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ミクとアスモデウスⅠ
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「極楽じゃのう」
そう呟いたのは温泉に浸かって笑みを浮かべながら、マーズベルの景色を一望しているアスモデウスさんだった。いきなり出現したと思えば、ナリユキ君に助言を求めて来たアスモデウスさん。何やら、黒龍を倒すために、魔王ルシファーに協力要請をするとの事だ。何とまあ凄いことを思いつくものだ。
「其方の旦那様は気が利くのう。とろけそうじゃわい」
と、温泉をご満悦の様子。ここは以前、レンさん達も入っていた高さ20mに位置する檜の露天風呂だ。でも、旦那様ってまだそんな関係じゃないし、何だか物凄く恥ずかしい。
「旦那様ってそんな関係では無いですよ」
「落ち着いたら結婚しても良いじゃろう。2人の子供楽しみじゃのう。絶対に可愛いぞ?」
と、何だかとっても恥ずかしい事を言っているアスモデウスさん。ナリユキ君との子供――。駄目だ少しのぼせてきたかも。
「何じゃ、照れておるのか? 可愛いのう」
ぐぬぬぬ――絶対に面白半分でからかっているでしょ!
「私の事はいいんです。はい、アスモデウス様」
アスモデウスさんの御猪口に入っている日本酒は既に無くなっていた。私が徳利を取り出すと、「申し訳ないのう」と笑みをを浮かべながら呟いていた。そして近くに置いている木の籠に入った温泉卵を取り出して口の中に運ぶ。
「う~ん。最高じゃ!」
と、温泉卵をじっくりと堪能していた。
「この甘いタレと、卵の濃厚な旨みがたまらんのう。というか卵でこれほど美味しいと感じたのは初めてじゃ。何がこれほど美味しいのじゃろう――」
「この卵は最近マーズベルで発見された新種の鶏、緑王鶏の卵です。普通の魔物の卵と比較しても、この緑王鶏に含まれている卵のアミノ酸は五倍ほどあり、とても栄養価の高い卵です。また、この卵に含まれている卵のタンパク質は15g程あり、おおよそ卵2個分のタンパク質が一度で摂取可能という訳です」
私がそう説明するとアスモデウスさんは、緑王鶏の卵に、益々関心を抱いていた。
「つまり、この籠の中に入っている温泉卵を5つ全て食べると、75gのタンパク質を摂取できるという訳じゃな?」
「そういう事です」
「鍛えている男の人にとったら凄く嬉しい食材じゃな」
「そうですね。なのでナリユキ君やマカロフ卿も凄く気に入っております。元々、この鶏はうちのノアが森の中を探索している時に見つけたようなのですが、リリアンに持ち帰ってから、黒の殲滅軍の一部のメンバーがこの鶏を育てております」
「成程じゃな。黒の殲滅軍が今や農業とは平和になったのう」
「そうですね~。ナリユキ君の下にマカロフ卿が付いてから、色々と変わりましたので」
「マカロフ卿はお金を稼ぐ天才じゃからな。ナリユキ閣下もいい刺激になっている事じゃろう」
「それが、マカロフ卿はナリユキ君のアイデアを物凄く慕っていて、あっちの世界で事業を立ち上げた経験が無いのに、失敗せずにここまで成功しているのが凄いと称賛しておりました」
「部下が事業展開の経験はあるが、本人が運営しているものは全部成功していると聞いたな」
「そうなんです。本人はマーズベルにある資源が凄いだけで、特に大した事はしていないと言っていますね」
