【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
541 / 597

アスモデウスとルシファーの復活Ⅱ

しおりを挟む
「他には何て言っていたんだ?」

「そうだな。よく人間を助けたな。少しは見直したぞ――と」

「――それもしかしてルシファーが英雄ノ神インドラに褒められた話?」

「そうだ」

 真顔でそう呟くルシファー。まさかルシファーがこういうどうでもいい事を言うとは思ってなかった。

「私は知りたかったのだ。魔王になる以前の話を。そしてそこで色々と聞かされた。黒龍ニゲル・クティオストルーデが私の事を龍騎士と呼んでいたのも納得ができた。全て聞いたうえで思い出せない」

 そうか――。ルシファーは自分の事を聞いたのか。そりゃ、ルシファーは初対面と思っていたのに黒龍ニゲルがあれだけ敵視していれば気になるわな。

「どっちの名前で呼ばれたいとかあるか?」

「ルシファーでいい。私は魔王ルシファーだ。龍騎士ジークフリートではない」

「じゃあルシファーでいいか。話を聞いて人間の時の記憶が戻らないのは仕方ない。黒龍ニゲルを倒した今。別に無理に思い出す必要ないしな」

「確かにそうだな。役に立てなくて済まなかったな」

「いや。気になる事を神に聞きたいのは分かる。俺もそうだったからな」

「そうか――」

 ルシファーはそう呟いた後、「あ、そうだ。頼み事を聞いてくれないか?」と要求された。俺は特に何も考えずに「いいぞ」と応える。

「町を案内してほしい。私が人間だった事もあり、人間がどのような生活をしているのか少し興味が湧いた」

「全然いいぜ。俺の自慢の国を案内するよ」

「楽しみにしている」

 と。ルシファーは笑みを浮かべた。その後に「それにもう一つ気になる事があるしな――」と小さく呟いていた。「どんな事だ?」と聞くのもアリだったが、何となく答えてくれそうに無い気がしたのもあり、聞こえないフリをした。

 そこからはいつも通りだ。青龍リオさんやアスモデウスさん。マカロフ卿を案内した時のようにリリアン・クロック、風力発電所。最近観光地となっているワイナリーや、マーズベル最高級のワインを製造するブドウ畑のエスポワール。国外へ大量に輸出しているブドウ畑ソレイユなどを案内した。勿論、マーズベル山脈やマーズベル湖も。

 しかしルシファーが一番興味を示していたのは他でもない。リリアンだった。リリアンにいる大勢の人々を見て強い関心を抱いているようだった。いや、と言うよりかは俺に声をかけてくる国民を見ているようだった。何を考えているのか分からないけど、その様子を見ている時のルシファーの表情は穏やかだった。

 ルシファーを一日中案内した後、俺、アスモデウスさん、ルシファー、パイモンの四人で食事を摂る事にした。これから各国のVIPと会う機会が増えると思い、マーズベル国内にいる選りすぐりの料理人を集めて、高級レストラン施設を設置した。単純な話。お金持ちだけの人だけが使用できるレストランだ。中には転生者でミシュランを獲得した料理人なんてのもいる。和食、イタリアン、フレンチ、中華、トルコの5ジャンルが集約された宮殿のような佇まいをした施設だ。

 そしてアスモデウスさんとルシファーが選んだジャンルは和食だった。あくまで俺が思う和食のイメージだが、栄養価は高くバランスが取れているけど、コースにしてもお腹いっぱいたらふく食べるというものでは無く、卓越した技によって生み出された芸術のようなヴィジュアルと繊細な味を楽しむものだ。決して腹一杯食べるものでは無い。見て感じて味わうのが和食。

 しかし、これだと満足いかないVIPもいるかもしれない。そう考えた時に何か和食を代表する肉料理は無いかと考えた。それがこれだ――。

「な――なんだこれは~!」

 と、今か今かと目をキラキラと輝かせて涎を垂らしながら、ぐつぐつと音を立てている鍋に投入されるマーズベル屈指のブランド牛、成輝牛せいきぎゅうを眺めていた。この名前はモトリーナの村の住人が名付けた名前で、成輝牛せいきぎゅうの成は、俺の成幸なりゆきから取ったもの。そして輝くは、シンプルにお肉のサシが太陽のように輝いて見えたらしくこの名前が付いた。そして、すき焼きの卵は勿論緑王鶏りょくおうけいの卵だ。美味いに決まってる。

 他にも魚やら蟹やらも用意しているフルコースだ。どんなVIPが来ようと満足して帰ってもらえると思うが、パイモンにこの繊細な味が分かるのだろうか――と少し疑問に思う。

「いつできるんだ!?」

 と、鼻息を荒くしているパイモン。

「いいぞ。完成だ」

 こんなにも楽しみにしているパイモンを見ると、アスモデウスさんやルシファーより先にパイモンを優先してしまう。俺がパイモンの器にお肉と野菜をよそってあげると、パイモンは「す――凄い!」と感動していた。

「俺が用意してあげた卵をかき混ぜたところに、お肉や野菜を潜らせてあげて食べてみろ」

「うん!」

 と勢いよく返事をしたパイモンは、肉を口の中へと運んだ。そして、口の中に入れた瞬間、「美味ーい!」と大声で叫んでいたのだ。

「パイモン。少しは弁えろ」

「今回ばかりは無理です。ルシファー様のご命令でも」

 とパイモンはガツガツとすき焼きを食べ始めた。

 アスモデウスさんもルシファーもその食べっぷりに触発されて、俺によそってくれと懇願してきた。そして口の中に入れた瞬間には笑みが零れていた。

 決して俺が創った料理ではないけど、違う種族――ましてや魔界に住む住人とこうして食卓を囲えることができるのは俺にとって幸福な事だ。全人類――。いや、全種族のこの笑み――俺は守りたい。



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

捨てられた私は森で『白いもふもふ』と『黒いもふもふ』に出会いました。~え?これが聖獣?~

おかし
ファンタジー
王子の心を奪い、影から操った悪女として追放され、あげく両親に捨てられた私は森で小さなもふもふ達と出会う。 最初は可愛い可愛いと思って育てていたけど…………あれ、子の子達大きくなりすぎじゃね?しかもなんか凛々しくなってるんですけど………。 え、まってまって。なんで今さら王様やら王子様やらお妃様が訪ねてくんの?え、まって?私はスローライフをおくりたいだけよ……? 〖不定期更新ですごめんなさい!楽しんでいただけたら嬉しいです✨〗

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...