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会議Ⅳ
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「少し提案があるのじゃが聞いてくれぬか?」
「何だ? 言ってみろ」
「今、劣勢なのはルシファーの軍。昔の記憶を無くしてはいるとは言えど、海馬には龍騎士だった頃の記憶が残っている筈じゃ。であれば、ルシファー軍を助ける代わりに黒龍の討伐に協力してもらうのはどうじゃ?」
妾がそう発言すると、青龍は呆れた表情を浮かべて溜め息をついていた。やっぱり現実的では無い話じゃったかの。
「何を言い出したかと思えば、なかなかの迷案だな」
「それ、迷う方の迷案かの?」
「お察しの通りだ。そもそもお主はルシファーと交流関係にあるのか?」
「――1,000年は会っておらんのう。それも会った時は少し戦争をしていての」
「最悪だな」
「最悪とは何じゃ! ほんの少しの可能性があるのであれば、やってみる価値はあるのではないか?」
「可能性は無いとは言えない。しかし、現実的に考えてみろ。魔界にいるアスモデウス軍が全勢力でルシファー軍に加勢したとしても、相手はベリアルだ。そう簡単に戦争を終結させる事ができない。そもそも、地上と魔界では時間軸が違う。魔界の一日がこっちでは三日経っている。そう考えると黒龍が本格的に他の国や、ヒーティスを襲ったとき、圧倒的な戦力不足になる。今は魔界に構っている暇はない。ナリユキ殿や余のように天眼を持っていれば、話は別だがな」
……案を貰おうとしたのがまさかの大失敗。けちょんけちょんにされてしまったのじゃ。
「妾も天眼使えないかの?」
「ナリユキ殿でも習得できたので、無理とは思わないが――まさかナリユキ殿に知性・記憶の略奪と献上を使ってもらうのか?」
「それしか無かろう。天眼を持っていれば千里眼で地上、魔界、地下世界の三つの世界を監視することができるからのう」
「余は魔界だけは視えた事が無いのだが――魔界の瘴気が強すぎるのか、何らかの結界が張られているのか知れないが」
「魔王の妾であればその点に関しての問題は無いのう。一縷の望みにかけて試す価値はあると思うのじゃ。それにナリユキ閣下に情報を共有してもらう事で、妾はさらに強くなることができるかもしれないしの」
「確かにそれは心強いな――まあ期待はしていないが、会ってみる価値はあるのじゃないか――? いや、待て。瘴気は何とでもできるのか?」
青龍はいきなりハッとした表情を浮かべて、妾を真っ直ぐ見つめてきた。これが他の男であれば、口説く時のような目つきじゃ。まあ青龍に関してはそんな事無いがの。青龍とナリユキ閣下だけは妾の色欲支配に屈しない珍しい雄じゃからのう。
「そうじゃな。妾は自在に魔界の環境の影響を受けるか否かをコントロールできるからのう」
妾がそう言うと青龍は「現実味が出て来た――!」と拳を握っていた。一体何の策を思いついたのじゃろうか。
「魔界に行って加勢して来ても良いぞ」
と、いきなり意見を逆転させた青龍。
「何か思いついたのか?」
「単純な話だ。危機的状況に陥った時、お主を強制転移すれば良い。それであればこちら側のタイミングでお主を呼び寄せることができる」
「おお! それは良い案じゃ!」
思わずそう叫んでしまった。無理だと言っていたのは、魔界にいる時点で妾を呼び寄せる事ができないと言いたかったのじゃろうか?
「魔界の特別な環境が、強制転移のスキル発動を阻害させるという事じゃったか?」
「その通りだ。なので、そもそも強制転移の使用は完全に除外していた」
「それであれば問題無い。使ってくれればいつでも加勢する事はできる」
「それは頼もしい。あとは交渉次第だな。余は魔王になったジークフリートとは一度も会っていないから、どのような性格かは分からない。なのでその辺の立ち回りは任せたぞ」
「任せておいてほしいのじゃ。仮に魔王ルシファーが味方になってくれれば、もはや勝てると言っても良い」
「確かにそうだな。魔王になった事で更に強くなっている筈だしな」
「あやつの力は未知数じゃからのう。そうなったら早速出発じゃ!」
確か転移イヤリングは目を瞑って、人を顔を思い浮かべるのじゃったな。
「ちょっと待て! 準備無しで行くつもりか!? お主も魔王ではあるが、相手はZ級の魔王だろ!? まずは魔界の城に戻るのが先決では無いのか!?」
「それもそうじゃのう。魔界であれば今の妾はZ級になるので、警戒心が全然無かったのう」
妾がそう言うと青龍は固まっていた。
「何じゃ? どうかしたのか?」
するとゆっくりと口を開く青龍。
「魔界ではZ級になるのか?」
「ん? 魔族の特性知らぬのか? 魔界にある濃い瘴気を浴びると魔族は強くなるのじゃ。逆に地上だと魔族は弱体化するのじゃ。其方の友人のマルファスや、ナリユキ閣下のところのベリト、カーネル坊のところのクロノスも相当強くなるはずじゃぞ? 地上でずっと暮らしているとは言え、血は魔族じゃからのう」
「成程な。確かに魔界と地上では段違いと聞くが、そこまで違うとは思わなかった」
「そういう事じゃ。なので何とかしてみせる。行く前にエリゴス達に一言伝えておくかのう」
「ああ。そうした方が良い。いきなり国の主が消えたら国も大パニックだ」
「では気を付けてのう。ナリユキ閣下には青龍から伝えておいてくれ」
「分かった」
