529 / 597
英雄の復活Ⅱ
しおりを挟む
「コヴィー・S・ウィズダム……」
「ですか……?」
キョトンとした表情になった者が大半だ。部屋が凍り付いた空気に変わったのも、どう反応していいか分からないからだろう。
「何をしに来たんだ? 地下世界にいるんじゃなかったのか?」
そう問いかけてきたのはランベリオンだ。
「そうだ。目的はどうやら黒龍が持つユニークスキル、破壊神を奪う事だったらしい。何で
ずっと身を潜めていたのか分からないけど、俺の前で黒龍の破壊神を奪い、そのまま黒龍を絶命させた。これが俺が気絶する前に起きた出来事だ」
「気絶――何か攻撃を受けたのですか?」
アリシアにそう問いかけられた俺は首を左右に振った。
「いや。恥ずかしい話ただの恐怖心だ」
「ナリユキ様が――」
「恐怖心で気絶――?」
俺の幹部もそうだけど、青龍さんもレンさんも目を丸くして驚いた様子だった。
「閣下が恐怖ねえ――化物になったと思っていたがまだまだ人間で安心したよ」
と、手元にあるコーヒーを口に運んだマカロフ卿。会議の時は各々好きなドリンクを選んで出席できるんだけど、マカロフ卿はいつもコーヒーを飲んでいる。まあ俺もだけどな。
「正直なところ、我もミク殿もアリシアも相当強くなったと思う。それを遥かに凌駕し黒龍と対等に戦ったナリユキ殿さえ恐怖を覚える程の手練れなのか? コヴィー・S・ウィズダムは」
「そうだな。そもそも黒龍とは対等に戦えていないよ。破壊神を使った状態で戦えたのはデア一人。俺、ミクちゃん、青龍さん、アスモデウスさん、ルシファーはミクちゃんの強化があっても勝てやしない次元だった」
「ナリユキ殿の言う通りだ。デア殿の天衣無縫がなければ、決定的なダメージを与える事はできなかったからな。今回の戦いはデア殿の参戦が大きいと言える」
「青龍さんの言う通りだ。カルベリアツリーのダンジョンを攻略してしまった以上、これ以上ダンジョンに頼ってのレベルアップも難しいから、俺とミクちゃんの伸びしろにはそろそろ限界がある。あとは、実務経験を積んでユニークスキルの覚醒をするくらいしか無いと思っている。コヴィー・S・ウィズダムがもしマーズベルに侵攻して来たら俺達は確実に全滅だ」
俺がそう顎の前で腕を組みながら告げると、皆は固唾を飲みこんでいた。
「だから皆にはもっと強くなってもらうし、俺も強くなれる方法を模索する。まだまだ戦いは終わらない。コヴィー・S・ウィズダムとミロクを倒すまでは」
一瞬、空気が重くなったがそれをぶち破ったのはコイツだった。
「よおし! 皆の者! やってやろうではないか!」
そう言って拳を突きあげたのはランベリオンだった。
「よっしゃあ! 俺はもっと強くなって魔眼を覚醒させたるねん! んでもって魔真王使えるようになったる!」
「それを使えるようになったら魔族の私は少しプライドが傷付きますね」
と、レンさんの冗談を真に受けて苦笑を浮かべるベリト。ベリトも邪眼ではなく魔眼に覚醒してほしいところだ。ランベリオン、アリシア以外にもまだまだ伸びしろのある幹部達はいるし、フォルボスだって鍛え上げれば相当な戦力になる。うちの国にはダイヤの原石ばかりだ。
「私はそうだな。とりあえずこの飛竜を焼き鳥に出来るくらいには実力を上げるか」
と、ランベリオンに喧嘩を吹っ掛けるマカロフ卿。
「我がそのような安い挑発に乗るとでも思ったか」
「何だ? 怖気づいたのか? 焼き鳥になる想像でもしたか?」
と、ニヤニヤと笑みを浮かべながらランベリオンを挑発するマカロフ卿。ランベリオンも「ほほう」と表情を強張らせている。つうかちょっとピキッてる。
「喧嘩なら後でな」
俺がそう呟くとランベリオンは拳を下してフンと鼻を鳴らした。一方、マカロフ卿はしてやったりと笑みを浮かべていた。本当に何がしたいんだこのオッサン。絶対に面白がってるだろ。
「しばらく俺は創世に関する情報収集の外交と、マーズベルの国家戦力増強に注力したい。まずは主要戦力の皆には次なるステップを踏んでもらうため課題を与える。分かりやすい例で言うなら、ベリトは邪眼を魔眼に進化させるって事だな。正直なところ、魔真王には魔王の資質が必要だから、これは先天的なもので後天的に出来るものではないからそこまでは求めない」
「かしこまりました。ナリユキ様――引いてはマーズベルの防衛大臣の役職に恥じぬように精進致します」
「ああ。期待しているぞ。何ならマルファスにでも教わってもいいかもな。どうですか? 青龍さん」
「別に構わない。ベリトが必要なら余から進言しておこう」
「感謝致します。是非宜しくお願い致します」
ベリトはそう言って頭を下げた。
「気にするな。マーズベルの国家軍事力を上げる助力ができるならいくらでもしよう」
「その言葉を聞けるだけで充分ですよ青龍さん」
「そうか」
青龍さんはそう言ってニッと優しい笑みを浮かべていた。
「俺達が出来る事は何かありますか?」
「レンさん達も俺達に混じって戦闘値を上げておいた方がいいかもな。レンさんは攻撃特化だから、攻撃スキルの数を増やす事と、攻撃スキルの攻撃力強化。あと一つは魔眼にもっと慣れる事くらいかな」
「よっしゃ。任せて」
「頼りにしてる。剣技に更に磨きをかけたい人は俺が稽古を付けてやる。俺はルシファーの主要剣技スキルを習得している事もあり力になると思う。ランベリオンとベルゾーグは刀との相性が良いスキルを保有しているし、俺がみっちり叩き込んでやる」
「ああ。宜しく頼む」
そう言って二人は俺に頭を下げてきた。
「マカロフ卿に個人にも課題は与えるけど、民間人の組織力や軍事力を上げてほしい。元スペツナズの軍人で、反乱軍のリーダーなら容易い事だろ?」
俺がそう言うとマカロフ卿は少し不安気な表情を浮かべていた。
「ですか……?」
キョトンとした表情になった者が大半だ。部屋が凍り付いた空気に変わったのも、どう反応していいか分からないからだろう。
「何をしに来たんだ? 地下世界にいるんじゃなかったのか?」
そう問いかけてきたのはランベリオンだ。
「そうだ。目的はどうやら黒龍が持つユニークスキル、破壊神を奪う事だったらしい。何で
ずっと身を潜めていたのか分からないけど、俺の前で黒龍の破壊神を奪い、そのまま黒龍を絶命させた。これが俺が気絶する前に起きた出来事だ」
「気絶――何か攻撃を受けたのですか?」
アリシアにそう問いかけられた俺は首を左右に振った。
「いや。恥ずかしい話ただの恐怖心だ」
「ナリユキ様が――」
「恐怖心で気絶――?」
俺の幹部もそうだけど、青龍さんもレンさんも目を丸くして驚いた様子だった。
「閣下が恐怖ねえ――化物になったと思っていたがまだまだ人間で安心したよ」
と、手元にあるコーヒーを口に運んだマカロフ卿。会議の時は各々好きなドリンクを選んで出席できるんだけど、マカロフ卿はいつもコーヒーを飲んでいる。まあ俺もだけどな。
「正直なところ、我もミク殿もアリシアも相当強くなったと思う。それを遥かに凌駕し黒龍と対等に戦ったナリユキ殿さえ恐怖を覚える程の手練れなのか? コヴィー・S・ウィズダムは」
「そうだな。そもそも黒龍とは対等に戦えていないよ。破壊神を使った状態で戦えたのはデア一人。俺、ミクちゃん、青龍さん、アスモデウスさん、ルシファーはミクちゃんの強化があっても勝てやしない次元だった」
「ナリユキ殿の言う通りだ。デア殿の天衣無縫がなければ、決定的なダメージを与える事はできなかったからな。今回の戦いはデア殿の参戦が大きいと言える」
「青龍さんの言う通りだ。カルベリアツリーのダンジョンを攻略してしまった以上、これ以上ダンジョンに頼ってのレベルアップも難しいから、俺とミクちゃんの伸びしろにはそろそろ限界がある。あとは、実務経験を積んでユニークスキルの覚醒をするくらいしか無いと思っている。コヴィー・S・ウィズダムがもしマーズベルに侵攻して来たら俺達は確実に全滅だ」
俺がそう顎の前で腕を組みながら告げると、皆は固唾を飲みこんでいた。
「だから皆にはもっと強くなってもらうし、俺も強くなれる方法を模索する。まだまだ戦いは終わらない。コヴィー・S・ウィズダムとミロクを倒すまでは」
一瞬、空気が重くなったがそれをぶち破ったのはコイツだった。
「よおし! 皆の者! やってやろうではないか!」
そう言って拳を突きあげたのはランベリオンだった。
「よっしゃあ! 俺はもっと強くなって魔眼を覚醒させたるねん! んでもって魔真王使えるようになったる!」
「それを使えるようになったら魔族の私は少しプライドが傷付きますね」
と、レンさんの冗談を真に受けて苦笑を浮かべるベリト。ベリトも邪眼ではなく魔眼に覚醒してほしいところだ。ランベリオン、アリシア以外にもまだまだ伸びしろのある幹部達はいるし、フォルボスだって鍛え上げれば相当な戦力になる。うちの国にはダイヤの原石ばかりだ。
「私はそうだな。とりあえずこの飛竜を焼き鳥に出来るくらいには実力を上げるか」
と、ランベリオンに喧嘩を吹っ掛けるマカロフ卿。
「我がそのような安い挑発に乗るとでも思ったか」
「何だ? 怖気づいたのか? 焼き鳥になる想像でもしたか?」
と、ニヤニヤと笑みを浮かべながらランベリオンを挑発するマカロフ卿。ランベリオンも「ほほう」と表情を強張らせている。つうかちょっとピキッてる。
「喧嘩なら後でな」
俺がそう呟くとランベリオンは拳を下してフンと鼻を鳴らした。一方、マカロフ卿はしてやったりと笑みを浮かべていた。本当に何がしたいんだこのオッサン。絶対に面白がってるだろ。
「しばらく俺は創世に関する情報収集の外交と、マーズベルの国家戦力増強に注力したい。まずは主要戦力の皆には次なるステップを踏んでもらうため課題を与える。分かりやすい例で言うなら、ベリトは邪眼を魔眼に進化させるって事だな。正直なところ、魔真王には魔王の資質が必要だから、これは先天的なもので後天的に出来るものではないからそこまでは求めない」
「かしこまりました。ナリユキ様――引いてはマーズベルの防衛大臣の役職に恥じぬように精進致します」
「ああ。期待しているぞ。何ならマルファスにでも教わってもいいかもな。どうですか? 青龍さん」
「別に構わない。ベリトが必要なら余から進言しておこう」
「感謝致します。是非宜しくお願い致します」
ベリトはそう言って頭を下げた。
「気にするな。マーズベルの国家軍事力を上げる助力ができるならいくらでもしよう」
「その言葉を聞けるだけで充分ですよ青龍さん」
「そうか」
青龍さんはそう言ってニッと優しい笑みを浮かべていた。
「俺達が出来る事は何かありますか?」
「レンさん達も俺達に混じって戦闘値を上げておいた方がいいかもな。レンさんは攻撃特化だから、攻撃スキルの数を増やす事と、攻撃スキルの攻撃力強化。あと一つは魔眼にもっと慣れる事くらいかな」
「よっしゃ。任せて」
「頼りにしてる。剣技に更に磨きをかけたい人は俺が稽古を付けてやる。俺はルシファーの主要剣技スキルを習得している事もあり力になると思う。ランベリオンとベルゾーグは刀との相性が良いスキルを保有しているし、俺がみっちり叩き込んでやる」
「ああ。宜しく頼む」
そう言って二人は俺に頭を下げてきた。
「マカロフ卿に個人にも課題は与えるけど、民間人の組織力や軍事力を上げてほしい。元スペツナズの軍人で、反乱軍のリーダーなら容易い事だろ?」
俺がそう言うとマカロフ卿は少し不安気な表情を浮かべていた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる