463 / 597
アスモデウスの助力Ⅰ
しおりを挟む
「実際にこうして見るとかなり不利な状況じゃのう」
妾とシトリーは、黒魔竜のラーゼンの背に乗り、魔王ルシファーと魔王ベリアルの戦争を見届けていた。
「そうですね。しかしながら勝手に助力して本当に功を奏するのでしょうか? とてもじゃありませんが、上手くいくようには感じません」
「まあやってみるだけやってみよう。今、地上ではナリユキ閣下と青龍が奮闘している筈じゃ。それにあの龍を倒すには、魔族の魔真王がどうしても必要となる。何が何でもルシファーの協力が必要じゃ」
「そうですか。地上もアスモデウス様にとっては大切な場所ですもんね」
「そうじゃのう。かけがないの無い存在じゃ。魔界も地上もな」
「アスモデウス様が地上に長く住まわれているので、それほど心地良い場所なのだと思います」
「色々あるが、この魔界と違ってずっと戦争している勢力は無いからのう。まあ軽い争いはあるじゃろうが、今の妾達が見ている程の規模は無い」
そう。魔界の世界は地上のように温くない世界。弱肉強食の世界じゃ。そして人間のように成長という概念はほぼ無い。素質は生まれながらにしてある。なので、どれだけ頑張ろうが報われない魔族は多い。この魔界という世界はそれほど残酷なのじゃ。しかしながら最近の魔族は変わってきているという。争いを好まない魔族が増えてきているようじゃ。その反面、今こうして争いが行われている。
王に忠義を持つ者。王に恐れている者。家族を守る者。様々な理由があってこの場にいる。覚悟が無い魔族だっていない訳ではない。そんな中、多くの痛み訴える声が聞こえる。様々な思惑があるものの、死にたくて死んでる魔族は誰一人としていない。どれだけ才能がなかろうが、皆必死に生きているには変わりないのじゃ。
「やはり妾としてはこの戦争を終わらせたくなったのう」
「どうしてですか?」
「簡単じゃ。ルシファー軍の士気をみろ。殺戮を楽しむベリアル軍と、不利な状況で士気が下がる一方のルシファー軍。こんなにも魔界で起きた他の王達の戦争で、心が痛くなるのは妾は初めてじゃ」
「――正直なところ私には、他人がどうなろうと別に構わないのでその痛みは分かりません。地上で生活をすれば分かってくるものなのでしょうか?」
「そうじゃな分かる時がくる。まあ、どのみち黒龍を倒さねば話は進まない。シトリー。妾に協力してくれ。奴等の部隊をいくつか潰す」
「仰せのままに」
妾はシトリーがそう返してくれると、早速ラーゼンに上空を飛び回ってもらった。ここは上空200m。目の前の戦闘に必死なこやつ等は、妾達の存在に仮に気付いても攻撃を仕掛ける事はできない。
数秒間飛び回って、部隊が苦戦しているルシファー軍を探す。心苦しいところはあるが、ほぼ壊滅している部隊を助けてもあまり意味は無い。ルシファー軍が3。ベリアル軍が7くらいのところが丁度よいと踏んだ。
「魔王じゃが、今回に限っては英雄気取りでいこうかのう」
「魔王が英雄って初めて聞きますよ。むしろ英雄は魔王の敵です」
「それはそうじゃ」
軽い談笑をした後、早速ラーゼンに指示をして1つの部隊同士の争いに割った。妾が近付くだけで、戦闘はピタリと止まり、妾に視線が集まった。
「ま……魔王アスモデウス!」
そう、何名かのベリアル軍の戦士達がそう妾に声をかけてきた。そして、妾の登場によってルシファー軍の戦士達 数名の表情が一気に曇る。慎重に事を運ぼうとしているのは、傷だらけの部隊長くらいだ。
「これはなかなか酷い有様じゃのう。流石魔王ベリアル軍じゃのう」
「俺達を嘲笑いにきたのか?」
魔王ルシファー軍の部隊長が妾にそう問いかけてきた。
「皮肉っぽく聞こえたのは申し訳ない」
そう言うと怪訝な表情を浮かべる魔王ルシファー軍の部隊長。対する魔王ベリアル軍の戦士達は、眉をひそめて妾の事を注視していた。
「其方達の力になろうと思ってな」
妾がそう発言すると魔王ベリアル軍に緊張が走った。正直なところMPを使って一気に壊滅させる事はできる。しかしそれだと恐らく意味が無いのじゃ。あくまで共闘をして同じ死線を潜り抜けてこそ効果を発揮する。
「どうじゃ?」
妾がそう部隊長に問いかけると、少し渋った様子だった。流石ルシファー軍の部隊長と言ったところか、自らの軍で何とかしたいという誇りがあるようじゃ。
「部隊長! ここは協力してもらいましょう!」
「現状、我々は不利です! 魔王アスモデウスが力を貸してくれるであれば受け入れるべきです!」
そう何名かの魔王ルシファー軍の戦士達が部隊長に向かってそう訴えた。
「何が望みだ?」
部隊長が妾にそう問いかけてきた。
「こやつ等がいる前で発言するのは、其方等にとって不利益だと妾は思うのじゃ。なので、今どうするかだけを考えてほしい」
そう。仮に魔王ベリアル軍の前でルシファーを借りたいという交渉をすると、ルシファーが仮に助力してくれた際に、魔王ベリアル軍が魔王ルシファー軍の領を荒らす事を危惧した。それだと助けた意味がない。
――まあ何とも甘い考え方になったものじゃのう。
「分かった。今は力を貸してほしい。申し出は俺ができる範囲で受け入れよう」
「なあに。別に無理な要求をする訳じゃないしのう。それに失敗したとしても咎める事はしない」
「一体どんな要求なのか気になるがそれだと有難い」
まだ、どんな要求かも言っていないのに、失敗を咎めないと言っただけで、部隊長の表情は少し柔らかくなった。少しだけ警戒心が薄れたようじゃ。
「シトリー。其方はこやつ等が動きやすいように動いてやれ。アクティブスキルはそんなに使わなくても良い。あくまで共闘を演じるのじゃ」
妾がそう小声でシトリーに指示を出すと、「かしこまりました」と一言。
「さあ、遊んでやるかのう」
妾がそう言って一歩踏み出すと、魔王ベリアル軍の戦士達が一歩後退りを行っていた。
妾とシトリーは、黒魔竜のラーゼンの背に乗り、魔王ルシファーと魔王ベリアルの戦争を見届けていた。
「そうですね。しかしながら勝手に助力して本当に功を奏するのでしょうか? とてもじゃありませんが、上手くいくようには感じません」
「まあやってみるだけやってみよう。今、地上ではナリユキ閣下と青龍が奮闘している筈じゃ。それにあの龍を倒すには、魔族の魔真王がどうしても必要となる。何が何でもルシファーの協力が必要じゃ」
「そうですか。地上もアスモデウス様にとっては大切な場所ですもんね」
「そうじゃのう。かけがないの無い存在じゃ。魔界も地上もな」
「アスモデウス様が地上に長く住まわれているので、それほど心地良い場所なのだと思います」
「色々あるが、この魔界と違ってずっと戦争している勢力は無いからのう。まあ軽い争いはあるじゃろうが、今の妾達が見ている程の規模は無い」
そう。魔界の世界は地上のように温くない世界。弱肉強食の世界じゃ。そして人間のように成長という概念はほぼ無い。素質は生まれながらにしてある。なので、どれだけ頑張ろうが報われない魔族は多い。この魔界という世界はそれほど残酷なのじゃ。しかしながら最近の魔族は変わってきているという。争いを好まない魔族が増えてきているようじゃ。その反面、今こうして争いが行われている。
王に忠義を持つ者。王に恐れている者。家族を守る者。様々な理由があってこの場にいる。覚悟が無い魔族だっていない訳ではない。そんな中、多くの痛み訴える声が聞こえる。様々な思惑があるものの、死にたくて死んでる魔族は誰一人としていない。どれだけ才能がなかろうが、皆必死に生きているには変わりないのじゃ。
「やはり妾としてはこの戦争を終わらせたくなったのう」
「どうしてですか?」
「簡単じゃ。ルシファー軍の士気をみろ。殺戮を楽しむベリアル軍と、不利な状況で士気が下がる一方のルシファー軍。こんなにも魔界で起きた他の王達の戦争で、心が痛くなるのは妾は初めてじゃ」