青龍がそう返事したのを見て、妾は一旦ヒーティスの城へ戻りエリゴス達に伝言を残した。そしていよいよ久々の魔界へ突入じゃ。
「何だ? 言ってみろ」
「今、劣勢なのはルシファーの軍。昔の記憶を無くしてはいるとは言えど、海馬には龍騎士だった頃の記憶が残っている筈じゃ。であれば、ルシファー軍を助ける代わりに黒龍の討伐に協力してもらうのはどうじゃ?」
妾がそう発言すると、青龍は呆れた表情を浮かべて溜め息をついていた。やっぱり現実的では無い話じゃったかの。
「何を言い出したかと思えば、なかなかの迷案だな」
「それ、迷う方の迷案かの?」
「お察しの通りだ。そもそもお主はルシファーと交流関係にあるのか?」
「――1,000年は会っておらんのう。それも会った時は少し戦争をしていての」
「最悪だな」
「最悪とは何じゃ! ほんの少しの可能性があるのであれば、やってみる価値はあるのではないか?」
「可能性は無いとは言えない。しかし、現実的に考えてみろ。魔界にいるアスモデウス軍が全勢力でルシファー軍に加勢したとしても、相手はベリアルだ。そう簡単に戦争を終結させる事ができない。そもそも、地上と魔界では時間軸が違う。魔界の一日がこっちでは三日経っている。そう考えると黒龍が本格的に他の国や、ヒーティスを襲ったとき、圧倒的な戦力不足になる。今は魔界に構っている暇はない。ナリユキ殿や余のように天眼を持っていれば、話は別だがな」
……案を貰おうとしたのがまさかの大失敗。けちょんけちょんにされてしまったのじゃ。
「妾も天眼使えないかの?」
「ナリユキ殿でも習得できたので、無理とは思わないが――まさかナリユキ殿に知性・記憶の略奪と献上を使ってもらうのか?」
「それしか無かろう。天眼を持っていれば千里眼で地上、魔界、地下世界の三つの世界を監視することができるからのう」
「余は魔界だけは視えた事が無いのだが――魔界の瘴気が強すぎるのか、何らかの結界が張られているのか知れないが」
「魔王の妾であればその点に関しての問題は無いのう。一縷の望みにかけて試す価値はあると思うのじゃ。それにナリユキ閣下に情報を共有してもらう事で、妾はさらに強くなることができるかもしれないしの」
「確かにそれは心強いな――まあ期待はしていないが、会ってみる価値はあるのじゃないか――? いや、待て。瘴気は何とでもできるのか?」
青龍はいきなりハッとした表情を浮かべて、妾を真っ直ぐ見つめてきた。これが他の男であれば、口説く時のような目つきじゃ。まあ青龍に関してはそんな事無いがの。青龍とナリユキ閣下だけは妾の色欲支配に屈しない珍しい雄じゃからのう。
「そうじゃな。妾は自在に魔界の環境の影響を受けるか否かをコントロールできるからのう」
妾がそう言うと青龍は「現実味が出て来た――!」と拳を握っていた。一体何の策を思いついたのじゃろうか。
「魔界に行って加勢して来ても良いぞ」
と、いきなり意見を逆転させた青龍。
「何か思いついたのか?」
「単純な話だ。危機的状況に陥った時、お主を強制転移すれば良い。それであればこちら側のタイミングでお主を呼び寄せることができる」
「おお! それは良い案じゃ!」
思わずそう叫んでしまった。無理だと言っていたのは、魔界にいる時点で妾を呼び寄せる事ができないと言いたかったのじゃろうか?
「魔界の特別な環境が、強制転移のスキル発動を阻害させるという事じゃったか?」
「その通りだ。なので、そもそも強制転移の使用は完全に除外していた」
「それであれば問題無い。使ってくれればいつでも加勢する事はできる」
「それは頼もしい。あとは交渉次第だな。余は魔王になったジークフリートとは一度も会っていないから、どのような性格かは分からない。なのでその辺の立ち回りは任せたぞ」
「任せておいてほしいのじゃ。仮に魔王ルシファーが味方になってくれれば、もはや勝てると言っても良い」
「確かにそうだな。魔王になった事で更に強くなっている筈だしな」
「あやつの力は未知数じゃからのう。そうなったら早速出発じゃ!」
確か転移イヤリングは目を瞑って、人を顔を思い浮かべるのじゃったな。
「ちょっと待て! 準備無しで行くつもりか!? お主も魔王ではあるが、相手はZ級の魔王だろ!? まずは魔界の城に戻るのが先決では無いのか!?」
「それもそうじゃのう。魔界であれば今の妾はZ級になるので、警戒心が全然無かったのう」
妾がそう言うと青龍は固まっていた。
「何じゃ? どうかしたのか?」
するとゆっくりと口を開く青龍。
「魔界ではZ級になるのか?」
「ん? 魔族の特性知らぬのか? 魔界にある濃い瘴気を浴びると魔族は強くなるのじゃ。逆に地上だと魔族は弱体化するのじゃ。其方の友人のマルファスや、ナリユキ閣下のところのベリト、カーネル坊のところのクロノスも相当強くなるはずじゃぞ? 地上でずっと暮らしているとは言え、血は魔族じゃからのう」
「成程な。確かに魔界と地上では段違いと聞くが、そこまで違うとは思わなかった」
「そういう事じゃ。なので何とかしてみせる。行く前にエリゴス達に一言伝えておくかのう」
「ああ。そうした方が良い。いきなり国の主が消えたら国も大パニックだ」
「では気を付けてのう。ナリユキ閣下には青龍から伝えておいてくれ」
「分かった」
青龍がそう返事したのを見て、妾は一旦ヒーティスの城へ戻りエリゴス達に伝言を残した。そしていよいよ久々の魔界へ突入じゃ。
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