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ヒーティスの異変Ⅲ
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数時間後、まずはヒーティスへ赴き、アスモデウスさんの暗黒城でエリゴス達と対面することになった。
「お帰りなさいませアスモデウス様――と、ナリユキ閣下!?」
と、エリゴスは驚いた表情を見せた。
「そんなお化けみたいな反応しなくてもいいだろ」
「失礼致しました。またお会いできた事光栄に思います」
「――本当か?」
俺がそう茶化すとエリゴスは――
「ほ――本当ですよ! 黒龍と最後まで戦い、世界を救ってくれた英雄なのですから」
初めて会った五芒星会議の時は敵視されていたが、今ではすっかり尊敬の対象となっているのが分かる。
「今やナリユキ閣下の名前を知らない者は非常識といわれているくらいじゃしのう。知名度で言えば妾や青龍と同レベルじゃ」
「それ、まだ実感無いんだけどな。結局あの一件から訪れた国って知り合いの国ばかりだし、全然関係ないシールズに関しては、黒龍の影響で世界が亡びそうになったいたことすら知らないからな」
「シールズか。妾でさえ存在を知らなかった。そもそも世界地図にはシールズは記されていないからのう。まあ、黒龍の影響で世界が亡びそうになっていた事も知らなかったのは驚きじゃが」
「だろ?」
俺達がアスモデウスさんとそう話をしていると、エリゴスが間に入ってきた。
「それはそうとナリユキ閣下。本日はどのようなご用件で? 観光――と言った感じもなさそうですが」
と尋ねてきた。純粋に気になったのだろう。
「閣下には少し手伝ってもらおうと思ってのう。エリゴス。閣下にヒーティスで起きている失踪事件の詳細を教えてくれ。と言っても大した情報はないが」
「そうですね――って、え!? 失踪事件についてお調べになってくれるんですか!?」
「まあそんなところだ。滞在期間はそれほど長くいられないけどな」
俺がそう言うとエリゴスは笑みを浮かべていた。
「それでは別室へ案内致します。こちらへ」
エリゴスに連れられて暗黒城の作戦会議室と思われる部屋に訪れた。六芒星会議で使用する部屋と似ている。部屋の中央にあるテーブルにはホログラムが映し出されていた。
「現状何も手がかりがありません。またこちらを見て頂ければ分かると思いますが、失踪者はヒーティス国内全域となっております」
ホログラムにヒーティスの国全土が映し出されたと思えば赤い点が点在していた。それもかなりの数だ。
「これが失踪者の数だよな? 百個近くある?」
「はい。失踪者は合計132名となっております。また、中には殺害されている民もいます。私としては、犯人を見つけ次第始末したいと考えております」
エリゴスは拳を強く握り怒りを露わにし、魔族独特の邪気を微量ではあるが放出していた。
「エリゴスよ。気持ちは妾も同じじゃ。しかし今はナリユキ閣下の御前。気持ちを鎮めるのじゃ」
「はい……」
エリゴスはゆっくりと拳の力を緩めていくと邪気も次第に消えていた。
「情報としてはこれくらいか?」
「はい。お恥ずかしい話ではありますが――」
「確か、黒龍を倒した後からだよな?」
「そうです。黒龍を倒してから数日後から一人の失踪者が現れました。その後次々に民が消えて行ったのです」
「原則じゃが、妙な気配があれば直ぐに気付くのじゃが」
「その気配は一つも無かったって事だよな?」
「その通りじゃ」
「黒龍を崇拝している人物や団体はあったか?」
「ある訳ありません。民は皆、アスモデウス様を崇拝しているくらいですので」
「別に妾を崇拝せずとも良いのじゃが、民は皆好いてくれているのじゃ」
二人の表情や発言を見る限りでは本当に思い当たる節がない様子だった。普通に考えれば黒龍の死亡により、不利益になった人物がヒーティスの国民を襲っている可能性を考慮すべき。以前ヒーティスに訪れた時の様子を思い出すと、アスモデウス教と言ってもおかしくない程、民はアスモデウスさんを崇拝している。とてもじゃないが、他の何か信仰するような風潮はない。ましてや、黒龍を崇拝していた何て考えにくい。青龍が自国で民から神様呼ばわりされているのと似たような感じだからな~。そう考えると、ヒーティスの国民ではない部外者の可能性が高そうだ。
「確認だけど、不審な人物は見ていないんだよな? 例えば男とか」
「最近はいないのう。失踪者が続出してからこの国は一時的に閉鎖しているので、ヒーティスに現在いる男性はナリユキ閣下だけじゃ」
「犯人は女性の団体だと考えるのが妥当だろうな」
「そうですね」
エリゴスはそう言って深く頷いていた。
「被害者の特徴とか無いのか?」
「特に決まっている訳では無さそうじゃ。魔族、人間、森妖精、闇森妖精、獣人――年齢も種族もバラバラじゃからのう」
アスモデウスさんがそう言った後、エリゴスが「あっ!」と何か閃いたような声を出した。
「殺害された犠牲者は全員魔族です」
エリゴスの発言に「確かにそうじゃな」と頷くアスモデウスさん。
「犠牲者の数は?」
「3人です」
犠牲者がまだ3人と言ったのが何とも言えないな。ヒーティスは魔族が多いからたまたま魔族の可能性もあるし。
「アスモデウスさん、エリゴス。二人の記憶を見せてくれ」
俺がそう言うと二人は力強く頷いた。
「じゃあ、始めるぞ。知性・記憶の略奪と献上を」
「お帰りなさいませアスモデウス様――と、ナリユキ閣下!?」
と、エリゴスは驚いた表情を見せた。
「そんなお化けみたいな反応しなくてもいいだろ」
「失礼致しました。またお会いできた事光栄に思います」
「――本当か?」
俺がそう茶化すとエリゴスは――
「ほ――本当ですよ! 黒龍と最後まで戦い、世界を救ってくれた英雄なのですから」
初めて会った五芒星会議の時は敵視されていたが、今ではすっかり尊敬の対象となっているのが分かる。
「今やナリユキ閣下の名前を知らない者は非常識といわれているくらいじゃしのう。知名度で言えば妾や青龍と同レベルじゃ」
「それ、まだ実感無いんだけどな。結局あの一件から訪れた国って知り合いの国ばかりだし、全然関係ないシールズに関しては、黒龍の影響で世界が亡びそうになったいたことすら知らないからな」
「シールズか。妾でさえ存在を知らなかった。そもそも世界地図にはシールズは記されていないからのう。まあ、黒龍の影響で世界が亡びそうになっていた事も知らなかったのは驚きじゃが」
「だろ?」
俺達がアスモデウスさんとそう話をしていると、エリゴスが間に入ってきた。
「それはそうとナリユキ閣下。本日はどのようなご用件で? 観光――と言った感じもなさそうですが」
と尋ねてきた。純粋に気になったのだろう。
「閣下には少し手伝ってもらおうと思ってのう。エリゴス。閣下にヒーティスで起きている失踪事件の詳細を教えてくれ。と言っても大した情報はないが」
「そうですね――って、え!? 失踪事件についてお調べになってくれるんですか!?」
「まあそんなところだ。滞在期間はそれほど長くいられないけどな」
俺がそう言うとエリゴスは笑みを浮かべていた。
「それでは別室へ案内致します。こちらへ」
エリゴスに連れられて暗黒城の作戦会議室と思われる部屋に訪れた。六芒星会議で使用する部屋と似ている。部屋の中央にあるテーブルにはホログラムが映し出されていた。
「現状何も手がかりがありません。またこちらを見て頂ければ分かると思いますが、失踪者はヒーティス国内全域となっております」
ホログラムにヒーティスの国全土が映し出されたと思えば赤い点が点在していた。それもかなりの数だ。
「これが失踪者の数だよな? 百個近くある?」
「はい。失踪者は合計132名となっております。また、中には殺害されている民もいます。私としては、犯人を見つけ次第始末したいと考えております」
エリゴスは拳を強く握り怒りを露わにし、魔族独特の邪気を微量ではあるが放出していた。
「エリゴスよ。気持ちは妾も同じじゃ。しかし今はナリユキ閣下の御前。気持ちを鎮めるのじゃ」
「はい……」
エリゴスはゆっくりと拳の力を緩めていくと邪気も次第に消えていた。
「情報としてはこれくらいか?」
「はい。お恥ずかしい話ではありますが――」
「確か、黒龍を倒した後からだよな?」
「そうです。黒龍を倒してから数日後から一人の失踪者が現れました。その後次々に民が消えて行ったのです」
「原則じゃが、妙な気配があれば直ぐに気付くのじゃが」
「その気配は一つも無かったって事だよな?」
「その通りじゃ」
「黒龍を崇拝している人物や団体はあったか?」
「ある訳ありません。民は皆、アスモデウス様を崇拝しているくらいですので」
「別に妾を崇拝せずとも良いのじゃが、民は皆好いてくれているのじゃ」
二人の表情や発言を見る限りでは本当に思い当たる節がない様子だった。普通に考えれば黒龍の死亡により、不利益になった人物がヒーティスの国民を襲っている可能性を考慮すべき。以前ヒーティスに訪れた時の様子を思い出すと、アスモデウス教と言ってもおかしくない程、民はアスモデウスさんを崇拝している。とてもじゃないが、他の何か信仰するような風潮はない。ましてや、黒龍を崇拝していた何て考えにくい。青龍が自国で民から神様呼ばわりされているのと似たような感じだからな~。そう考えると、ヒーティスの国民ではない部外者の可能性が高そうだ。
「確認だけど、不審な人物は見ていないんだよな? 例えば男とか」
「最近はいないのう。失踪者が続出してからこの国は一時的に閉鎖しているので、ヒーティスに現在いる男性はナリユキ閣下だけじゃ」
「犯人は女性の団体だと考えるのが妥当だろうな」
「そうですね」
エリゴスはそう言って深く頷いていた。
「被害者の特徴とか無いのか?」
「特に決まっている訳では無さそうじゃ。魔族、人間、森妖精、闇森妖精、獣人――年齢も種族もバラバラじゃからのう」
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「殺害された犠牲者は全員魔族です」
エリゴスの発言に「確かにそうじゃな」と頷くアスモデウスさん。
「犠牲者の数は?」
「3人です」
犠牲者がまだ3人と言ったのが何とも言えないな。ヒーティスは魔族が多いからたまたま魔族の可能性もあるし。
「アスモデウスさん、エリゴス。二人の記憶を見せてくれ」
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