405 / 597
授けられた名刀
しおりを挟む
あれから俺達はドラグーンタワーに招かれた。
「ここだ」
俺、ミクちゃん、マルファスさんはドラグーンタワーの中間地点にある書斎に連れてこられた。まるで図書館のような広々とした空間で古書から巻物、重要な文献など色々な種類が保管されているようだ。
「こっちだ」
そう言われてついて行くと、青龍さんが足をピタリと止めた。
「ここだ。マルファスは知っているがお主達にも目を通しておいて欲しい」
青龍さんがそう言って一冊の古書を渡して来た。タイトルは四龍伝説。古書を開くと書かれていたのは、以前青龍さんから聞いていたような内容だ。青龍さんが龍騎士と協力して黒龍を倒したというもの。ここまでは把握しているからそれほど重要じゃない。
ただ、読み進めていくと黒龍がどのような攻撃を仕掛けてくるのか。どのような攻撃に弱いかなどが記されていた。
黒龍は全てを焼き尽くす黒い炎が主な攻撃らしい。
「すべてを焼き尽くすか――俺達熱無効のパッシブスキルを持っていて良かったな」
「そうだね。黒炎って何かものすごく格好いいね」
俺とミクちゃんがそう話をしていると、青龍さんは首を左右に振った。
「黒龍の黒炎はその字の通り、全てを焼き尽くす強力な炎だ。お主達が持っているパッシブスキルの熱無効は無効化される」
「――マジですか?」
「マジだ」
青龍さんが冗談を言っているようには到底思えない。熱無効が無効化されるという話は本当なのだろう。それに考えてみれば黒龍はZ級の魔物だ。別に可笑しい話では無い。
そしてさらに読み進めた。黒龍は黒炎以外にも、尋常ではない威力の龍の咆哮を使用したり、黒龍が手を振ると、斬撃のようなものを飛ばすのだとか。尻尾を振り回すと黒炎が出現する灼熱の尾は、空を火の海に変える程の量が出るのだとか。とりあえず、何から何まで規格外なのは十分に把握できた。
「ナリユキ殿、随分な苦笑いを浮かべているな」
「それはそうでしょ。何から何までランベリオンと比べ物にならない威力なんですから」
「確かにそうだな。黒龍は黒炎に目がいきがちではあるが、闇属性のスキルも得意としている。それにナリユキ殿と同じで自動再生や自動回復も付いている。アクティブスキルに関しては基本的にはダメージを与える事はできない。ミク殿が持っている光剣や、マルファスが持っている黒刀だと効率的にダメージを与えることができる。ただ、奴が人型化になると、魔王ベリアルと同等の別次元の黒刀を使用したりする。剣速も龍騎士と同等レベルで剣の達人だ。勿論、龍騎士の方が剣の腕は上だったがな」
「黒龍を倒した時は、皆人型化で戦っていたんですか?」
「最終的にはそうだな」
「俺は当時魔界にいたからね。だから龍騎士が魔界に来て、気付いたら魔王ルシファーとして姿を変えていたのは驚きだったよ。黒龍の邪気は魔王レベルだという証拠だね」
「ナリユキ殿もミク殿もこの古書によく目を通しておいてくれ。そしてナリユキ殿に渡しておきたいものがある」
「渡しておきたいもの?」
「ああ。ついて来てくれ」
そうして俺は青龍さんに奥の部屋へと連れられた。辺りを見渡すと刀がズラリと置かれている。そして部屋の中央にはケースに入った黒い刀と白い刀が保管されていた。
「ここは何ですか?」
「余は刀コレクターでな。一番気に入っているのは、青龍偃月刀なのだが、それ以外にもこの部屋には世界中から集めた珍しい刀や、余が鍛冶職人に造らせた刀が存在する。ナリユキ殿をここに連れて来たのは、ある一本の刀を譲ろうと思うのだ」
「別にいいですよ」
「よくない」
青龍さんにそう即答された。何も言えないのだが――。
「ナリユキ殿はマルファスやミク殿のように、特殊な剣をアクティブスキルで発動することができない。原則として光剣や黒刀はオーラルドと呼ばれている特殊な成分が放出されているのだ。そのオーラルドをここにある刀全て組み込んでいる」
「本当に大変だったんだ。オーラルドを組み込む為に、MP消費が多い黒刀をわざわざ使わされたからな」
マルファスさんはそう言って苦笑いを浮かべていた。
