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亜人の正体Ⅰ
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次の日、リリー、アーツさん、ダイヤ侯爵に別れを告げてミクちゃんと2人でマーズベルに帰って来た。
「何か久しぶりのマーズベルだね!」
「そうだな! 約20日ぶりだもんな~」
俺は館の前でマーズベルの空気を目一杯楽しんだ。
「ナリユキ様、ミク様お戻りで!」
「ご無事で何よりですナリユキ様」
そういち早く駆けつけて来たのは、ベリトとアリシアだった。ベリトに関してはどこからともなく現れるから本当に忍者みたいだ。
2人は俺の前で跪いていた。
「おう。長い間出かけていて悪かったな。変わったことは無いか?」
「ええ。問題ありません」
「アリシアは大丈夫だったか?」
「問題ありません。ご配慮感謝いたします」
「そうか。ありがとうな。どうだ? 一緒にコーヒーでも飲むか?」
「ありがとうございます。ご迷惑でなければご一緒させて下さい」
「私もお言葉に甘えさせて頂きます」
そう言って館の中に入ると、従者達が手厚く迎えてくれた。
「お帰りなさいませナリユキ様、ミク様」
「ありがとう」
「いつも大袈裟なくらい手厚い歓迎だもんね。毎度毎度お姫様になった気分」
ミクちゃんがそう照れ笑いをしていたので――。
「今度ウエディングドレスでも着てみるか? 本当のお姫様になれるぞ?」
俺がそうポロッと言うと、ミクちゃんの顔はみるみる紅潮していた。アリシアは何かニヤニヤしているし、ミーシャやメイを含めたメイド連中はワーキャー言っている――。
「あ……」
「それは冗談? それとも着せてくれるって意味?」
――そりゃそうだ。普段のミクちゃんとの仲の良さだったらそうなるよ!
「そうだな。後者だよな」
もう意味分からんくらい恥ずかしくなったからそれ以上は何も言わなかった。
ミクちゃんはさらに顔は紅くなるし、従者の皆は「おお~!」って凄い盛り上がりを見せているしもう無理。朝っぱらから恥ずかしい。
「大変ですねナリユキ様。でも御二人なら」
と、ベリトが言ってきたので俺が「おい」と言うと。
「素晴らしいと思います」
満面の笑みでこの一言だ。まあベリトも1人の女性を強く愛していたから心が晴れやかな気持ちなんだろうな。俺からすると、ベリトとフィオナがめちゃいい雰囲気なのに、まだ付き合っているっていう段階じゃないもんな。仮にだ。ベリトとフィオナが子供を産んだら魔族と闇森妖精のハーフになるのか――めちゃくちゃ強そうじゃね!?
「とりあえずカフェルームに行って4人でコーヒー飲むわ」
「ちょうどマカロフ卿がいますよ」
「何でアイツ俺の館に普通に出入りしているんだ」
「コーヒー美味しいそうなので、メリーザ様と毎朝ゆっくりとした時間を過ごしています」
――確かに出入りは禁止していなかったけどさ。でもまあ、2人の時間を楽しめているならいいか。
「まあいいや。行こうぜ」
「かしこまりました。それではこちらへ」
ミーシャにそう言われてカフェルームに案内された。席にはマカロフ卿とメリーザがコーヒーを堪能していた。
「帰って来たか。そろそろ戻って来るとは思っていた」
マカロフ卿とメリーザが挟んでいるテーブルの上には2つのコーヒーと1枚の新聞。マカロフ卿はその新聞をトントンと叩いた。
「流石ですねナリユキ様」
メリーザがそうニッコリと微笑んできた。一体何が――。
「最近の新聞を見れば分かりますよ。前提として、ナリユキ様とミク様がそろそろ戻るという事は皆予測していましたからね」
ベリトにそう言われたので、俺はとりあえずマカロフ卿に新聞を貸してもらった。
「存分に見るといい」
「おう――どれどれ」
俺がそう言って貸してもらった新聞の一面には、【サイスト・クローバー侯爵殺害事件の真犯人は実は――!】という見出しの記事があった。そこには授け屋の天元という人物に、強くなるための知識を貰ってから、何名かが事件についての情報を得ていたと証言しているという。その証言だと、死んだと思われていたストーク・ディアン公爵が、サイスト・クローバー侯爵を殺害したという記事だった。
「授け屋というのは知性・記憶の略奪と献上を使ったのか?」
「そうだな」
「これまた面白い発想だな」
と、マカロフ卿はコーヒーをすすった。
「ということはカルカラの人間達の戦闘値を底上げしたという形ですかね?」
「そうだな」
「どこに行っても誰かに貢献しようとするのは本当に素晴らしいですね」
いつの間にかメリーザもものすごくヨイショしてくるようになっていた。前からちょくちょくヨイショされていたけど。何かもう森妖精のキャバクラに来たんかな――。
「あっ!」
俺がいきなり大声を出したものだから、皆が「えっ?」という顔で見てきた。
「そう言えば夜のお店無かったよな」
「確かに無かったな。ただまあ食べ物は美味しいし、風車は迫力あるし、温泉は気持ちいいし最高だぞ」
なんだこのロシア人。めちゃくちゃ褒めてくるじゃん。
「ナリユキ君、夜のお店によく行っていたの?」
あれ? さっきの発言の後だからミクちゃんの目がめちゃくちゃ怖いのですが。
「ノリで数回行っただけだよ」
「それならいいけど」
失言ですねこれは。よし今日一緒に寝るときはめちゃくちゃ、ぎゅ~してやる。
「夜のお店なら私はやっていたからシステム自体は何とく分かるぞ? 事業計画書作ろうか?」
と、マカロフ卿が言ってきたので俺は驚いた。
「マカロフ卿はログウェルで、獣人barを経営していた時期がありました。今は他の人間に任せているので、マカロフ卿のところには銀貨1枚すら入らないですけど」
「――アンタどれだけ色々な事業しているの?」
「そうだな。武器や航空機の製造と販売。宝石の販売。barやレストランの経営、農業――まあ色々だな」
「どんだけあるんだよ。凄いな普通に」
「ただまあ彼はビジネス主義なので、飲食についてはそれほど力を入れてないんですよ。最初の何ヶ月かだけ関わって、後は任せるみたいなスタイルですね」
と、メリーザが補足した。いや、そうするのが皆理想だもんな。大きいお金を動かしたいのでは至極当然な事だ。
「話が脱線したな。いずれにせよカルカラの人間に真実が伝わって良かったな」
「嬉しいだけど、そうなると協力してくれた子が心配なんだよな」
「どうせお人好しのアンタの事だ。いざとなったらマーズベルに移住させるだろ?」
「違いない」
俺達がそう談笑していると1人の男性が転移で姿を現した。慌てて登場してきたのはリーズだ。
「何か久しぶりのマーズベルだね!」
「そうだな! 約20日ぶりだもんな~」
俺は館の前でマーズベルの空気を目一杯楽しんだ。
「ナリユキ様、ミク様お戻りで!」
「ご無事で何よりですナリユキ様」
そういち早く駆けつけて来たのは、ベリトとアリシアだった。ベリトに関してはどこからともなく現れるから本当に忍者みたいだ。
2人は俺の前で跪いていた。
「おう。長い間出かけていて悪かったな。変わったことは無いか?」
「ええ。問題ありません」
「アリシアは大丈夫だったか?」
「問題ありません。ご配慮感謝いたします」
「そうか。ありがとうな。どうだ? 一緒にコーヒーでも飲むか?」
「ありがとうございます。ご迷惑でなければご一緒させて下さい」
「私もお言葉に甘えさせて頂きます」
そう言って館の中に入ると、従者達が手厚く迎えてくれた。
「お帰りなさいませナリユキ様、ミク様」
「ありがとう」
「いつも大袈裟なくらい手厚い歓迎だもんね。毎度毎度お姫様になった気分」
ミクちゃんがそう照れ笑いをしていたので――。
「今度ウエディングドレスでも着てみるか? 本当のお姫様になれるぞ?」
俺がそうポロッと言うと、ミクちゃんの顔はみるみる紅潮していた。アリシアは何かニヤニヤしているし、ミーシャやメイを含めたメイド連中はワーキャー言っている――。
「あ……」
「それは冗談? それとも着せてくれるって意味?」
――そりゃそうだ。普段のミクちゃんとの仲の良さだったらそうなるよ!
「そうだな。後者だよな」
もう意味分からんくらい恥ずかしくなったからそれ以上は何も言わなかった。
ミクちゃんはさらに顔は紅くなるし、従者の皆は「おお~!」って凄い盛り上がりを見せているしもう無理。朝っぱらから恥ずかしい。
「大変ですねナリユキ様。でも御二人なら」
と、ベリトが言ってきたので俺が「おい」と言うと。
「素晴らしいと思います」
満面の笑みでこの一言だ。まあベリトも1人の女性を強く愛していたから心が晴れやかな気持ちなんだろうな。俺からすると、ベリトとフィオナがめちゃいい雰囲気なのに、まだ付き合っているっていう段階じゃないもんな。仮にだ。ベリトとフィオナが子供を産んだら魔族と闇森妖精のハーフになるのか――めちゃくちゃ強そうじゃね!?
「とりあえずカフェルームに行って4人でコーヒー飲むわ」
「ちょうどマカロフ卿がいますよ」
「何でアイツ俺の館に普通に出入りしているんだ」
「コーヒー美味しいそうなので、メリーザ様と毎朝ゆっくりとした時間を過ごしています」
――確かに出入りは禁止していなかったけどさ。でもまあ、2人の時間を楽しめているならいいか。
「まあいいや。行こうぜ」
「かしこまりました。それではこちらへ」
ミーシャにそう言われてカフェルームに案内された。席にはマカロフ卿とメリーザがコーヒーを堪能していた。
「帰って来たか。そろそろ戻って来るとは思っていた」
マカロフ卿とメリーザが挟んでいるテーブルの上には2つのコーヒーと1枚の新聞。マカロフ卿はその新聞をトントンと叩いた。
「流石ですねナリユキ様」
メリーザがそうニッコリと微笑んできた。一体何が――。
「最近の新聞を見れば分かりますよ。前提として、ナリユキ様とミク様がそろそろ戻るという事は皆予測していましたからね」
ベリトにそう言われたので、俺はとりあえずマカロフ卿に新聞を貸してもらった。
「存分に見るといい」
「おう――どれどれ」
俺がそう言って貸してもらった新聞の一面には、【サイスト・クローバー侯爵殺害事件の真犯人は実は――!】という見出しの記事があった。そこには授け屋の天元という人物に、強くなるための知識を貰ってから、何名かが事件についての情報を得ていたと証言しているという。その証言だと、死んだと思われていたストーク・ディアン公爵が、サイスト・クローバー侯爵を殺害したという記事だった。
「授け屋というのは知性・記憶の略奪と献上を使ったのか?」
「そうだな」
「これまた面白い発想だな」
と、マカロフ卿はコーヒーをすすった。
「ということはカルカラの人間達の戦闘値を底上げしたという形ですかね?」
「そうだな」
「どこに行っても誰かに貢献しようとするのは本当に素晴らしいですね」
いつの間にかメリーザもものすごくヨイショしてくるようになっていた。前からちょくちょくヨイショされていたけど。何かもう森妖精のキャバクラに来たんかな――。
「あっ!」
俺がいきなり大声を出したものだから、皆が「えっ?」という顔で見てきた。
「そう言えば夜のお店無かったよな」
「確かに無かったな。ただまあ食べ物は美味しいし、風車は迫力あるし、温泉は気持ちいいし最高だぞ」
なんだこのロシア人。めちゃくちゃ褒めてくるじゃん。
「ナリユキ君、夜のお店によく行っていたの?」
あれ? さっきの発言の後だからミクちゃんの目がめちゃくちゃ怖いのですが。
「ノリで数回行っただけだよ」
「それならいいけど」
失言ですねこれは。よし今日一緒に寝るときはめちゃくちゃ、ぎゅ~してやる。
「夜のお店なら私はやっていたからシステム自体は何とく分かるぞ? 事業計画書作ろうか?」
と、マカロフ卿が言ってきたので俺は驚いた。
「マカロフ卿はログウェルで、獣人barを経営していた時期がありました。今は他の人間に任せているので、マカロフ卿のところには銀貨1枚すら入らないですけど」
「――アンタどれだけ色々な事業しているの?」
「そうだな。武器や航空機の製造と販売。宝石の販売。barやレストランの経営、農業――まあ色々だな」
「どんだけあるんだよ。凄いな普通に」
「ただまあ彼はビジネス主義なので、飲食についてはそれほど力を入れてないんですよ。最初の何ヶ月かだけ関わって、後は任せるみたいなスタイルですね」
と、メリーザが補足した。いや、そうするのが皆理想だもんな。大きいお金を動かしたいのでは至極当然な事だ。
「話が脱線したな。いずれにせよカルカラの人間に真実が伝わって良かったな」
「嬉しいだけど、そうなると協力してくれた子が心配なんだよな」
「どうせお人好しのアンタの事だ。いざとなったらマーズベルに移住させるだろ?」
「違いない」
俺達がそう談笑していると1人の男性が転移で姿を現した。慌てて登場してきたのはリーズだ。
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