527 / 597
二人の英雄Ⅱ
しおりを挟む
自分でどれほどの力の斬撃を放ったのかは分からないが、目の前には全身が引き裂かれた黒龍が横たわっていた。あまりにも強烈な光だった為、一体どれほど巨大な斬撃を放ったのか、俺には想像できないけど、ルシファーがさっき放ったような、マーズベル森林を覆うような横幅と、マーズベル山脈を軽々と超える高さがあったに違いない。
「殺せたのか?」
「だといいけどな」
俺は倒れている黒龍の首に触れてみた。脈は動いていない――。次に知性・記憶の略奪と献上を使用してみた。すると、黒龍の情報が俺の脳内に流れ込んでくる――。
「どうだ?」
ルシファーがそう問いかけてきたので、俺は「生きていると」返答をした。
「どれだけタフなんだ……」
「脈は動いていないんだよ。けれども知性・記憶の略奪と献上では情報が流れ込んでくる。知性・記憶の略奪と献上は原則、死んだ者には発動できないからな」
「生死の境目という事か?」
「かもな」
「ならばトドメを刺して絶命させるのみだ」
「ああ。そうだな」
俺は確実な馬鹿だと心底思った。これだけ多くの人々――いや、多くの生命を奪ってきた黒龍が、本当に死ぬと実感すると、何とも言えない気持ちで溢れていた。心のどこかで生きていて欲しい。逃げてほしいという気持ちがあった。
「ナリユキ――トドメを」
「そうだな」
これだけ強い奴がまた現れる事はないだろう。だから、今度は善良な心を持った強い奴が出てきてほしい。そう説に願った。何なら、創造主を早く覚醒させて、創造神にし、黒龍のような新しい強い生命体を出して俺と戦わせるかと思った。
でも――こじれてしまったら、結局今回のように誰かが大変な思いをするんだろうな~とも感じた。
「黒龍。じゃあな」
俺が黒紅煉刀を黒龍の喉元に向けて振り下ろした時だった。
突如、現れた何者かに俺の刀は止められた。
「貴重な被検体を絶命させられるのは困るぞ。ナリユキ・タテワキ」
聞き覚えのある声だ――。何でこんなところにいるんだ? 何をしに来たんだ? 疲労感を忘れる程の衝撃――。これだけの死闘を繰り広げて疲労困憊の状態。しかし今この瞬間に糖質を摂ったかのように頭がグルグルと回転し始めた。
「笑えない冗談だな」
俺の目の前にいるのはサラッとした髪に金髪のセンターパートの男だ。右目には黒い眼帯。左目の真紅の瞳――そう魔眼だ。そして若さを保ち20代後半から30代前半くらいに見える外見――。
「私を知っているようだな」
「この場面では会いたくなかったけどな――コヴィー・S・ウィズダム」
俺がそうルシファーの刀を向けると、コヴィー・S・ウィズダムは満足気な笑みを浮かべていた。
「光栄だよ。最近現れた最強の人間に会えるとは」
「アンタは――化物だもんな」
俺がそう呟くとコヴィー・S・ウィズダムは不気味に口角を吊り上げた。
「デアから聞いたのかな?」
「その前から知っているさ」
「デアは元気にしているか?」
「ああ。アンタの野望を止めたいと言っていたぜ」
「そうか」
俺がそう言うとコヴィー・S・ウィズダムは小さく首を振ってそう呟いた。デアに私の野望を止める事など出来ない。そう言いたいのだろう。
「ナリユキ――コイツは?」
へとへとのルシファーがそう言って近づいてきたが、コヴィー・S・ウィズダムがルシファーを睨めつけると、ルシファーは倒れてしまった。
「ルシファー!」
「なあに。大丈夫だ。少し威嚇して気絶しただけだ」
コヴィー・S・ウィズダムはそう淡々と話すが、魔王を睨みの威嚇だけで気絶させる!? そんな馬鹿な話があってたまるか――。
「驚くのも無理は無いが、それ程この私が強く別次元の存在だという事だ。ここで君を殺すのもいいが、君はまだ創造神になっていない。完成した被検体になってから私と戦うとしよう」
コヴィー・S・ウィズダムはそう言って地面に横たわる黒龍の心臓に触れた。すると、コヴィー・S・ウィズダムに更なる邪悪な力が乗り移り、元から出ていた禍々しいオーラが吐き気がする程濃くなった。破壊神を発動した時の比では無い。
黒龍から何かを抜き取ったんだ――。生気が完全に失われている――。
「何を……したんだ?」
「黒龍の力を貰ったのだ。破壊神をな――。なあ兄弟」
あまりにも不気味な表情を浮かべるコヴィー・S・ウィズダム――。恐怖と絶望という言葉はコヴィー・S・ウィズダムの為にあると言っても可笑しくは無い。黒龍も大概やばかったけどコイツだけは駄目だ。
俺はその不気味な表情のコヴィー・S・ウィズダムを見た瞬間から、呼吸をする事を忘れていた。そして何より力が出ない。放心状態というやつだ。
「まだまだのようだな。いずれ会おう兄弟。いや、お前は必ず来る。この私を止めにな」
コヴィー・S・ウィズダムはそう言ってこの場から姿を消してしまった。
対する俺は黒龍の力を奪い取り、更に別次元の存在となってしまったコヴィー・S・ウィズダムに対する恐怖心は、しばらく消える事はなかった――。
「殺せたのか?」
「だといいけどな」
俺は倒れている黒龍の首に触れてみた。脈は動いていない――。次に知性・記憶の略奪と献上を使用してみた。すると、黒龍の情報が俺の脳内に流れ込んでくる――。
「どうだ?」
ルシファーがそう問いかけてきたので、俺は「生きていると」返答をした。
「どれだけタフなんだ……」
「脈は動いていないんだよ。けれども知性・記憶の略奪と献上では情報が流れ込んでくる。知性・記憶の略奪と献上は原則、死んだ者には発動できないからな」
「生死の境目という事か?」
「かもな」
「ならばトドメを刺して絶命させるのみだ」
「ああ。そうだな」
俺は確実な馬鹿だと心底思った。これだけ多くの人々――いや、多くの生命を奪ってきた黒龍が、本当に死ぬと実感すると、何とも言えない気持ちで溢れていた。心のどこかで生きていて欲しい。逃げてほしいという気持ちがあった。
「ナリユキ――トドメを」
「そうだな」
これだけ強い奴がまた現れる事はないだろう。だから、今度は善良な心を持った強い奴が出てきてほしい。そう説に願った。何なら、創造主を早く覚醒させて、創造神にし、黒龍のような新しい強い生命体を出して俺と戦わせるかと思った。
でも――こじれてしまったら、結局今回のように誰かが大変な思いをするんだろうな~とも感じた。
「黒龍。じゃあな」
俺が黒紅煉刀を黒龍の喉元に向けて振り下ろした時だった。
突如、現れた何者かに俺の刀は止められた。
「貴重な被検体を絶命させられるのは困るぞ。ナリユキ・タテワキ」
聞き覚えのある声だ――。何でこんなところにいるんだ? 何をしに来たんだ? 疲労感を忘れる程の衝撃――。これだけの死闘を繰り広げて疲労困憊の状態。しかし今この瞬間に糖質を摂ったかのように頭がグルグルと回転し始めた。
「笑えない冗談だな」
俺の目の前にいるのはサラッとした髪に金髪のセンターパートの男だ。右目には黒い眼帯。左目の真紅の瞳――そう魔眼だ。そして若さを保ち20代後半から30代前半くらいに見える外見――。
「私を知っているようだな」
「この場面では会いたくなかったけどな――コヴィー・S・ウィズダム」
俺がそうルシファーの刀を向けると、コヴィー・S・ウィズダムは満足気な笑みを浮かべていた。
「光栄だよ。最近現れた最強の人間に会えるとは」
「アンタは――化物だもんな」
俺がそう呟くとコヴィー・S・ウィズダムは不気味に口角を吊り上げた。
「デアから聞いたのかな?」
「その前から知っているさ」
「デアは元気にしているか?」
「ああ。アンタの野望を止めたいと言っていたぜ」
「そうか」
俺がそう言うとコヴィー・S・ウィズダムは小さく首を振ってそう呟いた。デアに私の野望を止める事など出来ない。そう言いたいのだろう。
「ナリユキ――コイツは?」
へとへとのルシファーがそう言って近づいてきたが、コヴィー・S・ウィズダムがルシファーを睨めつけると、ルシファーは倒れてしまった。
「ルシファー!」
「なあに。大丈夫だ。少し威嚇して気絶しただけだ」
コヴィー・S・ウィズダムはそう淡々と話すが、魔王を睨みの威嚇だけで気絶させる!? そんな馬鹿な話があってたまるか――。
「驚くのも無理は無いが、それ程この私が強く別次元の存在だという事だ。ここで君を殺すのもいいが、君はまだ創造神になっていない。完成した被検体になってから私と戦うとしよう」
コヴィー・S・ウィズダムはそう言って地面に横たわる黒龍の心臓に触れた。すると、コヴィー・S・ウィズダムに更なる邪悪な力が乗り移り、元から出ていた禍々しいオーラが吐き気がする程濃くなった。破壊神を発動した時の比では無い。
黒龍から何かを抜き取ったんだ――。生気が完全に失われている――。
「何を……したんだ?」
「黒龍の力を貰ったのだ。破壊神をな――。なあ兄弟」
あまりにも不気味な表情を浮かべるコヴィー・S・ウィズダム――。恐怖と絶望という言葉はコヴィー・S・ウィズダムの為にあると言っても可笑しくは無い。黒龍も大概やばかったけどコイツだけは駄目だ。
俺はその不気味な表情のコヴィー・S・ウィズダムを見た瞬間から、呼吸をする事を忘れていた。そして何より力が出ない。放心状態というやつだ。
「まだまだのようだな。いずれ会おう兄弟。いや、お前は必ず来る。この私を止めにな」
コヴィー・S・ウィズダムはそう言ってこの場から姿を消してしまった。
対する俺は黒龍の力を奪い取り、更に別次元の存在となってしまったコヴィー・S・ウィズダムに対する恐怖心は、しばらく消える事はなかった――。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる