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アルボス城での激闘Ⅲ
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あれから10分程度。激しい攻防により俺とLの体力は消耗し切っていた。互いに息も切れ始めてきていた。透明の謎の攻撃と殺戮の腕を駆使した攻撃。加えて圧倒的なスピード。最低でも俺が戦ってきたなかでダントツのスピードだ。俺がLのスピードについていけているのは、慣れてきているからであって、Lの動きを目で追えているわけでは無い。本能的にLの動きに体が勝手に反応しているだけ。原理は本人の俺ですら分からない。まとめるとするならば、俺が魔族と人間のハーフという特殊な血が、戦闘センスに還元されているのだろう。
「思った以上にやるじゃないか」
Lはそう呟いた。仮面の下の表情は分からない。ただ、声色を聞く限りでは俺との戦闘を楽しんでいるようだった。
「お前もな」
と俺はゼエゼエと息を切らす。俺は華奢な体ではあるが、ハーフという特殊な血のお陰で、パワーもスピードも恵まれている。しかし、俺には決定的な弱点がある――。
「でも、君はだんだんと動きが鈍くなってきているね。魔眼の使い過ぎなのか、体力の消耗が激しいようだ」
「しかしお前の攻撃は見切っている。勝負がつくのはそう遠くは無い」
と強気な発言をしたが俺の体力の兼ね合いもある。そもそも、Lのスピードに慣れるまでに何度も回復を行った。なので魔眼の効力も相当落ちてきている。
「そろそろ決着をつけようか」
「望むところだ」
俺は再びLの方へと突っ込んでいった。さっきと同じように手を俺の方に向けている。俺とLの距離は僅か10m。ここまでのやり取りもほんの一瞬。攻撃を避けてLの喉元を俺の爪で抉ろうと思った時だった。
目の前が血しぶきで覆われた。一体これは誰の血だ――。
そう思っていた刹那、身体中に痛みが走った。意識も薄れていく――。
駄目だ力が入らない――。
「残念だったね。でも頃合いかなと思ったんだ」
Lが言っている意味が分からなかった。ただ俺は風の抵抗を受けながら下に落ちるのみ。回復? そんなもんできる余裕はない。
そう思っていると体に強い衝撃を受けた。
「カルディア!」
「まさかやられたのか!?」
カリブデウスの後にスカーがそう言っていた。馬鹿が別にやられたわけじゃない。そもそも死んでたまるかって話だ。ただ、身体が動かないだけだ。
目が僅かに開いた。どうやら俺は空から落ちて地面を数メートル陥没させる程の衝撃を与えていたらしい。
辺りをよく見てみると血まみれになっていた。これは俺が空落ちて受けた傷じゃない。むしろそのダメージは頭突きをされたときくらいの痛みだ。さほど問題は無い。だからこの血は、さっきLから受けた攻撃だ。避けた筈なのに何で当たったんだ。それにこの傷の多さ――体中のあらゆるところから出血している――何の攻撃を受けたんだ。
くそ――痛いな――。とりあえず予備の薬を使うしかない――。
俺はそう思ってポケットから薬を取り出そうとした。魔眼を使うのが困難になったときに傷を癒し、MPを回復する薬だ。
俺がこれを使用するのは激しい戦闘を行った時だ。故に薬を入れている小瓶はスキルを施して頑丈にしている。実際にポケットに入れていた小瓶は割れてはいなかった。俺はそれを取り出して自らの口に小瓶を運んだ。
案の定苦くて決して美味しいとは言えない味。しかし、さっきと比べて随分と身体が楽になった。
「最後の攻撃となるわけだな」
「ほう。僕のさっきの攻撃を受けてまだ立ち上がるのか――成程。薬を飲んだようだね」
Lはそう言って俺の足元に転がっている小瓶を眺めていた。
「どうだい? 驚いただろ? 避けた筈の攻撃に当たったんだから」
俺はてっきり透明な剣のようなもので攻撃してきていると思っていた。しかし先程は一回の攻撃で数ヶ所同時に――待て、そもそも俺が受けた攻撃の傷は何ヶ所だ?
そう思い、俺はまず出血した箇所の数を数えた。傷はまだ完全に塞がっていないので、他の傷と混じることなく数えることは容易だ。
数は合計で十ヶ所だ。俺に傷を負わす事ができる最大の数の筈。手を向けて攻撃してきているので、手と攻撃がリンクしていることは間違いない。しかしさっきは左手を使っていただろうか? 十という数は指の数と同じだ。しかし左手を使っているような素振りはしていなかった筈――だ。
「考えても無駄だよ」
Lはそう言って俺に再度攻撃を仕掛けてきた。仮に、手ではく攻撃が指とリンクしているのであれば、指の動きに注意を払えばいい。
そう思い、今度は陥没した地面の中で、数メートル上の高さから攻撃を仕掛けてくるLから後ろに跳んで距離をとった。しかし、指の動きが止むことはない。ただ俺は不規則な動きをしながら耳に神経を集中させた。見えずとも攻撃をしかけてきているのであれば、空気が振動するはずだからな。
そう思って聞いていると僅かだが俺の周りの空気の振動音があちこちとしていた。数も十個のようだ。それに動きもなかなか不規則で、音が真っすぐ向かってきたり、湾曲したりと変幻自在だ。明らかに見えない剣やナイフと言った類ではない。
そして攻撃を避けながら気付いたが、やはり奴の左手も右手の指程分かりやすく動いていないものの、左手の指は僅かながらに動いていた。あんな指の動きをしていて、鞭のような不規則な動き。間違いない――。
「見えない糸を使って俺の事を攻撃してきているな!?」
「それが分かったところで何ができる!」
大当たりだ。正体が分ればあとは奴の指の動きを見極めればいい。糸にしては剣や刀のような切れ味に驚くが、恐らく魔物の糸と魔石のような鉱石を使って強化した特注の武器だろう。それを透明化している原理はよく分からんが正体が分ったならこっちのものだ。
「やられた分キッチリ返すぞ!」
俺は再度Lの方へと突っ込んだ。
「思った以上にやるじゃないか」
Lはそう呟いた。仮面の下の表情は分からない。ただ、声色を聞く限りでは俺との戦闘を楽しんでいるようだった。
「お前もな」
と俺はゼエゼエと息を切らす。俺は華奢な体ではあるが、ハーフという特殊な血のお陰で、パワーもスピードも恵まれている。しかし、俺には決定的な弱点がある――。
「でも、君はだんだんと動きが鈍くなってきているね。魔眼の使い過ぎなのか、体力の消耗が激しいようだ」
「しかしお前の攻撃は見切っている。勝負がつくのはそう遠くは無い」
と強気な発言をしたが俺の体力の兼ね合いもある。そもそも、Lのスピードに慣れるまでに何度も回復を行った。なので魔眼の効力も相当落ちてきている。
「そろそろ決着をつけようか」
「望むところだ」
俺は再びLの方へと突っ込んでいった。さっきと同じように手を俺の方に向けている。俺とLの距離は僅か10m。ここまでのやり取りもほんの一瞬。攻撃を避けてLの喉元を俺の爪で抉ろうと思った時だった。
目の前が血しぶきで覆われた。一体これは誰の血だ――。
そう思っていた刹那、身体中に痛みが走った。意識も薄れていく――。
駄目だ力が入らない――。
「残念だったね。でも頃合いかなと思ったんだ」
Lが言っている意味が分からなかった。ただ俺は風の抵抗を受けながら下に落ちるのみ。回復? そんなもんできる余裕はない。
そう思っていると体に強い衝撃を受けた。
「カルディア!」
「まさかやられたのか!?」
カリブデウスの後にスカーがそう言っていた。馬鹿が別にやられたわけじゃない。そもそも死んでたまるかって話だ。ただ、身体が動かないだけだ。
目が僅かに開いた。どうやら俺は空から落ちて地面を数メートル陥没させる程の衝撃を与えていたらしい。
辺りをよく見てみると血まみれになっていた。これは俺が空落ちて受けた傷じゃない。むしろそのダメージは頭突きをされたときくらいの痛みだ。さほど問題は無い。だからこの血は、さっきLから受けた攻撃だ。避けた筈なのに何で当たったんだ。それにこの傷の多さ――体中のあらゆるところから出血している――何の攻撃を受けたんだ。
くそ――痛いな――。とりあえず予備の薬を使うしかない――。
俺はそう思ってポケットから薬を取り出そうとした。魔眼を使うのが困難になったときに傷を癒し、MPを回復する薬だ。
俺がこれを使用するのは激しい戦闘を行った時だ。故に薬を入れている小瓶はスキルを施して頑丈にしている。実際にポケットに入れていた小瓶は割れてはいなかった。俺はそれを取り出して自らの口に小瓶を運んだ。
案の定苦くて決して美味しいとは言えない味。しかし、さっきと比べて随分と身体が楽になった。
「最後の攻撃となるわけだな」
「ほう。僕のさっきの攻撃を受けてまだ立ち上がるのか――成程。薬を飲んだようだね」
Lはそう言って俺の足元に転がっている小瓶を眺めていた。
「どうだい? 驚いただろ? 避けた筈の攻撃に当たったんだから」
俺はてっきり透明な剣のようなもので攻撃してきていると思っていた。しかし先程は一回の攻撃で数ヶ所同時に――待て、そもそも俺が受けた攻撃の傷は何ヶ所だ?
そう思い、俺はまず出血した箇所の数を数えた。傷はまだ完全に塞がっていないので、他の傷と混じることなく数えることは容易だ。
数は合計で十ヶ所だ。俺に傷を負わす事ができる最大の数の筈。手を向けて攻撃してきているので、手と攻撃がリンクしていることは間違いない。しかしさっきは左手を使っていただろうか? 十という数は指の数と同じだ。しかし左手を使っているような素振りはしていなかった筈――だ。
「考えても無駄だよ」
Lはそう言って俺に再度攻撃を仕掛けてきた。仮に、手ではく攻撃が指とリンクしているのであれば、指の動きに注意を払えばいい。
そう思い、今度は陥没した地面の中で、数メートル上の高さから攻撃を仕掛けてくるLから後ろに跳んで距離をとった。しかし、指の動きが止むことはない。ただ俺は不規則な動きをしながら耳に神経を集中させた。見えずとも攻撃をしかけてきているのであれば、空気が振動するはずだからな。
そう思って聞いていると僅かだが俺の周りの空気の振動音があちこちとしていた。数も十個のようだ。それに動きもなかなか不規則で、音が真っすぐ向かってきたり、湾曲したりと変幻自在だ。明らかに見えない剣やナイフと言った類ではない。
そして攻撃を避けながら気付いたが、やはり奴の左手も右手の指程分かりやすく動いていないものの、左手の指は僅かながらに動いていた。あんな指の動きをしていて、鞭のような不規則な動き。間違いない――。
「見えない糸を使って俺の事を攻撃してきているな!?」
「それが分かったところで何ができる!」
大当たりだ。正体が分ればあとは奴の指の動きを見極めればいい。糸にしては剣や刀のような切れ味に驚くが、恐らく魔物の糸と魔石のような鉱石を使って強化した特注の武器だろう。それを透明化している原理はよく分からんが正体が分ったならこっちのものだ。
「やられた分キッチリ返すぞ!」
俺は再度Lの方へと突っ込んだ。
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