「そうは言ってもいくつかは失敗しても良いと思うが――まあ今や各国がお墨付きのマーズベルじゃからのう。特にワインとビガーポークの輸出量は、食品というジャンルであればトップクラスじゃ」
「そうですね。お陰様で隣にいる私は感覚が狂ってしまいますよ」
「いきなり富豪になった気分というやつかの?」
「そんな感じに近いですね。ただ殆どのお金は国民全員を賄う為に使っているようなので、自由に使えるお金が物凄く多いわけでは無いんですよね。ただ、資産にすると金貨何枚で表現すればいいのか分からないくらいはある筈です」
「まあナリユキ閣下は世界でトップクラスの大富豪じゃからのう」
そう。ナリユキ君は世界一の大富豪。そして、善を持つ人間であれば、労働力になる代わりに、衣食住を提供するという懐の深さ。常識では考える事ができない。実際に、カーネル、レンファレンス、アードルハイム、カルカラ、ログウェルなどの他国で、衣食住全てを国が負担している国は無い。マーズベルの資源の豊富さと、家はナリユキ君が手から出せるという利点があるからこそ実現できている。それに観光客が途絶える事は無く、今のところマーズベルの財政状況は潤っている。この状況がいつまで続くか分からないけど、当分は大丈夫だろうとされている。ただもし、黒龍があちこちの国を破壊してしまったら、全世界が食糧危機に陥ってしまい、魔物の捕獲量が少ないので、価格も当然高騰してしまう。そうなってくると、最終的には黒龍を討伐できたとしても、今度は世界の何処かが、食糧を巡って戦争を起こす可能性がある。単純な世界平和という訳では無く、生き残った人々も地獄を味わう事になるので、黒龍は必ず討伐しなければならない。
「まあどれだけ続くか分からないですよ。国のトップになっている任期は、アスモデウス様はナリユキ君の何百倍もありますので、何かナリユキ君が困ったときは是非力を貸してあげてください」
私がそう頭を下げると、アスモデウス様は「頭を下げなくても良い」と優しい笑みを浮かべていた。
「其方、本当に透明な心の持ち主じゃの。それ故に息苦しさを感じる時もあるもんじゃ。妾にも別に無理はせんでも良いからのう。其方とは対等の立場でいたい」
そう言ってアスモデウスさんは、割れた時の為に予備で置いていた御猪口に、日本酒を注いだ。
「一緒にこの景色を見ながら飲もう」
そう言ってくれたアスモデウスさんの笑顔は何だかとっても眩しくて温かいものだった。アスモデウスさんの意外な言葉に呆気をとられて、レスポンスが遅くなってしまったのは、目を瞑ってほしい。
そう呟いたのは温泉に浸かって笑みを浮かべながら、マーズベルの景色を一望しているアスモデウスさんだった。いきなり出現したと思えば、ナリユキ君に助言を求めて来たアスモデウスさん。何やら、黒龍を倒すために、魔王ルシファーに協力要請をするとの事だ。何とまあ凄いことを思いつくものだ。
「其方の旦那様は気が利くのう。とろけそうじゃわい」
と、温泉をご満悦の様子。ここは以前、レンさん達も入っていた高さ20mに位置する檜の露天風呂だ。でも、旦那様ってまだそんな関係じゃないし、何だか物凄く恥ずかしい。
「旦那様ってそんな関係では無いですよ」
「落ち着いたら結婚しても良いじゃろう。2人の子供楽しみじゃのう。絶対に可愛いぞ?」
と、何だかとっても恥ずかしい事を言っているアスモデウスさん。ナリユキ君との子供――。駄目だ少しのぼせてきたかも。
「何じゃ、照れておるのか? 可愛いのう」
ぐぬぬぬ――絶対に面白半分でからかっているでしょ!
