543 / 597
貴族の調査Ⅱ
しおりを挟む
「ジェット。今日も最高のフライトを頼むぜ」
俺は専用機の搭乗口で出迎えてくれている黒の殲滅軍の一番の操縦士のジェットにそう声をかけた。
「任せて下さい閣下。しかし、初めてですよ。お守りする必要が無い要人を乗せるのは」
ジェットはそう言って笑みを浮かべていた。
「だろうな。でもまあジェット――いやスティーブを死なせることはしないさ。何かあっても俺が全力で守る。第一、この専用機にはミクちゃんの加護が付いているしな」
「いつの間に私の本名を――マカロフから聞いたんですか?」
「ああ。その方が親近感あるだろ? たまにはコードネームも忘れようぜ」
「ええ」
これはマーズベルのVIP専用の飛行機。マカロフ卿とジェットがやはり形から入ろうという提案で造ったものだ。外観は大統領旅客機と同様だ。ボーイング74を使用している。ただ流石に型が被るのもアレだし、777型なんて名前を付けた。ラッキーセブンってやつだ。
この専用機、エアフォースマーズベルは、アメリカ大統領、エアフォースワンと同じ三階建ての構造になっており、内装は比較的ゴージャス。大理石天板のテーブルと赤いソファーがあるリクライニングスペース。食堂、補佐官、シークレットルーム、執務室、檜の浴槽がある浴室などなど、俺に似合わずやたらと贅沢な構造だ。
「何かあれですね。スキルで何でも出せるって本当に何でもアリですね」
「それは俺も常々思うよ」
俺とアマミヤはリクライニングスペースの席に座りシートベルトを行った。
「いらないと思うんだけど、何かクセで付けてしまうよな」
「同感です。しかしまあ規則ですので」
「アマミヤがそれを言うと、凄く優等生っぽいな」
俺、アマミヤ、ジェットの他にはリーズと5人の従者とリリアンの高級レストランのフレンチのオーナーシェフ一名が搭乗していた。
「このような素敵な飛行船に搭乗させて頂く機会を下さり誠にありがとうございます」
リーズはそう俺に感謝の言葉を述べた。
「別にいいよ。別に青龍さんと会うだけなら構わないかもしれないけど、他の貴族達に恥じないような優秀な医者がいるだろ?」
「その医者に私を選出して頂き誠に感謝致します」
「でもお酒は付き合わせるぞ? 飛行機が安定したら三人で乾杯しよう」
俺がそうニッと笑みを浮かべると、リーズは「おお――!」と声を漏らしていた。目が信じられないくらいキラキラしている。なんかベリトに似てきたな。
「ご準備ができましたでしょうか?」
ジェットがそう聞いてきたので俺が「ああ」と念話で答えると、数十秒後にはこの飛行機はマーズベルの大地を離陸した。
俺は普段、転移イヤリングを使って移動するから、こういう飛行機は不要だと考えていたけど、アマミヤが同行するって言ってなかったら、今回のような機会は無かった訳だ。
シートベルト着用サインが消えると、さっそく俺はシートベルトを外してアマミヤと打ち合わせを行う事にした。
「さっそく始めるんですね」
「そりゃあそうだ。早く終わらせてゆっくりしようぜ。んで美味い酒を飲もう」
「――最近飲んでばかりですね本当に。でもまあ私も飲みたい気持ちはあります」
「そうだろ? シェフが料理に合ういいワインを持ってきてくれたよ。うちのもあるし他国のもある」
「何か仕事している気がしないですね」
「だろうな。まあ、せっかくの機会だしフライトを楽しもうぜ」
「そうですね。肩の力を抜きます」
アマミヤはそう和やかな笑みを浮かべていた。
打ち合わせをすると言っても、スケジュールの確認だ。まずは青龍さんに会って、シルファ、スペンサー、ベルベットジョー、フランベール、マーキオ、アラバスターの六人の貴族とパイプがあると言っていたからな。
「まず、今日の夜は青龍さんやオストロンの貴族達に話を聞くことになっている。そして明後日はうちの専用機を使ってスペンサー家がいるとされているディルビア王国に行くつもりだ。他は青龍さんが日程調整をしてくれてるようだ」
「本当。青龍さんにはお世話になりっぱなしですね」
「確かにな。まああとはくれぐれも失礼の無いようにとだけ」
「意外と話はまとまっていたんですね」
「だってアマミヤ、俺が学校の事ばかり考えていたかムスっとしていただろ?」
「ばれてましたか」
とアマミヤは照れ笑いをしていた。
「お言葉ですがナリユキ様。一つ疑問があったのですが宜しいでしょうか?」
と、リーズが問いかけてきた。
「ああ。別にいいぞ」
するとリーズが「ありがとうございます」と言った後に続けた。
「ナリユキ様程のお力であれば、ペルソナに言って先手必勝という手もあると思うのですが、それをされない理由は何なのでしょうか?」
「ん? 単純な話だよ。敵の戦力が分からない以上は踏み込むことができないだろ? それに創世は地下世界と肩を比べるくらい分からない事だらけ、デアの特性ですら何らかの妨害行為によって情報入手が遮断されている。だから迂闊に手を出したら返り討ちにあうんだよ。仲間を引き連れていくなら慎重になるのは当たり前だろ?」
「そのような経緯があったのですね。成程――デア様でさえ掴めない情報がある集団は、より慎重になるべきですね」
「そういう事だ。黒龍とはまた別の手強さがあるんだよ。最終的には俺がミロクを倒さないといけないしな。アリシアが狙われている以上は――」
俺は専用機の搭乗口で出迎えてくれている黒の殲滅軍の一番の操縦士のジェットにそう声をかけた。
「任せて下さい閣下。しかし、初めてですよ。お守りする必要が無い要人を乗せるのは」
ジェットはそう言って笑みを浮かべていた。
「だろうな。でもまあジェット――いやスティーブを死なせることはしないさ。何かあっても俺が全力で守る。第一、この専用機にはミクちゃんの加護が付いているしな」
「いつの間に私の本名を――マカロフから聞いたんですか?」
「ああ。その方が親近感あるだろ? たまにはコードネームも忘れようぜ」
「ええ」
これはマーズベルのVIP専用の飛行機。マカロフ卿とジェットがやはり形から入ろうという提案で造ったものだ。外観は大統領旅客機と同様だ。ボーイング74を使用している。ただ流石に型が被るのもアレだし、777型なんて名前を付けた。ラッキーセブンってやつだ。
この専用機、エアフォースマーズベルは、アメリカ大統領、エアフォースワンと同じ三階建ての構造になっており、内装は比較的ゴージャス。大理石天板のテーブルと赤いソファーがあるリクライニングスペース。食堂、補佐官、シークレットルーム、執務室、檜の浴槽がある浴室などなど、俺に似合わずやたらと贅沢な構造だ。
「何かあれですね。スキルで何でも出せるって本当に何でもアリですね」
「それは俺も常々思うよ」
俺とアマミヤはリクライニングスペースの席に座りシートベルトを行った。
「いらないと思うんだけど、何かクセで付けてしまうよな」
「同感です。しかしまあ規則ですので」
「アマミヤがそれを言うと、凄く優等生っぽいな」
俺、アマミヤ、ジェットの他にはリーズと5人の従者とリリアンの高級レストランのフレンチのオーナーシェフ一名が搭乗していた。
「このような素敵な飛行船に搭乗させて頂く機会を下さり誠にありがとうございます」
リーズはそう俺に感謝の言葉を述べた。
「別にいいよ。別に青龍さんと会うだけなら構わないかもしれないけど、他の貴族達に恥じないような優秀な医者がいるだろ?」
「その医者に私を選出して頂き誠に感謝致します」
「でもお酒は付き合わせるぞ? 飛行機が安定したら三人で乾杯しよう」
俺がそうニッと笑みを浮かべると、リーズは「おお――!」と声を漏らしていた。目が信じられないくらいキラキラしている。なんかベリトに似てきたな。
「ご準備ができましたでしょうか?」
ジェットがそう聞いてきたので俺が「ああ」と念話で答えると、数十秒後にはこの飛行機はマーズベルの大地を離陸した。
俺は普段、転移イヤリングを使って移動するから、こういう飛行機は不要だと考えていたけど、アマミヤが同行するって言ってなかったら、今回のような機会は無かった訳だ。
シートベルト着用サインが消えると、さっそく俺はシートベルトを外してアマミヤと打ち合わせを行う事にした。
「さっそく始めるんですね」
「そりゃあそうだ。早く終わらせてゆっくりしようぜ。んで美味い酒を飲もう」
「――最近飲んでばかりですね本当に。でもまあ私も飲みたい気持ちはあります」
「そうだろ? シェフが料理に合ういいワインを持ってきてくれたよ。うちのもあるし他国のもある」
「何か仕事している気がしないですね」
「だろうな。まあ、せっかくの機会だしフライトを楽しもうぜ」
「そうですね。肩の力を抜きます」
アマミヤはそう和やかな笑みを浮かべていた。
打ち合わせをすると言っても、スケジュールの確認だ。まずは青龍さんに会って、シルファ、スペンサー、ベルベットジョー、フランベール、マーキオ、アラバスターの六人の貴族とパイプがあると言っていたからな。
「まず、今日の夜は青龍さんやオストロンの貴族達に話を聞くことになっている。そして明後日はうちの専用機を使ってスペンサー家がいるとされているディルビア王国に行くつもりだ。他は青龍さんが日程調整をしてくれてるようだ」
「本当。青龍さんにはお世話になりっぱなしですね」
「確かにな。まああとはくれぐれも失礼の無いようにとだけ」
「意外と話はまとまっていたんですね」
「だってアマミヤ、俺が学校の事ばかり考えていたかムスっとしていただろ?」
「ばれてましたか」
とアマミヤは照れ笑いをしていた。
「お言葉ですがナリユキ様。一つ疑問があったのですが宜しいでしょうか?」
と、リーズが問いかけてきた。
「ああ。別にいいぞ」
するとリーズが「ありがとうございます」と言った後に続けた。
「ナリユキ様程のお力であれば、ペルソナに言って先手必勝という手もあると思うのですが、それをされない理由は何なのでしょうか?」
「ん? 単純な話だよ。敵の戦力が分からない以上は踏み込むことができないだろ? それに創世は地下世界と肩を比べるくらい分からない事だらけ、デアの特性ですら何らかの妨害行為によって情報入手が遮断されている。だから迂闊に手を出したら返り討ちにあうんだよ。仲間を引き連れていくなら慎重になるのは当たり前だろ?」
「そのような経緯があったのですね。成程――デア様でさえ掴めない情報がある集団は、より慎重になるべきですね」
「そういう事だ。黒龍とはまた別の手強さがあるんだよ。最終的には俺がミロクを倒さないといけないしな。アリシアが狙われている以上は――」
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる