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アスモデウスの助力Ⅳ
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「久しいのう」
妾がそう問いかけた魔族は、このルシファー軍の巨大な部隊を指揮している人物。彼は老騎士とは思えない程鍛え抜かれた身体に鎧を身にまとっている。また顔には無数の傷を負っており、白銀の髪を後ろで結っていた。その鋭い目にはいくつもの死線を潜り抜け、たくさんの味方の屍を見た悲しい過去が宿っていた。
「かなりのオーラがあると思えば嬢ちゃんか。何の用だ?」
妾の事を嬢ちゃん呼ばわりするのは魔界ではこの男たった一人じゃ。
「軍神フルカス。まだ健在じゃったとはのう」
「冷やかしにきた訳ではないだろう? シトリーも連れてきているお陰で、こっちの部下が警戒しているじゃないか」
フルカスはそう言って顎をしゃくった。フルカス陣営の戦士達は、妾とシトリーの存在に警戒心と緊張を走らせていた。
「なあに。別に其方等を攻撃しようと思って来た訳じゃない」
「知っているさ。嬢ちゃんとシトリーから戦いの意思が感じられんからな。いくら強くなったとは言え警戒心が無さすぎるしな」
「流石じゃのう。今回は其方等を助けに来たのじゃ」
「ほう。これまたどういう風の吹き回しだ?」
「少し力を貸してほしくてのう。黒龍の存在は勿論知っているじゃろ?」
「当然だ。それでルシファー様が誕生した訳だからな」
「その黒龍が地上で復活しおったのじゃ。どうにもこうにも止めることができなくてのう。2,000年前より大幅にパワーアップしておるし」
「ほう。地上には青龍はいるのだろ? それでも止めることができないのか? 嬢ちゃんも相当強くなっている。下手するとルシファー様と同等レベルになっていると思うが?」
相変わらずこの爺は鋭い観察眼じゃのう。確かに以前と比較して相当レベルアップしたから、ルシファーと同等の実力じゃと思うが、ものすごく自信がある訳ではない。
「それでも無理なんじゃ。そこで妾とシトリーが力を貸すので、ルシファーを借りたい。その交渉をルシファーではなくパイモンにしてほしいのじゃ。ルシファーはパイモンの事を信用しておるじゃろ?」
「確かに合理的ではある――」
少し迷った様子を見せたフルカス。フルカスはルシファーの事を尊重する。なので、ルシファーならここでどういう決断を下すか? という事を重んずる。そうなると、ルシファーはここで断るのが明白。しかしフルカスは決して部下を無駄死にさせたくない魔族じゃ。
「軍神と呼ばれた其方がここまで苦しめられているとは珍しいのう。本当に妾の力はいらぬのか?」
「……いいだろう。パイモンに進言すればいいのだな?」
「そうじゃ」
「ならば力を貸してほしい」
フルカスがそう言うと、ルシファー軍の士気は一気に上がった。
「魔王アスモデウスの力を借りることになるのか!」
「凄い事になってきた」
「これで勝機が見えるぞ!」
そう大盛り上がりの様子だった。
「よしきた! シトリー、暴れるぞ!」
「お任せください」
シトリーはそう言って頭を下げた。
「して、敵軍の情報を与えてくれんかのう。妾はあの子供の指揮官が気になるのじゃ」
「奴はオロバスと言って過去・現在・未来の全てを見通す能力を持っている。故に戦場は奴の支配下にある。私の経験でどれだけ潰そうとしても悉く作戦を打破される」
「成程のう。オロバス本体は強いのか?」
「ああ。ベリアルの子供らしいからな」
「――それはまた随分と厄介じゃのう。王の素質を持っている訳じゃな?」
「ああ。正直なところ、いつ魔真王を使えてもおかしくはないポテンシャルはある。炎の使い方もパイモンといい勝負をするくらいだ」
「面白く無い冗談じゃのう」
「アスモデウス様で警戒されるような相手ですか?」
「そうじゃのう。そもそもこの爺が苦戦している時点で相当面倒臭い相手なのは間違いないからのう」
「そうですね」
シトリーもフルカスの戦術とフルカス自身の実力がどれ程なのか理解している。なので、表情が少しばかり曇るのも頷ける。
「まあ、戦ってなんぼじゃ。これ以上この爺に屍を見せるのは少し酷じゃしのう」
「そうですね。行きましょう」
妾とシトリーはラーゼンの背に乗った。
「余計な心配かけやがって。だがありがとう。嬢ちゃんとシトリーがいれば、この戦況も少し変わるはずだ。期待している」
「誰に向かって言っとるじゃ。妾は魔王アスモデウス。魔界で最強の女ぞ」
「だろうな。心配する必要もないか」
フルカスはそう言って安堵した表情を見せた。まるで妾の事を孫か何かだと思っているような穏やかな表情には期待も込められていた。
「いくぞラーゼン!」
「かしこまりました」
ラーゼンはそう言ってルシファー軍の最前線まで向かってくれた。
「今回は其方も参加しろ」
「勿論でございます」
「やれ」
妾の号令と共に、ラーゼンが地上へ向かって無数の炎弾を吐き出した。
妾とシトリーは地上へ降り立つと同時に、妾は魔刀を使い。シトリーは剣を使って敵を一掃した。突如登場した妾達にベリアル軍の戦士達は混乱していた。
「魔王アスモデウス!」
「おのれー!」
ただ、血の気の多いベリアル軍は混乱するものの、決して怯むことなく妾達に立ち向かって来た。
「魔王アスモデウスが来てやったのじゃ。其方等も気合いを入れ直すのじゃぞ」