「私の事はいいんです。はい、アスモデウス様」
アスモデウスさんの御猪口に入っている日本酒は既に無くなっていた。私が徳利を取り出すと、「申し訳ないのう」と笑みをを浮かべながら呟いていた。そして近くに置いている木の籠に入った温泉卵を取り出して口の中に運ぶ。
「う~ん。最高じゃ!」
と、温泉卵をじっくりと堪能していた。
「この甘いタレと、卵の濃厚な旨みがたまらんのう。というか卵でこれほど美味しいと感じたのは初めてじゃ。何がこれほど美味しいのじゃろう――」
「この卵は最近マーズベルで発見された新種の鶏、緑王鶏の卵です。普通の魔物の卵と比較しても、この緑王鶏に含まれている卵のアミノ酸は五倍ほどあり、とても栄養価の高い卵です。また、この卵に含まれている卵のタンパク質は15g程あり、おおよそ卵2個分のタンパク質が一度で摂取可能という訳です」
私がそう説明するとアスモデウスさんは、緑王鶏の卵に、益々関心を抱いていた。
「つまり、この籠の中に入っている温泉卵を5つ全て食べると、75gのタンパク質を摂取できるという訳じゃな?」
「そういう事です」
「鍛えている男の人にとったら凄く嬉しい食材じゃな」
「そうですね。なのでナリユキ君やマカロフ卿も凄く気に入っております。元々、この鶏はうちのノアが森の中を探索している時に見つけたようなのですが、リリアンに持ち帰ってから、黒の殲滅軍の一部のメンバーがこの鶏を育てております」
「成程じゃな。黒の殲滅軍が今や農業とは平和になったのう」
「そうですね~。ナリユキ君の下にマカロフ卿が付いてから、色々と変わりましたので」
「マカロフ卿はお金を稼ぐ天才じゃからな。ナリユキ閣下もいい刺激になっている事じゃろう」
「それが、マカロフ卿はナリユキ君のアイデアを物凄く慕っていて、あっちの世界で事業を立ち上げた経験が無いのに、失敗せずにここまで成功しているのが凄いと称賛しておりました」
「部下が事業展開の経験はあるが、本人が運営しているものは全部成功していると聞いたな」
「そうなんです。本人はマーズベルにある資源が凄いだけで、特に大した事はしていないと言っていますね」
「そうは言ってもいくつかは失敗しても良いと思うが――まあ今や各国がお墨付きのマーズベルじゃからのう。特にワインとビガーポークの輸出量は、食品というジャンルであればトップクラスじゃ」
「そうですね。お陰様で隣にいる私は感覚が狂ってしまいますよ」
「いきなり富豪になった気分というやつかの?」
「そんな感じに近いですね。ただ殆どのお金は国民全員を賄う為に使っているようなので、自由に使えるお金が物凄く多いわけでは無いんですよね。ただ、資産にすると金貨何枚で表現すればいいのか分からないくらいはある筈です」
「まあナリユキ閣下は世界でトップクラスの大富豪じゃからのう」
そう。ナリユキ君は世界一の大富豪。そして、善を持つ人間であれば、労働力になる代わりに、衣食住を提供するという懐の深さ。常識では考える事ができない。実際に、カーネル、レンファレンス、アードルハイム、カルカラ、ログウェルなどの他国で、衣食住全てを国が負担している国は無い。マーズベルの資源の豊富さと、家はナリユキ君が手から出せるという利点があるからこそ実現できている。それに観光客が途絶える事は無く、今のところマーズベルの財政状況は潤っている。この状況がいつまで続くか分からないけど、当分は大丈夫だろうとされている。ただもし、黒龍があちこちの国を破壊してしまったら、全世界が食糧危機に陥ってしまい、魔物の捕獲量が少ないので、価格も当然高騰してしまう。そうなってくると、最終的には黒龍を討伐できたとしても、今度は世界の何処かが、食糧を巡って戦争を起こす可能性がある。単純な世界平和という訳では無く、生き残った人々も地獄を味わう事になるので、黒龍は必ず討伐しなければならない。
「まあどれだけ続くか分からないですよ。国のトップになっている任期は、アスモデウス様はナリユキ君の何百倍もありますので、何かナリユキ君が困ったときは是非力を貸してあげてください」
私がそう頭を下げると、アスモデウス様は「頭を下げなくても良い」と優しい笑みを浮かべていた。
「其方、本当に透明な心の持ち主じゃの。それ故に息苦しさを感じる時もあるもんじゃ。妾にも別に無理はせんでも良いからのう。其方とは対等の立場でいたい」
そう言ってアスモデウスさんは、割れた時の為に予備で置いていた御猪口に、日本酒を注いだ。
「一緒にこの景色を見ながら飲もう」
そう言ってくれたアスモデウスさんの笑顔は何だかとっても眩しくて温かいものだった。アスモデウスさんの意外な言葉に呆気をとられて、レスポンスが遅くなってしまったのは、目を瞑ってほしい。
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