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噂を広げろⅣ
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次の日、俺はあれから色々考えたが答えは見つからなかった。なので、とりあえず今日もミクちゃん頼りになってしまうけど、訪れたお客さんの事をもっとしっかりと見る事にした。具体的に言うと戦闘への関心度だ。昨日は、ミクちゃんって可愛い子がいるし、何か無料で強くなれるらしいし行ってみようとなった訳だ。
つまり俺への関心度が全くない――。勿論、男性と女性なら、強くなりたいと思うのは圧倒的に男性の方が多いから、ミクちゃんにどうしても目がいくのは分かる――が、それはただの言い訳でしかない。ナリユキ・タテワキと天元では何かが決定的に違うのだ。今日はそれを見極めて改善を行う。
そうして開始した【授け屋】だったが――。
「貴方凄く強いですね」
そう話しかけて来たのはクリーム色の髪をしたロングヘアの女性だった。ホワイトとネイビーの2色を基調とした服を着ている騎士だった。
「それをウリにしてこの商売をしているからな。最も今は限定で無料にしているがな」
俺はそう少し低い声で応えた。
「そうなの? 随分と自分の首を絞める商売をしているのね」
まあ、それが本筋じゃないからな!
「それに、あそこでビラ配りをしている女性も相当強い――2人共究極の阻害者を持っているからS級には違いないんだろうけど」
そう解説しているこの女性も今までのお客さんの中では一番強かった。名前はリリーというらしい。戦闘値は3,500とそこそこ強いS級ではあるけど、究極の阻害者は獲得していないようだ。
「そうか。君は究極の阻害者を持っていないのだな?」
「そう。ジャミングキメラはあまり戦ったことが無いの。気が狂う程倒さないといけないんでしょ?」
「まあ――確かにな」
今となっては驚異的ではないけど、それくらいの戦闘値の時は相当苦労したもんな――。
「私は理由があって強くなりたいの。だから――お願いしてもいいかしら?」
「別に問題無いが――最初に言っておくが、物理的に強くなるわけじゃない。あくまで俺の戦闘スキルと、魔物との戦闘における立ち回りを教えるだけだ。後は弱点とかだな」
「その中にバフォメットはいるかしら?」
「バフォメット――流石の俺でもバフォメットは倒したことがないな」
「そう――」
リリーはそう言って肩を落としていた。バフォメットに何か恨みでもあるのだろうか? リリーの悲し気な表情が妙に印象深かった。
「やらないのか?」
「いえ――戦闘の立ち回りだけでも教えて欲しい」
「ここにかけて」
俺がそう言うとリリーは椅子に座った。まずはバフォメットに何をされたのか調べよう。
「頭を少し借りるぞ?」
「ユニークスキルか何かで教えてくれるの?」
「そんなところだ」
俺がそう言うとリリーは俺に頭を預けてくれた。そして、知性の略奪と献上でリリーのバフォメットに関する記憶を奪う。
流れ込んできた記憶は、簡単に言うと幼い時にバフォメットに両親を殺害されたという記憶だ。兄もいたらしいがが仇討ちは失敗してしまい、リリーは天涯孤独になったという話だった。
リリーのバフォメットに関する情報を手に入れると、今度は俺が戦闘に関するあらゆる情報をリリーに与えた。魔物や立ち回りに関する情報。また、俺が知っているパッシブスキル、アクティブスキル、ユニークスキル、アルティメットスキルの情報を共有した。最後はサイスト・クローバー侯爵殺害の事件の事に関しては――。どうやら新聞などにも目に通して興味があるらしい。そして、スペード侯爵家が犯人という事にも疑問を抱いていた。
そして一番重要な情報。それはディアン公爵に関心が高いどうか――。
答えは否だった。リリーはどうやらスペード侯爵家と交流があるらしい。だから、人を殺害することに違和感を覚えていたようだ。ましてや、古くから交流があるクローバー家の人間を殺害するはずがないと思っているようだ。
そう思い、俺はディアン公爵が真犯人だという情報も組み込んだ。
「よし――いいぞ」
俺がそう言うとリリーは俺の顔を見るなり驚いた表情をしていた。
「確かに魔物の膨大な情報は手に入った。けど――」
「けど?」
俺がそうとぼけるとリリーは怪訝な表情を浮かべていた。
「いや、どういう事。もしかして間違った情報が? いや、でもディアン公爵が犯人って――」
リリーはそう呟いた後、テーブルにバンと手を叩きつけて俺の事を真っすぐ見てきた。
「貴方何者なの?」
「残念だがそれは言えない。もし本当に知りたいのであれば騒ぎを起こさない事を約束してもらいたい」
「貴方から渡された情報で、私の脳内は既に騒いでいるんだけど」
――確かに。それはそうだ。
「本当なの? サイスト・クローバー侯爵の事件の真相……」
「どうだろうな? もっと情報が知りたければ、今夜ここの裏にある広場に来るといい」
「分かったわ――何時に行けばいいの?」
「そうだな。21時でどうだ?」
「分かった」
リリーはそう言って席を立った。
「色々とありがとう。まさかここまでの情報量を無料で貰えるなんて思ってもみなかったわ」
「そうか」
「じゃあまた今晩会いましょう天元さん。私はリリー、宜しくね。視えていると思うけど」
リリーはそう言って去って行った。何というか、少し希望の光が見えてきた気がするけど、俺の正体を明かすのはリスクがあるな――。悪魔との機密契約を使うか。問題はどういう条件にするかだな。
「ナリユキ君。何か収穫あったの?」
「そうだな。今晩さっきの女性と会う事になった。どうやら彼女は事件の真相が知りたいそうだ」
「美女との密会か――」
ミクちゃんはそう言って俺の事をじっと見てきた。
「え? そこ?」
「冗談だよ。私も一緒について行っていいんだよね?」
「勿論だ。よし、この調子で引き続き頑張ろう!」
「そうだね!」
つまり俺への関心度が全くない――。勿論、男性と女性なら、強くなりたいと思うのは圧倒的に男性の方が多いから、ミクちゃんにどうしても目がいくのは分かる――が、それはただの言い訳でしかない。ナリユキ・タテワキと天元では何かが決定的に違うのだ。今日はそれを見極めて改善を行う。
そうして開始した【授け屋】だったが――。
「貴方凄く強いですね」
そう話しかけて来たのはクリーム色の髪をしたロングヘアの女性だった。ホワイトとネイビーの2色を基調とした服を着ている騎士だった。
「それをウリにしてこの商売をしているからな。最も今は限定で無料にしているがな」
俺はそう少し低い声で応えた。
「そうなの? 随分と自分の首を絞める商売をしているのね」
まあ、それが本筋じゃないからな!
「それに、あそこでビラ配りをしている女性も相当強い――2人共究極の阻害者を持っているからS級には違いないんだろうけど」
そう解説しているこの女性も今までのお客さんの中では一番強かった。名前はリリーというらしい。戦闘値は3,500とそこそこ強いS級ではあるけど、究極の阻害者は獲得していないようだ。
「そうか。君は究極の阻害者を持っていないのだな?」
「そう。ジャミングキメラはあまり戦ったことが無いの。気が狂う程倒さないといけないんでしょ?」
「まあ――確かにな」
今となっては驚異的ではないけど、それくらいの戦闘値の時は相当苦労したもんな――。
「私は理由があって強くなりたいの。だから――お願いしてもいいかしら?」
「別に問題無いが――最初に言っておくが、物理的に強くなるわけじゃない。あくまで俺の戦闘スキルと、魔物との戦闘における立ち回りを教えるだけだ。後は弱点とかだな」
「その中にバフォメットはいるかしら?」
「バフォメット――流石の俺でもバフォメットは倒したことがないな」
「そう――」
リリーはそう言って肩を落としていた。バフォメットに何か恨みでもあるのだろうか? リリーの悲し気な表情が妙に印象深かった。
「やらないのか?」
「いえ――戦闘の立ち回りだけでも教えて欲しい」
「ここにかけて」
俺がそう言うとリリーは椅子に座った。まずはバフォメットに何をされたのか調べよう。
「頭を少し借りるぞ?」
「ユニークスキルか何かで教えてくれるの?」
「そんなところだ」
俺がそう言うとリリーは俺に頭を預けてくれた。そして、知性の略奪と献上でリリーのバフォメットに関する記憶を奪う。
流れ込んできた記憶は、簡単に言うと幼い時にバフォメットに両親を殺害されたという記憶だ。兄もいたらしいがが仇討ちは失敗してしまい、リリーは天涯孤独になったという話だった。
リリーのバフォメットに関する情報を手に入れると、今度は俺が戦闘に関するあらゆる情報をリリーに与えた。魔物や立ち回りに関する情報。また、俺が知っているパッシブスキル、アクティブスキル、ユニークスキル、アルティメットスキルの情報を共有した。最後はサイスト・クローバー侯爵殺害の事件の事に関しては――。どうやら新聞などにも目に通して興味があるらしい。そして、スペード侯爵家が犯人という事にも疑問を抱いていた。
そして一番重要な情報。それはディアン公爵に関心が高いどうか――。
答えは否だった。リリーはどうやらスペード侯爵家と交流があるらしい。だから、人を殺害することに違和感を覚えていたようだ。ましてや、古くから交流があるクローバー家の人間を殺害するはずがないと思っているようだ。
そう思い、俺はディアン公爵が真犯人だという情報も組み込んだ。
「よし――いいぞ」
俺がそう言うとリリーは俺の顔を見るなり驚いた表情をしていた。
「確かに魔物の膨大な情報は手に入った。けど――」
「けど?」
俺がそうとぼけるとリリーは怪訝な表情を浮かべていた。
「いや、どういう事。もしかして間違った情報が? いや、でもディアン公爵が犯人って――」
リリーはそう呟いた後、テーブルにバンと手を叩きつけて俺の事を真っすぐ見てきた。
「貴方何者なの?」
「残念だがそれは言えない。もし本当に知りたいのであれば騒ぎを起こさない事を約束してもらいたい」
「貴方から渡された情報で、私の脳内は既に騒いでいるんだけど」
――確かに。それはそうだ。
「本当なの? サイスト・クローバー侯爵の事件の真相……」
「どうだろうな? もっと情報が知りたければ、今夜ここの裏にある広場に来るといい」
「分かったわ――何時に行けばいいの?」
「そうだな。21時でどうだ?」
「分かった」
リリーはそう言って席を立った。
「色々とありがとう。まさかここまでの情報量を無料で貰えるなんて思ってもみなかったわ」
「そうか」
「じゃあまた今晩会いましょう天元さん。私はリリー、宜しくね。視えていると思うけど」
リリーはそう言って去って行った。何というか、少し希望の光が見えてきた気がするけど、俺の正体を明かすのはリスクがあるな――。悪魔との機密契約を使うか。問題はどういう条件にするかだな。
「ナリユキ君。何か収穫あったの?」
「そうだな。今晩さっきの女性と会う事になった。どうやら彼女は事件の真相が知りたいそうだ」
「美女との密会か――」
ミクちゃんはそう言って俺の事をじっと見てきた。
「え? そこ?」
「冗談だよ。私も一緒について行っていいんだよね?」
「勿論だ。よし、この調子で引き続き頑張ろう!」
「そうだね!」
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