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ヒーティスの異変Ⅱ
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「黒龍を討伐して数日後くらいじゃ。ヒーティス国内の失踪者が増加しておってのう。その調査をヴィクトーラを筆頭に色々なパーティーに依頼しておるのじゃが進展が無くてのう」
「ヴィクトーラって」
「ほら、エヴァさん、シュファさん、カルロータさん、ランベーフさんがいるギルドパーティーだよ」
「ああ。フォルボスの件ですっかりお世話になったパーティーだな」
「そうそう!」
いや、パーティー名なんて知らないから名前言われなきゃ分からんって。
「それでエヴァさん達じゃ原因が分からないって事か」
「そういう事じゃ。依頼しているパーティーは合計3パーティーとなっておる。そして、恐ろしい話なのじゃが、そのうちの1パーティーが失踪してしまったのじゃ」
「――成程ね」
「国民達が頭を抱えている姿を見るのは非常に胸が痛くてのう」
「心当たりはないのか? 無いのう――。あるとしたら他の国が関与しているとしか思えないのじゃ」
「気を悪くしないでほしいんだけど、自国の住人がその事件の犯人って可能性は少ないと言い切れる? うちの国でもやっぱり犯罪はちょこちょこあるからな」
「マーズベルでもあったのか!?」
「え? そうだけど」
俺がそう返事をすると「信じられない……」と呟き表情が暗くなっていた。俺の国では転生者も多いからな。全世界で言えば少ないけど、やっぱり一日一件あるかないかで犯罪はある。
「人口が増えているんだから当たり前だよな。綺麗事だけじゃやっていけないんだ」
「確かにそれはそうじゃな。ヒーティスはそれほど目立たないが、魔界のほうでは仲間内で派閥争いをしている――なんて話も訊くくらいじゃしのう」
「そういう事。それで? 解決策を講じてほしいって感じかな?」
俺がそう提案すると「良いのか?」と期待した表情を見せていた。
「時間はそれほど取れないけど三日程ヒーティスに行ってもいいぞ。現地調査は大事だしな」
「ナリユキ君。また出かけるの? それに一国の主がヒーティスに現れたら普通に調査していたら犯人も警戒して炙り出せないよ。ただでさえ、黒龍の一件で超有名な国家元首になっているんだから」
ミクちゃんがそう指摘した。本来であればごもっともな意見だ。しかし今の俺は以前の俺とは訳が違う。
「どうしたのじゃ? そんな素敵な笑みを浮かべて」
アスモデウスさんのヨイショ発言は一旦無視をして俺は海内無双の特性を駆使してとある姿に変身した。
勿論、変身をした途端、ミクちゃんとアスモデウスさんは呆気をとられていた。
「それどういう事?」
「もしかしてそれは? と、言うか何じゃその可愛い姿は――」
「か――可愛い!」
ミクちゃんの目がキラキラと輝き、机の上に乗った俺を抱えてきた。身体が小さくなった分、おっぱいの感触を楽しめる――ゴホン。失礼しました。
「か……可愛すぎるのじゃ。それもしかして」
「……ああ。喋れるよ」
「さ――最高じゃ! ミク殿! 妾にも抱かせてくれぬか!? 妾は猫も好きなんじゃ!」
アスモデウスさん。凄く鼻息が荒いです。
「アスモデウスさん。危ないニオイがします」
ミクちゃんがアスモデウスさんを睨めつけてそう言うと「後生のお願いじゃ!」と手を合わせている姿は先程の魔王感と比べると凄い落差である。その凄まじいまでの熱意にミクちゃんはアスモデウスさんに俺を預けてた。
「アスモデウスさん。流石に息が苦しい」
「妾も苦しいのじゃ。なんじゃ、この天国は! なんじゃこの胸が張り裂けそうな愛おしい姿は!」
と大興奮である。
「と、まあ俺は人間以外であればどんな生物にも瞬時に変身できるから、調査するにはうってつけの姿になれるって事だよ」
「確かに。猫や犬。鳥の姿なら違和感無いもんね。くうう――そんな色々な姿に変身できるなら、余計に離れたくない。ただでさえ少し離れただけも結構我慢しているのに」
そうミクちゃんが猫姿の俺に向かって涙ながら訴えきた。
「あ、はい。ごめんなさい。時間とって二人だけで旅行行こうな?」
「絶対だよ! 新婚旅行行くもん!」
唐突に超女の子になったミクちゃん。相当我慢していたんだな。いや、でも確かにシールズ行っていたのに次はヒーティスに行きます! って言ったらそりゃあ爆発もするわな。
「いいのう。妾とも婚姻の義を結んでほしいのじゃ」
「それは却下で」
俺がアスモデウスさんの目を見ながらそう突っぱねると、「ぐっ――!」と吐血していた。
「猫姿じゃからか。はっきり断られるとダメージが大きい……」
「おいおい。本題から話が逸れてるぞ」
「そ――そうじゃな」
と、咳払いをして凛とした表情を見せるアスモデウスさん。
「結論、俺はこの姿であればその生物が持つ特性を使う事ができる。例えばこの猫の姿なら、65,000Hzの高周波の音を聞き取ることができるとかな。あとは、人間の視覚って三原色だけど、猫の場合は赤を感知する細胞が無いから人間の姿の時より世界がぼやけて見える。まあその生物になりきれるってことだ。あとは、ユニークスキルは使えないけど、アクティブスキルは使える」
俺はそう言って小さい紅炎放射を使って見せた。今の俺が普通に出すと、ミクちゃんもアスモデウスさんもダメージ負っちゃうからな。だから俺が見せたのはバーナーくらいの小さい火力だった。
「猫姿で紅炎放射って少し面白いね」
「全くじゃな。であれば、護衛などは別にしなくてもよいのか?」
「勿論いらない。それにいつもでも元に戻れるからな」
と、言って人間の姿に戻ると、ミクちゃんとアスモデウスさんは拍手をしてくれた。
「逆人型化だね!」
「確かに、魔物が人間に馴染む為に人間の姿になるのは、S級の魔物であれば当たり前のところはあるが、逆のパターンは無いからのう」
「だから、俺が色々な姿に変えて調べてやるよ。もし、調べてほしい場所とかあるなら教えてくれ」
「そうじゃの。少し整理してみる」
アスモデウスはそう気が晴れたような軽やかな表情に戻っていた。果たして少ない時間でどれだけ調べる事ができるか――。
「ヴィクトーラって」
「ほら、エヴァさん、シュファさん、カルロータさん、ランベーフさんがいるギルドパーティーだよ」
「ああ。フォルボスの件ですっかりお世話になったパーティーだな」
「そうそう!」
いや、パーティー名なんて知らないから名前言われなきゃ分からんって。
「それでエヴァさん達じゃ原因が分からないって事か」
「そういう事じゃ。依頼しているパーティーは合計3パーティーとなっておる。そして、恐ろしい話なのじゃが、そのうちの1パーティーが失踪してしまったのじゃ」
「――成程ね」
「国民達が頭を抱えている姿を見るのは非常に胸が痛くてのう」
「心当たりはないのか? 無いのう――。あるとしたら他の国が関与しているとしか思えないのじゃ」
「気を悪くしないでほしいんだけど、自国の住人がその事件の犯人って可能性は少ないと言い切れる? うちの国でもやっぱり犯罪はちょこちょこあるからな」
「マーズベルでもあったのか!?」
「え? そうだけど」
俺がそう返事をすると「信じられない……」と呟き表情が暗くなっていた。俺の国では転生者も多いからな。全世界で言えば少ないけど、やっぱり一日一件あるかないかで犯罪はある。
「人口が増えているんだから当たり前だよな。綺麗事だけじゃやっていけないんだ」
「確かにそれはそうじゃな。ヒーティスはそれほど目立たないが、魔界のほうでは仲間内で派閥争いをしている――なんて話も訊くくらいじゃしのう」
「そういう事。それで? 解決策を講じてほしいって感じかな?」
俺がそう提案すると「良いのか?」と期待した表情を見せていた。
「時間はそれほど取れないけど三日程ヒーティスに行ってもいいぞ。現地調査は大事だしな」
「ナリユキ君。また出かけるの? それに一国の主がヒーティスに現れたら普通に調査していたら犯人も警戒して炙り出せないよ。ただでさえ、黒龍の一件で超有名な国家元首になっているんだから」
ミクちゃんがそう指摘した。本来であればごもっともな意見だ。しかし今の俺は以前の俺とは訳が違う。
「どうしたのじゃ? そんな素敵な笑みを浮かべて」
アスモデウスさんのヨイショ発言は一旦無視をして俺は海内無双の特性を駆使してとある姿に変身した。
勿論、変身をした途端、ミクちゃんとアスモデウスさんは呆気をとられていた。
「それどういう事?」
「もしかしてそれは? と、言うか何じゃその可愛い姿は――」
「か――可愛い!」
ミクちゃんの目がキラキラと輝き、机の上に乗った俺を抱えてきた。身体が小さくなった分、おっぱいの感触を楽しめる――ゴホン。失礼しました。
「か……可愛すぎるのじゃ。それもしかして」
「……ああ。喋れるよ」
「さ――最高じゃ! ミク殿! 妾にも抱かせてくれぬか!? 妾は猫も好きなんじゃ!」
アスモデウスさん。凄く鼻息が荒いです。
「アスモデウスさん。危ないニオイがします」
ミクちゃんがアスモデウスさんを睨めつけてそう言うと「後生のお願いじゃ!」と手を合わせている姿は先程の魔王感と比べると凄い落差である。その凄まじいまでの熱意にミクちゃんはアスモデウスさんに俺を預けてた。
「アスモデウスさん。流石に息が苦しい」
「妾も苦しいのじゃ。なんじゃ、この天国は! なんじゃこの胸が張り裂けそうな愛おしい姿は!」
と大興奮である。
「と、まあ俺は人間以外であればどんな生物にも瞬時に変身できるから、調査するにはうってつけの姿になれるって事だよ」
「確かに。猫や犬。鳥の姿なら違和感無いもんね。くうう――そんな色々な姿に変身できるなら、余計に離れたくない。ただでさえ少し離れただけも結構我慢しているのに」
そうミクちゃんが猫姿の俺に向かって涙ながら訴えきた。
「あ、はい。ごめんなさい。時間とって二人だけで旅行行こうな?」
「絶対だよ! 新婚旅行行くもん!」
唐突に超女の子になったミクちゃん。相当我慢していたんだな。いや、でも確かにシールズ行っていたのに次はヒーティスに行きます! って言ったらそりゃあ爆発もするわな。
「いいのう。妾とも婚姻の義を結んでほしいのじゃ」
「それは却下で」
俺がアスモデウスさんの目を見ながらそう突っぱねると、「ぐっ――!」と吐血していた。
「猫姿じゃからか。はっきり断られるとダメージが大きい……」
「おいおい。本題から話が逸れてるぞ」
「そ――そうじゃな」
と、咳払いをして凛とした表情を見せるアスモデウスさん。
「結論、俺はこの姿であればその生物が持つ特性を使う事ができる。例えばこの猫の姿なら、65,000Hzの高周波の音を聞き取ることができるとかな。あとは、人間の視覚って三原色だけど、猫の場合は赤を感知する細胞が無いから人間の姿の時より世界がぼやけて見える。まあその生物になりきれるってことだ。あとは、ユニークスキルは使えないけど、アクティブスキルは使える」
俺はそう言って小さい紅炎放射を使って見せた。今の俺が普通に出すと、ミクちゃんもアスモデウスさんもダメージ負っちゃうからな。だから俺が見せたのはバーナーくらいの小さい火力だった。
「猫姿で紅炎放射って少し面白いね」
「全くじゃな。であれば、護衛などは別にしなくてもよいのか?」
「勿論いらない。それにいつもでも元に戻れるからな」
と、言って人間の姿に戻ると、ミクちゃんとアスモデウスさんは拍手をしてくれた。
「逆人型化だね!」
「確かに、魔物が人間に馴染む為に人間の姿になるのは、S級の魔物であれば当たり前のところはあるが、逆のパターンは無いからのう」
「だから、俺が色々な姿に変えて調べてやるよ。もし、調べてほしい場所とかあるなら教えてくれ」
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