【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

文字の大きさ
上 下
371 / 597

ダヴィツの手がかりⅠ

しおりを挟む
 村から数キロ離れたところにある小さな町マガイア。その町の外れにある平原をしばらく進むと平屋の建物が見えてきた。レンガ造りの建物で敷地内の外には庭がある。あそこでよくスキルを使って遊んだり、戦闘訓練などを行っていたのが昨日のように思い出す。そして思い出すほど頭が痛くなる。

「チッ――」

 この頭痛はなかなかだ。そう思うと俺はポーションを飲んだ。鎮痛剤だ。これでしばらく楽になる――。

 オスプレイを孤児院の近くに停めると、孤児院にいた子供たちが、施錠された入口の鉄格子から顔を覗かせてきた。子供これで全員なのだろうか? 寄って来た子供達は7人だった。

「知っている人はいますか?」

 アリスがそう言ってきたので俺は首を振った。

「そうですか」

 残念そうに肩を落とすアリス。俺は不思議な感覚になっていた。遊んでいた筈の友人達の名前が1人も思い出せない――。

「そもそもの話だ。俺は友人達の名前を忘れている――みんなを助けたい――! そういった強い思いがあったし、リーズに記憶妨害装置のようなものを取り出してもらってから皆の名前は思い出せていたんだ。しかし、ここに来てから思い出せなくなったんだ」

「それは不思議ですね。本当であれば因果関係が強いと思い出せそうなはずなのに」

「もしかしてリーズのポーションの副作用?」

 アリスの後にフィオナがそう問いかけて来た。

「分からない。確かのリーズのポーションの影響もあるかもしれないな」

「何とも言えないですね」

「考えていても仕方ない。今はダヴィツの情報を聞き出すのが最優先だ」

「確かにそうですね」

 アリスがそう言って首を縦に振った。そのリアクションはフィオナも同じだった。早速、子供達にダヴィツがいるかどうかを聞いてみた。

「おじさんなら、今日はお外に出ているよ」

「夕方まで戻らないって」

「お姉さん達誰? ダヴィツの知り合い?」

 と、まあ俺がいた頃とダヴィツの呼び方は変わっていないらしい。俺はダヴィツの事をダヴィツと言っていたが、おじさんと呼ぶ子供もいた。ダヴィおじって言っていた奴もいたな~。と、まあ考えていても、ダヴィツの事は思い出すことができるが、友人の事を今は全然思い出すことができない。思い出して、その人間がいるのであれば、こっちの話の信憑性が増すはずなのに。

 重要なところは全て忘れる――この現象は一体何なのだろうか――。

 子供達の質問にはアリス、フィオナ、エヴァが答えていた。俺が喋ったら絶対に玩具にされるから喋らないでおこう。

 そうやって様子を見ていると、シュファとランベーフが子供に絡み始めた。

「自分ら暇とちゃうか? お兄さんとこのお姉さんと遊んでみやん?」

「でも、そっちいたら遊べないじゃん」

「俺達、ここから出ることを禁じられているんだ」

「もし出たらおじさんにものすご~く怒られるの」

 ぬいぐるみを持った5歳くらいの少女がそう言うと――。

「じゃあ私達が皆そっちに行けば遊べるんじゃない?」

「そうやな。入ってええか?」

 シュファとランベーフがそう言うと、子供達は顔を見合わせるなり少し悩んだ。

「まあいいか~。もし怒られたら皆で怒られようぜ」

 そう言ったのは10~12歳くらいの少年だった。この少年が7人の中のリーダー格なのだろうか。

 そうやりとりを終えて俺達は孤児院の中に入ることができた。入口付近の左右に植えられている木の匂い。澄んでいる空気。そしてドアの無い入り口。幼少の頃、冬は物凄く寒かったので、火属性のスキルを使える友人の所へ集まっては、体を暖めていたのを思い出す。ドアくらい造ってくれたらいいのに――。俺はそうダヴィツに何度も打診していたが、貧乏という理由で断られていた。その代わり、食事はそれなりに満足できた。当時孤児院にいた子供は12人。そして料理を作るのは俺達とダヴィツだった。おかわりはできないものの、腹八分くらいは食べることができていたし、強い人間になるために、タンパク質はしっかりと摂っていたんだ。だから物凄く貧乏な生活を送っていたかと言われるとそうでもない。寒さを凌げる術があるのでほんの少しの不満だ。無いものはやっぱり欲しくなる。

 建物に入ると正面には広場にある。ここでは剣術などの稽古に使われていた。そして右手には子供部屋がある。言うなれば玩具などが遊具だ。

 そして左手には厨房とその奥にはダヴィツの部屋がある。

「あそこがタヴィツの部屋だ」

 俺がそう指すとアリスが部屋を見渡した。

 部屋には机と椅子、それに引き出しとクローゼットといった具合だ。他に変わった物は置いていない。

「子供のときの探求心ってやつだろうな。クローゼットと、引き出しに鍵がかかっているところがある。それがバレてしまってダヴィツに酷く怒られたことがある」

「確かに引き出しの中にノートと封筒がありますね。そのなかにはお金が入ってるようです」

青の瞳ブルーリー・アイズとだったかしら? なかなか便利なスキルね」

「そうですよ。パッシブスキルですが、このスキルを持っている人は結構少ないですね。私に以外に見たことがありませんし」

「確かにそうね。因みにお金はどれくらい入っているのかしら」

「金貨5枚に銀貨が50枚前後くらいですね」

「何とも言えない量ね。とりあえず鍵を開けてノートのほうを見てみましょう」

「わかりました。けど、鍵を開ける方法はあるんですか? 私がやってもいいですけど、それだとこの孤児院が真っ二つになります」

水刃ウォーター・カッターなんて使ったら死人が出るわ。私に任せて。ノートがあるのは何段目かしら?」

 エヴァはそう言って引き出しの前で腰を下ろした。

「二段目です」

 アリスがそう言うと分かったと言って引き出しに触れた。

「これスキルで施錠されているタイプね」

 エヴァはそう言うなり二段目の引き出しに触れた。驚くことに自動で引き出しが出てきた。どういう原理だ? 何かのスキルだろうか?

 そう思っているとエヴァがノートを開いて中身を確認し始めた。


 



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...