【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
379 / 597

アルボス城での激闘Ⅲ

しおりを挟む
 あれから10分程度。激しい攻防により俺とLエルの体力は消耗し切っていた。互いに息も切れ始めてきていた。透明の謎の攻撃と殺戮の腕ジェノサイド・アームを駆使した攻撃。加えて圧倒的なスピード。最低でも俺が戦ってきたなかでダントツのスピードだ。俺がLエルのスピードについていけているのは、慣れてきているからであって、Lエルの動きを目で追えているわけでは無い。本能的にLエルの動きに体が勝手に反応しているだけ。原理は本人の俺ですら分からない。まとめるとするならば、俺が魔族と人間のハーフという特殊な血が、戦闘センスに還元されているのだろう。

「思った以上にやるじゃないか」

 Lエルはそう呟いた。仮面の下の表情は分からない。ただ、声色を聞く限りでは俺との戦闘を楽しんでいるようだった。

「お前もな」

 と俺はゼエゼエと息を切らす。俺は華奢な体ではあるが、ハーフという特殊な血のお陰で、パワーもスピードも恵まれている。しかし、俺には決定的な弱点がある――。

「でも、君はだんだんと動きが鈍くなってきているね。魔眼の使い過ぎなのか、体力の消耗が激しいようだ」

「しかしお前の攻撃は見切っている。勝負がつくのはそう遠くは無い」

 と強気な発言をしたが俺の体力の兼ね合いもある。そもそも、Lエルのスピードに慣れるまでに何度も回復ヒールを行った。なので魔眼の効力も相当落ちてきている。

「そろそろ決着をつけようか」

「望むところだ」

 俺は再びLエルの方へと突っ込んでいった。さっきと同じように手を俺の方に向けている。俺とLエルの距離は僅か10m。ここまでのやり取りもほんの一瞬。攻撃を避けてLエルの喉元を俺の爪で抉ろうと思った時だった。

 目の前が血しぶきで覆われた。一体これは誰の血だ――。

 そう思っていた刹那、身体中に痛みが走った。意識も薄れていく――。

 駄目だ力が入らない――。

「残念だったね。でも頃合いかなと思ったんだ」

 Lエルが言っている意味が分からなかった。ただ俺は風の抵抗を受けながら下に落ちるのみ。回復ヒール? そんなもんできる余裕はない。

 そう思っていると体に強い衝撃を受けた。

「カルディア!」

「まさかやられたのか!?」

 カリブデウスの後にスカーがそう言っていた。馬鹿が別にやられたわけじゃない。そもそも死んでたまるかって話だ。ただ、身体が動かないだけだ。

 目が僅かに開いた。どうやら俺は空から落ちて地面を数メートル陥没させる程の衝撃を与えていたらしい。

 辺りをよく見てみると血まみれになっていた。これは俺が空落ちて受けた傷じゃない。むしろそのダメージは頭突きをされたときくらいの痛みだ。さほど問題は無い。だからこの血は、さっきLエルから受けた攻撃だ。避けた筈なのに何で当たったんだ。それにこの傷の多さ――体中のあらゆるところから出血している――何の攻撃を受けたんだ。

 くそ――痛いな――。とりあえず予備のポーションを使うしかない――。

 俺はそう思ってポケットからポーションを取り出そうとした。魔眼を使うのが困難になったときに傷を癒し、MPを回復するポーションだ。

 俺がこれを使用するのは激しい戦闘を行った時だ。故にポーションを入れている小瓶はスキルを施して頑丈にしている。実際にポケットに入れていた小瓶は割れてはいなかった。俺はそれを取り出して自らの口に小瓶を運んだ。

 案の定苦くて決して美味しいとは言えない味。しかし、さっきと比べて随分と身体が楽になった。

「最後の攻撃となるわけだな」

「ほう。僕のさっきの攻撃を受けてまだ立ち上がるのか――成程。ポーションを飲んだようだね」

 Lエルはそう言って俺の足元に転がっている小瓶を眺めていた。

「どうだい? 驚いただろ? 避けた筈の攻撃に当たったんだから」

 俺はてっきり透明な剣のようなもので攻撃してきていると思っていた。しかし先程は一回の攻撃で数ヶ所同時に――待て、そもそも俺が受けた攻撃の傷は何ヶ所だ?

 そう思い、俺はまず出血した箇所の数を数えた。傷はまだ完全に塞がっていないので、他の傷と混じることなく数えることは容易だ。

 数は合計で十ヶ所だ。俺に傷を負わす事ができる最大の数の筈。手を向けて攻撃してきているので、手と攻撃がリンクしていることは間違いない。しかしさっきは左手を使っていただろうか? 十という数は指の数と同じだ。しかし左手を使っているような素振りはしていなかった筈――だ。

「考えても無駄だよ」

 Lエルはそう言って俺に再度攻撃を仕掛けてきた。仮に、手ではく攻撃が指とリンクしているのであれば、指の動きに注意を払えばいい。

 そう思い、今度は陥没した地面の中で、数メートル上の高さから攻撃を仕掛けてくるLエルから後ろに跳んで距離をとった。しかし、指の動きが止むことはない。ただ俺は不規則な動きをしながら耳に神経を集中させた。見えずとも攻撃をしかけてきているのであれば、空気が振動するはずだからな。

 そう思って聞いていると僅かだが俺の周りの空気の振動音があちこちとしていた。数も十個のようだ。それに動きもなかなか不規則で、音が真っすぐ向かってきたり、湾曲わんきょくしたりと変幻自在だ。明らかに見えない剣やナイフと言った類ではない。

 そして攻撃を避けながら気付いたが、やはり奴の左手も右手の指程分かりやすく動いていないものの、左手の指は僅かながらに動いていた。あんな指の動きをしていて、鞭のような不規則な動き。間違いない――。

「見えない糸を使って俺の事を攻撃してきているな!?」

「それが分かったところで何ができる!」

 大当たりだ。正体が分ればあとは奴の指の動きを見極めればいい。糸にしては剣や刀のような切れ味に驚くが、恐らく魔物の糸と魔石のような鉱石を使って強化した特注の武器だろう。それを透明化している原理はよく分からんが正体が分ったならこっちのものだ。

「やられた分キッチリ返すぞ!」

 俺は再度Lエルの方へと突っ込んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

異世界のんびり冒険者ギルド生活

みやび
ファンタジー
竜のお姫様に転生した少女と、冒険者ギルドの受付の人と、冒険者ギルドのおっさんの話 短編連作です。 基本的に毎日更新

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

処理中です...