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オロバスの力Ⅱ
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「アスモデウス様! ご無事ですか!?」
「シトリー。妾は無事じゃ。案ずることは無い。妾はこやつを食い止めているので、そのまま加勢しておいてくれ。前線を押し上げるのじゃ」
「かしこまりました」
シトリーはそう言ってこの場から姿を消し、ルシファー軍と妾が操っているベリアル軍の戦士達と共に前線を押し上げていた。
「いいのか? 其方がここにいれば戦況は一気に逆転してしまうのではないか?」
「それもそうだな」
そう声を漏らすオロバスはやけに冷静じゃった。まるで何も気にしていないようじゃ。
――いや、今口元が緩んだな。何か企んでおる――。一体何を――。
「いくぞ」
オロバスの攻撃が再び続く。あまりいい予感がしないので、この辺りでさっさと決着をつけねばなるまい。
「少しギアを上げようかのう」
妾は身体向上を使いオロバスを圧倒してみせた。魔刀での戦いは瞬く間に妾の攻めの時間となる。
流石のオロバスも未来が視えているとはいえ、防御をするだけで攻撃に転ずることはできなかった。
「よし、狙い通りじゃな」
妾が会心の一撃を繰り出すとオロバスの魔刀が折れてしまった。
好機! そう思っていたがオロバスが悪の破壊光を至近距離で放ってきた。
妾が悪の破壊光を片手で弾くと、驚いた様子も見せずに口から紅炎を発射してきた。紅炎放射だ。
「なかなか熱いじゃないか」
妾がそう言って舌なめずりをすると、オロバスは流石に不服の様子だった。
「俺の紅炎放射の効果は全く無しか」
「そんな事もないぞ? ほれ、服が破れておる」
妾はそう言ってドレスの右肩の部分を指した。
「いけ好かない奴だな」
舌打ちをして妾を睨めつけてくるオロバス。
「まあいい。所詮はお遊びだからな」
「お遊び? それは妾が其方にか?」
「まあ俺と戦っていれば分かるさ」
こやつが妾との実力差を分からない阿保ではない事は確か。ならば何故この実力差であのような不敵な笑みを浮かべる事ができたのだろう? まさか本当に妾に通じる秘策でもあるという事か?
早いところ決着をつけたいところじゃが、未来が視えるというなかなか厄介なお陰で魔真王でも使わない限りこの勝負は終わらないじゃろう。攻撃を悉く避けられては話にならん。圧倒的な火力で疲弊させ、魂吸引を発動する手もあるが、こやつには通用せんじゃろうしな。
「仕方ないのう」
妾は右指に禍々しいオーラを集中させた。魔族ならこの時点で何のアクティブスキルが発動するのか予測できるじゃろう。
「死絶か――」
「ご名答じゃ」
その発言と同時に妾は右から左へと指を真っ直ぐ引く。
流石のオロバスも妾のこの攻撃には少し焦っているようだった。
妾が繰り出したのは連続の死絶。一発放つだけでも相当なMPを消費するこの技じゃが、妾は五発同時に放ったのだった。
未来が視えているので、妾が五発同時に放つのも予測していた筈じゃ。オロバスは自身が妾の死絶を避けたことによって、後方にいる自軍の戦士達の命を犠牲にしてしまった事を悔いているようだった。
「流石に避けるしかなかったかのう?」
妾は始めからこやつに攻撃が当たるとは思っていなかった。狙いとしては相手の戦力を削る事じゃ。この調子で敵の勢力を削ることができれば良いのじゃが――。
「成程な。当たれば俺は相当なダメージを負い戦闘不能になる。しかし避ければ俺達の軍の戦力を削ることができると言う訳か。魔王だからこそ成し得る芸当だな」
「なかなか褒めてくれるじゃないか。しかし褒美はないぞ? 少年」
「子供扱いしていると痛い目にあうぞ?」
オロバスの瞳はこれでも腐っていない。知っているのだ妾がが本気を出さない事を。こやつは数秒から数十秒先の未来が視える能力。妾が本気を出さないと踏んでいるのは、ベリアルが出陣する事を想定しているのじゃ。じゃから、自分の力で何とか切り拓く事ができると思っておる。そして何かしらの策で妾を討つ気でいる。
一番厄介なのはこやつのスキルで妾を討てるようなアクティブスキルは見当たらない事じゃ。攻撃系統の炎スキルと闇スキルが多く、妾に対してさほどダメージを与えられるようなものはないのじゃ。
そう様々な思考を巡らせている時じゃった――。
「ん? 何じゃあれは?」
オロバスに攻撃を繰り出しながら周囲を警戒していた。すると何やら奇妙な小さい炎の球が妾がいる四方に浮いていた。妾からの距離は100m程。4つ全てが100m程の距離にあったのじゃ。
「この規則性――」
「もう遅い」
オロバスがそう呟いた途端、妾は炎の結界に閉じ込められてしまった。
「これはちと不味いのう」
この結界はMPの集合体。それほどまでに膨大なMPが込められていた。何より驚きなのは、この結界にはベリアルのMPも含まれている事だった。
「この結界は四方炎魔陣と言ってな。魔王ベリアルの血を持つ者だけが使う事ができる特殊能力だ。Z級であろうがなかろうが、この中に閉じ込めた以上、貴様はその中から出ることはできない」
「特殊能力――もしかしてそれでステータスには表示されていないのじゃろうか?」
「そういう事だ。俺は始めからこれを使う気でいたのでな。他の勢力に俺達の争いを邪魔されては困る。ましてや最前線に魔王など厄介にも程があるからな。何かあったときにルシファーに使う気でいたが、貴様が現れた以上は使うしかない」
