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英雄の復活Ⅰ
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目を覚ますと自分の部屋の匂いがした。
「ご無事で何よりですナリユキ様」
そう言って俺の目覚めを待っていたのはアリシアだった。
頭がぼっ~とする。結局どうなったんだっけ。確か黒龍は倒せたんだよな――?
「黒龍はどうなったんだっけ?」
俺がそうアリシアに問いかけるとアリシアは満面の笑みを浮かべていた。
「倒しましたよ。黒龍はこの世から消えました。」
「そうか――ミクちゃん達は!?」
「ミク様、デア様、アスモデウス様、ルシファーは現在療養中で今も目を覚ましていない状態です。命には別条はありませんので、ご安心ください」
「そうか。あれだけのダメージを受けたんだ。もうしばらくは目を覚まさないだろうな」
「ナリユキ様は他の方と比べてダメージは少なかったようです。ナリユキ様が黒龍にトドメを刺されたんですよね?」
アリシアがそう問いかけきたので俺は違和感を覚えた。トドメ? いや違う――。トドメを刺したのは――。
思い出した。その瞬間に胃液が込み上げてきた。
真っ先にトイレに駆け込み、喉が痛くなる程水っぽい吐しゃ物を出した。思い出しただけで頭痛もする――。
「ナリユキ様!」
そう言ってアリシアは俺の背中を優しくさすってくれた。
「ありがとう」
「大丈夫ですよ」
アリシアの優しい声を聞いて俺は大分落ち着きを取り戻した。
「大丈夫だ。ありがとう」
トイレットペーパーで口元を拭いて、汚物が付着したペーパーをそのまま流した。黒龍との戦闘時間がやたらと長かった為、水っぽい嘔吐だったので余計に疲労した気がする。
「何かあったのですか?」
アリシアはグラスに入った水を持ってそう問いかけてきた。
「ああ。皆に伝えないといけない事がな。幹部連中を会議室に全員集めてくれ」
「かしこまりました」
「アリシア。水ありがとうな」
俺がそう伝えると「いえいえ。それでは失礼します」と少し照れ臭そうに言って部屋から出て行った。
「黒龍を倒したところで破壊神から解放された訳ではない――」
強くなったと思っていたけど、コヴィー・S・ウィズダムのステータスは俺ですら視る事ができなかった。一体、何のユニークスキルを保有しているのかも分からないし、恐らく破壊神を入手する前の状態で、俺と黒龍より一つ上の次元にいる可能性が高い。英雄ノ神を入手したのはいいけど、体力が全て回復した今の状態でも勝てる気はあまりしないな――。
「覚醒させるしかないのか――創造主を創造神に」
あの感じだと、俺が創造神に覚醒させない限りは俺を狙う事は無さそうだけど、その前に何らかの行動を起こしそうだな――。
《ナリユキ様。全員会議室に集めました》
「ありがとう。今から向かう」
会議室にはミクちゃんとデアを除き、ランベリオン、アリシア、アマミヤ、ノア、ベリト、マカロフ卿、アリス、ベルゾーグ、ミーシャ達を会議室に呼んだ。また、外部では青龍さんとレンさんが同席していた。
「まずは皆ありがとう」
俺がそう頭を下げると会議室は拍手に包まれていた。皆からの祝福の言葉に満足感で溢れていた。特に青龍さんの言葉が耳に残る。
「本当に凄い。ありがとう」
珍しくマスクを外している青龍さん。俺はその言葉にミクちゃんの「おかえり」「頑張ったね」などの言葉に匹敵するほど充実感。満足感。幸福感を覚えていた。
理由は簡単だ。青龍さんはずっと黒龍と戦い、龍騎士ことルシファーが封印した後、あの洞窟をずっと監視していて、2,000年もの月日を次の戦いに備えていた。青龍さんの感謝の言葉にはただならぬ重みがあったのだ。
「後で見るといい。マーズベルの自然は勿論、世界各地の鎮火と自然の修復は出来ている」
「本当にありがとうございます」
これだけの言葉では足りない気がするけど、これ以上の言葉が思い浮かばない。何倍にして形で返そう。ただそれだけでだった。
スキルで修復してほしい。青龍さんにそう当たり前に要求したけれど、青龍さんがいなければ、マーズベルの自然修復に何十年、何百年とかかっても可笑しくないのだ。それを一瞬にして修復してもらったのは、どれほど光栄な事か――。
「ホンマに凄いな~。あの化物を倒すなんて」
レンさんはそう言って俺に熱い視線を送ってきた。ちょっと恥ずかしい。
「ルシファーのお陰だよ。俺は新しいユニークスキル英雄ノ神を手に入れた。というか、ルシファーの大技の剣技をある程度習得した。誰が欠けてもあの黒龍を倒す事ができなかった」
本当にそう思う。嘘じゃない。ミクちゃんがいなければ少しでも対等に戦う事はできなかったし、青龍さんとアスモデウスさんのコンビネーションがなければ、俺が隙を突いて黒龍にダメージを与えることはできなかった。黒龍とまともに戦える唯一のジョーカー、デアがいなければ黒龍を追い込む事はできなかった。そして――ルシファーがいなければ俺に英雄ノ神の力は与えられずあのまま全滅していた――。全ての欠片が上手く当てはまったからこその勝利だった。
「聞いた話では起き上がった時に吐いてしまったそうだな? それと何か関係しているのか?」
マカロフ卿の質問に俺はコクリと頷いた。
「ああ。実は黒龍を戦闘不能したのは最終的には俺だけど、黒龍を殺したのは俺じゃないんだ。恥ずかしい話、黒龍を本当に殺すかどうか迷ったくらいだったからな」
「――どこまで甘いんだ」
マカロフ卿はそう吐き捨てていたが、その甘さに嫌悪している感じでは無かった。他の皆も同様だ。どこか俺らしいと感じているのだろう。皆の視線が別に痛くないし、引かれている訳でも無い。
「じゃあ誰がトドメを? ルシファーか?」
ランベリオンの問いに俺は首を振った。
「コヴィー・S・ウィズダムだ」
俺がそう告げると会議室が凍り付いた。
「ご無事で何よりですナリユキ様」
そう言って俺の目覚めを待っていたのはアリシアだった。
頭がぼっ~とする。結局どうなったんだっけ。確か黒龍は倒せたんだよな――?
「黒龍はどうなったんだっけ?」
俺がそうアリシアに問いかけるとアリシアは満面の笑みを浮かべていた。
「倒しましたよ。黒龍はこの世から消えました。」
「そうか――ミクちゃん達は!?」
「ミク様、デア様、アスモデウス様、ルシファーは現在療養中で今も目を覚ましていない状態です。命には別条はありませんので、ご安心ください」
「そうか。あれだけのダメージを受けたんだ。もうしばらくは目を覚まさないだろうな」
「ナリユキ様は他の方と比べてダメージは少なかったようです。ナリユキ様が黒龍にトドメを刺されたんですよね?」
アリシアがそう問いかけきたので俺は違和感を覚えた。トドメ? いや違う――。トドメを刺したのは――。
思い出した。その瞬間に胃液が込み上げてきた。
真っ先にトイレに駆け込み、喉が痛くなる程水っぽい吐しゃ物を出した。思い出しただけで頭痛もする――。
「ナリユキ様!」
そう言ってアリシアは俺の背中を優しくさすってくれた。
「ありがとう」
「大丈夫ですよ」
アリシアの優しい声を聞いて俺は大分落ち着きを取り戻した。
「大丈夫だ。ありがとう」
トイレットペーパーで口元を拭いて、汚物が付着したペーパーをそのまま流した。黒龍との戦闘時間がやたらと長かった為、水っぽい嘔吐だったので余計に疲労した気がする。
「何かあったのですか?」
アリシアはグラスに入った水を持ってそう問いかけてきた。
「ああ。皆に伝えないといけない事がな。幹部連中を会議室に全員集めてくれ」
「かしこまりました」
「アリシア。水ありがとうな」
