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次元の違いⅠ
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数十秒の激しい攻防の後、優勢に転じたのはタスクだった。
「やった!」
アイの歓喜に満ちた声と共にバロールは肩から鮮血を散らしていた。
怯んだバロールに容赦無く連続で斬撃を浴びせるタスク。そして――。
「これで終わりだ!」
と、無詠唱でとんでもない威力のエネルギー波を発射した。魔真王の破壊光を彷彿させるようなこのアクティブスキルは、無欠の破壊光と呼ぶらしい
。
まあ、言わずと知れた破壊光系のアクティブスキルだ。見た感じだと魔真王の破壊光の次に威力がありそうな破壊光のスキルのようだ。
「す――凄い威力」
と呟くとアイの開いた口は塞がらない。
「あれでも遠慮はしてるみたいだな。本気でやると民間人にも被害が及ぶ。威力をバロールにだけ集中させたみたいだな」
「す――凄い。流石この国一番の冒険者――」
「冒険者って言い方は語弊があるだろ。この国で一番強い生物ってのが正しいだろ」
俺がそう言うとアイは「確かに――」と頷いていた。
俺が感じる限りでは、この国でタスクより強い生物はいない。強い二人と言えば、部外者の俺と部外者のバロールくらいだ。
「これで奴は――」
「ああ終わりだな」
俺が神妙な顔つきでそう呟くと、アイは「え?」と怪訝な表情を浮かべていた。その刹那。タスクはダメージがまだ回復しきっていないバロールに首根っこを掴まれてしまい持ち上げられてしまった。
MPを大きく消費したタスクはとうとう意識を失ってしまう。
「これで終わりだ。愚かなる人間よ」
「もういいだろ」
俺がそう呼び止めると、タスクにトドメをさそうとしていたバロールは、タスクを地面に放り投げて俺を睨んできた。
「そうだったな。貴様を殺さねばならなかったな――」
「来いよバロール」
俺がそう挑発をするとバロールは怒号を散らしながら俺に襲い掛かって来た。
アイはバロールの鬼気迫る表情を見て体が震えていた。それほど恐ろしい邪気を纏い、俺に対する異常なまでの殺気を放っていた。
俺が軽々しく、バロールの漆黒の三又槍を右の人差し指で止めると、バロールは「人間風情が!」と耳をつんざくような怒号を散らす。それもその筈俺の耳栓が発動したから相当なものだ。仮に耳栓が発動して無ければ鼓膜が破れているレベルだ。
「排除」
俺がバロールに空いている左手を向けてそう唱えると、バロールは数百メートル程後方に吹き飛んだ。
バロールは歯を食いしばり俺を睨めつけてくる。敵意むき出しのバロールは、俺の存在が相当気に食わないのだろう。
「す――凄い」
そう安堵にも似た声を漏らしたアイ。
「これでも手加減しているんだけど」
俺がそう呟くとバロールは、猛獣の雄叫びのような声を発しながら俺に襲い掛かって来た。とは言ってもコイツは巨人だった。猛獣と何ら変わらないじゃないか。
猪突猛進という言葉に相応しい直進っぷりだが、光の速さで吹っ飛んできたので普通であれば恐ろしい。
「生憎俺はS級の頃から光を超越しているんだよ」
ガシッ! とバロールの顔を俺は鷲掴みした。バロールの目は驚きと恐怖が混濁していた。
「ここまでの強さ――非常に勿体ない。それにフォモール族の王だっけ? 地下世界の情報を色々得る事ができそうだしな」
バロールは何かを言おうとしているが、俺に顔を掴まれているせいで、喋る事ができずジタバタと暴れている。決死の抵抗だろうが俺からすると無意味だ。
知性・記憶の略奪と献上でバロールのスキル解析と、地下世界についての情報収集をした後、悪魔との機密契約でバロールと悪魔の契約を交わした。
俺が手を離すと、バロールは一部の魂が抜かれたかのようにあ然としていた。
「な――何をしたの!?」
アイはバロールの変貌ぶりに思わずそう口走っていた。と、言うのも、今のバロールからは先程発せられていた殺気が完全に消失していたからだ。
「貴様――」
バロールは自分の心臓にただならぬ違和感のようなものを覚えていた。
「我に何をしたのだ。本能が貴様に逆らうなと言っている」
「悪魔との機密契約。これで俺ととある契約をしたんだ。俺に少しでも抵抗しようとすれば、心臓に絡みついた呪縛が、アンタを苦しめる。ましてや、もっと強い抵抗をしようとすれば死に至るという俺のユニークスキルだ」
俺がそう説明をすると、バロールは「貴様――」と睨んできた。
「大丈夫だ。俺や俺が仲間だと認識したあらゆる生物に手出ししなければいいだけの話だ。アンタには地下世界に潜伏しているコヴィーを見つけ、抹殺する為に手を貸してほしいだけだ。それに利害は一致している筈だろ?」
俺がそう説明をするとバロールは「ぬううう――」と唸っていた。
「一つだけいいか?」
「何だ?」
「我に見せた貴様の記憶は真のものか?」
「ああ。俺は奴の仲間でもない。むしろ奴を倒したいと心の底から願う者だ。野放しにしておく訳にはいかないんだよ。奴がいるだけでこの世界の秩序が乱れる」
バロールの知性と記憶を奪った同時に、俺の記憶や知性も一部与えた。それによってコヴィーの仲間という誤解を解き、悪魔との機密契約で強制的に俺の支配下に置いたと言えど、バロールのフラストレーションをできるだけ溜めないように、ありのままを知性・記憶の略奪と献上で伝えたのだった。
「どのみち我に選択肢など無い。貴様の命令に従うまでだ」
「俺、命令はする気ないけどな。あくまで協力してほしいだけだし」
俺がそう言うとバロールは「訳の分からん人間だな」と呟いていた。
「やった!」
アイの歓喜に満ちた声と共にバロールは肩から鮮血を散らしていた。
怯んだバロールに容赦無く連続で斬撃を浴びせるタスク。そして――。
「これで終わりだ!」
と、無詠唱でとんでもない威力のエネルギー波を発射した。魔真王の破壊光を彷彿させるようなこのアクティブスキルは、無欠の破壊光と呼ぶらしい
。
まあ、言わずと知れた破壊光系のアクティブスキルだ。見た感じだと魔真王の破壊光の次に威力がありそうな破壊光のスキルのようだ。
「す――凄い威力」
と呟くとアイの開いた口は塞がらない。
「あれでも遠慮はしてるみたいだな。本気でやると民間人にも被害が及ぶ。威力をバロールにだけ集中させたみたいだな」
「す――凄い。流石この国一番の冒険者――」
「冒険者って言い方は語弊があるだろ。この国で一番強い生物ってのが正しいだろ」
俺がそう言うとアイは「確かに――」と頷いていた。
俺が感じる限りでは、この国でタスクより強い生物はいない。強い二人と言えば、部外者の俺と部外者のバロールくらいだ。
「これで奴は――」
「ああ終わりだな」
俺が神妙な顔つきでそう呟くと、アイは「え?」と怪訝な表情を浮かべていた。その刹那。タスクはダメージがまだ回復しきっていないバロールに首根っこを掴まれてしまい持ち上げられてしまった。
MPを大きく消費したタスクはとうとう意識を失ってしまう。
「これで終わりだ。愚かなる人間よ」
「もういいだろ」
俺がそう呼び止めると、タスクにトドメをさそうとしていたバロールは、タスクを地面に放り投げて俺を睨んできた。
「そうだったな。貴様を殺さねばならなかったな――」
「来いよバロール」
俺がそう挑発をするとバロールは怒号を散らしながら俺に襲い掛かって来た。
アイはバロールの鬼気迫る表情を見て体が震えていた。それほど恐ろしい邪気を纏い、俺に対する異常なまでの殺気を放っていた。
俺が軽々しく、バロールの漆黒の三又槍を右の人差し指で止めると、バロールは「人間風情が!」と耳をつんざくような怒号を散らす。それもその筈俺の耳栓が発動したから相当なものだ。仮に耳栓が発動して無ければ鼓膜が破れているレベルだ。
「排除」
俺がバロールに空いている左手を向けてそう唱えると、バロールは数百メートル程後方に吹き飛んだ。
バロールは歯を食いしばり俺を睨めつけてくる。敵意むき出しのバロールは、俺の存在が相当気に食わないのだろう。
「す――凄い」
そう安堵にも似た声を漏らしたアイ。
「これでも手加減しているんだけど」
俺がそう呟くとバロールは、猛獣の雄叫びのような声を発しながら俺に襲い掛かって来た。とは言ってもコイツは巨人だった。猛獣と何ら変わらないじゃないか。
猪突猛進という言葉に相応しい直進っぷりだが、光の速さで吹っ飛んできたので普通であれば恐ろしい。
「生憎俺はS級の頃から光を超越しているんだよ」
ガシッ! とバロールの顔を俺は鷲掴みした。バロールの目は驚きと恐怖が混濁していた。
「ここまでの強さ――非常に勿体ない。それにフォモール族の王だっけ? 地下世界の情報を色々得る事ができそうだしな」
バロールは何かを言おうとしているが、俺に顔を掴まれているせいで、喋る事ができずジタバタと暴れている。決死の抵抗だろうが俺からすると無意味だ。
知性・記憶の略奪と献上でバロールのスキル解析と、地下世界についての情報収集をした後、悪魔との機密契約でバロールと悪魔の契約を交わした。
俺が手を離すと、バロールは一部の魂が抜かれたかのようにあ然としていた。
「な――何をしたの!?」
アイはバロールの変貌ぶりに思わずそう口走っていた。と、言うのも、今のバロールからは先程発せられていた殺気が完全に消失していたからだ。
「貴様――」
バロールは自分の心臓にただならぬ違和感のようなものを覚えていた。
「我に何をしたのだ。本能が貴様に逆らうなと言っている」
「悪魔との機密契約。これで俺ととある契約をしたんだ。俺に少しでも抵抗しようとすれば、心臓に絡みついた呪縛が、アンタを苦しめる。ましてや、もっと強い抵抗をしようとすれば死に至るという俺のユニークスキルだ」
俺がそう説明をすると、バロールは「貴様――」と睨んできた。
「大丈夫だ。俺や俺が仲間だと認識したあらゆる生物に手出ししなければいいだけの話だ。アンタには地下世界に潜伏しているコヴィーを見つけ、抹殺する為に手を貸してほしいだけだ。それに利害は一致している筈だろ?」
俺がそう説明をするとバロールは「ぬううう――」と唸っていた。
「一つだけいいか?」
「何だ?」
「我に見せた貴様の記憶は真のものか?」
「ああ。俺は奴の仲間でもない。むしろ奴を倒したいと心の底から願う者だ。野放しにしておく訳にはいかないんだよ。奴がいるだけでこの世界の秩序が乱れる」
バロールの知性と記憶を奪った同時に、俺の記憶や知性も一部与えた。それによってコヴィーの仲間という誤解を解き、悪魔との機密契約で強制的に俺の支配下に置いたと言えど、バロールのフラストレーションをできるだけ溜めないように、ありのままを知性・記憶の略奪と献上で伝えたのだった。
「どのみち我に選択肢など無い。貴様の命令に従うまでだ」
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俺がそう言うとバロールは「訳の分からん人間だな」と呟いていた。
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