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次元の違いⅢ
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「ここで一つ、私が感じたナリユキ閣下の印象を言ってみようか?」
「是非」
俺がそう頭を下げるとオックス・マーキュリー閣下は二っと笑みを浮かべて、顎に手を当てながら、俺の目を真っ直ぐ見てきた。
「閣下は若いながら聡明な頭脳を持っており、人望に溢れている。少し抜けているところがあるが、周囲からすればそれが愛くるしかったりする。少しドライなのか、はたまた誰かの教えを胸に秘めているのかは分からないが、基本的には感情的になる事はない。こっちにきてからも、本気で怒りを覚えたのはアードルハイム皇帝くらいだろう――。他にも怒りを感じる事があったが、最近少し緩和されたようだ――。何か最近衝撃的な出会いがあって、怒りが鎮まった。想像を超越するような次元の違う人物と出会ったそうだな。それにより、ナリユキ閣下のオーラそのものが変わり、より次元の高い存在になったようにも感じる。どうかな?」
オックス・マーキュリー閣下はそう得意気な笑みを浮かべて俺に問いかけてきた。これも彼の情報なのだろうか?
「これは――情報ではなく直感で感想を?」
「ああ。そうだ。結構自信があるのだがどうだったかね?」
「恐らく全部当たっているかと」
「ならよかった」
と、オックス・マーキュリー閣下は安堵の表情を浮かべていた。
「その様子だと何かの能力――と言う訳ではなさそう――」
「その通り。実のところ、閣下は私とは比較にならない程別次元のオーラを感じた。閣下がZ級だからと言う話ではなく、もっと別の異質さを感じた。それ故に、閣下の波動を感じ取るのは少し困難だったから自身の能力にあまり自信がなかったのだ」
「波動――ですか?」
俺がキョトンとした表情を浮かべていると、オックス・マーキュリー閣下は頷いた。頷くと同時に「無理も無い」と言っていたような気がする。
「見えない力だよ。愛や友情といったものと同義だ。簡単にまとめると、強さを測るオーラと同じだ」
「成程。俺達が普段感じ取っている強さのオーラと何ら変わりないと?」
「そうだ。膨大なMPを感じ取るのと似たような感覚だ。その力がこの世界に転生する前から私には備わっていた」
「俺はあまりそういうの信じないからな~。スピリチュアル的な事ですよね?」
「世間からはそう言われていた。一部の人は宇宙と交信したり、アカシックレコードにアクセスしたりして、まるであらゆる事を知っている人もいた――。それを人々は悟りを開くとも言っていた。ナリユキ閣下の日本でも信仰されていた仏教用語だ――で、実際に我々がいるこの世界はどうかな?」
「魔法みたいな技が使える、相手の強さがオーラで分かる。千里眼を使える。身体が真っ二つになって身体が再生される――流石に馴染んできたけど、やっぱり不思議な事が多い」
他にも自分の中に宿る神様と対話したり何かも不思議体験の中の一つだな――。
俺がそう言うとオックス・マーキュリー閣下は満足気な表情を浮かべていた。
「だから、私達は地球より高度な文明にきているという訳だ。実際に、転生者の皆は一度死んでいる。一度死んで魂は宇宙に還り、死んだときと同じ服装で別の惑星に来ているに過ぎない――そこでナリユキ閣下に問いたい。もし、閣下の前に私と同じような能力を持ち、同等以上の力を持つ者がいればどうする? 勝算はあるかな?」
突飛な質問だ。突飛すぎて意図が分からないけど――。
「今の俺では勝てない」
「次元が違うナリユキ閣下に指南をするのは些か愚かだと私は思っているが、それでも言わせてほしい。コヴィー・S・ウィズダムは私と同等、それ以上の力を持っている。彼は500年以上前の生物学者と哲学者でありながらユダヤ人だ。だからこそ、持って生まれたずば抜けた知能を駆使し、この世界でも長い時間を生き永らえ、唯一全ての国を渡り歩く事が出来た人間だ。勿論、先々代のこの国の長の時に彼はこの地を訪れている。ただこの国は鎖国国家――本にも掲載されていない国となっているがな」
「コヴィー・S・ウィズダムがそんな力を――」
「人心掌握術に長けている。視ただけで対象の性格を知る事ができる分、弱みにつけこむのが上手いと私は思う。彼が出版している本を数冊読んで私はそう感じ取った。狡猾で残忍、生物を殺すことに何の躊躇いもなく、目的の為なら手段を選ばない――」
「数冊? 全てじゃないのか」
俺がそう疑問をぶつけると、オックス・マーキュリー閣下は首を左右に振った。
「見ていて途中から気持ち悪くなってな。とてもじゃないが同じ人間とは思えないのだ。人の皮を被った化物だ」
本を読んだだけでそう感じたのか。しかし本にはそんな気分を害するような本は無かった。何も犯罪心理学の本に書かれているシリアルキラーのテッド・バンディやジョン・ウェイン・ゲイシーの供述を聞いている訳ではない。コヴィー・S・ウィズダムの表の顔は、世界を渡り歩き全てを視た偉大な転生者。また異種族同士の結婚を全世界に推進させた英雄でもある。コヴィー・S・ウィズダムがこの世界にくるまでは、他の種族と愛を深めるのは常識的な考え方ではなかった――。だからコヴィー・S・ウィズダムは実験を成功させて、異種族同士で愛を深めるのは生物学的にもメリットがある事を世界に届けたのだ。
「書かれている本が全て、自分の野望を果たすためのマーケティングだった事を途中で気付いたんですね?」
俺がそう言うとオックス・マーキュリー閣下は重苦しい表情を浮かべながら「ああ……」と呟いた。
「是非」
俺がそう頭を下げるとオックス・マーキュリー閣下は二っと笑みを浮かべて、顎に手を当てながら、俺の目を真っ直ぐ見てきた。
「閣下は若いながら聡明な頭脳を持っており、人望に溢れている。少し抜けているところがあるが、周囲からすればそれが愛くるしかったりする。少しドライなのか、はたまた誰かの教えを胸に秘めているのかは分からないが、基本的には感情的になる事はない。こっちにきてからも、本気で怒りを覚えたのはアードルハイム皇帝くらいだろう――。他にも怒りを感じる事があったが、最近少し緩和されたようだ――。何か最近衝撃的な出会いがあって、怒りが鎮まった。想像を超越するような次元の違う人物と出会ったそうだな。それにより、ナリユキ閣下のオーラそのものが変わり、より次元の高い存在になったようにも感じる。どうかな?」
オックス・マーキュリー閣下はそう得意気な笑みを浮かべて俺に問いかけてきた。これも彼の情報なのだろうか?
