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研究施設Ⅱ
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F地点から300m先にあるB地点へと向かった。辺りは薄暗い照明で照らされている。今のところやたらと涼しいと感じるだけだ。どこからか施設全体を冷やす冷気でも出しているのだろうか? それとも、何か嫌な予感がしているのだろうか?
しばらく歩ているところだった。
「これがそうか――」
先頭で歩いているエヴァがそう声を漏らした。
「ほう――これがそうか」
ランベーフはそう言って糸目の右の片目を開いた。鋭い眼光が見据える先には、液体の中に浸かっている子供達一人一人が入った巨大な水槽がずらりと眼前に広がる。そうだ思い出した。これはほんの一部でしかないはずだ。
「思い出したぞ。ここは実験される子供を保管する場所だ。あの液体は特殊な成分で出来ているらしく、ボロボロになった体を修復することができる」
「つまりどういうことですか?」
アリスがそう訊いて来たので俺は頷いた。
「何度メスを入れられたといっただろ? 例えばあの金髪の男の子の腹部を見てみろ。傷痕が残っているだろ? この液体はどんな傷でも治すことができる回復のようなものだ。傷口も数時間すれば塞がるはずだが、あの子は傷が塞がっていない――という事は何度も腹を割かれているんだ――俺のようにな。まあ延命治療みたいなもんだ。流石に傷がある状態で何度も実験を行うと、死体を量産するだけだからな」
「成程ですね」
アリスはそう納得していたが、俺はさっきの説明は少し下手だった気もする――。まあいいか。
「それにしても人間は酷いことするもんやな。理性がある竜はそんな事しやんけど、下等の竜なら当然人間を喰らう竜もおる。それは自分が生きるために行う行為やけど、これに関しては命を舐めとるよな」
「本当に――腹立たしいわ」
ランベーフの後にフィオナがそう唇を噛みしめていた。
「亜人になってしまえば傷なんて無くなるがな。人間の姿のままだとあの子のように傷だらけになってしまう」
「さ――流石に怖いね~。ここにいるだけで気持ち悪くなってしまう――」
そう言ったのはシュファだった。薄暗いので分かりづらいが、顔が少し青褪めているようだ。
「この中に入っている人は皆、目を閉じていますが寝ているのでしょうか?」
アリスの質問に俺は頷く。
「そうだ。入れられる前に睡眠薬を飲まされる」
「成程な~。でもこの中に入っていると溺死とかしそうやけど、どないなってとるん?」
「その仕組みは分からないが恐らくスキルで保護されている」
「そういった系だと、私も使う事ができる水精霊の加護とかですかね? でも、このスキルは時間制限があるので、また別のスキルの可能性もありますね」
「まあ仕組みは正直分からない。不思議な力だからスキルだとは思うが――」
巨大な水槽の中に入った子供達を救い出すには、一つ一つの水槽の前にあるコントロールパネルを操作して、解放するしかない。しかし、パスワードがあったはずだ。厄介な事に全員のパスワードが違う。そのパスワードを管理している人物を探さなくてはならない。
「凄いなこの機械。私達が来た世界と何ら変わりがない文明だ」
「確かに――機械のクオリティが高いから、アメリカ製なのか日本製なのか迷うレベルだね」
「こういった文明はアメリカだろ――と考えると、アメリカ人の転生者の科学者がいるのか?」
エヴァ、シュファ、カルロータが各々そう感想を述べていた。確かにこの世界では想像もつかないくらいクオリティが高い。確かこういったものは精密機械と呼ばれていたはずだが、俺達の世界にはこんな文明などない。そもそも、スキルという概念がある限り、こういったものを作ろうとは思わないし、技術が無いからな。
「子供達を解放する方法としては、あのコントロールパネルという物に触れてパスワードを解除する必要がある」
「そんな物必要ない。あれを壊せばいいだろう」
「俺もそう思う」
カルロータの意見にレイが小さい声でそう賛同した。
「壊せない事も無いが、警報音が鳴るので気付かれる。気付かれないチャンスがあるのは、パスワードを入手することだな」
「つまり職員を脅せばいいんだな? 俺の得意分野だ」
得意気にそう話すレイ。本当に敵だったらおっかなくて仕方無い人だ。それにレイの拷問は非常に怖いと聞く。まあ、拷問はしなくても職員自体が力を持っているわけではないので、ナイフを見せるだけで黙ってパスワードを入手できると思うが、如何せんそのパスワードを管理している部屋がどこにあるのかが分からない。
そんな時だった――。
「こんな夜中に侵入者がいるとは警備員を配置している意味がありませんね~」
当然、俺達全員は戦闘態勢に入る。ただ、数ではこっちが圧倒的に有利だ。
まだ姿は見えないが、コツコツと革靴のような音がする。
「誰だお前は?」
「ほう――喋る亜人ですか――ということは、君はここの実験体という訳か」
そう口角を吊り上げながら姿を現したのは、眼鏡をかけた青年だった。身長は180cm前後。色白の黒髪で白衣を着た男だ。
俺はこの男を見た途端、強烈な頭痛に襲われた。何故だ。何故こんなにも痛い。
俺はそう思っていると悲痛の叫びをあげていた。
「いい声だ。もっと聞かせてほしいよ」
その瞬間。怒りが爆発した。
そうだ。俺が殺したかったのはコイツだ――!
しばらく歩ているところだった。
「これがそうか――」
先頭で歩いているエヴァがそう声を漏らした。
「ほう――これがそうか」
ランベーフはそう言って糸目の右の片目を開いた。鋭い眼光が見据える先には、液体の中に浸かっている子供達一人一人が入った巨大な水槽がずらりと眼前に広がる。そうだ思い出した。これはほんの一部でしかないはずだ。
「思い出したぞ。ここは実験される子供を保管する場所だ。あの液体は特殊な成分で出来ているらしく、ボロボロになった体を修復することができる」
「つまりどういうことですか?」
アリスがそう訊いて来たので俺は頷いた。
「何度メスを入れられたといっただろ? 例えばあの金髪の男の子の腹部を見てみろ。傷痕が残っているだろ? この液体はどんな傷でも治すことができる回復のようなものだ。傷口も数時間すれば塞がるはずだが、あの子は傷が塞がっていない――という事は何度も腹を割かれているんだ――俺のようにな。まあ延命治療みたいなもんだ。流石に傷がある状態で何度も実験を行うと、死体を量産するだけだからな」
「成程ですね」
アリスはそう納得していたが、俺はさっきの説明は少し下手だった気もする――。まあいいか。
「それにしても人間は酷いことするもんやな。理性がある竜はそんな事しやんけど、下等の竜なら当然人間を喰らう竜もおる。それは自分が生きるために行う行為やけど、これに関しては命を舐めとるよな」
「本当に――腹立たしいわ」
ランベーフの後にフィオナがそう唇を噛みしめていた。
「亜人になってしまえば傷なんて無くなるがな。人間の姿のままだとあの子のように傷だらけになってしまう」
「さ――流石に怖いね~。ここにいるだけで気持ち悪くなってしまう――」
そう言ったのはシュファだった。薄暗いので分かりづらいが、顔が少し青褪めているようだ。
「この中に入っている人は皆、目を閉じていますが寝ているのでしょうか?」
アリスの質問に俺は頷く。
「そうだ。入れられる前に睡眠薬を飲まされる」
「成程な~。でもこの中に入っていると溺死とかしそうやけど、どないなってとるん?」
「その仕組みは分からないが恐らくスキルで保護されている」
「そういった系だと、私も使う事ができる水精霊の加護とかですかね? でも、このスキルは時間制限があるので、また別のスキルの可能性もありますね」
「まあ仕組みは正直分からない。不思議な力だからスキルだとは思うが――」
巨大な水槽の中に入った子供達を救い出すには、一つ一つの水槽の前にあるコントロールパネルを操作して、解放するしかない。しかし、パスワードがあったはずだ。厄介な事に全員のパスワードが違う。そのパスワードを管理している人物を探さなくてはならない。
「凄いなこの機械。私達が来た世界と何ら変わりがない文明だ」
「確かに――機械のクオリティが高いから、アメリカ製なのか日本製なのか迷うレベルだね」
「こういった文明はアメリカだろ――と考えると、アメリカ人の転生者の科学者がいるのか?」
エヴァ、シュファ、カルロータが各々そう感想を述べていた。確かにこの世界では想像もつかないくらいクオリティが高い。確かこういったものは精密機械と呼ばれていたはずだが、俺達の世界にはこんな文明などない。そもそも、スキルという概念がある限り、こういったものを作ろうとは思わないし、技術が無いからな。
「子供達を解放する方法としては、あのコントロールパネルという物に触れてパスワードを解除する必要がある」
「そんな物必要ない。あれを壊せばいいだろう」
「俺もそう思う」
カルロータの意見にレイが小さい声でそう賛同した。
「壊せない事も無いが、警報音が鳴るので気付かれる。気付かれないチャンスがあるのは、パスワードを入手することだな」
「つまり職員を脅せばいいんだな? 俺の得意分野だ」
得意気にそう話すレイ。本当に敵だったらおっかなくて仕方無い人だ。それにレイの拷問は非常に怖いと聞く。まあ、拷問はしなくても職員自体が力を持っているわけではないので、ナイフを見せるだけで黙ってパスワードを入手できると思うが、如何せんそのパスワードを管理している部屋がどこにあるのかが分からない。
そんな時だった――。
「こんな夜中に侵入者がいるとは警備員を配置している意味がありませんね~」
当然、俺達全員は戦闘態勢に入る。ただ、数ではこっちが圧倒的に有利だ。
まだ姿は見えないが、コツコツと革靴のような音がする。
「誰だお前は?」
「ほう――喋る亜人ですか――ということは、君はここの実験体という訳か」
そう口角を吊り上げながら姿を現したのは、眼鏡をかけた青年だった。身長は180cm前後。色白の黒髪で白衣を着た男だ。
俺はこの男を見た途端、強烈な頭痛に襲われた。何故だ。何故こんなにも痛い。
俺はそう思っていると悲痛の叫びをあげていた。
「いい声だ。もっと聞かせてほしいよ」
その瞬間。怒りが爆発した。
そうだ。俺が殺したかったのはコイツだ――!
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