俺がそう伝えると「いえいえ。それでは失礼します」と少し照れ臭そうに言って部屋から出て行った。
「黒龍を倒したところで破壊神から解放された訳ではない――」
強くなったと思っていたけど、コヴィー・S・ウィズダムのステータスは俺ですら視る事ができなかった。一体、何のユニークスキルを保有しているのかも分からないし、恐らく破壊神を入手する前の状態で、俺と黒龍より一つ上の次元にいる可能性が高い。英雄ノ神を入手したのはいいけど、体力が全て回復した今の状態でも勝てる気はあまりしないな――。
「覚醒させるしかないのか――創造主を創造神に」
あの感じだと、俺が創造神に覚醒させない限りは俺を狙う事は無さそうだけど、その前に何らかの行動を起こしそうだな――。
《ナリユキ様。全員会議室に集めました》
「ありがとう。今から向かう」
会議室にはミクちゃんとデアを除き、ランベリオン、アリシア、アマミヤ、ノア、ベリト、マカロフ卿、アリス、ベルゾーグ、ミーシャ達を会議室に呼んだ。また、外部では青龍さんとレンさんが同席していた。
「まずは皆ありがとう」
俺がそう頭を下げると会議室は拍手に包まれていた。皆からの祝福の言葉に満足感で溢れていた。特に青龍さんの言葉が耳に残る。
「本当に凄い。ありがとう」
珍しくマスクを外している青龍さん。俺はその言葉にミクちゃんの「おかえり」「頑張ったね」などの言葉に匹敵するほど充実感。満足感。幸福感を覚えていた。
理由は簡単だ。青龍さんはずっと黒龍と戦い、龍騎士ことルシファーが封印した後、あの洞窟をずっと監視していて、2,000年もの月日を次の戦いに備えていた。青龍さんの感謝の言葉にはただならぬ重みがあったのだ。
「後で見るといい。マーズベルの自然は勿論、世界各地の鎮火と自然の修復は出来ている」
「本当にありがとうございます」
これだけの言葉では足りない気がするけど、これ以上の言葉が思い浮かばない。何倍にして形で返そう。ただそれだけでだった。
スキルで修復してほしい。青龍さんにそう当たり前に要求したけれど、青龍さんがいなければ、マーズベルの自然修復に何十年、何百年とかかっても可笑しくないのだ。それを一瞬にして修復してもらったのは、どれほど光栄な事か――。
「ホンマに凄いな~。あの化物を倒すなんて」
レンさんはそう言って俺に熱い視線を送ってきた。ちょっと恥ずかしい。
「ルシファーのお陰だよ。俺は新しいユニークスキル英雄ノ神を手に入れた。というか、ルシファーの大技の剣技をある程度習得した。誰が欠けてもあの黒龍を倒す事ができなかった」
本当にそう思う。嘘じゃない。ミクちゃんがいなければ少しでも対等に戦う事はできなかったし、青龍さんとアスモデウスさんのコンビネーションがなければ、俺が隙を突いて黒龍にダメージを与えることはできなかった。黒龍とまともに戦える唯一のジョーカー、デアがいなければ黒龍を追い込む事はできなかった。そして――ルシファーがいなければ俺に英雄ノ神の力は与えられずあのまま全滅していた――。全ての欠片が上手く当てはまったからこその勝利だった。
「聞いた話では起き上がった時に吐いてしまったそうだな? それと何か関係しているのか?」
マカロフ卿の質問に俺はコクリと頷いた。
「ああ。実は黒龍を戦闘不能したのは最終的には俺だけど、黒龍を殺したのは俺じゃないんだ。恥ずかしい話、黒龍を本当に殺すかどうか迷ったくらいだったからな」
「――どこまで甘いんだ」
マカロフ卿はそう吐き捨てていたが、その甘さに嫌悪している感じでは無かった。他の皆も同様だ。どこか俺らしいと感じているのだろう。皆の視線が別に痛くないし、引かれている訳でも無い。
「じゃあ誰がトドメを? ルシファーか?」
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