【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

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二人の英雄Ⅱ

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 自分でどれほどの力の斬撃を放ったのかは分からないが、目の前には全身が引き裂かれた黒龍ニゲルが横たわっていた。あまりにも強烈な光だった為、一体どれほど巨大な斬撃を放ったのか、俺には想像できないけど、ルシファーがさっき放ったような、マーズベル森林を覆うような横幅と、マーズベル山脈を軽々と超える高さがあったに違いない。

「殺せたのか?」

「だといいけどな」

 俺は倒れている黒龍ニゲルの首に触れてみた。脈は動いていない――。次に知性・記憶の略奪と献上メーティスを使用してみた。すると、黒龍ニゲルの情報が俺の脳内に流れ込んでくる――。

「どうだ?」

 ルシファーがそう問いかけてきたので、俺は「生きていると」返答をした。

「どれだけタフなんだ……」

「脈は動いていないんだよ。けれども知性・記憶の略奪と献上メーティスでは情報が流れ込んでくる。知性・記憶の略奪と献上メーティスは原則、死んだ者には発動できないからな」

「生死の境目という事か?」

「かもな」

「ならばトドメを刺して絶命させるのみだ」

「ああ。そうだな」

 俺は確実な馬鹿だと心底思った。これだけ多くの人々――いや、多くの生命を奪ってきた黒龍ニゲルが、本当に死ぬと実感すると、何とも言えない気持ちで溢れていた。心のどこかで生きていて欲しい。逃げてほしいという気持ちがあった。

「ナリユキ――トドメを」

「そうだな」

 これだけ強い奴がまた現れる事はないだろう。だから、今度は善良な心を持った強い奴が出てきてほしい。そう説に願った。何なら、創造主ザ・クリエイターを早く覚醒させて、創造神ブラフマーにし、黒龍ニゲルのような新しい強い生命体を出して俺と戦わせるかと思った。

 でも――こじれてしまったら、結局今回のように誰かが大変な思いをするんだろうな~とも感じた。

黒龍ニゲル。じゃあな」

 俺が黒紅煉刀くろべにれんとう黒龍ニゲルの喉元に向けて振り下ろした時だった。

 突如、現れた何者かに俺の刀は止められた。

「貴重な被検体サンプルを絶命させられるのは困るぞ。ナリユキ・タテワキ」

 聞き覚えのある声だ――。何でこんなところにいるんだ? 何をしに来たんだ? 疲労感を忘れる程の衝撃インパクト――。これだけの死闘を繰り広げて疲労困憊の状態。しかし今この瞬間に糖質を摂ったかのように頭がグルグルと回転し始めた。

「笑えない冗談だな」

 俺の目の前にいるのはサラッとした髪に金髪のセンターパートの男だ。右目には黒い眼帯。左目の真紅の瞳――そう魔眼だ。そして若さを保ち20代後半から30代前半くらいに見える外見――。

「私を知っているようだな」

「この場面では会いたくなかったけどな――コヴィー・S・ウィズダム」

 俺がそうルシファーの刀を向けると、コヴィー・S・ウィズダムは満足気な笑みを浮かべていた。

「光栄だよ。最近現れた最強の人間に会えるとは」

「アンタは――化物だもんな」

 俺がそう呟くとコヴィー・S・ウィズダムは不気味に口角を吊り上げた。

「デアから聞いたのかな?」

「その前から知っているさ」

「デアは元気にしているか?」

「ああ。アンタの野望を止めたいと言っていたぜ」

「そうか」

 俺がそう言うとコヴィー・S・ウィズダムは小さく首を振ってそう呟いた。デアに私の野望を止める事など出来ない。そう言いたいのだろう。

「ナリユキ――コイツは?」

 へとへとのルシファーがそう言って近づいてきたが、コヴィー・S・ウィズダムがルシファーを睨めつけると、ルシファーは倒れてしまった。

「ルシファー!」

「なあに。大丈夫だ。少し威嚇して気絶しただけだ」

 コヴィー・S・ウィズダムはそう淡々と話すが、魔王を睨みの威嚇だけで気絶させる!? そんな馬鹿な話があってたまるか――。

「驚くのも無理は無いが、それ程この私が強く別次元の存在だという事だ。ここで君を殺すのもいいが、君はまだ創造神ブラフマーになっていない。完成した被検体サンプルになってから私と戦うとしよう」

 コヴィー・S・ウィズダムはそう言って地面に横たわる黒龍ニゲルの心臓に触れた。すると、コヴィー・S・ウィズダムに更なる邪悪な力が乗り移り、元から出ていた禍々しいオーラが吐き気がする程濃くなった。破壊神シヴァを発動した時の比では無い。

 黒龍ニゲルから何かを抜き取ったんだ――。生気が完全に失われている――。

「何を……したんだ?」

黒龍ニゲルの力を貰ったのだ。破壊神シヴァをな――。なあ兄弟」

 あまりにも不気味な表情を浮かべるコヴィー・S・ウィズダム――。恐怖と絶望という言葉はコヴィー・S・ウィズダムの為にあると言っても可笑しくは無い。黒龍ニゲルも大概やばかったけどコイツだけは駄目だ。

 俺はその不気味な表情のコヴィー・S・ウィズダムを見た瞬間から、呼吸をする事を忘れていた。そして何より力が出ない。放心状態というやつだ。

「まだまだのようだな。いずれ会おう兄弟。いや、お前は必ず来る。この私を止めにな」

 コヴィー・S・ウィズダムはそう言ってこの場から姿を消してしまった。

 対する俺は黒龍ニゲルの力を奪い取り、更に別次元の存在となってしまったコヴィー・S・ウィズダムに対する恐怖心は、しばらく消える事はなかった――。

 

 
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