【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
375 / 597

研究施設の真相Ⅰ

しおりを挟む
「行くぞ」

 俺がそう言うと、アリス、フィオナ、エヴァ、レイの5人で押しかけた。

「すみません。ちょっといいですか?」

 そう言って声をかけたのはアリスだ。男は俺達の方に振り返るなり警戒心を強めていた。

「な……なんだお前達は」

 黒い服に身を包んでいる眼鏡をかけた男性だ。それに左胸にはハチドリがデザインされている金色のバッジを付けている。それは施設の人間だという事の証。年齢は60代前後だ。

「貴方はネイロン・ビアーズさんで間違いなかったですか?」

「そうだが――冒険者が私に何の用だ?」

「少しお話があります。家に入れて頂けないでしょうか?」

 アリスがそう打診するとビアーズは眉間に皺を寄せていた。

「何者か知らない貴様等を何故家に上げなければならないのだ」

「施設の件についてですが――」

 エヴァがそう言うとビアーズは表情が剣幕になった。

「何故私が施設の人間だと知っているのだ――」

「色々ありまして少しお話を伺いしたいのです」

「何について聞きたい?」

「施設の場所です」

 エヴァがそう言うとビアーズは数秒悩んでから「入れ」と漏らした。思っていたより話が分かる奴で助かる。

 家に上がらせてもらうと、絵画やら像やら色々と置いていた。魚も飼っているようだ。家はそこそこ広い割には家族がいる気配はない。独身なのだろうか?

 俺達はソファに座らされた。このソファもなかなか高級感があった。座り心地もいいし家具に拘りを感じる。アンティークな時計やどこの国か分からない珍しそうなコインも置いている。

「まず名乗ってもらおうか」

 ビアーズは俺の顔をしっかりと捉えていた。亜人が人間に紛れ込んでいるのが不思議で仕方ないのだろう。

「アリスです」

「エヴァよ」

「フィオナです」

「フォルボスだ」

 俺がそう言うとビアーズは驚いた表情をしていた。

「亜人が自我を保ちながら喋った……」

 ビアーズは目を丸くしてそう言っていた。

「なあに簡単な話だ。俺は施設で生まれた怪物なんだからな」

「成程……という事はダヴィツの所の子供か?」

「ああ。そうだ」

「それにこの冒険者パーティーに、記憶を取り戻したフォルボス君――何となく予測はできたが念のために聞こう。君達は何の為に施設の場所を知りたいんだ? 正直に話をしてくれないか?」

 ビアーズは腕を組んで俺達全員の顔を伺っていた。まず口を開いたのはエヴァだった。

「つい最近に姿を消したディオール・エヴァンス君の行方を追っています」

「成程。結論エヴァンス君はまだ生きているよ。ただ、今の状態はショッキングかもしれないな」

 すると、エヴァは直ぐに席を立った。俺よりも先に立ち上がったから驚きだ。

「ならばこうしてはいられない。今すぐにでも助けに行くわよ」

「待ちなさい。彼の話をまだ聞いていない」

 ビアーズはそう言って俺の顔を見てきた。

「フォルボス君は?」

「施設にいる子供の全員の解放と、実験そのものを今後一切行わないことが俺の願いだ」

 俺がビアーズの目を真っすぐ見てそう言うとビアーズは「ふう」と溜め息をつく。

「成程な……結論から言うと私は研究については反対派だ。なので場所くらいなら教えも構わない。君達が子供達を助けたうえで施設をどうするのか知らんがな。やはり施設の職員も自分達の研究に背徳感を抱く者が多い。しかし、一度この領域に踏み込んでしまった者は他のところへ行けない。もし、施設を辞めたら命を奪われるからな」

 ビアーズがそう言った事によって空気が一気重くなった。俺は施設の人間は皆悪だと思っていた。人の命を平気で弄ぶような連中ばかりだと……。

「フォルボス君すまない。我々がやっている事そのものは到底許されることではないが――歯向かった人間は始末されるんだ。実際に芯が強い若い職員も来たりするのだが、歯向かって始末されている」

「それはつい最近もか?」

「ああ。1ヶ月程前から来なくなった。つまりそういう事だ。私の目が届かないところで上の人間に掛け合ったんだろうな」

 ビアーズは静かにそう言っていたが目頭は熱くなっていた。彼もきっと心を痛めているのだろう。

「フォルボス君、君は今どこにいるのかな?」

「俺は色々あった後、マーズベルにいる。俺がこうやって意識があって会話ができているのも、マーズベルの人達のお陰だ」

「そうだったか。確かマーズベルの国主はアードルハイム皇帝を討ち取った英雄だったな。そこに身を置いていれば万が一の事があっても大丈夫だろう」

「万が一というと?」

「名前は言えないが、施設の上の連中達の情報網は凄い。フォルボス君が自我を取り戻したと聞くと躍起になって探しに来るだろう。しかし、マーズベルは世界から見ても高い戦力が揃っていると聞く。あのランベリオン・カーネルもいるしな」

「ランベリオンさんは東の国でも馴染みがあるんですか?」

 アリスがビアーズにそう問いかけた。

「ああ。知っている人は知っているよ。飛竜ワイバーンで☆3という個体はランベリオンが初めてだと聞く。我々が行っている研究が研究なので、☆を持ち、尚且つ名前を持っている魔物には興味があるのだ」

「やっぱりそういう個体は捕らえたいと思うもの?」

 フィオナのその質問にビアーズは首を左右に振った。

「私としては思わない。ただ、一部の人間はランベリオンの事に興味を持っているのは事実だ。しかし、ランベリオンの死の灰デス・アッシュというスキルは強力だ。わざわざマーズベルまで行って、ランベリオンを捕らえるために多くの死人を出すような事はしない」

 そこで俺は違和感を覚えた。じゃあ何で俺達子供は犠牲になるんだ――。

「聞いていいか?」

「どうぞ」

「ランベリオンの話は死人を出したくないという倫理観があるんだよな?」

「そうだ」

「何で子供の命は犠牲にできるんだ?」

 ビアーズは「そうだな……」と口を開いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...