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最終局面Ⅵ
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黒龍の断末魔が止みしばしの静寂が訪れた。あのとてつもない斬撃を受けても尚、立ち続けている黒龍。その勇敢な黒龍の姿にスキルを放ったルシファーは感服していた。
「私の技を受けて尚立っているというのか」
「間違いなく俺なら死んでるな」
俺がそう呟くと、ルシファーが俺に続いた。
「私もだ。もし敵に同じ技を出されたら私も消滅するだろう。来るベリアルとの戦闘に備えておいたスキルなのだが――」
ルシファーはそう呟きながら苦笑を浮かべていた。そりゃあそうだ。あんなとんでもない斬撃をまともに喰らっておきながら、生物としての原型を留めている。と言うか、普通に全身血まみれになっているだけだ。
「英雄ノ神――より強力になっているな」
そう黒龍は笑みを浮かべていた。本当に一体どこからその余裕が生まれてくるんだよ。
「流石の俺様も死ぬと思ったぞ――」
いや、死んでいて下さい。死んでいて結構です。
「今度は俺様の番だぞルシファー」
ん。待て。この展開もしかして――。
「ミクちゃん! 防御スキルだ!」
「分かってる!」
と、ミクちゃんの返事が聞こえたと同時に、黒龍から放たれた禍々しい邪気と共に辺りは閃光と爆音音に包まれた。勿論、ここで俺の意識は飛んでしまった――。
「ってえ――」
どのくらい眠っていたのか分からないけど俺の意識は戻った。先程、デアが黒龍を追い詰めた時に放ったあの大爆発のスキルだ。受けた痛みを膨大なMPを消費して発動する黒滅龍炎爆発――。まさかこんな大技を二回も発動するとはな――。
辺りを見渡すと――。
「ミクちゃん!」
ミクちゃんは全身血まみれで横たわりぐったりとしていた。そのミクちゃんを見た瞬間、俺は当然背筋が凍った。それに不安な気持ちの現れなのか、手が痙攣をしているかのように震えている。
落ち着け。
すかさず俺はミクちゃんの脈を確認してみる事にした。
大丈夫。大丈夫と言い聞かせながらゆっくりとミクちゃん首の付け根に触れてみる。
「防御スキルのお陰だな――本当に心臓がいくつあっても足りない」
ミクちゃんは命に別状は無さそうだった。およそ1分間に50~100回が平常時と言われているなか、ミクちゃんは15秒間の間で11~12回と気持ち少ない程度。回復スキルがあればいいけど、生憎俺にはそれが無いからな。MPを少し分け与えて、ミクちゃんの回復を促進させよう。
「よし」
次はデアとアスモデウスさんだ。二人も横たわっていたがミクちゃん同様に命に別状は無い。ただ気絶しているだけだった――。
「そう思うと何で俺だけ気絶していないんだ? 結構な至近距離にいたのにな」
そう思ってルシファーを探しているところだった。ルシファーは全身血まみれでこの中で一番の重症を負っていた。生きているようだが脈は遅い。その影響もあってか自動回復と自動再生は、黒龍と同様に遅かった。
「ヤバいな――このままではルシファーが死んでしまう。急いで来たから殺戮の腕持って来ていないもんな」
殺戮の腕の効果には、対象者一人に回復のオーブを付与する事が出来る効果がある。ルシファーに付与すれば一命をとりとめることができるけど――。
「肝心の黒龍が見当たらない――」
俺はそう思って天眼の千里眼を発動した。
「なっ――!」
俺はすかさずルシファーを後ろへ放り投げた。その刹那俺の腹部に黒刀が貫通していた。地面から現れた黒龍の黒刀に突き刺さった俺は、文字通り串刺しとなっていた。
「流石だなナリユキ」
ぜえぜえと息を切らしてそう俺を睨めつけてくる黒龍。煽られているのか褒められているのか分からんが、馬鹿みたいに痛ぇ――。決して気を許していた訳では無いけど、戦闘の疲れと黒滅龍炎爆発のダメージの影響で、千里眼で黒龍の発見。ルシファーを放り投げて黒龍からの攻撃を防ぐ。MPで身体を強化という工数が今の俺には多すぎた。ただでさえ千里眼は集中力が必要だから余計だ。
駄目だ。意識が薄れていく――。
そう思っていた時だった。俺は宙に放り投げられてそのまま地面に転がった。
刀を抜かれたと同時に全身が裂けそうな痛みに襲われたのは言うまでもない。ただまあ、あのまま串刺しのままだったら確実に俺はまた死ぬところだったし、刀ごと空中に放り投げられて、地面に突き刺さったと同時に、刀がより深く刺さるなどの攻撃パターンもあった事を考えるとまだマシなほうだ。
「立てるだろナリユキ。あの小娘は無意識にナリユキにかける防御スキルに力を入れていた。自分も含めて他の者はその分防御の精度が弱まっていたようだ。小娘がナリユキに最後を託したのだ。それに憎き龍騎士も今の状態では数十分もあれば息を引き取る。俺様をここで倒すしかないぞ」
全身血まみれの黒龍がそう笑みを浮かべた。
「成程――それで俺は気絶の時間が短かった訳ね」
「そういう事だ」
「でも、そこまでの状況が分かっていながら何故俺達にトドメを刺していなかったんだ?」
「さあな」
黒龍はそう言ってとぼけたフリをしていた。あくまで俺の予測ではあるが、黒滅龍炎爆発は膨大なMPを消費する。だから黒龍もMPがすっからかんになって動くことができなかったんだ。じゃないと辻褄が合わない。
「まあいい。ラストスパートといこうか」
俺はそう言って黒紅煉刀をぎゅっと握った。
「私の技を受けて尚立っているというのか」
「間違いなく俺なら死んでるな」
俺がそう呟くと、ルシファーが俺に続いた。
「私もだ。もし敵に同じ技を出されたら私も消滅するだろう。来るベリアルとの戦闘に備えておいたスキルなのだが――」
ルシファーはそう呟きながら苦笑を浮かべていた。そりゃあそうだ。あんなとんでもない斬撃をまともに喰らっておきながら、生物としての原型を留めている。と言うか、普通に全身血まみれになっているだけだ。
「英雄ノ神――より強力になっているな」
そう黒龍は笑みを浮かべていた。本当に一体どこからその余裕が生まれてくるんだよ。
「流石の俺様も死ぬと思ったぞ――」
いや、死んでいて下さい。死んでいて結構です。
「今度は俺様の番だぞルシファー」
ん。待て。この展開もしかして――。
「ミクちゃん! 防御スキルだ!」
「分かってる!」
と、ミクちゃんの返事が聞こえたと同時に、黒龍から放たれた禍々しい邪気と共に辺りは閃光と爆音音に包まれた。勿論、ここで俺の意識は飛んでしまった――。
「ってえ――」
どのくらい眠っていたのか分からないけど俺の意識は戻った。先程、デアが黒龍を追い詰めた時に放ったあの大爆発のスキルだ。受けた痛みを膨大なMPを消費して発動する黒滅龍炎爆発――。まさかこんな大技を二回も発動するとはな――。
辺りを見渡すと――。
「ミクちゃん!」
ミクちゃんは全身血まみれで横たわりぐったりとしていた。そのミクちゃんを見た瞬間、俺は当然背筋が凍った。それに不安な気持ちの現れなのか、手が痙攣をしているかのように震えている。
落ち着け。
すかさず俺はミクちゃんの脈を確認してみる事にした。
大丈夫。大丈夫と言い聞かせながらゆっくりとミクちゃん首の付け根に触れてみる。
「防御スキルのお陰だな――本当に心臓がいくつあっても足りない」
ミクちゃんは命に別状は無さそうだった。およそ1分間に50~100回が平常時と言われているなか、ミクちゃんは15秒間の間で11~12回と気持ち少ない程度。回復スキルがあればいいけど、生憎俺にはそれが無いからな。MPを少し分け与えて、ミクちゃんの回復を促進させよう。
「よし」
次はデアとアスモデウスさんだ。二人も横たわっていたがミクちゃん同様に命に別状は無い。ただ気絶しているだけだった――。
「そう思うと何で俺だけ気絶していないんだ? 結構な至近距離にいたのにな」
そう思ってルシファーを探しているところだった。ルシファーは全身血まみれでこの中で一番の重症を負っていた。生きているようだが脈は遅い。その影響もあってか自動回復と自動再生は、黒龍と同様に遅かった。
「ヤバいな――このままではルシファーが死んでしまう。急いで来たから殺戮の腕持って来ていないもんな」
殺戮の腕の効果には、対象者一人に回復のオーブを付与する事が出来る効果がある。ルシファーに付与すれば一命をとりとめることができるけど――。
「肝心の黒龍が見当たらない――」
俺はそう思って天眼の千里眼を発動した。
「なっ――!」
俺はすかさずルシファーを後ろへ放り投げた。その刹那俺の腹部に黒刀が貫通していた。地面から現れた黒龍の黒刀に突き刺さった俺は、文字通り串刺しとなっていた。
「流石だなナリユキ」
ぜえぜえと息を切らしてそう俺を睨めつけてくる黒龍。煽られているのか褒められているのか分からんが、馬鹿みたいに痛ぇ――。決して気を許していた訳では無いけど、戦闘の疲れと黒滅龍炎爆発のダメージの影響で、千里眼で黒龍の発見。ルシファーを放り投げて黒龍からの攻撃を防ぐ。MPで身体を強化という工数が今の俺には多すぎた。ただでさえ千里眼は集中力が必要だから余計だ。
駄目だ。意識が薄れていく――。
そう思っていた時だった。俺は宙に放り投げられてそのまま地面に転がった。
刀を抜かれたと同時に全身が裂けそうな痛みに襲われたのは言うまでもない。ただまあ、あのまま串刺しのままだったら確実に俺はまた死ぬところだったし、刀ごと空中に放り投げられて、地面に突き刺さったと同時に、刀がより深く刺さるなどの攻撃パターンもあった事を考えるとまだマシなほうだ。
「立てるだろナリユキ。あの小娘は無意識にナリユキにかける防御スキルに力を入れていた。自分も含めて他の者はその分防御の精度が弱まっていたようだ。小娘がナリユキに最後を託したのだ。それに憎き龍騎士も今の状態では数十分もあれば息を引き取る。俺様をここで倒すしかないぞ」
全身血まみれの黒龍がそう笑みを浮かべた。
「成程――それで俺は気絶の時間が短かった訳ね」
「そういう事だ」
「でも、そこまでの状況が分かっていながら何故俺達にトドメを刺していなかったんだ?」
「さあな」
黒龍はそう言ってとぼけたフリをしていた。あくまで俺の予測ではあるが、黒滅龍炎爆発は膨大なMPを消費する。だから黒龍もMPがすっからかんになって動くことができなかったんだ。じゃないと辻褄が合わない。
「まあいい。ラストスパートといこうか」
俺はそう言って黒紅煉刀をぎゅっと握った。
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