465 / 597
アスモデウスの助力Ⅲ
しおりを挟む
「誠に感謝致す」
そういきなり敬語で感謝を述べて跪いていたのはルシファー軍の部隊長だった。また、部隊長と同じく他の戦士達も跪いていた。
「良いのじゃ良いのじゃ。その代わりと言ってはなんだが、頼みを聞いてもらいたい」
「何なりとお申し付けください」
誠意。胸がいっぱいになる程の誠意じゃった。まるで新しい家臣ができたようじゃのう。
「結論から述べると、ルシファーを少し借りたくての。今地上では復活した黒龍が暴れておるのじゃ」
妾がそう発言するとルシファー軍の戦士達が顔を見合わせていた。まあ結論から述べるとその反応になるのう。
「御言葉ですがアスモデウス様。如何なる理由であろうと、ルシファー様にそのように進言するのは非常に困難でして……」
と、苦い表情を浮かべながら妾を見上げる部隊長。顔が驚くくらい引きつっている。
「ルシファーに進言すれば1秒でそなた等の首が刎ねられるのは分かっておる。ルシファーにではなくパイモンにこう進言するのじゃ」
妾がそう言うと固唾を飲みこむルシファー軍の戦士達。
「魔王アスモデウス軍が手を貸し、ベリアル軍の撤退又は壊滅を約束するので、成功した場合にルシファーの力を借りたいとな。それに言ったじゃろう? この進言が失敗したとは言え咎めることは無いとな」
すると、呆気を取られたような表情を浮かべるルシファーの戦士達。
「そ……それだけで宜しいのでしょうか?」
そう部隊長が問いかけてきた。
「そうじゃ? 当然ルシファーに交渉を試みたがちと厳しくてのう」
妾がそう頭を掻くと、ルシファー軍の戦士達が、「やりましょう! 部隊長!」と前向きな言葉を発してくれた。
「そうですね。それくらいの事であればお任せください。パイモン様にそのように進言しておきます」
「おお! 助かる! 念話で進捗状況を聞こうと思うのじゃが、いつくらいのタイミングが良かったかのう?」
「3時間以内に必ず」
「分かった。では3時間後に念話で反応を聞くので宜しく頼む。妾はあともう一つの部隊を助けるので、パイモンも2部隊の部隊長から進言されたら考えるじゃろ?」
「おっしゃる通りでございます。我々としては先程の戦いを見て、アスモデウス様とシトリー様のご協力を頂けるのであればこの上ない喜びです。全身全霊でパイモン様に交渉を持ち掛けますのでどうか何卒宜しくお願い申し上げます」
改めてそう頭を深々と下げられた。
「じゃあくれぐれも気をつけるんじゃぞ。今は戦争中じゃ。何があるか分からんから、パイモンへの進言より自分の命が優先。肩の力を抜いていくのじゃぞ」
妾はそう言ってシトリーと共に黒魔竜のラーゼンの背に乗り、次の目的地へと向かった。
「なんて寛大な方なんだ」
「俺は心を奪われた。噂以上の美貌だな」
「間違いなく絶世の美女」
「それでいて空のように広い心」
「完璧すぎる」
――と、ルシファー軍の戦士達にべた褒めされる妾じゃった。うむ。悪くない。
「不謹慎ですね。これだから男は嫌いなのです」
と、ぶっきらぼうな口調になっているシトリー。
「そう言うな。それより次の目的地を探すぞ」
「そうですね――あの部隊はどうでしょうか?」
シトリーが指したのはなかなかの人数――兵力1万くらいあるが本当に1部隊なのか?
「ものすごく多くないか?」
「ルシファー軍のあの部隊を率いているのはフルカスです」
「あの老いぼれまだ前線張っているのか!?」
フルカス。ルシファー軍のなかでも一番の古株の家臣。ルシファーが魔王になったときからのパイモンの次にルシファーに心底忠誠を誓っている人物じゃ。元々は元魔王ベレトの家臣じゃ。人間で言うと100歳は超えている筈なのじゃが――。
「あのフルカスの軍が押されているのか。敵軍を指揮しているのは誰じゃ?」
「不明ですね。しかしまだまだ若いようですね」
「そうじゃのう。見るからに100歳もいっとらん」
ベリアル軍の大軍を指揮しているのは、聡明そうな顔つきをした少年じゃった。マーズベルにいるミク殿とノアのちょうど間くらいの年齢じゃろう。まあ魔族なんて見た目が幼いからといって、絶対に若いなんて事はないがのう。パイモンのようにやたらと歳をくっている魔族もいる訳じゃが、体に巡っているMPの循環が成熟していない。そう考えると見た目通り相当若い。
「凄いのう。あんなに若いのがフルカスの軍を押しているのか?」
「そのようですね。オーラもありますし、目つきも私の幼少の頃とは明らかに違います」
「妾に関しては遊び惚けていたからのう。当時の自分と比較すると嫌になるわい」
そんな事はないですよ! と言ってくれたシトリーじゃったが、実際に周りにいたずらばかりをしていたおてんば娘じゃ。じゃからあやつがどんな境遇で、あのレベルに達しているのか気になるのう。
「どうされますか? 向かいますか?」
「そうじゃのう。しかしまああれだけの数じゃ。一筋縄ではいかないぞ? 気を引き締めていけ」
「お任せください」
こうして妾とシトリーはフルカスの方へと向かった。いつぶりに話すか分からんが、あやつがこれだけ苦戦しているのは珍しい。じゃから、何であの少年にそこまで苦しめられているのかという疑問もあった。寧ろその疑問への関心が強かった。
そういきなり敬語で感謝を述べて跪いていたのはルシファー軍の部隊長だった。また、部隊長と同じく他の戦士達も跪いていた。
「良いのじゃ良いのじゃ。その代わりと言ってはなんだが、頼みを聞いてもらいたい」
「何なりとお申し付けください」
誠意。胸がいっぱいになる程の誠意じゃった。まるで新しい家臣ができたようじゃのう。
「結論から述べると、ルシファーを少し借りたくての。今地上では復活した黒龍が暴れておるのじゃ」
妾がそう発言するとルシファー軍の戦士達が顔を見合わせていた。まあ結論から述べるとその反応になるのう。
「御言葉ですがアスモデウス様。如何なる理由であろうと、ルシファー様にそのように進言するのは非常に困難でして……」
と、苦い表情を浮かべながら妾を見上げる部隊長。顔が驚くくらい引きつっている。
「ルシファーに進言すれば1秒でそなた等の首が刎ねられるのは分かっておる。ルシファーにではなくパイモンにこう進言するのじゃ」
妾がそう言うと固唾を飲みこむルシファー軍の戦士達。
「魔王アスモデウス軍が手を貸し、ベリアル軍の撤退又は壊滅を約束するので、成功した場合にルシファーの力を借りたいとな。それに言ったじゃろう? この進言が失敗したとは言え咎めることは無いとな」
すると、呆気を取られたような表情を浮かべるルシファーの戦士達。
「そ……それだけで宜しいのでしょうか?」
そう部隊長が問いかけてきた。
「そうじゃ? 当然ルシファーに交渉を試みたがちと厳しくてのう」
妾がそう頭を掻くと、ルシファー軍の戦士達が、「やりましょう! 部隊長!」と前向きな言葉を発してくれた。
「そうですね。それくらいの事であればお任せください。パイモン様にそのように進言しておきます」
「おお! 助かる! 念話で進捗状況を聞こうと思うのじゃが、いつくらいのタイミングが良かったかのう?」
「3時間以内に必ず」
「分かった。では3時間後に念話で反応を聞くので宜しく頼む。妾はあともう一つの部隊を助けるので、パイモンも2部隊の部隊長から進言されたら考えるじゃろ?」
「おっしゃる通りでございます。我々としては先程の戦いを見て、アスモデウス様とシトリー様のご協力を頂けるのであればこの上ない喜びです。全身全霊でパイモン様に交渉を持ち掛けますのでどうか何卒宜しくお願い申し上げます」
改めてそう頭を深々と下げられた。
「じゃあくれぐれも気をつけるんじゃぞ。今は戦争中じゃ。何があるか分からんから、パイモンへの進言より自分の命が優先。肩の力を抜いていくのじゃぞ」
妾はそう言ってシトリーと共に黒魔竜のラーゼンの背に乗り、次の目的地へと向かった。
「なんて寛大な方なんだ」
「俺は心を奪われた。噂以上の美貌だな」
「間違いなく絶世の美女」
「それでいて空のように広い心」
「完璧すぎる」
――と、ルシファー軍の戦士達にべた褒めされる妾じゃった。うむ。悪くない。
「不謹慎ですね。これだから男は嫌いなのです」
と、ぶっきらぼうな口調になっているシトリー。
「そう言うな。それより次の目的地を探すぞ」
「そうですね――あの部隊はどうでしょうか?」
シトリーが指したのはなかなかの人数――兵力1万くらいあるが本当に1部隊なのか?
「ものすごく多くないか?」
「ルシファー軍のあの部隊を率いているのはフルカスです」
「あの老いぼれまだ前線張っているのか!?」
フルカス。ルシファー軍のなかでも一番の古株の家臣。ルシファーが魔王になったときからのパイモンの次にルシファーに心底忠誠を誓っている人物じゃ。元々は元魔王ベレトの家臣じゃ。人間で言うと100歳は超えている筈なのじゃが――。
「あのフルカスの軍が押されているのか。敵軍を指揮しているのは誰じゃ?」
「不明ですね。しかしまだまだ若いようですね」
「そうじゃのう。見るからに100歳もいっとらん」
ベリアル軍の大軍を指揮しているのは、聡明そうな顔つきをした少年じゃった。マーズベルにいるミク殿とノアのちょうど間くらいの年齢じゃろう。まあ魔族なんて見た目が幼いからといって、絶対に若いなんて事はないがのう。パイモンのようにやたらと歳をくっている魔族もいる訳じゃが、体に巡っているMPの循環が成熟していない。そう考えると見た目通り相当若い。
「凄いのう。あんなに若いのがフルカスの軍を押しているのか?」
「そのようですね。オーラもありますし、目つきも私の幼少の頃とは明らかに違います」
「妾に関しては遊び惚けていたからのう。当時の自分と比較すると嫌になるわい」
そんな事はないですよ! と言ってくれたシトリーじゃったが、実際に周りにいたずらばかりをしていたおてんば娘じゃ。じゃからあやつがどんな境遇で、あのレベルに達しているのか気になるのう。
「どうされますか? 向かいますか?」
「そうじゃのう。しかしまああれだけの数じゃ。一筋縄ではいかないぞ? 気を引き締めていけ」
「お任せください」
こうして妾とシトリーはフルカスの方へと向かった。いつぶりに話すか分からんが、あやつがこれだけ苦戦しているのは珍しい。じゃから、何であの少年にそこまで苦しめられているのかという疑問もあった。寧ろその疑問への関心が強かった。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる