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ヒーティスの異変Ⅴ
しおりを挟む 二人に見送られ、早速邪竜の姿で魔界への入口へ到着した俺。人間の姿の時より視覚情報が多い分、黒と紫が混ざり合った巨大な渦と瘴気だけではなく、強烈な放射能まで視認ができる。正に言うと目が痛い。
「目に毒だなこれは」
周囲に誰もいない事を目で確認したうえで、辺りの気配を感じ取った。覚醒している神の力ってのは素晴らしいもので、Z級になってから気配に敏感になっていた筈が、さらに敏感になり半径1km程までなら蟻一匹の正確な位置でさえ感じ取れるようになっていた。
辺りはあらゆる魔物だけで、S級以上の人や魔族などの高度な知能を持った個体はいなかった。周囲にいるのは邪竜を含めた魔物達。S級クラスもいるが俺に対して意識が1mmも向いていない。
よし。
俺が次に変身したのは熱干鼠。砂漠や火山地帯に棲息する肉食で獰猛なネズミだ。カルベリアツリーのダンジョンでは、300~400階層くらいで出てきた魔物だ。一層で1,000匹ほどが一気に襲い掛かってきたりするので、並みの冒険者であればそのあまりにも多い数に対応しきれず、己の肉を食われて絶命するだろう。
カルベリアツリーのダンジョンであらゆる魔物が出てきたのが、ここになってこれほど役に立つとは思わなかった。
やっぱり変わった様子は無いな。魔族じゃないからあっちの世界を覗く事ができないのが残念ではあるが。
俺がしばらく魔界への入口を見ていると、数十匹程の熱干鼠が俺の事をじっと見ていた。キー。キー。という一見愛らしい声だが、戦闘態勢に入る時は悪魔のような形相をするんだなこれ。
鳴き声を上げながらこちらに近付いてくるが、俺は熱干鼠の姿をした人間。残念ながらこの熱干鼠が何て言っているかは分からない。
「悪い。俺君達と同じ種族じゃないんだ」
俺がそう言葉を発すると、近付いてきた熱干鼠は立ち止まり、警戒しながらも俺の様子を見ていた。中には体を震わせている個体もいる。
「最近、この辺で変な奴が出て来たりしていなかったか? そうだな。例えば魔族とか」
と言ってもやはり言葉は通じない。それどころか距離を置かれている。
俺が様子を伺っていると、一匹の熱干鼠が俺の方へ近づいてきた。俺のニオイを嗅ぐなり、再び鳴き声を発しながら俺について来いと言わんばかりに、熱干鼠の行進が始まった。
先程先頭に出てきた熱干鼠。恐らくリーダー格であろう熱干鼠の後ろについていき、魔界への入口から離れて500m程北側の地点に到達した。ここまで来るのにおよそ20分程。入口の高さが15m程の溶岩が流れる洞穴がある場所に到達した。
中央に溶岩の小川が奥まで続き、洞穴内の左右には大人五人程が並んで歩けるくらいのスペースの足場が続いているといった構造になっていた。
「ここに何かあるのか?」
俺がそう問いかけるとリーダー格の熱干鼠は頷いた。俺は熱干鼠の言語が分からないのに、熱干鼠は俺の言語を理解しているようだった。
何があるか分からないが行ってみる価値は確かにあるな。信じらないくらい強烈な瘴気。常人なら卒倒するだろこれ。
「ありがとう」
俺がそう伝えると熱干鼠の群れはこの洞穴から出て行った。中には怯えている熱干鼠がいた事を考えると、熱干鼠の天敵か何かがいるのだろう。
アスモデウスさんがベリアルの事を少しでも疑ったのであれば、魔界への入口の様子を見にきたついでに、魔眼の痕跡を使って直近の様子を探る事ができたから、不審な足跡はなかったから悩んでいるのだろう。
「とりあえず先に進んでみるか」
俺は熱干鼠から炎魚へと変身をして溶岩の中を泳いだ。ここに入った時から、小さな個体が大量にあったのは分かっていたので、溶岩の中にはこの炎魚がいる事は予測できていた。こいつは体長30cm程の溶岩の中で活動できる魚で、淡水や海水に放り込むと数分で絶命するという変わった魚だ。
とりあえず目指すのは人の気配がするところ。或いはS級クラスの気配を感じ取れるところまで進んだ。
あの入口からおよそ3.0kmってところで人の気配がしたので溶岩の小川から顔を出して覗いてみた。
「そっちのほうは順調か?」
「ええ。確実に戦力が削れているわ」
「俺も問題ない」
「ならいい。その調子で任務を全うしろ」
とそのような会話だった。男性二人。女性一人の三人組。一見すると何らかの任務内容を話しているようだが、失踪事件と関係あるのかどうかは分からないが、男性がヒーティスに二人もいる時点で怪しさ満点だ。何らかの事件性があるのは明白だった。
ただ、残念なのは黒いローブに身を包んでいるせいで顔が分からない事だ。ただ、ステータスで名前やスキル、種族は確認できる。
まず、二人から進捗報告を聞いていたリーダー格っぽいのが魔族。女性が死恐蛇。もう一人の男性は混合魔獣という三人だった。魔族の男が4,400。死恐蛇の女性が4,000。混合魔獣の男が3,600という戦闘値だった。
しばらく様子を見た方がいいな。
「目に毒だなこれは」
周囲に誰もいない事を目で確認したうえで、辺りの気配を感じ取った。覚醒している神の力ってのは素晴らしいもので、Z級になってから気配に敏感になっていた筈が、さらに敏感になり半径1km程までなら蟻一匹の正確な位置でさえ感じ取れるようになっていた。
辺りはあらゆる魔物だけで、S級以上の人や魔族などの高度な知能を持った個体はいなかった。周囲にいるのは邪竜を含めた魔物達。S級クラスもいるが俺に対して意識が1mmも向いていない。
よし。
俺が次に変身したのは熱干鼠。砂漠や火山地帯に棲息する肉食で獰猛なネズミだ。カルベリアツリーのダンジョンでは、300~400階層くらいで出てきた魔物だ。一層で1,000匹ほどが一気に襲い掛かってきたりするので、並みの冒険者であればそのあまりにも多い数に対応しきれず、己の肉を食われて絶命するだろう。
カルベリアツリーのダンジョンであらゆる魔物が出てきたのが、ここになってこれほど役に立つとは思わなかった。
やっぱり変わった様子は無いな。魔族じゃないからあっちの世界を覗く事ができないのが残念ではあるが。
俺がしばらく魔界への入口を見ていると、数十匹程の熱干鼠が俺の事をじっと見ていた。キー。キー。という一見愛らしい声だが、戦闘態勢に入る時は悪魔のような形相をするんだなこれ。
鳴き声を上げながらこちらに近付いてくるが、俺は熱干鼠の姿をした人間。残念ながらこの熱干鼠が何て言っているかは分からない。
「悪い。俺君達と同じ種族じゃないんだ」
俺がそう言葉を発すると、近付いてきた熱干鼠は立ち止まり、警戒しながらも俺の様子を見ていた。中には体を震わせている個体もいる。
「最近、この辺で変な奴が出て来たりしていなかったか? そうだな。例えば魔族とか」
と言ってもやはり言葉は通じない。それどころか距離を置かれている。
俺が様子を伺っていると、一匹の熱干鼠が俺の方へ近づいてきた。俺のニオイを嗅ぐなり、再び鳴き声を発しながら俺について来いと言わんばかりに、熱干鼠の行進が始まった。
先程先頭に出てきた熱干鼠。恐らくリーダー格であろう熱干鼠の後ろについていき、魔界への入口から離れて500m程北側の地点に到達した。ここまで来るのにおよそ20分程。入口の高さが15m程の溶岩が流れる洞穴がある場所に到達した。
中央に溶岩の小川が奥まで続き、洞穴内の左右には大人五人程が並んで歩けるくらいのスペースの足場が続いているといった構造になっていた。
「ここに何かあるのか?」
俺がそう問いかけるとリーダー格の熱干鼠は頷いた。俺は熱干鼠の言語が分からないのに、熱干鼠は俺の言語を理解しているようだった。
何があるか分からないが行ってみる価値は確かにあるな。信じらないくらい強烈な瘴気。常人なら卒倒するだろこれ。
「ありがとう」
俺がそう伝えると熱干鼠の群れはこの洞穴から出て行った。中には怯えている熱干鼠がいた事を考えると、熱干鼠の天敵か何かがいるのだろう。
アスモデウスさんがベリアルの事を少しでも疑ったのであれば、魔界への入口の様子を見にきたついでに、魔眼の痕跡を使って直近の様子を探る事ができたから、不審な足跡はなかったから悩んでいるのだろう。
「とりあえず先に進んでみるか」
俺は熱干鼠から炎魚へと変身をして溶岩の中を泳いだ。ここに入った時から、小さな個体が大量にあったのは分かっていたので、溶岩の中にはこの炎魚がいる事は予測できていた。こいつは体長30cm程の溶岩の中で活動できる魚で、淡水や海水に放り込むと数分で絶命するという変わった魚だ。
とりあえず目指すのは人の気配がするところ。或いはS級クラスの気配を感じ取れるところまで進んだ。
あの入口からおよそ3.0kmってところで人の気配がしたので溶岩の小川から顔を出して覗いてみた。
「そっちのほうは順調か?」
「ええ。確実に戦力が削れているわ」
「俺も問題ない」
「ならいい。その調子で任務を全うしろ」
とそのような会話だった。男性二人。女性一人の三人組。一見すると何らかの任務内容を話しているようだが、失踪事件と関係あるのかどうかは分からないが、男性がヒーティスに二人もいる時点で怪しさ満点だ。何らかの事件性があるのは明白だった。
ただ、残念なのは黒いローブに身を包んでいるせいで顔が分からない事だ。ただ、ステータスで名前やスキル、種族は確認できる。
まず、二人から進捗報告を聞いていたリーダー格っぽいのが魔族。女性が死恐蛇。もう一人の男性は混合魔獣という三人だった。魔族の男が4,400。死恐蛇の女性が4,000。混合魔獣の男が3,600という戦闘値だった。
しばらく様子を見た方がいいな。
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