「成程のう」
嫌な予感――的中したのう……。
「シトリー。妾は無事じゃ。案ずることは無い。妾はこやつを食い止めているので、そのまま加勢しておいてくれ。前線を押し上げるのじゃ」
「かしこまりました」
シトリーはそう言ってこの場から姿を消し、ルシファー軍と妾が操っているベリアル軍の戦士達と共に前線を押し上げていた。
「いいのか? 其方がここにいれば戦況は一気に逆転してしまうのではないか?」
「それもそうだな」
そう声を漏らすオロバスはやけに冷静じゃった。まるで何も気にしていないようじゃ。
――いや、今口元が緩んだな。何か企んでおる――。一体何を――。
「いくぞ」
オロバスの攻撃が再び続く。あまりいい予感がしないので、この辺りでさっさと決着をつけねばなるまい。
「少しギアを上げようかのう」
妾は身体向上を使いオロバスを圧倒してみせた。魔刀での戦いは瞬く間に妾の攻めの時間となる。
流石のオロバスも未来が視えているとはいえ、防御をするだけで攻撃に転ずることはできなかった。
「よし、狙い通りじゃな」
妾が会心の一撃を繰り出すとオロバスの魔刀が折れてしまった。
好機! そう思っていたがオロバスが悪の破壊光を至近距離で放ってきた。
妾が悪の破壊光を片手で弾くと、驚いた様子も見せずに口から紅炎を発射してきた。紅炎放射だ。
「なかなか熱いじゃないか」
妾がそう言って舌なめずりをすると、オロバスは流石に不服の様子だった。
「俺の紅炎放射の効果は全く無しか」
「そんな事もないぞ? ほれ、服が破れておる」
妾はそう言ってドレスの右肩の部分を指した。
「いけ好かない奴だな」
舌打ちをして妾を睨めつけてくるオロバス。
「まあいい。所詮はお遊びだからな」
「お遊び? それは妾が其方にか?」
「まあ俺と戦っていれば分かるさ」
こやつが妾との実力差を分からない阿保ではない事は確か。ならば何故この実力差であのような不敵な笑みを浮かべる事ができたのだろう? まさか本当に妾に通じる秘策でもあるという事か?
早いところ決着をつけたいところじゃが、未来が視えるというなかなか厄介なお陰で魔真王でも使わない限りこの勝負は終わらないじゃろう。攻撃を悉く避けられては話にならん。圧倒的な火力で疲弊させ、魂吸引を発動する手もあるが、こやつには通用せんじゃろうしな。
「仕方ないのう」
妾は右指に禍々しいオーラを集中させた。魔族ならこの時点で何のアクティブスキルが発動するのか予測できるじゃろう。
「死絶か――」
「ご名答じゃ」
その発言と同時に妾は右から左へと指を真っ直ぐ引く。
流石のオロバスも妾のこの攻撃には少し焦っているようだった。
妾が繰り出したのは連続の死絶。一発放つだけでも相当なMPを消費するこの技じゃが、妾は五発同時に放ったのだった。
未来が視えているので、妾が五発同時に放つのも予測していた筈じゃ。オロバスは自身が妾の死絶を避けたことによって、後方にいる自軍の戦士達の命を犠牲にしてしまった事を悔いているようだった。
「流石に避けるしかなかったかのう?」
妾は始めからこやつに攻撃が当たるとは思っていなかった。狙いとしては相手の戦力を削る事じゃ。この調子で敵の勢力を削ることができれば良いのじゃが――。
「成程な。当たれば俺は相当なダメージを負い戦闘不能になる。しかし避ければ俺達の軍の戦力を削ることができると言う訳か。魔王だからこそ成し得る芸当だな」
「なかなか褒めてくれるじゃないか。しかし褒美はないぞ? 少年」
「子供扱いしていると痛い目にあうぞ?」
オロバスの瞳はこれでも腐っていない。知っているのだ妾がが本気を出さない事を。こやつは数秒から数十秒先の未来が視える能力。妾が本気を出さないと踏んでいるのは、ベリアルが出陣する事を想定しているのじゃ。じゃから、自分の力で何とか切り拓く事ができると思っておる。そして何かしらの策で妾を討つ気でいる。
一番厄介なのはこやつのスキルで妾を討てるようなアクティブスキルは見当たらない事じゃ。攻撃系統の炎スキルと闇スキルが多く、妾に対してさほどダメージを与えられるようなものはないのじゃ。
そう様々な思考を巡らせている時じゃった――。
「ん? 何じゃあれは?」
オロバスに攻撃を繰り出しながら周囲を警戒していた。すると何やら奇妙な小さい炎の球が妾がいる四方に浮いていた。妾からの距離は100m程。4つ全てが100m程の距離にあったのじゃ。
「この規則性――」
「もう遅い」
オロバスがそう呟いた途端、妾は炎の結界に閉じ込められてしまった。
「これはちと不味いのう」
この結界はMPの集合体。それほどまでに膨大なMPが込められていた。何より驚きなのは、この結界にはベリアルのMPも含まれている事だった。
「この結界は四方炎魔陣と言ってな。魔王ベリアルの血を持つ者だけが使う事ができる特殊能力だ。Z級であろうがなかろうが、この中に閉じ込めた以上、貴様はその中から出ることはできない」
「特殊能力――もしかしてそれでステータスには表示されていないのじゃろうか?」
「そういう事だ。俺は始めからこれを使う気でいたのでな。他の勢力に俺達の争いを邪魔されては困る。ましてや最前線に魔王など厄介にも程があるからな。何かあったときにルシファーに使う気でいたが、貴様が現れた以上は使うしかない」
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