妾がそうルシファー軍の戦士達に微笑みかけると、野太い歓声と共に士気が一気に向上した。
やはり、魔界の男共はチョロいのう。
妾がそう問いかけた魔族は、このルシファー軍の巨大な部隊を指揮している人物。彼は老騎士とは思えない程鍛え抜かれた身体に鎧を身にまとっている。また顔には無数の傷を負っており、白銀の髪を後ろで結っていた。その鋭い目にはいくつもの死線を潜り抜け、たくさんの味方の屍を見た悲しい過去が宿っていた。
「かなりのオーラがあると思えば嬢ちゃんか。何の用だ?」
妾の事を嬢ちゃん呼ばわりするのは魔界ではこの男たった一人じゃ。
「軍神フルカス。まだ健在じゃったとはのう」
「冷やかしにきた訳ではないだろう? シトリーも連れてきているお陰で、こっちの部下が警戒しているじゃないか」
フルカスはそう言って顎をしゃくった。フルカス陣営の戦士達は、妾とシトリーの存在に警戒心と緊張を走らせていた。
「なあに。別に其方等を攻撃しようと思って来た訳じゃない」
「知っているさ。嬢ちゃんとシトリーから戦いの意思が感じられんからな。いくら強くなったとは言え警戒心が無さすぎるしな」
「流石じゃのう。今回は其方等を助けに来たのじゃ」
「ほう。これまたどういう風の吹き回しだ?」
「少し力を貸してほしくてのう。黒龍の存在は勿論知っているじゃろ?」
「当然だ。それでルシファー様が誕生した訳だからな」
「その黒龍が地上で復活しおったのじゃ。どうにもこうにも止めることができなくてのう。2,000年前より大幅にパワーアップしておるし」
「ほう。地上には青龍はいるのだろ? それでも止めることができないのか? 嬢ちゃんも相当強くなっている。下手するとルシファー様と同等レベルになっていると思うが?」
相変わらずこの爺は鋭い観察眼じゃのう。確かに以前と比較して相当レベルアップしたから、ルシファーと同等の実力じゃと思うが、ものすごく自信がある訳ではない。
「それでも無理なんじゃ。そこで妾とシトリーが力を貸すので、ルシファーを借りたい。その交渉をルシファーではなくパイモンにしてほしいのじゃ。ルシファーはパイモンの事を信用しておるじゃろ?」
「確かに合理的ではある――」
少し迷った様子を見せたフルカス。フルカスはルシファーの事を尊重する。なので、ルシファーならここでどういう決断を下すか? という事を重んずる。そうなると、ルシファーはここで断るのが明白。しかしフルカスは決して部下を無駄死にさせたくない魔族じゃ。
「軍神と呼ばれた其方がここまで苦しめられているとは珍しいのう。本当に妾の力はいらぬのか?」
「……いいだろう。パイモンに進言すればいいのだな?」
「そうじゃ」
「ならば力を貸してほしい」
フルカスがそう言うと、ルシファー軍の士気は一気に上がった。
「魔王アスモデウスの力を借りることになるのか!」
「凄い事になってきた」
「これで勝機が見えるぞ!」
そう大盛り上がりの様子だった。
「よしきた! シトリー、暴れるぞ!」
「お任せください」
シトリーはそう言って頭を下げた。
「して、敵軍の情報を与えてくれんかのう。妾はあの子供の指揮官が気になるのじゃ」
「奴はオロバスと言って過去・現在・未来の全てを見通す能力を持っている。故に戦場は奴の支配下にある。私の経験でどれだけ潰そうとしても悉く作戦を打破される」
「成程のう。オロバス本体は強いのか?」
「ああ。ベリアルの子供らしいからな」
「――それはまた随分と厄介じゃのう。王の素質を持っている訳じゃな?」
「ああ。正直なところ、いつ魔真王を使えてもおかしくはないポテンシャルはある。炎の使い方もパイモンといい勝負をするくらいだ」
「面白く無い冗談じゃのう」
「アスモデウス様で警戒されるような相手ですか?」
「そうじゃのう。そもそもこの爺が苦戦している時点で相当面倒臭い相手なのは間違いないからのう」
「そうですね」
シトリーもフルカスの戦術とフルカス自身の実力がどれ程なのか理解している。なので、表情が少しばかり曇るのも頷ける。
「まあ、戦ってなんぼじゃ。これ以上この爺に屍を見せるのは少し酷じゃしのう」
「そうですね。行きましょう」
妾とシトリーはラーゼンの背に乗った。
「余計な心配かけやがって。だがありがとう。嬢ちゃんとシトリーがいれば、この戦況も少し変わるはずだ。期待している」
「誰に向かって言っとるじゃ。妾は魔王アスモデウス。魔界で最強の女ぞ」
「だろうな。心配する必要もないか」
フルカスはそう言って安堵した表情を見せた。まるで妾の事を孫か何かだと思っているような穏やかな表情には期待も込められていた。
「いくぞラーゼン!」
「かしこまりました」
ラーゼンはそう言ってルシファー軍の最前線まで向かってくれた。
「今回は其方も参加しろ」
「勿論でございます」
「やれ」
妾の号令と共に、ラーゼンが地上へ向かって無数の炎弾を吐き出した。
妾とシトリーは地上へ降り立つと同時に、妾は魔刀を使い。シトリーは剣を使って敵を一掃した。突如登場した妾達にベリアル軍の戦士達は混乱していた。
「魔王アスモデウス!」
「おのれー!」
ただ、血の気の多いベリアル軍は混乱するものの、決して怯むことなく妾達に立ち向かって来た。
「魔王アスモデウスが来てやったのじゃ。其方等も気合いを入れ直すのじゃぞ」
妾がそうルシファー軍の戦士達に微笑みかけると、野太い歓声と共に士気が一気に向上した。
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