「これは――情報ではなく直感で感想を?」
「ああ。そうだ。結構自信があるのだがどうだったかね?」
「恐らく全部当たっているかと」
「ならよかった」
と、オックス・マーキュリー閣下は安堵の表情を浮かべていた。
「その様子だと何かの能力――と言う訳ではなさそう――」
「その通り。実のところ、閣下は私とは比較にならない程別次元のオーラを感じた。閣下がZ級だからと言う話ではなく、もっと別の異質さを感じた。それ故に、閣下の波動を感じ取るのは少し困難だったから自身の能力にあまり自信がなかったのだ」
「波動――ですか?」
俺がキョトンとした表情を浮かべていると、オックス・マーキュリー閣下は頷いた。頷くと同時に「無理も無い」と言っていたような気がする。
「見えない力だよ。愛や友情といったものと同義だ。簡単にまとめると、強さを測るオーラと同じだ」
「成程。俺達が普段感じ取っている強さのオーラと何ら変わりないと?」
「そうだ。膨大なMPを感じ取るのと似たような感覚だ。その力がこの世界に転生する前から私には備わっていた」
「俺はあまりそういうの信じないからな~。スピリチュアル的な事ですよね?」
「世間からはそう言われていた。一部の人は宇宙と交信したり、アカシックレコードにアクセスしたりして、まるであらゆる事を知っている人もいた――。それを人々は悟りを開くとも言っていた。ナリユキ閣下の日本でも信仰されていた仏教用語だ――で、実際に我々がいるこの世界はどうかな?」
「魔法みたいな技が使える、相手の強さがオーラで分かる。千里眼を使える。身体が真っ二つになって身体が再生される――流石に馴染んできたけど、やっぱり不思議な事が多い」
他にも自分の中に宿る神様と対話したり何かも不思議体験の中の一つだな――。
俺がそう言うとオックス・マーキュリー閣下は満足気な表情を浮かべていた。
「だから、私達は地球より高度な文明にきているという訳だ。実際に、転生者の皆は一度死んでいる。一度死んで魂は宇宙に還り、死んだときと同じ服装で別の惑星に来ているに過ぎない――そこでナリユキ閣下に問いたい。もし、閣下の前に私と同じような能力を持ち、同等以上の力を持つ者がいればどうする? 勝算はあるかな?」
突飛な質問だ。突飛すぎて意図が分からないけど――。
「今の俺では勝てない」
「次元が違うナリユキ閣下に指南をするのは些か愚かだと私は思っているが、それでも言わせてほしい。コヴィー・S・ウィズダムは私と同等、それ以上の力を持っている。彼は500年以上前の生物学者と哲学者でありながらユダヤ人だ。だからこそ、持って生まれたずば抜けた知能を駆使し、この世界でも長い時間を生き永らえ、唯一全ての国を渡り歩く事が出来た人間だ。勿論、先々代のこの国の長の時に彼はこの地を訪れている。ただこの国は鎖国国家――本にも掲載されていない国となっているがな」
「コヴィー・S・ウィズダムがそんな力を――」
「人心掌握術に長けている。視ただけで対象の性格を知る事ができる分、弱みにつけこむのが上手いと私は思う。彼が出版している本を数冊読んで私はそう感じ取った。狡猾で残忍、生物を殺すことに何の躊躇いもなく、目的の為なら手段を選ばない――」
「数冊? 全てじゃないのか」
俺がそう疑問をぶつけると、オックス・マーキュリー閣下は首を左右に振った。
「見ていて途中から気持ち悪くなってな。とてもじゃないが同じ人間とは思えないのだ。人の皮を被った化物だ」
本を読んだだけでそう感じたのか。しかし本にはそんな気分を害するような本は無かった。何も犯罪心理学の本に書かれているシリアルキラーのテッド・バンディやジョン・ウェイン・ゲイシーの供述を聞いている訳ではない。コヴィー・S・ウィズダムの表の顔は、世界を渡り歩き全てを視た偉大な転生者。また異種族同士の結婚を全世界に推進させた英雄でもある。コヴィー・S・ウィズダムがこの世界にくるまでは、他の種族と愛を深めるのは常識的な考え方ではなかった――。だからコヴィー・S・ウィズダムは実験を成功させて、異種族同士で愛を深めるのは生物学的にもメリットがある事を世界に届けたのだ。
「書かれている本が全て、自分の野望を果たすためのマーケティングだった事を途中で気付いたんですね?」
俺がそう言うとオックス・マーキュリー閣下は重苦しい表情を浮かべながら「ああ……」と呟いた。
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