「――正直なところ私には、他人がどうなろうと別に構わないのでその痛みは分かりません。地上で生活をすれば分かってくるものなのでしょうか?」
「そうじゃな分かる時がくる。まあ、どのみち黒龍を倒さねば話は進まない。シトリー。妾に協力してくれ。奴等の部隊をいくつか潰す」
「仰せのままに」
妾はシトリーがそう返してくれると、早速ラーゼンに上空を飛び回ってもらった。ここは上空200m。目の前の戦闘に必死なこやつ等は、妾達の存在に仮に気付いても攻撃を仕掛ける事はできない。
数秒間飛び回って、部隊が苦戦しているルシファー軍を探す。心苦しいところはあるが、ほぼ壊滅している部隊を助けてもあまり意味は無い。ルシファー軍が3。ベリアル軍が7くらいのところが丁度よいと踏んだ。
「魔王じゃが、今回に限っては英雄気取りでいこうかのう」
「魔王が英雄って初めて聞きますよ。むしろ英雄は魔王の敵です」
「それはそうじゃ」
軽い談笑をした後、早速ラーゼンに指示をして1つの部隊同士の争いに割った。妾が近付くだけで、戦闘はピタリと止まり、妾に視線が集まった。
「ま……魔王アスモデウス!」
そう、何名かのベリアル軍の戦士達がそう妾に声をかけてきた。そして、妾の登場によってルシファー軍の戦士達 数名の表情が一気に曇る。慎重に事を運ぼうとしているのは、傷だらけの部隊長くらいだ。
「これはなかなか酷い有様じゃのう。流石魔王ベリアル軍じゃのう」
「俺達を嘲笑いにきたのか?」
魔王ルシファー軍の部隊長が妾にそう問いかけてきた。
「皮肉っぽく聞こえたのは申し訳ない」
そう言うと怪訝な表情を浮かべる魔王ルシファー軍の部隊長。対する魔王ベリアル軍の戦士達は、眉をひそめて妾の事を注視していた。
「其方達の力になろうと思ってな」
妾がそう発言すると魔王ベリアル軍に緊張が走った。正直なところMPを使って一気に壊滅させる事はできる。しかしそれだと恐らく意味が無いのじゃ。あくまで共闘をして同じ死線を潜り抜けてこそ効果を発揮する。
「どうじゃ?」
妾がそう部隊長に問いかけると、少し渋った様子だった。流石ルシファー軍の部隊長と言ったところか、自らの軍で何とかしたいという誇りがあるようじゃ。
「部隊長! ここは協力してもらいましょう!」
「現状、我々は不利です! 魔王アスモデウスが力を貸してくれるであれば受け入れるべきです!」
そう何名かの魔王ルシファー軍の戦士達が部隊長に向かってそう訴えた。
「何が望みだ?」
部隊長が妾にそう問いかけてきた。
「こやつ等がいる前で発言するのは、其方等にとって不利益だと妾は思うのじゃ。なので、今どうするかだけを考えてほしい」
そう。仮に魔王ベリアル軍の前でルシファーを借りたいという交渉をすると、ルシファーが仮に助力してくれた際に、魔王ベリアル軍が魔王ルシファー軍の領を荒らす事を危惧した。それだと助けた意味がない。
――まあ何とも甘い考え方になったものじゃのう。
「分かった。今は力を貸してほしい。申し出は俺ができる範囲で受け入れよう」
「なあに。別に無理な要求をする訳じゃないしのう。それに失敗したとしても咎める事はしない」
「一体どんな要求なのか気になるがそれだと有難い」
まだ、どんな要求かも言っていないのに、失敗を咎めないと言っただけで、部隊長の表情は少し柔らかくなった。少しだけ警戒心が薄れたようじゃ。
「シトリー。其方はこやつ等が動きやすいように動いてやれ。アクティブスキルはそんなに使わなくても良い。あくまで共闘を演じるのじゃ」
妾がそう小声でシトリーに指示を出すと、「かしこまりました」と一言。
「さあ、遊んでやるかのう」
妾がそう言って一歩踏み出すと、魔王ベリアル軍の戦士達が一歩後退りを行っていた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる