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生還と宴Ⅴ
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「でも私としては良かったかな。黒龍が生まれていなかったら、青龍様も生まれてこなかった訳ですよね? それって寂しいですよ。私は青龍様と出会えて本当に良かったと思っていますよ」
ミクちゃんがそう呟くと、青龍さんの口元が緩んだ。
「確かにそうですね」
「ミク殿に同意だ」
クロノス、ルミエールもそう言って深く頷いた。
「だから絶対に倒しましょう。二回も撃退しているんです! 必ず勝てますよ!」
俺はミクちゃんからこういう言葉が出てくるのは意外だった。俺がまた死んで危険な目にあったから、こんな前向きな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。何より、青龍さんと出会えて良かったと心の底から思っているのが伝わる発言だった。それが伝わったのか、青龍さんも少し照れている様子だった。
「ナリユキ殿はいいパートナーを持ったな」
「そうですね」
俺がそう青龍さんに返すと、ミクちゃんは照れながらカクテルを一気に飲み干した。
「金柑のジントニックお願いします」
「かしこまりました」
リョウジさんに次のカクテルの注文を通して生ハムを頬ぼるミクちゃんは、どこにでもいる女子大生そのもの。ミクちゃんの笑顔を見る度に、この平和な時間を守らないと! そう思えてくる。
「余も1つ決意した事があるぞナリユキ殿」
「何ですか?」
青龍さんは真剣な眼差しを俺に向けてきた。一体何を決意したというのだろうか。
「余は二人を命を投げてでも救う」
「うえ!?」
ともの凄く驚くミクちゃん。
「それはとても嬉しいですね」
「ナリユキ殿もミク殿も余によってはかけがないの無い存在だ。黒龍という怪物との対峙で緊張状態にあり、大切な人の命を一度奪われたにも関わらず、余と出会えたから良かったと思うと言えるのは、ミク殿の心が澄んでいるからだ。余は思う。今まで出会った女性で一番素敵な女性だ」
「――恥ずかしいですね」
ミクちゃんはそう言ってガーリックトーストをかじった。照れているの全然誤魔化せていないぞ。
「愛情とは素敵ですね。カーネル王も早く見つけて下さい」
クロノスがルミエールにそう言うと、ルミエールは「何だかな~」と呟いていた。
「ナリユキ殿もだ。余はたくさんの失敗をして過去に多くの友や部下を失った。今回、余が気絶している間にナリユキ殿が黒龍との戦闘で一度殺された。余はその現実を受け止める事が出来ず、何度も何度も悪い夢だと思っていた。そしてミク殿が泣いている姿を見て余は自分の無力さを恨んだ。これほどまでに明日が怖いと感じたのは初めてだった。ナリユキ殿――」
「何ですか?」
俺のなかで青龍さんは悲しい感情を人前で出すタイプでは無いと思っていた。どちらかと言うと、静かな場所で漢泣きをしているタイプだと思っていた。しかし今の青龍さんは目元に涙を浮かべている。
「生きててくれてありがとう。余はナリユキ殿を失いたくない……。大事な友を失いたくないのだ」
青龍さんのその訴えに俺ももらい泣きしそうになった。
「ありがとうございます。俺も青龍さんに対する気持ちは同じですよ」
「青龍様は生ける伝説。正直なところ理解が到底追い付かない人だと思っていました。でも皆ナリユキの前では必ずこうなるんですよね。本当に不思議な人だよナリユキって」
ルミエールに俺はそう言われた。俺が不思議な人? 確かに前の世界でもそんな事は言われていたけど、殆どが皮肉が込められていた。でも今は違う。褒められているんだ。それもとびきり――。
「ナリユキ様には人が集まる不思議な力がありますよね。私もナリユキ様が意識不明の重体と聞いたときは生きた心地がしませんでした。もしもの事を想定して、そんな筈は無い――! と願っておりました。それはナリユキ様が、全ての人に対して全力で当たっているからこそ、深く悲しむ人や、御身を心配される方が多いのだと思います。私はカーネル王がこれから築き上げていく未来と、ナリユキ様が築き上げていく未来。この二つを見届けるのが私の願いですので」
クロノスもそう吐露してカクテルを飲み干した。
「お酒大して飲んでないのに、酔っ払いモード入ってるな。でもありがとう」
俺がそう言うと、皆笑みを浮かべてくれた。時間潰しで来たつもりが皆の本音を聞けた気がして嬉しかった。何より青龍さんが泣くとは思っても無かった。
「ねえ。ナリユキ君」
「ん?」
「一人で抱え込まないでね? 皆で戦って皆で勝とうよ」
「私も何かできるのであれば手伝うからね!?」
「私もです。微力ではありますがナリユキ様の指示は、何なりと受けるつもりです」
ルミエールもクロノスもそう言ってくれた。ルミエールは友として。クロノスは君主を見るような眼差しを向けてきた。俺の力になりたい。平和な世の中にしたい。
そんな強い想いがヒシヒシと伝わってくる力強い言葉だった。
「余の近い目標は黒龍を今度こそ討ち滅ぼす事。もう黒龍の存在に怯える世の中は見たくないのだ。必ず勝って全世界の人命を守る。今度こそは――」
青龍さんはそう言って拳をギュッと力強く握った。
このようにして、このメンバーだからこそ話せる夢や目標の語り合いが始まった。そしてあっという間に宴の時間となっていた。
ミクちゃんがそう呟くと、青龍さんの口元が緩んだ。
「確かにそうですね」
「ミク殿に同意だ」
クロノス、ルミエールもそう言って深く頷いた。
「だから絶対に倒しましょう。二回も撃退しているんです! 必ず勝てますよ!」
俺はミクちゃんからこういう言葉が出てくるのは意外だった。俺がまた死んで危険な目にあったから、こんな前向きな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。何より、青龍さんと出会えて良かったと心の底から思っているのが伝わる発言だった。それが伝わったのか、青龍さんも少し照れている様子だった。
「ナリユキ殿はいいパートナーを持ったな」
「そうですね」
俺がそう青龍さんに返すと、ミクちゃんは照れながらカクテルを一気に飲み干した。
「金柑のジントニックお願いします」
「かしこまりました」
リョウジさんに次のカクテルの注文を通して生ハムを頬ぼるミクちゃんは、どこにでもいる女子大生そのもの。ミクちゃんの笑顔を見る度に、この平和な時間を守らないと! そう思えてくる。
「余も1つ決意した事があるぞナリユキ殿」
「何ですか?」
青龍さんは真剣な眼差しを俺に向けてきた。一体何を決意したというのだろうか。
「余は二人を命を投げてでも救う」
「うえ!?」
ともの凄く驚くミクちゃん。
「それはとても嬉しいですね」
「ナリユキ殿もミク殿も余によってはかけがないの無い存在だ。黒龍という怪物との対峙で緊張状態にあり、大切な人の命を一度奪われたにも関わらず、余と出会えたから良かったと思うと言えるのは、ミク殿の心が澄んでいるからだ。余は思う。今まで出会った女性で一番素敵な女性だ」
「――恥ずかしいですね」
ミクちゃんはそう言ってガーリックトーストをかじった。照れているの全然誤魔化せていないぞ。
「愛情とは素敵ですね。カーネル王も早く見つけて下さい」
クロノスがルミエールにそう言うと、ルミエールは「何だかな~」と呟いていた。
「ナリユキ殿もだ。余はたくさんの失敗をして過去に多くの友や部下を失った。今回、余が気絶している間にナリユキ殿が黒龍との戦闘で一度殺された。余はその現実を受け止める事が出来ず、何度も何度も悪い夢だと思っていた。そしてミク殿が泣いている姿を見て余は自分の無力さを恨んだ。これほどまでに明日が怖いと感じたのは初めてだった。ナリユキ殿――」
「何ですか?」
俺のなかで青龍さんは悲しい感情を人前で出すタイプでは無いと思っていた。どちらかと言うと、静かな場所で漢泣きをしているタイプだと思っていた。しかし今の青龍さんは目元に涙を浮かべている。
「生きててくれてありがとう。余はナリユキ殿を失いたくない……。大事な友を失いたくないのだ」
青龍さんのその訴えに俺ももらい泣きしそうになった。
「ありがとうございます。俺も青龍さんに対する気持ちは同じですよ」
「青龍様は生ける伝説。正直なところ理解が到底追い付かない人だと思っていました。でも皆ナリユキの前では必ずこうなるんですよね。本当に不思議な人だよナリユキって」
ルミエールに俺はそう言われた。俺が不思議な人? 確かに前の世界でもそんな事は言われていたけど、殆どが皮肉が込められていた。でも今は違う。褒められているんだ。それもとびきり――。
「ナリユキ様には人が集まる不思議な力がありますよね。私もナリユキ様が意識不明の重体と聞いたときは生きた心地がしませんでした。もしもの事を想定して、そんな筈は無い――! と願っておりました。それはナリユキ様が、全ての人に対して全力で当たっているからこそ、深く悲しむ人や、御身を心配される方が多いのだと思います。私はカーネル王がこれから築き上げていく未来と、ナリユキ様が築き上げていく未来。この二つを見届けるのが私の願いですので」
クロノスもそう吐露してカクテルを飲み干した。
「お酒大して飲んでないのに、酔っ払いモード入ってるな。でもありがとう」
俺がそう言うと、皆笑みを浮かべてくれた。時間潰しで来たつもりが皆の本音を聞けた気がして嬉しかった。何より青龍さんが泣くとは思っても無かった。
「ねえ。ナリユキ君」
「ん?」
「一人で抱え込まないでね? 皆で戦って皆で勝とうよ」
「私も何かできるのであれば手伝うからね!?」
「私もです。微力ではありますがナリユキ様の指示は、何なりと受けるつもりです」
ルミエールもクロノスもそう言ってくれた。ルミエールは友として。クロノスは君主を見るような眼差しを向けてきた。俺の力になりたい。平和な世の中にしたい。
そんな強い想いがヒシヒシと伝わってくる力強い言葉だった。
「余の近い目標は黒龍を今度こそ討ち滅ぼす事。もう黒龍の存在に怯える世の中は見たくないのだ。必ず勝って全世界の人命を守る。今度こそは――」
青龍さんはそう言って拳をギュッと力強く握った。
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