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異変Ⅱ
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「これが本当の姿という訳か?」
俺は内心焦っていた。エヴァンスが姿を変えたと思ったら、エヴァンスの体長は俺と同じくらいになっていたからだ。それにエヴァンスから感じ取ることができるパワーも凄まじいものだった。明らかに俺と同じくらいの戦闘値だ。恐らく、俺と亜人のようにリンクしている訳ではない。もしリンクしていたならば俺以上のパワーを感じ取ることができるはずだからだ。だとするとこの現象は一体――。
そう思っていると、バフォメット姿のエヴァンスは目に涙を浮かべていた。まだエヴァンスの意識が残っているのだろうか? そう思ったとき、バフォメットは口を大きく開いた。そしてその口に集中する巨大なエネルギー。
何かのアクティブスキルを放とうとしている――。
刹那、黒い雷を纏っている赤いエネルギー波が飛んできた。これは確か破壊の滅殺光――!?
この状況を打破することができるのはユニークスキルしかない。こんな強力なパワーがあるアクティブスキルを無効化するのは無理だ――。仕方ない――。
俺は掌を向けると渦が出現する。すると、破壊の滅殺光はそのまま渦の中へと吸収されていき、次第に吸収した破壊の滅殺光を自身の体内に取り込む。流石のエヴァンスもピタリと動きを止めている。まあ、この場合エヴァンスではなく、驚いているのはバフォメットだと思うが――。
俺のユニークスキルはアルティメットスキル、アクティブスキルを吸収して自身のエネルギーに変換することができる、まあありきたりなスキルだ。一度使ってしまうと、15分のクールタイムが必要なので、一度の戦闘で使う機会は多くて二回。なのでここぞって時にしか使う事ができない。ただ、一度吸収したエネルギーを、自分の好きなタイミングで放出することができるので、エネルギー量が多ければ多い程、勝利に近付くことができるという訳だ。それにこのスキルは自身のアクティブスキルやアルティメットスキルと合わせて放つことができるので、放つときのタイミングが重要だ。
俺のこのユニークスキル、逆転の渦で畳み掛ける。
俺は驚いている表情を見せているバフォメットに向けて死絶を使用した。少し手加減をしたので体が真っ二つになることはなかったが、腹部から大量の血を噴出させて膝をついた。
ダメージは大きいらしい。エヴァンスの声とバフォメットの両方の声が聞こえる。
「フォル兄……俺を殺してくれ!」
「馬鹿。そんな事できる訳ないだろ。どうにかできないのか!?」
俺がそう質問を投げかけたが、エヴァンスが俺の質問に答えることはなかった。寧ろ、バフォメットが雄叫びをあげて俺に襲い掛かってきた。このままじゃ埒があかない。エヴァンスが何とかして、俺はバフォメットなんかに屈しないという強い意志を持たなければならないんだ。
バフォメットの猛攻――。先程と比べてう攻撃のキレがさらに上がっていた。戦いの途中でこう何度も強くなられるのは正直ゴメンだ。
すると、バフォメットは右手を大きく振り上げた。重たい攻撃がくると思い、身体向上を手の甲に集中させたときだった――。
俺の顔に向けて振り下ろされた一太刀は瞬時に発動した魔刀だった――。
マズい――。
そう思った時にはもう遅かった。視界が血で覆われてしまい、身体の半身がそのまま斬られた感じがしたのだ。いや、間違いなく斬られたんだ。痛いとかいう次元では無い。ただ全身の力が抜けていき、猛烈な眠気に襲われるんだ。
「クソ……俺は結局誰も救う事ができないのか」
流石にこれはマズいな。死ぬってこんな感覚なのか――。
『馬鹿諦めるな! 我が今必死に再生させているだろうが』
頭の中で俺のなかの亜人がそう語りかけていた。ベースは俺の身体らしいので、ダメージを喰らっているのは俺だけらしい。
『同化しているから我もダメージを受けておるわ! これだから貧者な人間は――あんな奴に負けたくないから力を貸してやったのに――立たんか馬鹿者!』
人が死にそうだってのに本当に五月蠅いなこの亜人。てか自我強すぎるだろ。
『当たり前だ! せっかく、我と小僧の心が分離したのに、このままでは我も小僧も2人共完全に死んでしまうんだぞ!』
でもどうやって動けって言うんだ。本当に身体に力が入らないんだぞ――。
『声は出せるだろ!?』
……確かにそうだ。
俺は亜人に言われて声を必死に出そうとした。が、自分が死ぬと思っている程のダメージを受けているんだ。そんな簡単に声なんて出せない――。
「え……エヴァ……ンス」
半目になりながらも俺が出した声。何とも情けない弱々しい声だ。駄目だ。これ以上声が出せない。
「フォル兄!」
するとエヴァンスがそう叫んだ。バフォメット姿のエヴァンスは明らかに嗚咽をこらえていた。さっきとは雰囲気が全く違う。先程までの荒々しさが完全に消えている。
意識が薄れゆくなかで俺の中の亜人が必死に俺を眠らせまいと声かけをしてくるのと同時に、エヴァンスは何やらバフォメットの意識と戦っていた。俺が薄目でそれを見守っていると、バフォメット姿のエヴァンスはみるみる小さくなっていった。
俺は内心焦っていた。エヴァンスが姿を変えたと思ったら、エヴァンスの体長は俺と同じくらいになっていたからだ。それにエヴァンスから感じ取ることができるパワーも凄まじいものだった。明らかに俺と同じくらいの戦闘値だ。恐らく、俺と亜人のようにリンクしている訳ではない。もしリンクしていたならば俺以上のパワーを感じ取ることができるはずだからだ。だとするとこの現象は一体――。
そう思っていると、バフォメット姿のエヴァンスは目に涙を浮かべていた。まだエヴァンスの意識が残っているのだろうか? そう思ったとき、バフォメットは口を大きく開いた。そしてその口に集中する巨大なエネルギー。
何かのアクティブスキルを放とうとしている――。
刹那、黒い雷を纏っている赤いエネルギー波が飛んできた。これは確か破壊の滅殺光――!?
この状況を打破することができるのはユニークスキルしかない。こんな強力なパワーがあるアクティブスキルを無効化するのは無理だ――。仕方ない――。
俺は掌を向けると渦が出現する。すると、破壊の滅殺光はそのまま渦の中へと吸収されていき、次第に吸収した破壊の滅殺光を自身の体内に取り込む。流石のエヴァンスもピタリと動きを止めている。まあ、この場合エヴァンスではなく、驚いているのはバフォメットだと思うが――。
俺のユニークスキルはアルティメットスキル、アクティブスキルを吸収して自身のエネルギーに変換することができる、まあありきたりなスキルだ。一度使ってしまうと、15分のクールタイムが必要なので、一度の戦闘で使う機会は多くて二回。なのでここぞって時にしか使う事ができない。ただ、一度吸収したエネルギーを、自分の好きなタイミングで放出することができるので、エネルギー量が多ければ多い程、勝利に近付くことができるという訳だ。それにこのスキルは自身のアクティブスキルやアルティメットスキルと合わせて放つことができるので、放つときのタイミングが重要だ。
俺のこのユニークスキル、逆転の渦で畳み掛ける。
俺は驚いている表情を見せているバフォメットに向けて死絶を使用した。少し手加減をしたので体が真っ二つになることはなかったが、腹部から大量の血を噴出させて膝をついた。
ダメージは大きいらしい。エヴァンスの声とバフォメットの両方の声が聞こえる。
「フォル兄……俺を殺してくれ!」
「馬鹿。そんな事できる訳ないだろ。どうにかできないのか!?」
俺がそう質問を投げかけたが、エヴァンスが俺の質問に答えることはなかった。寧ろ、バフォメットが雄叫びをあげて俺に襲い掛かってきた。このままじゃ埒があかない。エヴァンスが何とかして、俺はバフォメットなんかに屈しないという強い意志を持たなければならないんだ。
バフォメットの猛攻――。先程と比べてう攻撃のキレがさらに上がっていた。戦いの途中でこう何度も強くなられるのは正直ゴメンだ。
すると、バフォメットは右手を大きく振り上げた。重たい攻撃がくると思い、身体向上を手の甲に集中させたときだった――。
俺の顔に向けて振り下ろされた一太刀は瞬時に発動した魔刀だった――。
マズい――。
そう思った時にはもう遅かった。視界が血で覆われてしまい、身体の半身がそのまま斬られた感じがしたのだ。いや、間違いなく斬られたんだ。痛いとかいう次元では無い。ただ全身の力が抜けていき、猛烈な眠気に襲われるんだ。
「クソ……俺は結局誰も救う事ができないのか」
流石にこれはマズいな。死ぬってこんな感覚なのか――。
『馬鹿諦めるな! 我が今必死に再生させているだろうが』
頭の中で俺のなかの亜人がそう語りかけていた。ベースは俺の身体らしいので、ダメージを喰らっているのは俺だけらしい。
『同化しているから我もダメージを受けておるわ! これだから貧者な人間は――あんな奴に負けたくないから力を貸してやったのに――立たんか馬鹿者!』
人が死にそうだってのに本当に五月蠅いなこの亜人。てか自我強すぎるだろ。
『当たり前だ! せっかく、我と小僧の心が分離したのに、このままでは我も小僧も2人共完全に死んでしまうんだぞ!』
でもどうやって動けって言うんだ。本当に身体に力が入らないんだぞ――。
『声は出せるだろ!?』
……確かにそうだ。
俺は亜人に言われて声を必死に出そうとした。が、自分が死ぬと思っている程のダメージを受けているんだ。そんな簡単に声なんて出せない――。
「え……エヴァ……ンス」
半目になりながらも俺が出した声。何とも情けない弱々しい声だ。駄目だ。これ以上声が出せない。
「フォル兄!」
するとエヴァンスがそう叫んだ。バフォメット姿のエヴァンスは明らかに嗚咽をこらえていた。さっきとは雰囲気が全く違う。先程までの荒々しさが完全に消えている。
意識が薄れゆくなかで俺の中の亜人が必死に俺を眠らせまいと声かけをしてくるのと同時に、エヴァンスは何やらバフォメットの意識と戦っていた。俺が薄目でそれを見守っていると、バフォメット姿のエヴァンスはみるみる小さくなっていった。
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