「だから、黒龍討伐に協力してくれるという話だったから、この武器を授けたいんだ」
青龍さんにそう言って授けられた刀は、刀身が紅葉色で、鍔巻きと鍔は黒色となっている綺麗な刀だった。鍔巻きに関しては魔物の鱗が使われているようだ。刀からはただならぬオーラが発せられており、炎のような猛々しいパワーを感じる。
「その刀の名前は黒紅煉刀と言って、煉鉱石と魔石、オリハルコンを素材として打った名匠渾身の一振りだ。刀は主を選ぶと言うので、その刀が懐く主がなかなか現れなくてな――ただ、ナリユキ殿ならもしかしたら使えると思ったんだ」
「そんな貴重な一振りを俺に? 本当に大丈夫かな」
「大丈夫だ。実際にその刀を持つことができているではないか。試しにマルファスに預けてみたらどうだ?」
青龍さんがニッとそう口角を吊り上げた。すると、マルファスさんは「絶対に嫌だ!」と決死のアピールをしていた。
「何でそんなに嫌がるんですか?」
「俺はその刀を数秒持っていて死にかけたことがある。その刀が主では無いとみなすと、身体が発火するんだ。熱無効などのパッシブスキル所有者もその刀を握ってみたが、見事に炎に包まれた。どういう原理かは分からないが、とりあえず熱無効のパッシブスキルがあっても関係ないらしい」
マルファスさんは必死に俺にそうアピールをしてきた。そう考えるともの凄く恐ろしい刀だな。
「因みにこの刀って買うとどれくらいするんですか?」
「値はつけられないだろうな。使っているアイテムがレアアイテムだし、その刀は黒龍の鱗や翼の一部も使っているのだ。最低でも金貨50枚くらいはするだろうな。余が知り合いの名匠に造らせたので正直分からない」
マジか――。
「一振りするだけで大地や空を切り裂くと呼ばれているが、実際に振ることができた人間はいないがな」
「つまり振るだけで青龍さんの水刃みたいな斬撃が出せるかも? ってことですか?」
「まあそういう事だな」
涼しい顔でとんでもない発言をしているぞこの人――。
こうして俺は黒紅煉刀という滅茶苦茶強いかもしれない刀を手に入れた。
「ここだ」
俺、ミクちゃん、マルファスさんはドラグーンタワーの中間地点にある書斎に連れてこられた。まるで図書館のような広々とした空間で古書から巻物、重要な文献など色々な種類が保管されているようだ。
「こっちだ」
そう言われてついて行くと、青龍さんが足をピタリと止めた。
「ここだ。マルファスは知っているがお主達にも目を通しておいて欲しい」
青龍さんがそう言って一冊の古書を渡して来た。タイトルは四龍伝説。古書を開くと書かれていたのは、以前青龍さんから聞いていたような内容だ。青龍さんが龍騎士と協力して黒龍を倒したというもの。ここまでは把握しているからそれほど重要じゃない。
ただ、読み進めていくと黒龍がどのような攻撃を仕掛けてくるのか。どのような攻撃に弱いかなどが記されていた。
黒龍は全てを焼き尽くす黒い炎が主な攻撃らしい。
「すべてを焼き尽くすか――俺達熱無効のパッシブスキルを持っていて良かったな」
「そうだね。黒炎って何かものすごく格好いいね」
俺とミクちゃんがそう話をしていると、青龍さんは首を左右に振った。
「黒龍の黒炎はその字の通り、全てを焼き尽くす強力な炎だ。お主達が持っているパッシブスキルの熱無効は無効化される」
「――マジですか?」
「マジだ」
青龍さんが冗談を言っているようには到底思えない。熱無効が無効化されるという話は本当なのだろう。それに考えてみれば黒龍はZ級の魔物だ。別に可笑しい話では無い。
そしてさらに読み進めた。黒龍は黒炎以外にも、尋常ではない威力の龍の咆哮を使用したり、黒龍が手を振ると、斬撃のようなものを飛ばすのだとか。尻尾を振り回すと黒炎が出現する灼熱の尾は、空を火の海に変える程の量が出るのだとか。とりあえず、何から何まで規格外なのは十分に把握できた。
「ナリユキ殿、随分な苦笑いを浮かべているな」
「それはそうでしょ。何から何までランベリオンと比べ物にならない威力なんですから」
