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研究施設の最後
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「爺!」
そう叫んだのはマッドだった。しかし、他のアリスやフィオナ達がマッドが俺の方に向かって来ようとするのを阻んでいる。
「邪魔だ貴様等!」
「ナリユキ様のところへは行かせません」
「お前の相手はあたし達だ!」
そう言って傷を負っている2人が、必死にヘイトを買っていた。その間にシュファとカルロータ――台湾人とコロンビア人の転生者みたいだ。その2人がマッドに一撃ずつを浴びせていた。戦況は明らかにこちらのほうが有利だ。
「く――そ。この儂がこんな小僧に……」
「子供達をさらって魔物の実験をしていたアンタ達が悪い。それに依頼を受けてこの施設に来た冒険者達も手をかけていたんだろ? ここで報いるべきだよ」
「儂等はこの世界の発展の為に……動いていた……」
「アンタなりの正義だろ? 分からなくもないけど」
「ならば何故じゃ……」
爺さんは俺を睨めつけるような目で見てきた。何故って言われても俺には同情はできない。マカロフ卿の時もそうだけど、自分が思う正義を掲げて、その正義を貫き通すために色々な犠牲を払うんだ。
「この施設に関して言うと、アンタ達組織が掲げた正義は間違っていた。だから色々な冒険者が派遣されて来たんだろ? 非人道的な行為でもしない限り、世界が変わらないってのもあるかもしれないけど多くの人は反対をする。で、成功した人はそのあらゆる反対意見を押しのけて来た人達だ。今回はその反対意見をしている人の中に、俺という存在がたまたま通りかかって阻止された。そんだけの話だろ?」
すると爺さんは歯を食いしばっていた。何も言っていないのに悲痛の叫びを聞いたような気がする。何千年も生きたこの爺さんも、色々な体験をしてきたんだろう。
「ここで死ぬか。記憶を抜かれて廃人になるか選びな」
「なあに」
爺さんはそう呟くなり、全身のエネルギーが一気に消滅したかのように思えた。同時に爺さんの目に光は宿っていなかった。どういうスキルを使ったのか分からないってのがモヤモヤするけど、爺さんは自殺をしたようだ。長年、ミロクに仕えていたのに呆気ない最期だったな。
「憶えておけ!」
そう言ってマッドはこの場から姿を消した。転移を持っているわけでは無いので、この場から姿を消す方法はステータスを視ていた限りでは無かったけど、まあそこは気にしないでおこう。
「ナリユキ様。助けて下さりありがとうございます」
「あたしからもお礼を申し上げます。ありがとうございます」
アリスとフィオナが俺にそう礼を言ってきた。
「別に気にするな。俺にはコイツがあるからいつでも助けてやれるさ」
俺がそう言って転移イヤリングを指すと、2人は満面の笑みを浮かべていた。
「私からもお礼を言う。ありがとう」
そうお礼を言って来たのは、ミクちゃんに手当てをしてもらったエヴァだった。その後からも、シュファ、カルロータ、ランベーフに感謝の事を述べられた。
「噂通り、めちゃくちゃ強いな~」
「気になっていたんだけど、何で関西弁使っているんだ?」
俺がそう問いかけると「そうやな~」と腕を組んで考え始めるランベーフ。冷静に考えて、関西弁を使う竜なんて可笑しいだろ。てか転生者以外の人間が使うのは可笑しい。
「こんな喋り方をしている友達が昔はおったんや。今はどっか遠くへ行ってしまったんやけど、いつか戻ってきてくれたら嬉しいなって意味を込めてな」
「邪竜なのに、情が深いんですよ~」
ランベーフとは違う感じの軽い口調で話を始めたのはシュファだった。クリクリとした目に胸辺りまであるきめ細かい茶髪の女性だ。K-POPのアイドルのような外見だから、日本でアイドル活動何かしたら人気出るだろうな。
「そうなのか。情が深いのは良い事じゃないか」
「その友人も情が深かったんや。それ故に傷がつきやすくてな。死んだときは何やらショックを受けていたようやで。何で助けてくれへんかってんってな。そんでこっちの世界に来て俺と知り合ってんけど、その後に色々あったらしくてな――今は何処へ行ってるか分からへん」
「何か思い当たる人いるんだよな――その人の友達の名前は何て言うんだ?」
「ん? 俺の友人が言っていた救ってほしかったって人の名前か?」
「そう」
「レンって言っていたで」
「――マジか」
俺とアマミヤみたいなケースがあったから、まさかとは思っていたけど――。もしかして、この世界に来る条件って後悔や夢や成し遂げたかった事。人生をもう一度できたらな――みたいな願望もあるかもしれないけど、友人の死を自責で感じていた場合、先にその友人がこの世界に来ている可能性もあるのか? もし、そうだった場合、俺の死やミクちゃんの死を自責で追い込んでいる人がいるのであれば、その人達はこの世界に来てしまうのだろうか?
――分からん。とりあえず、レンさんはもう一度謝ることができるかもしれないって事だよな。俺がそうしたように――。
「人生分からないもんだな。とりあえず、フォルボスの所へ行こう。この施設の子供達を全員助け出すぞ」
俺がそう声をかけると皆が返事をして頷いてくれた。
そこから時間が経過するのはあっという間だった。施設内の子供達を全員解放し、魔物になった子供達はとりあえず全員気絶させて、ここの研究施設を管理している眼鏡をかけた男性、シーフの研究部屋にあった、元の姿に戻す特効薬で魔物から人間へ戻すことができた。とは言っても人間になったのはマーズベルに帰っている途中で元に戻る――言ってしまえば、時間をかけて元に戻っていた。
勿論、エヴァンスを保護することにも成功した。自我があるエヴァンスはフォルボスと同じ魔物の姿が良いとの事だった。施設内にあった薬は、完全に魔物になった人間には効かないというポンコツだったらしいからな。
エヴァンスに関しては時間をかけてリーズが看るとのことだ。力をコントロールすることができるバフォメット何て貴重な存在だ。フォルボスとエヴァンス――この2人はマーズベルで保護をした方が良いと考える。
ここ最近で色々見てきた中、俺はいよいよ六芒星会議に参加する事となる。
そう叫んだのはマッドだった。しかし、他のアリスやフィオナ達がマッドが俺の方に向かって来ようとするのを阻んでいる。
「邪魔だ貴様等!」
「ナリユキ様のところへは行かせません」
「お前の相手はあたし達だ!」
そう言って傷を負っている2人が、必死にヘイトを買っていた。その間にシュファとカルロータ――台湾人とコロンビア人の転生者みたいだ。その2人がマッドに一撃ずつを浴びせていた。戦況は明らかにこちらのほうが有利だ。
「く――そ。この儂がこんな小僧に……」
「子供達をさらって魔物の実験をしていたアンタ達が悪い。それに依頼を受けてこの施設に来た冒険者達も手をかけていたんだろ? ここで報いるべきだよ」
「儂等はこの世界の発展の為に……動いていた……」
「アンタなりの正義だろ? 分からなくもないけど」
「ならば何故じゃ……」
爺さんは俺を睨めつけるような目で見てきた。何故って言われても俺には同情はできない。マカロフ卿の時もそうだけど、自分が思う正義を掲げて、その正義を貫き通すために色々な犠牲を払うんだ。
「この施設に関して言うと、アンタ達組織が掲げた正義は間違っていた。だから色々な冒険者が派遣されて来たんだろ? 非人道的な行為でもしない限り、世界が変わらないってのもあるかもしれないけど多くの人は反対をする。で、成功した人はそのあらゆる反対意見を押しのけて来た人達だ。今回はその反対意見をしている人の中に、俺という存在がたまたま通りかかって阻止された。そんだけの話だろ?」
すると爺さんは歯を食いしばっていた。何も言っていないのに悲痛の叫びを聞いたような気がする。何千年も生きたこの爺さんも、色々な体験をしてきたんだろう。
「ここで死ぬか。記憶を抜かれて廃人になるか選びな」
「なあに」
爺さんはそう呟くなり、全身のエネルギーが一気に消滅したかのように思えた。同時に爺さんの目に光は宿っていなかった。どういうスキルを使ったのか分からないってのがモヤモヤするけど、爺さんは自殺をしたようだ。長年、ミロクに仕えていたのに呆気ない最期だったな。
「憶えておけ!」
そう言ってマッドはこの場から姿を消した。転移を持っているわけでは無いので、この場から姿を消す方法はステータスを視ていた限りでは無かったけど、まあそこは気にしないでおこう。
「ナリユキ様。助けて下さりありがとうございます」
