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新たな冒険者Ⅳ
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「俺はナリユキ・タテワキだ。宜しく」
俺はそう言ってアイに対して握手を求めた。
「ナリユキ・タテワキ。やっぱり日本人だったんだ」
「アンタも日本人だろ?」
「そうよ。私の名前はアイ。宜しく」
アイはそう言って俺の握手に応じてくれた。
「とりあえず同じの貰おうかな」
「私の人一人酒に付き合ってくれるの?」
「同じ日本人なんだろ? 何かの巡りあわせだしな」
「確かにそうかも。それに似たような歳でしょ?」
「俺は29歳」
「凄い奇遇。私も同じ29歳」
アイはそう言って微笑んだ。天眼で視ていた時には見なかった表情だ。
「ところでタテワキさんは何者? この国の人間でも無さそうだし」
――この国ではどうやら俺の名前は知れ渡っていないらしい。ちょっと寂しい。
「俺はたまたま通りがかった冒険者だよ」
「嘘。この国で一番強い冒険者パーティーはジェノフ。その冒険者パーティーの二人を遥かに凌駕する力を感じるもの」
と、アイは俺の事を疑っていた。
「気のせいだろ」
「誤魔化し効かないんだから。それに力云々、何かとてつもないオーラが出ている。それこそ大物政治家みたいな。無意識かもしれないけど握手も少し強かったし」
と、アイは俺の事をまじまじと見てきた。困ったな~。アイの前では誤魔化せ無さそうだ。
「とりあえず乾杯するか」
「そうね」
俺とアイはワイングラスを軽く当てて乾杯をした。ワインを軽くスワリングした後、葡萄の香りを楽しんでから、アイと同じ白ワインを口に運んだ。
「美味い」
俺がそうコメントしたと同時に「それで?」とアイは詰め寄って来た。
「――分かったよ。本当の事を言うよ」
俺はアイに近付いて小声で話した。
「俺はマーズベルの国主を務めているナリユキ・タテワキだ」
俺がそう言うと、アイは目を丸くした。
「そうか。そうだ! 聞いたことがある! 魔物の国を統治した転生者がいるって――これは大変失礼致しました。数々の無礼な発言。お許しください」
とアイが頭を下げてきた。
「いいよ別に。それにいきなり敬語になるの止めてくれ」
「――しかし」
とアイは申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「いいって」
「私はこの国を統治しているオックス・マーキュリー閣下の秘書を務めております。そのような訳には――」
「本当にいいって。同い年の日本人の転生者がいるなんて思ってなかったしな。フランクに接したい」
俺がそう言うとアイは「それでは――」と折れてくれた。
「でも、何故この国へ?」
「少し用があってな。強い冒険者パーティーを探しているんだ。うちには物知りな女性がいるんだけど、この国の冒険者パーティー、ジェノフが強いと聞いたから交渉がしたくて来てみたんだ」
「わざわざ国主が?」
「どんな距離でも転移できるからな」
「成程。マーズベルってどの辺りにあるんだっけ? 確か結構遠かったよね?」
「南に8,000kmくらいだな」
「相当な実力がある森妖精でも転移できない距離だけど――」
「まあ色々あるのさ」
俺がそう言うとアイは「へえ~」と頷いていた。
「頼みがあるんだけど、ギルドの場所を教えてくれないか?」
「それくらいなら全然いいわよ。それより一度閣下と会ってみるのもどうかしら? シールズは閉鎖的な国だけど閣下はアメリカ人。同じ転生者の国主だし気が合うと思うけど」
「本当か?」
俺がそう返すと「本当よ」とアイは答えた。
「せっかくの機会だししばらく滞在しておいてほしいわ。セッティングできたら閣下とも会わせたいから」
「分かった。その時を楽しみにしておくよ」
「念話でいいわよね?」
「勿論」
俺がそう返すとアイは満足気な笑みを浮かべていた。
「閣下は国民は外の国を知る必要は無いと言っているのよ。けれども、外の国にどうなっているかを知らなければ、技術の発展についていけないし、自国の食糧や資源が危うくなった時、外の国とのパイプが無いと非常にマズいからね」
「――もしかして無いのか?」
「全くない。うちの国の食料自給率は150%よ」
「それは凄いな」
「ただ、国民が増えてきているから減ってはいるのよ。だから私としては少し危機感はあるの。閣下はそれほど気にしていないみたいだけど」
「まあ、他国との横の繋がりはあったほうがいいよな」
「そういう事。ギルドの場所は教える代わりに、閣下と会ってもらうという交換条件でもいい?」
「勿論いいぞ」
「じゃあ契約成立ね。ギルドでもお酒は飲めるから移動しましょう」
「OK」
俺はアイに連れられて、ここの酒場から十分程歩いたところにあるらしい。
シールズの街並みはレンガ造りの建物が多い、至って普通の西洋の雰囲気が出ている街並みだった。カーネル王国とさほど変わりない雰囲気だ。
ただ違うのは、すれ違う九割の人が人族だった。マーズベルやカーネルのようにあらゆる種族が混ざっているという感じではない。
「着いたわ」
案内されたギルドは二階建ての木造建築のギルドだった。専有面積は100坪程の小さなギルドだった。まあカーネル王国のギルドの広さが15,000坪だからデカすぎるんだよな。
「中に入りましょう」
「ああ」
アイがギルドの扉を開けると、ガヤガヤとした盛り上がっている話し声が聞こえた。
「賑わっているな」
「時間が時間だしね。行きましょう」
俺はそう言ってアイに対して握手を求めた。
「ナリユキ・タテワキ。やっぱり日本人だったんだ」
「アンタも日本人だろ?」
「そうよ。私の名前はアイ。宜しく」
アイはそう言って俺の握手に応じてくれた。
「とりあえず同じの貰おうかな」
「私の人一人酒に付き合ってくれるの?」
「同じ日本人なんだろ? 何かの巡りあわせだしな」
「確かにそうかも。それに似たような歳でしょ?」
「俺は29歳」
「凄い奇遇。私も同じ29歳」
アイはそう言って微笑んだ。天眼で視ていた時には見なかった表情だ。
「ところでタテワキさんは何者? この国の人間でも無さそうだし」
――この国ではどうやら俺の名前は知れ渡っていないらしい。ちょっと寂しい。
「俺はたまたま通りがかった冒険者だよ」
「嘘。この国で一番強い冒険者パーティーはジェノフ。その冒険者パーティーの二人を遥かに凌駕する力を感じるもの」
と、アイは俺の事を疑っていた。
「気のせいだろ」
「誤魔化し効かないんだから。それに力云々、何かとてつもないオーラが出ている。それこそ大物政治家みたいな。無意識かもしれないけど握手も少し強かったし」
と、アイは俺の事をまじまじと見てきた。困ったな~。アイの前では誤魔化せ無さそうだ。
「とりあえず乾杯するか」
「そうね」
俺とアイはワイングラスを軽く当てて乾杯をした。ワインを軽くスワリングした後、葡萄の香りを楽しんでから、アイと同じ白ワインを口に運んだ。
「美味い」
俺がそうコメントしたと同時に「それで?」とアイは詰め寄って来た。
「――分かったよ。本当の事を言うよ」
俺はアイに近付いて小声で話した。
「俺はマーズベルの国主を務めているナリユキ・タテワキだ」
俺がそう言うと、アイは目を丸くした。
「そうか。そうだ! 聞いたことがある! 魔物の国を統治した転生者がいるって――これは大変失礼致しました。数々の無礼な発言。お許しください」
とアイが頭を下げてきた。
「いいよ別に。それにいきなり敬語になるの止めてくれ」
「――しかし」
とアイは申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「いいって」
「私はこの国を統治しているオックス・マーキュリー閣下の秘書を務めております。そのような訳には――」
「本当にいいって。同い年の日本人の転生者がいるなんて思ってなかったしな。フランクに接したい」
俺がそう言うとアイは「それでは――」と折れてくれた。
「でも、何故この国へ?」
「少し用があってな。強い冒険者パーティーを探しているんだ。うちには物知りな女性がいるんだけど、この国の冒険者パーティー、ジェノフが強いと聞いたから交渉がしたくて来てみたんだ」
「わざわざ国主が?」
「どんな距離でも転移できるからな」
「成程。マーズベルってどの辺りにあるんだっけ? 確か結構遠かったよね?」
「南に8,000kmくらいだな」
「相当な実力がある森妖精でも転移できない距離だけど――」
「まあ色々あるのさ」
俺がそう言うとアイは「へえ~」と頷いていた。
「頼みがあるんだけど、ギルドの場所を教えてくれないか?」
「それくらいなら全然いいわよ。それより一度閣下と会ってみるのもどうかしら? シールズは閉鎖的な国だけど閣下はアメリカ人。同じ転生者の国主だし気が合うと思うけど」
「本当か?」
俺がそう返すと「本当よ」とアイは答えた。
「せっかくの機会だししばらく滞在しておいてほしいわ。セッティングできたら閣下とも会わせたいから」
「分かった。その時を楽しみにしておくよ」
「念話でいいわよね?」
「勿論」
俺がそう返すとアイは満足気な笑みを浮かべていた。
「閣下は国民は外の国を知る必要は無いと言っているのよ。けれども、外の国にどうなっているかを知らなければ、技術の発展についていけないし、自国の食糧や資源が危うくなった時、外の国とのパイプが無いと非常にマズいからね」
「――もしかして無いのか?」
「全くない。うちの国の食料自給率は150%よ」
「それは凄いな」
「ただ、国民が増えてきているから減ってはいるのよ。だから私としては少し危機感はあるの。閣下はそれほど気にしていないみたいだけど」
「まあ、他国との横の繋がりはあったほうがいいよな」
「そういう事。ギルドの場所は教える代わりに、閣下と会ってもらうという交換条件でもいい?」
「勿論いいぞ」
「じゃあ契約成立ね。ギルドでもお酒は飲めるから移動しましょう」
「OK」
俺はアイに連れられて、ここの酒場から十分程歩いたところにあるらしい。
シールズの街並みはレンガ造りの建物が多い、至って普通の西洋の雰囲気が出ている街並みだった。カーネル王国とさほど変わりない雰囲気だ。
ただ違うのは、すれ違う九割の人が人族だった。マーズベルやカーネルのようにあらゆる種族が混ざっているという感じではない。
「着いたわ」
案内されたギルドは二階建ての木造建築のギルドだった。専有面積は100坪程の小さなギルドだった。まあカーネル王国のギルドの広さが15,000坪だからデカすぎるんだよな。
「中に入りましょう」
「ああ」
アイがギルドの扉を開けると、ガヤガヤとした盛り上がっている話し声が聞こえた。
「賑わっているな」
「時間が時間だしね。行きましょう」
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