【電子書籍化決定!】生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔

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噂を広げろⅥ

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「分かった」

 俺はまずリリーの頭に触れて悪魔との機密契約イビル・コントラクトを使ってリリーとの間に契約ルールを課した。

「あれ? もう終わり?」

「ああ。この効果は話を聞かれたからっていきなり命を奪われる訳じゃないからそこは安心してほしい。心臓に強烈な痛みを感じ始めるから、それが合図だと思えばいい」

「――どっかで聞いたことがあるようなスキルだけどまあいいわ。どうせすぐに分かるんでしょ?」

「そうだな。それが俺と君との取引だからな。じゃあ行くぞ」

「ええ」

 俺はリリーの頭に触れ、次は知性・記憶の略奪と献上メーティスで俺とミクちゃんの全ての情報を与えた。

「いいぞ」

 俺がそう言うと、リリーと俺とミクちゃんを見て目を丸くしていた。

「本当に――?」

「本当さ。記憶を与えた通り、少しややこしい事に巻き込まれていてな。だから、俺と椿の情報が口外されるとマズいことになるんだ」

「成程――そうだったの。通りで強いと――」

 リリーはハッとした表情を浮かべるなり、コホンと咳払いを行った。

「失礼致しました」

 と、いきなりリリーはかしこまった。

「先程まで無礼な態度を取っていて申し訳ございませんでした」

「いや、タメ口でいいって!」

「天元様は気にしませんからね~。それにリリーさんとは、天元様として会っているので、本当に何とも思っていないですよ」

 ミクちゃんがそうフォローに入ってくれると、リリーは「そうでしたか」と一言。

「ではこれからは天元殿と椿殿と呼ばせて頂きます」

「まあそれくらいならいいかな。いきなりかしこまられると俺は話しづらいんだよな」

「分かった……私も話しづらい」

「慣れてくれ」

 俺がそう言うとリリーは少し苦笑を浮かべていた。国主に対してタメ口って確かに話しづらいよな。ましてや他国の人間だし。

「それで今回ここに来たのは真犯人を広める為ということね?」

「そうだ」

「確かにスペード侯爵家の人間が関わっていなかったのは嬉しいけど、まさかあの人がね」

「そういう事だ。少し場所を変えようか」

「そうね」

 俺達は町から少し外れた平原に家を建てた。

「本当に何でも出せるのね」

「まあ出せないのもあるけどな」

「例えば何?」

「水とか、油とかの液体だな」

「成程。じゃあ何で家は出せるの?」

「家は人間が考えた概念だからな。あとは人間が体に必要な栄養分とかが出ない。だから食料とかも出せないし、塩とかも出ない。水と油は人間の体にある必要なモノだろ? だから出せないんだ。後は水、火、雷、電気、土、風、空気、光、闇、音、重力、音みたいなのも出せない。基本的には個体は出せると思っていてくれたらいいかな」

「成程。便利なスキルだけど、スキルの仕様を理解するのに、最初のほうは苦労していそうね」

「そうなんだよ」

 俺がそう言っているとリリーはミクちゃんを見た。

「聖女様って呼ばれる所以は天使の翼で空を優雅に舞う姿と、どんな傷でも一瞬で治すことができる森妖精エルフ以上の回復ヒールが使えるからだと聞いているわ。天使の翼はユニークスキルでしょ?」

「そうですよ。このスキル便利なんですよ」

 と、ミクちゃんが言うと「そうみたいね」とリリーは微笑んだ。

「それで? 私は貴方達に協力をすれば良いのね?」

「ああ。勿論報酬は出すつもりだ」

「まあ、本当にバフォメットを倒す力が手に入ったのであれば特にいらないけど」

「いや、その気持ちは本当に嬉しいんだけど、多分割にあわないぜ?」

「そうですよ。報酬は貰っておいた方がいいです」

 俺とミクちゃんの追撃に困惑するリリー。

「な――何をさせる気なの?」

「彼女と一緒に動いてもらう。最短でも23日間一緒に働いてもらう予定だな」

 俺がそう言うとリリーは「成程」と少し嫌そうな表情を浮かべていた。それはそうだ。俺もやれって言われたら嫌だもん。

「どうする?」

 リリーは数十秒した後、口を開いた。

「いいわよ。スペード侯爵家の人間にはお世話になった恩があるからね」

「決まりだな。報酬もきちんと払うから安心してくれ」

「分かった」

 リリーがそう返事したのでズッコケそうになった。だって、何の報酬がもらえるのかどうか聞いてきていない。

「何の報酬か聞かないのか?」

「何でもいいもの。私は冒険者だけど、それほどお金に困っている訳じゃないから。それに天元殿はセコイ事しないでしょ? 悪い嘘をつくようには思えない」

「まあ、当たっているな」

「そりゃあれだけ貴方の情報を見せられたら流石に人間性が分かるわよ」

「それもそうか。報酬に関しては銀貨500枚でどうだ?」

「既に色々な情報を貰っている人間に渡す金額じゃないわよ。銀貨50枚貰っておこうかしら」

「それだけいいのか?」

「十分よ。貴方がくれた魔物に関する情報量は膨大だったもの。だって10枚だけでいいっていったら怒るでしょ?」

「――まあ怒りはしないけど気分あまりよくないかな」

「でしょ? なので50枚にしたわ。これで私は明日から手伝うから何時に集合したらいいかだけ教えてほしい」

「いつも9時から開始しているよ。あとは、俺のスキルが凄いってリリーが広めてくれた宣伝効果大だと思う。有名な冒険者が俺を慕っていたらお客さんは増えるはずだ」

「確かにそうね。私ができることは全力でするわ。今日は色々聞かせてくれてありがとう」

 リリーはそう言って俺とミクちゃんに微笑みかけた。

「こちらこそありがとう」

 俺がそう言うとリリーは急遽建てたこの家から出て行った。

「いい人だったね」

「想像以上にいい人だったな。これで人は集まると思う」

「あとはナリユキ君が人をいっぱい捌くだけだね! 明日からも頑張ろう!」

 ミクちゃんがくそ眩しい笑顔でそう言ってくれた。やる気が出ない訳がない! いっぱい舞ってやるぜ!
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