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シールズの遺跡Ⅲ
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「この地に訪れし神に選ばれた者よ。よくぞこの地に訪れた。歓迎しよう。このような辺境の地に言伝を残しているのは云うまでも無い。多くの人の目に触れたくないからだ。余はこの地を奈落神タルタロスから守り続けた神だ。そしてここはタルタロスが根城にしていた地下世界への入口ともなる。タルタロスは邪悪で凶悪だ。奴の力も何千年後或いは何万年後かに再び世界を恐怖のどん底へ陥れる可能性は極めて高い。その時にこの地を活用する良い。其方が念じれば、余が仕掛けた力で地下世界の中層部に到達する事ができる時空間移動穴が開く。そこから真っすぐ正面に向かったところには巨大な扉がある。そこに余の力を保管している。もし、来るタルタロスの力を宿す者と戦う時が来るならば、余の力も役立つはずだ。来てみるといい」
何これパワーアップフラグ!?
「そう書かれているの?」
「ああ。どんな神か分からないけど、タルタロスの力を持つ者が世界を脅かす事が分かっていたんだな」
「そのタルタロスの力を持つ者は今はいるの?」
「ああ。コヴィー・S・ウィズダムっていう人だ。俺達と同じ転生者だよ。この国にも本があるなら名前くらいは見たことがあるんじゃないか?」
「もしかして十賢者の!?」
「まさにその通り。まあ話すと長くなるしとりあえず行ってみるか」
「でも、念じるってどうすれば?」
「あんまり自信無いけどこんな感じかな」
俺は目を瞑って時空間移動穴のイメージを行った。すると膨大なMPがこの遺跡を漂い、やがて魔法陣が俺達を囲んだ。数秒後。石板の前に時空間移動穴が開かれたのだった。
「凄い――」
「じゃあ行くか」
俺がそう言うとアイに「何でそんなに冷静なの?」と訊かれたので「慣れだな」と返した。
時空間移動穴に入った瞬間、全く別の世界に訪れた。
天井までは高さ20メートルほどで、壁も天井も全て石造りとなっていた。まるでどこかの秘密基地のようにも思える空間。少し変わった点と言えばその石は全て黒かった。人工的に石を黒く塗ったわけではなく元々黒い石のようだ。
この空間の灯りとなっているのは、壁に設置された松明だ。ただこの松明は空間の壁の四方に設置されているだけで、普通ではこの100坪はありそうなこの空間を四つの松明で空間を照らすことは難しい。一つ一つの松明が普通の炎の明るさとは比較にならない証拠だ。それでこのお昼のような明るさを実現できている。
「正面ってあれかな? 道が何個もあって分かりづらいけど」
「正面の道だろ? ならあそこに向かおう」
この空間には十個の道があった。右手に三つ、左手に三つ、後ろに三つ。ただ、正面には道が一つしかない。石盤に記されていた真っ直ぐ向かってという導きともあっている。そう考えると正面の道が一択だ。
「行こう」
「そうね」
道幅も天井までの高さも十メートル程になったこの道を俺達は15分程歩いた。
「書いていた通りだな」
「絶対にここよね?」
「間違いない」
俺達の前に現れた巨大な鉄の黒い扉。完全な行き止まりと言いたくなるくらい、道を阻む壁のような大きさをしていた。通路とほぼ同じ横幅に、通路とほぼ同じ高さ。いかにもって感じの扉だ。
「やばい。びくともしない!」
と、押して開けようとするアイ。もちろん、施錠はされていない事から、普通であれば押したり引いたりすれば開くわけだが。
「開かないな。これどうするんだ?」
俺も目一杯力を込めて動かそうとしたがビクともしない。驚くべき重さだ。
「何か仕掛けがあるのかしら?」
アイはそう言って扉を撫でるように触れていった。しかし結果は――。
「何もない――」
そう力無く呟くアイ。俺も扉を感じるように扉に触れてみた。すると――。
「お、開いた」
「なんで!? 身体向上使っても開かなかったのに――」
「俺も別に力は入れてないよ。なんか意識を高めて触れたら開いたんだ。さあ行くぞ」
「ええ――」
アイは納得していない様子だった。俺もなんで開いたのか正直分からないが神族語のように、神の力を宿した者しか開かない仕組みになっているのかもしれない。
扉が開くと辺り一面水がある空間になっており、中央にはまるで星のような輝きを放つ水色の炎のようなものが飾られていた。そしてその周りを水の壁が回転しており、まるで台座を守っているかのようだった。
「凄い。物凄く綺麗――」
「確かに綺麗で神秘的な空間だな」
台座まで続く石造りの一本道を十メートル程歩くと、高低差が少ない十段の階段を上がる。
回転する水の壁はもう俺の目の前だった。
「私が先に行ってもいい?」
「ああ」
俺がそう返事をしたものの、アイは水の壁に阻まれて後ろに吹き飛ばされてしまった。当然防寒着も濡れてしまっている。
「大丈夫か?」
「いった~。なんで入れないの?」
アイは尻餅を着きながら不服そうな表情を浮かべていた。
「神の力を持ってないからかもな。さっき扉を開けることができなかったのもそうだけど」
「なんか、ムカつく」
アイはそう言ってジトリと俺の事を睨んできた。
「ほら。この通り」
俺は何なら水に濡れる事無く侵入することができた。
「ズルい――」
「仕方ないだろ。まあ、それにしても綺麗だな。なんだこれ?」
並々ならぬエネルギーを感じる。これが島に向かう途中、船から感じていた正体だ。MPの大きさも感じ取れる荒々しいエネルギーも全く同じだ。
そして、炎のような姿をしたコレは恐らく魂のようなエネルギー体。断言できる。これは誰かの神のユニークスキルだ。
「よし」
俺は深呼吸をして、星のような輝きを放つ青いエネルギー体に触れた。
何これパワーアップフラグ!?
「そう書かれているの?」
「ああ。どんな神か分からないけど、タルタロスの力を持つ者が世界を脅かす事が分かっていたんだな」
「そのタルタロスの力を持つ者は今はいるの?」
「ああ。コヴィー・S・ウィズダムっていう人だ。俺達と同じ転生者だよ。この国にも本があるなら名前くらいは見たことがあるんじゃないか?」
「もしかして十賢者の!?」
「まさにその通り。まあ話すと長くなるしとりあえず行ってみるか」
「でも、念じるってどうすれば?」
「あんまり自信無いけどこんな感じかな」
俺は目を瞑って時空間移動穴のイメージを行った。すると膨大なMPがこの遺跡を漂い、やがて魔法陣が俺達を囲んだ。数秒後。石板の前に時空間移動穴が開かれたのだった。
「凄い――」
「じゃあ行くか」
俺がそう言うとアイに「何でそんなに冷静なの?」と訊かれたので「慣れだな」と返した。
時空間移動穴に入った瞬間、全く別の世界に訪れた。
天井までは高さ20メートルほどで、壁も天井も全て石造りとなっていた。まるでどこかの秘密基地のようにも思える空間。少し変わった点と言えばその石は全て黒かった。人工的に石を黒く塗ったわけではなく元々黒い石のようだ。
この空間の灯りとなっているのは、壁に設置された松明だ。ただこの松明は空間の壁の四方に設置されているだけで、普通ではこの100坪はありそうなこの空間を四つの松明で空間を照らすことは難しい。一つ一つの松明が普通の炎の明るさとは比較にならない証拠だ。それでこのお昼のような明るさを実現できている。
「正面ってあれかな? 道が何個もあって分かりづらいけど」
「正面の道だろ? ならあそこに向かおう」
この空間には十個の道があった。右手に三つ、左手に三つ、後ろに三つ。ただ、正面には道が一つしかない。石盤に記されていた真っ直ぐ向かってという導きともあっている。そう考えると正面の道が一択だ。
「行こう」
「そうね」
道幅も天井までの高さも十メートル程になったこの道を俺達は15分程歩いた。
「書いていた通りだな」
「絶対にここよね?」
「間違いない」
俺達の前に現れた巨大な鉄の黒い扉。完全な行き止まりと言いたくなるくらい、道を阻む壁のような大きさをしていた。通路とほぼ同じ横幅に、通路とほぼ同じ高さ。いかにもって感じの扉だ。
「やばい。びくともしない!」
と、押して開けようとするアイ。もちろん、施錠はされていない事から、普通であれば押したり引いたりすれば開くわけだが。
「開かないな。これどうするんだ?」
俺も目一杯力を込めて動かそうとしたがビクともしない。驚くべき重さだ。
「何か仕掛けがあるのかしら?」
アイはそう言って扉を撫でるように触れていった。しかし結果は――。
「何もない――」
そう力無く呟くアイ。俺も扉を感じるように扉に触れてみた。すると――。
「お、開いた」
「なんで!? 身体向上使っても開かなかったのに――」
「俺も別に力は入れてないよ。なんか意識を高めて触れたら開いたんだ。さあ行くぞ」
「ええ――」
アイは納得していない様子だった。俺もなんで開いたのか正直分からないが神族語のように、神の力を宿した者しか開かない仕組みになっているのかもしれない。
扉が開くと辺り一面水がある空間になっており、中央にはまるで星のような輝きを放つ水色の炎のようなものが飾られていた。そしてその周りを水の壁が回転しており、まるで台座を守っているかのようだった。
「凄い。物凄く綺麗――」
「確かに綺麗で神秘的な空間だな」
台座まで続く石造りの一本道を十メートル程歩くと、高低差が少ない十段の階段を上がる。
回転する水の壁はもう俺の目の前だった。
「私が先に行ってもいい?」
「ああ」
俺がそう返事をしたものの、アイは水の壁に阻まれて後ろに吹き飛ばされてしまった。当然防寒着も濡れてしまっている。
「大丈夫か?」
「いった~。なんで入れないの?」
アイは尻餅を着きながら不服そうな表情を浮かべていた。
「神の力を持ってないからかもな。さっき扉を開けることができなかったのもそうだけど」
「なんか、ムカつく」
アイはそう言ってジトリと俺の事を睨んできた。
「ほら。この通り」
俺は何なら水に濡れる事無く侵入することができた。
「ズルい――」
「仕方ないだろ。まあ、それにしても綺麗だな。なんだこれ?」
並々ならぬエネルギーを感じる。これが島に向かう途中、船から感じていた正体だ。MPの大きさも感じ取れる荒々しいエネルギーも全く同じだ。
そして、炎のような姿をしたコレは恐らく魂のようなエネルギー体。断言できる。これは誰かの神のユニークスキルだ。
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