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ヒーティスの異変Ⅳ
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二人の記憶の中を見て気になる事が一つだけあった。ベリアルとベリアルの息子のオロバスだ。アスモデウスさんがオロバスを倒した事により、ベリアルの目には怨嗟が込められていた。腹いせにヒーティスの国民にベリアルが手をかけていると思うのが妥当だ。
「アスモデウスさん。ベリアルの可能性は無いか?」
俺の質問に首を傾げて「う~む」と考え込むアスモデウスさん。
「奴の性格上、こんなまどろっこしい事はせんからのう。やるとすれば普通に戦争を吹っ掛けてくるか、魔界にある妾の領に侵攻してくる筈じゃからのう」
「その可能性を危惧して魔界へ訪れたのですが、うちの領に侵攻しているどころか、ベリアル軍は動きを見せていないと報告が入っています」
「成程――まあ気にしても仕方ないな。俺の目で確かめないと気が済まねえ。この辺りの魔物は邪竜で良かったよな?」
「そうじゃのう。首都のカルベージュじゃとまた別じゃが」
「魔界への入口付近も邪竜だったよな?」
「そうじゃのう。もしや――」
アスモデウスさんがそう言った瞬間、俺は邪竜の姿に変身をした。
「見事なもんじゃな」
「どどどど……どういう事ですか!?」
と目を丸くして驚くエリゴス。
「ナリユキ閣下は魔物なら何でも変身できるらしい。元々人型の形をした魔族や人間、森妖精などの種族には変身できないみたいじゃがのう」
「そ――それにしても凄い再現ぶり――」
「この特性はその魔物についてしっかりイメージをしないとその形にはならないけど、俺の場合は創造主で散々色々な物を手から出しているからな。魔物の姿、皮膚、質感をイメージするのは簡単だよ」
「何気に高度な特性じゃのう。常人では使いこなすのに時間がかかりそうじゃな」
「た――確かに。素晴らしいとしか言いようがありません」
「俺には天眼の瞬間記憶眼があるから、視ただけで姿は脳に完全にインプットされるから余計だな。こっちに来た時、カルベリアツリーのダンジョンで場数を踏んだ甲斐があったよ」
「成程。それなら納得じゃな。ただの才能では無く圧倒的な経験値という訳じゃな?」
「そういう事。じゃあ出口を案内してくれ。ちょっと魔界への入口に行ってくる」
俺がそう言うとアスモデウスさんは怪訝な表情を浮かべた後、「其方まさか一人で行く気じゃないだろうな!」と声を荒げた。
「そのつもりだけど何か問題あるか?」
「問題大有りじゃ! せめて護衛の一人くらい付けたらどうじゃ!」
「そうですよ! ナリユキ閣下は一国の主なんですよ!?」
と、二人にめちゃくちゃ詰められる俺。
「護衛なんてつけてみろ、偶然何か手がかりを見つけた時に相手を泳がせて真実にたどり着くことができない」
「それはそうじゃが一番の問題があるのじゃ」
「え? 何かある?」
「さっきのように猫の姿であれば、わざわざステータスを視ようとは思わん。しかし、邪竜は世間では凶悪な魔物じゃ。そんな邪竜のステータスが視認できなければ、勘の良い奴は其方の事を警戒するじゃろう! 魔王の妾でさえ其方の邪竜姿のステータスが視えないのじゃ。そんな可笑しな話があってはならぬ!」
「――ごもっとです」
エリゴスがコホンと咳払いをしてこう続けた。
「邪竜は強くてS級。戦闘値も相当高い個体で4,000。それ以上の邪竜は人型化姿になる事ができる聡明な個体が殆どです。ですのでナリユキ閣下がなりきろうとしている野生の邪竜は辻褄が合わないのです」
「ステータスの確認は意識をして発動するパッシブスキル。要は意識をさせなければいい訳だな」
「そうじゃが、そんな簡単な話ではないぞ?」
「海内無双もすっかり馴染んできたし使えそうだからやってみるか」
俺は一旦目を瞑り深く深呼吸をした。二人はその様子を怪訝な表情をして静観していた。
「よし」
ポセイドンの性格は非常に温厚。しかし荒々しい時は手が付けられない。そんな性格が特性に反映されているみたいだ。まるでこの空間そのものと一体化したような感覚だ。
「凄い――目の前にナリユキ閣下いるはずなのに――」
「いないみたいじゃのう――。まるで無じゃ。気配が完全に消えている」
「これを使えばそれほど目立たないだろ。それにこの辺りは人も少ないからな」
「確かにそうじゃが、本当に良いのか? 護衛の一人くらいはつけさせてほしいのじゃ」
「かえって目立つから大丈夫。まあ任せてくれ」
「かしこまりました。しかし、くれぐれもお気をつけて下さい」
「その通りじゃぞ」
「まあ、俺が逃げるとしたらコヴィー・S・ウィズダムが出てきたときくらいだな。ただ、奴も迂闊には地上には来れないと思うし」
俺がそう言うとアスモデウスさんは怪訝な表情を浮かべていた。
「何故じゃ?」
「森妖精の祖が俺の事も見ているからだ。もし、何かあったときはあの人も飛んでくる筈だからな。あの人はコヴィー・S・ウィズダムを追っている共通の敵だから」
俺がそう伝えるとアスモデウスさんは「成程な」と頷いた。一方、エリゴスは「どういう事でしょう?」とアスモデウスさんに尋ねていたが、アスモデウスさんは「言えないのう」と茶化していた。ミロクの存在は大々的に知られてはならないからな。
「アスモデウスさん。ベリアルの可能性は無いか?」
俺の質問に首を傾げて「う~む」と考え込むアスモデウスさん。
「奴の性格上、こんなまどろっこしい事はせんからのう。やるとすれば普通に戦争を吹っ掛けてくるか、魔界にある妾の領に侵攻してくる筈じゃからのう」
「その可能性を危惧して魔界へ訪れたのですが、うちの領に侵攻しているどころか、ベリアル軍は動きを見せていないと報告が入っています」
「成程――まあ気にしても仕方ないな。俺の目で確かめないと気が済まねえ。この辺りの魔物は邪竜で良かったよな?」
「そうじゃのう。首都のカルベージュじゃとまた別じゃが」
「魔界への入口付近も邪竜だったよな?」
「そうじゃのう。もしや――」
アスモデウスさんがそう言った瞬間、俺は邪竜の姿に変身をした。
「見事なもんじゃな」
「どどどど……どういう事ですか!?」
と目を丸くして驚くエリゴス。
「ナリユキ閣下は魔物なら何でも変身できるらしい。元々人型の形をした魔族や人間、森妖精などの種族には変身できないみたいじゃがのう」
「そ――それにしても凄い再現ぶり――」
「この特性はその魔物についてしっかりイメージをしないとその形にはならないけど、俺の場合は創造主で散々色々な物を手から出しているからな。魔物の姿、皮膚、質感をイメージするのは簡単だよ」
「何気に高度な特性じゃのう。常人では使いこなすのに時間がかかりそうじゃな」
「た――確かに。素晴らしいとしか言いようがありません」
「俺には天眼の瞬間記憶眼があるから、視ただけで姿は脳に完全にインプットされるから余計だな。こっちに来た時、カルベリアツリーのダンジョンで場数を踏んだ甲斐があったよ」
「成程。それなら納得じゃな。ただの才能では無く圧倒的な経験値という訳じゃな?」
「そういう事。じゃあ出口を案内してくれ。ちょっと魔界への入口に行ってくる」
俺がそう言うとアスモデウスさんは怪訝な表情を浮かべた後、「其方まさか一人で行く気じゃないだろうな!」と声を荒げた。
「そのつもりだけど何か問題あるか?」
「問題大有りじゃ! せめて護衛の一人くらい付けたらどうじゃ!」
「そうですよ! ナリユキ閣下は一国の主なんですよ!?」
と、二人にめちゃくちゃ詰められる俺。
「護衛なんてつけてみろ、偶然何か手がかりを見つけた時に相手を泳がせて真実にたどり着くことができない」
「それはそうじゃが一番の問題があるのじゃ」
「え? 何かある?」
「さっきのように猫の姿であれば、わざわざステータスを視ようとは思わん。しかし、邪竜は世間では凶悪な魔物じゃ。そんな邪竜のステータスが視認できなければ、勘の良い奴は其方の事を警戒するじゃろう! 魔王の妾でさえ其方の邪竜姿のステータスが視えないのじゃ。そんな可笑しな話があってはならぬ!」
「――ごもっとです」
エリゴスがコホンと咳払いをしてこう続けた。
「邪竜は強くてS級。戦闘値も相当高い個体で4,000。それ以上の邪竜は人型化姿になる事ができる聡明な個体が殆どです。ですのでナリユキ閣下がなりきろうとしている野生の邪竜は辻褄が合わないのです」
「ステータスの確認は意識をして発動するパッシブスキル。要は意識をさせなければいい訳だな」
「そうじゃが、そんな簡単な話ではないぞ?」
「海内無双もすっかり馴染んできたし使えそうだからやってみるか」
俺は一旦目を瞑り深く深呼吸をした。二人はその様子を怪訝な表情をして静観していた。
「よし」
ポセイドンの性格は非常に温厚。しかし荒々しい時は手が付けられない。そんな性格が特性に反映されているみたいだ。まるでこの空間そのものと一体化したような感覚だ。
「凄い――目の前にナリユキ閣下いるはずなのに――」
「いないみたいじゃのう――。まるで無じゃ。気配が完全に消えている」
「これを使えばそれほど目立たないだろ。それにこの辺りは人も少ないからな」
「確かにそうじゃが、本当に良いのか? 護衛の一人くらいはつけさせてほしいのじゃ」
「かえって目立つから大丈夫。まあ任せてくれ」
「かしこまりました。しかし、くれぐれもお気をつけて下さい」
「その通りじゃぞ」
「まあ、俺が逃げるとしたらコヴィー・S・ウィズダムが出てきたときくらいだな。ただ、奴も迂闊には地上には来れないと思うし」
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「何故じゃ?」
「森妖精の祖が俺の事も見ているからだ。もし、何かあったときはあの人も飛んでくる筈だからな。あの人はコヴィー・S・ウィズダムを追っている共通の敵だから」
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