「確かにそうだな。黒龍は黒炎に目がいきがちではあるが、闇属性のスキルも得意としている。それにナリユキ殿と同じで自動再生や自動回復も付いている。アクティブスキルに関しては基本的にはダメージを与える事はできない。ミク殿が持っている光剣や、マルファスが持っている黒刀だと効率的にダメージを与えることができる。ただ、奴が人型化になると、魔王ベリアルと同等の別次元の黒刀を使用したりする。剣速も龍騎士と同等レベルで剣の達人だ。勿論、龍騎士の方が剣の腕は上だったがな」
「黒龍を倒した時は、皆人型化で戦っていたんですか?」
「最終的にはそうだな」
「俺は当時魔界にいたからね。だから龍騎士が魔界に来て、気付いたら魔王ルシファーとして姿を変えていたのは驚きだったよ。黒龍の邪気は魔王レベルだという証拠だね」
「ナリユキ殿もミク殿もこの古書によく目を通しておいてくれ。そしてナリユキ殿に渡しておきたいものがある」
「渡しておきたいもの?」
「ああ。ついて来てくれ」
そうして俺は青龍さんに奥の部屋へと連れられた。辺りを見渡すと刀がズラリと置かれている。そして部屋の中央にはケースに入った黒い刀と白い刀が保管されていた。
「ここは何ですか?」
「余は刀コレクターでな。一番気に入っているのは、青龍偃月刀なのだが、それ以外にもこの部屋には世界中から集めた珍しい刀や、余が鍛冶職人に造らせた刀が存在する。ナリユキ殿をここに連れて来たのは、ある一本の刀を譲ろうと思うのだ」
「別にいいですよ」
「よくない」
青龍さんにそう即答された。何も言えないのだが――。
「ナリユキ殿はマルファスやミク殿のように、特殊な剣をアクティブスキルで発動することができない。原則として光剣や黒刀はオーラルドと呼ばれている特殊な成分が放出されているのだ。そのオーラルドをここにある刀全て組み込んでいる」
「本当に大変だったんだ。オーラルドを組み込む為に、MP消費が多い黒刀をわざわざ使わされたからな」
マルファスさんはそう言って苦笑いを浮かべていた。
「だから、黒龍討伐に協力してくれるという話だったから、この武器を授けたいんだ」
青龍さんにそう言って授けられた刀は、刀身が紅葉色で、鍔巻きと鍔は黒色となっている綺麗な刀だった。鍔巻きに関しては魔物の鱗が使われているようだ。刀からはただならぬオーラが発せられており、炎のような猛々しいパワーを感じる。
「その刀の名前は黒紅煉刀と言って、煉鉱石と魔石、オリハルコンを素材として打った名匠渾身の一振りだ。刀は主を選ぶと言うので、その刀が懐く主がなかなか現れなくてな――ただ、ナリユキ殿ならもしかしたら使えると思ったんだ」
「そんな貴重な一振りを俺に? 本当に大丈夫かな」
「大丈夫だ。実際にその刀を持つことができているではないか。試しにマルファスに預けてみたらどうだ?」
青龍さんがニッとそう口角を吊り上げた。すると、マルファスさんは「絶対に嫌だ!」と決死のアピールをしていた。
「何でそんなに嫌がるんですか?」
「俺はその刀を数秒持っていて死にかけたことがある。その刀が主では無いとみなすと、身体が発火するんだ。熱無効などのパッシブスキル所有者もその刀を握ってみたが、見事に炎に包まれた。どういう原理かは分からないが、とりあえず熱無効のパッシブスキルがあっても関係ないらしい」
マルファスさんは必死に俺にそうアピールをしてきた。そう考えるともの凄く恐ろしい刀だな。
「因みにこの刀って買うとどれくらいするんですか?」
「値はつけられないだろうな。使っているアイテムがレアアイテムだし、その刀は黒龍の鱗や翼の一部も使っているのだ。最低でも金貨50枚くらいはするだろうな。余が知り合いの名匠に造らせたので正直分からない」
マジか――。
「一振りするだけで大地や空を切り裂くと呼ばれているが、実際に振ることができた人間はいないがな」
「つまり振るだけで青龍さんの水刃みたいな斬撃が出せるかも? ってことですか?」
「まあそういう事だな」
涼しい顔でとんでもない発言をしているぞこの人――。
こうして俺は黒紅煉刀という滅茶苦茶強いかもしれない刀を手に入れた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる