【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
479 / 597

生還と宴Ⅴ

しおりを挟む
「でも私としては良かったかな。黒龍ニゲル・クティオストルーデが生まれていなかったら、青龍リオ・シェンラン様も生まれてこなかった訳ですよね? それって寂しいですよ。私は青龍リオ・シェンラン様と出会えて本当に良かったと思っていますよ」

 ミクちゃんがそう呟くと、青龍リオさんの口元が緩んだ。

「確かにそうですね」

「ミク殿に同意だ」

 クロノス、ルミエールもそう言って深く頷いた。

「だから絶対に倒しましょう。二回も撃退しているんです! 必ず勝てますよ!」

 俺はミクちゃんからこういう言葉が出てくるのは意外だった。俺がまた死んで危険な目にあったから、こんな前向きな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。何より、青龍リオさんと出会えて良かったと心の底から思っているのが伝わる発言だった。それが伝わったのか、青龍リオさんも少し照れている様子だった。

「ナリユキ殿はいいパートナーを持ったな」

「そうですね」

 俺がそう青龍リオさんに返すと、ミクちゃんは照れながらカクテルを一気に飲み干した。

「金柑のジントニックお願いします」

「かしこまりました」

 リョウジさんに次のカクテルの注文を通して生ハムを頬ぼるミクちゃんは、どこにでもいる女子大生そのもの。ミクちゃんの笑顔を見る度に、この平和な時間を守らないと! そう思えてくる。

「余も1つ決意した事があるぞナリユキ殿」

「何ですか?」

 青龍リオさんは真剣な眼差しを俺に向けてきた。一体何を決意したというのだろうか。

「余は二人を命を投げてでも救う」

「うえ!?」

 ともの凄く驚くミクちゃん。

「それはとても嬉しいですね」

「ナリユキ殿もミク殿も余によってはかけがないの無い存在だ。黒龍ニゲルという怪物との対峙で緊張状態にあり、大切な人の命を一度奪われたにも関わらず、余と出会えたから良かったと思うと言えるのは、ミク殿の心が澄んでいるからだ。余は思う。今まで出会った女性で一番素敵な女性だ」

「――恥ずかしいですね」

 ミクちゃんはそう言ってガーリックトーストをかじった。照れているの全然誤魔化せていないぞ。

「愛情とは素敵ですね。カーネル王も早く見つけて下さい」

 クロノスがルミエールにそう言うと、ルミエールは「何だかな~」と呟いていた。

「ナリユキ殿もだ。余はたくさんの失敗をして過去に多くの友や部下を失った。今回、余が気絶している間にナリユキ殿が黒龍ニゲルとの戦闘で一度殺された。余はその現実を受け止める事が出来ず、何度も何度も悪い夢だと思っていた。そしてミク殿が泣いている姿を見て余は自分の無力さを恨んだ。これほどまでに明日が怖いと感じたのは初めてだった。ナリユキ殿――」

「何ですか?」

 俺のなかで青龍リオさんは悲しい感情を人前で出すタイプでは無いと思っていた。どちらかと言うと、静かな場所で漢泣きをしているタイプだと思っていた。しかし今の青龍リオさんは目元に涙を浮かべている。

「生きててくれてありがとう。余はナリユキ殿を失いたくない……。大事な友を失いたくないのだ」

 青龍リオさんのその訴えに俺ももらい泣きしそうになった。

「ありがとうございます。俺も青龍リオさんに対する気持ちは同じですよ」

青龍リオ・シェンラン様は生ける伝説。正直なところ理解が到底追い付かない人だと思っていました。でも皆ナリユキの前では必ずこうなるんですよね。本当に不思議な人だよナリユキって」

 ルミエールに俺はそう言われた。俺が不思議な人? 確かに前の世界でもそんな事は言われていたけど、殆どが皮肉が込められていた。でも今は違う。褒められているんだ。それもとびきり――。

「ナリユキ様には人が集まる不思議な力がありますよね。私もナリユキ様が意識不明の重体と聞いたときは生きた心地がしませんでした。もしもの事を想定して、そんな筈は無い――! と願っておりました。それはナリユキ様が、全ての人に対して全力で当たっているからこそ、深く悲しむ人や、御身を心配される方が多いのだと思います。私はカーネル王がこれから築き上げていく未来と、ナリユキ様が築き上げていく未来。この二つを見届けるのが私の願いですので」

 クロノスもそう吐露してカクテルを飲み干した。

「お酒大して飲んでないのに、酔っ払いモード入ってるな。でもありがとう」

 俺がそう言うと、皆笑みを浮かべてくれた。時間潰しで来たつもりが皆の本音を聞けた気がして嬉しかった。何より青龍リオさんが泣くとは思っても無かった。

「ねえ。ナリユキ君」

「ん?」

「一人で抱え込まないでね? 皆で戦って皆で勝とうよ」

「私も何かできるのであれば手伝うからね!?」

「私もです。微力ではありますがナリユキ様の指示は、何なりと受けるつもりです」

 ルミエールもクロノスもそう言ってくれた。ルミエールは友として。クロノスは君主を見るような眼差しを向けてきた。俺の力になりたい。平和な世の中にしたい。

 そんな強い想いがヒシヒシと伝わってくる力強い言葉だった。

「余の近い目標は黒龍ニゲルを今度こそ討ち滅ぼす事。もう黒龍ニゲルの存在に怯える世の中は見たくないのだ。必ず勝って全世界の人命を守る。今度こそは――」

 青龍リオさんはそう言って拳をギュッと力強く握った。

 このようにして、このメンバーだからこそ話せる夢や目標の語り合いが始まった。そしてあっという間に宴の時間となっていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

処理中です...