【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
583 / 597

ヒーティスの異変Ⅲ

しおりを挟む
 数時間後、まずはヒーティスへ赴き、アスモデウスさんの暗黒城でエリゴス達と対面することになった。

「お帰りなさいませアスモデウス様――と、ナリユキ閣下!?」

 と、エリゴスは驚いた表情を見せた。

「そんなお化けみたいな反応しなくてもいいだろ」

「失礼致しました。またお会いできた事光栄に思います」

「――本当か?」

 俺がそう茶化すとエリゴスは――

「ほ――本当ですよ! 黒龍ニゲル・クティオストルーデと最後まで戦い、世界を救ってくれた英雄なのですから」

 初めて会った五芒星会議ペンタグラム・サミットの時は敵視されていたが、今ではすっかり尊敬の対象となっているのが分かる。

「今やナリユキ閣下の名前を知らない者は非常識といわれているくらいじゃしのう。知名度で言えば妾や青龍リオと同レベルじゃ」

「それ、まだ実感無いんだけどな。結局あの一件から訪れた国って知り合いの国ばかりだし、全然関係ないシールズに関しては、黒龍ニゲルの影響で世界が亡びそうになったいたことすら知らないからな」

「シールズか。妾でさえ存在を知らなかった。そもそも世界地図にはシールズは記されていないからのう。まあ、黒龍ニゲルの影響で世界が亡びそうになっていた事も知らなかったのは驚きじゃが」

「だろ?」

 俺達がアスモデウスさんとそう話をしていると、エリゴスが間に入ってきた。

「それはそうとナリユキ閣下。本日はどのようなご用件で? 観光――と言った感じもなさそうですが」

 と尋ねてきた。純粋に気になったのだろう。

「閣下には少し手伝ってもらおうと思ってのう。エリゴス。閣下にヒーティスで起きている失踪事件の詳細を教えてくれ。と言っても大した情報はないが」

「そうですね――って、え!? 失踪事件についてお調べになってくれるんですか!?」

「まあそんなところだ。滞在期間はそれほど長くいられないけどな」

 俺がそう言うとエリゴスは笑みを浮かべていた。

「それでは別室へ案内致します。こちらへ」

 エリゴスに連れられて暗黒城の作戦会議室ブリーフィングルームと思われる部屋に訪れた。六芒星会議ヘキサグラム・サミットで使用する部屋と似ている。部屋の中央にあるテーブルにはホログラムが映し出されていた。

「現状何も手がかりがありません。またこちらを見て頂ければ分かると思いますが、失踪者はヒーティス国内全域となっております」

 ホログラムにヒーティスの国全土が映し出されたと思えば赤い点が点在していた。それもかなりの数だ。

「これが失踪者の数だよな? 百個近くある?」

「はい。失踪者は合計132名となっております。また、中には殺害されている民もいます。私としては、犯人を見つけ次第始末したいと考えております」

 エリゴスは拳を強く握り怒りを露わにし、魔族独特の邪気を微量ではあるが放出していた。

「エリゴスよ。気持ちは妾も同じじゃ。しかし今はナリユキ閣下の御前。気持ちを鎮めるのじゃ」

「はい……」

 エリゴスはゆっくりと拳の力を緩めていくと邪気も次第に消えていた。

「情報としてはこれくらいか?」

「はい。お恥ずかしい話ではありますが――」

「確か、黒龍ニゲルを倒した後からだよな?」

「そうです。黒龍ニゲル・クティオストルーデを倒してから数日後から一人の失踪者が現れました。その後次々に民が消えて行ったのです」

「原則じゃが、妙な気配があれば直ぐに気付くのじゃが」

「その気配は一つも無かったって事だよな?」

「その通りじゃ」

黒龍ニゲルを崇拝している人物や団体はあったか?」

「ある訳ありません。民は皆、アスモデウス様を崇拝しているくらいですので」

「別に妾を崇拝せずとも良いのじゃが、民は皆好いてくれているのじゃ」

 二人の表情や発言を見る限りでは本当に思い当たる節がない様子だった。普通に考えれば黒龍ニゲルの死亡により、不利益になった人物がヒーティスの国民を襲っている可能性を考慮すべき。以前ヒーティスに訪れた時の様子を思い出すと、アスモデウス教と言ってもおかしくない程、民はアスモデウスさんを崇拝している。とてもじゃないが、他の何か信仰するような風潮はない。ましてや、黒龍ニゲルを崇拝していた何て考えにくい。青龍リオが自国で民から神様呼ばわりされているのと似たような感じだからな~。そう考えると、ヒーティスの国民ではない部外者の可能性が高そうだ。

「確認だけど、不審な人物は見ていないんだよな? 例えば男とか」

「最近はいないのう。失踪者が続出してからこの国は一時的に閉鎖しているので、ヒーティスに現在いる男性はナリユキ閣下だけじゃ」

「犯人は女性の団体だと考えるのが妥当だろうな」

「そうですね」

 エリゴスはそう言って深く頷いていた。

「被害者の特徴とか無いのか?」

「特に決まっている訳では無さそうじゃ。魔族、人間、森妖精エルフ闇森妖精ダークエルフ、獣人――年齢も種族もバラバラじゃからのう」

 アスモデウスさんがそう言った後、エリゴスが「あっ!」と何か閃いたような声を出した。

「殺害された犠牲者は全員魔族です」

 エリゴスの発言に「確かにそうじゃな」と頷くアスモデウスさん。

「犠牲者の数は?」

「3人です」

 犠牲者がまだ3人と言ったのが何とも言えないな。ヒーティスは魔族が多いからたまたま魔族の可能性もあるし。

「アスモデウスさん、エリゴス。二人の記憶を見せてくれ」

 俺がそう言うと二人は力強く頷いた。

「じゃあ、始めるぞ。知性・記憶の略奪と献上メーティスを」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...