェルサーリオ様は戦闘値が6,000もあるのに――悪い冗談ですよ」
魔族の男はそう言って乾いた笑いを飛ばしていた。
「冗談だといいがな――」
その言葉と同時に、よく分からん軍団が一気に襲い掛かってきた。そのなかには、死恐蛇の女性と混合魔獣の男性も入っている。
「少し遊ぶか」
俺は地上へ出ると同時に、炎魚から熱干鼠に姿を変えて三人の痕跡を探ってみた。しかしニオイは完全に消滅しているため、どこへ移動したのか分からなかった。ネズミは嗅覚が鋭い生き物としても知られているが、ワープされてしまっては追いようもない。
「やっぱり人間の姿になって知性・記憶の略奪と献上を使うべきだったか?」
判断が難しいところだ。仮に知性・記憶の略奪と献上を使い、彼等がヒーティスの失踪事件に関わっていたなら、そのまま記憶を奪うという手もあるが、彼等に記憶が無い以上、仲間の下へ戻らせても必ずボロが出る。そうなってしまった場合、黒幕にたどり着くことはできないだろう。やはり、地道に調査するしかないのか。
とりあえず洞穴内がどんな構造になっているか調べた方がいいな。俺は熱干鼠から吸血蝙蝠へと変身して、反響定位を発動した。
発した超音波の反響で洞穴内の構造情報が入ってくる。
成程。ここはどうやら迷路のような構造になっているみたいだ。俺がいる地点からさらに1.0km程奥に進むと、五本の道に分かれている。その中の一番左の道を使うと大きな空間に到達するようだが、それ以外は全て行き止まりとなっている。
空間に辿り着くまでの距離はちょうど5.0km。彼等がそこへ影世界を使って移動した可能性も十分ある。
とりあえずこのまま飛ぶか。
俺は時速およそ30kmで移動開始。分かれ道がくると一番左の道を選択。ここからは傾斜になっていき、さらに地下に進んでいく。地下になればなるほど、緑が広がり天井の高さがやたらと高い地下世界の構造が謎だがこの際あまり気にしないでおこう。いずれ分かる。
飛行して10分後には目的に到着。溶岩が一切無い影響か、この空間内の気温は20℃から30℃と比較的過ごしやすい環境だった。原則、Z級になるとどれだけ過酷な気温であっても生命活動が出来るが、ランベリオンを倒した事により序盤から熱系統に関しては無効だった。しかし、先程の三人の内の死恐蛇と混合魔獣のように、これらの環境に適応するためのスキルを有していない人も勿論いるわけだ。また先程の黒いローブはこの環境に適応する為の、熱の遮断効果を有している事が推測される。
そんな訳でこの空間は何かの秘密基地のようになっていた。
薄暗い空間内は岩山に囲まれており、その中央には50坪くらいの浮遊している石の足場があり、その四方にはガーゴイルを模した社がある。
そして中央では、黒いローブを身につけている数十人が集まり会合を行っていた。
「順調に進んでいるか?」
そう問いかけたのは人型化姿のバフォメットだった。名前はヴェルサーリオ。戦闘値は6,000と先程の魔族より高い数値だ。彼の前では先程の魔族も跪いているため、バフォメットのヴェルサーリオがこの数十人を束ねるリーダーのようだ。
「手筈通りに」
そう答えたのは先程の魔族だった。死恐蛇の女性と混合魔獣の男性も魔族の男と同じように返答をした。
「それはご苦労。あの方もさぞ喜んでくれるだろうな」
と、ヴェルサーリオは高笑いをしていた。それにつられて部下達も不気味な笑い声をあげていた。
どうしたものか――。
あのヴェルサーリオという輩に知性・記憶の略奪と献上を使えば何らかの事件の手がかりが掴めそうだ。戦闘値6,000なんてどう考えても幹部クラス。あの方と呼ばれている人に近い存在に違い無い。
怪しいニオイは割と強いしちょっと喧嘩を売ってみるか。
俺はそう決断すると、会合を行っている所まで飛んで人間の姿になった。
「誰だ貴様は!?」
「どこから入ってきた!」
と質問攻めに遭った。そりゃそうだ。
「別に名乗る必要ないだろ。今まであった事忘れるんだから」
「舐めた真似を……」
俺がそう言うとヴェルサーリオが「やめろ!」と叫んだが、ヴェルサーリオの忠告を無視した一人の男が俺に襲いかかってきた。
その男は刀で斬りかかってきたのだが、男が持っていた刀は見事に折れてしまった。
「あらま。勿体ない事したな」
俺がそう言うと周りの奴等の警戒心が一気に強まった。
「化け物め……こんな奴がいてたまるか。何かの間違いだ」
ヴェルサーリオは俺の事を睨めつけながらそう吐き捨てた。
「どういう事でしょうか?」
魔族の男がそう問いかけると、「私ですらステータスが視えないのだ」と険しい表情を浮かべていた。
「そんな馬鹿な。ヴェルサーリオ様は戦闘値が6,000もあるのに――悪い冗談ですよ」
魔族の男はそう言って乾いた笑いを飛ばしていた。
「冗談だといいがな――」
その言葉と同時に、よく分からん軍団が一気に襲い掛かってきた。そのなかには、死恐蛇の女性と混合魔獣の男性も入っている。
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