「あたしからもお礼を申し上げます。ありがとうございます」
アリスとフィオナが俺にそう礼を言ってきた。
「別に気にするな。俺にはコイツがあるからいつでも助けてやれるさ」
俺がそう言って転移イヤリングを指すと、2人は満面の笑みを浮かべていた。
「私からもお礼を言う。ありがとう」
そうお礼を言って来たのは、ミクちゃんに手当てをしてもらったエヴァだった。その後からも、シュファ、カルロータ、ランベーフに感謝の事を述べられた。
「噂通り、めちゃくちゃ強いな~」
「気になっていたんだけど、何で関西弁使っているんだ?」
俺がそう問いかけると「そうやな~」と腕を組んで考え始めるランベーフ。冷静に考えて、関西弁を使う竜なんて可笑しいだろ。てか転生者以外の人間が使うのは可笑しい。
「こんな喋り方をしている友達が昔はおったんや。今はどっか遠くへ行ってしまったんやけど、いつか戻ってきてくれたら嬉しいなって意味を込めてな」
「邪竜なのに、情が深いんですよ~」
ランベーフとは違う感じの軽い口調で話を始めたのはシュファだった。クリクリとした目に胸辺りまであるきめ細かい茶髪の女性だ。K-POPのアイドルのような外見だから、日本でアイドル活動何かしたら人気出るだろうな。
「そうなのか。情が深いのは良い事じゃないか」
「その友人も情が深かったんや。それ故に傷がつきやすくてな。死んだときは何やらショックを受けていたようやで。何で助けてくれへんかってんってな。そんでこっちの世界に来て俺と知り合ってんけど、その後に色々あったらしくてな――今は何処へ行ってるか分からへん」
「何か思い当たる人いるんだよな――その人の友達の名前は何て言うんだ?」
「ん? 俺の友人が言っていた救ってほしかったって人の名前か?」
「そう」
「レンって言っていたで」
「――マジか」
俺とアマミヤみたいなケースがあったから、まさかとは思っていたけど――。もしかして、この世界に来る条件って後悔や夢や成し遂げたかった事。人生をもう一度できたらな――みたいな願望もあるかもしれないけど、友人の死を自責で感じていた場合、先にその友人がこの世界に来ている可能性もあるのか? もし、そうだった場合、俺の死やミクちゃんの死を自責で追い込んでいる人がいるのであれば、その人達はこの世界に来てしまうのだろうか?
――分からん。とりあえず、レンさんはもう一度謝ることができるかもしれないって事だよな。俺がそうしたように――。
「人生分からないもんだな。とりあえず、フォルボスの所へ行こう。この施設の子供達を全員助け出すぞ」
俺がそう声をかけると皆が返事をして頷いてくれた。
そこから時間が経過するのはあっという間だった。施設内の子供達を全員解放し、魔物になった子供達はとりあえず全員気絶させて、ここの研究施設を管理している眼鏡をかけた男性、シーフの研究部屋にあった、元の姿に戻す特効薬で魔物から人間へ戻すことができた。とは言っても人間になったのはマーズベルに帰っている途中で元に戻る――言ってしまえば、時間をかけて元に戻っていた。
勿論、エヴァンスを保護することにも成功した。自我があるエヴァンスはフォルボスと同じ魔物の姿が良いとの事だった。施設内にあった薬は、完全に魔物になった人間には効かないというポンコツだったらしいからな。
エヴァンスに関しては時間をかけてリーズが看るとのことだ。力をコントロールすることができるバフォメット何て貴重な存在だ。フォルボスとエヴァンス――この2人はマーズベルで保護をした方が良いと考える。
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